Sun Cluster 3.0 12/01 の概念

動的再構成のサポート

Sun Cluster 3.0 による動的再構成 (DR: Dynamic Reconfiguration) ソフトウェア機能のサポートは段階的に開発されています。この節では、Sun Cluster 3.0 12/01 による DR 機能のサポートの概念と考慮事項について説明します。

Solaris 8 の DR 機能の説明で述べられているすべての必要条件、手順、制限は Sun Cluster の DR サポートにも適用されます (オペレーティング環境の休止操作を除く)。したがって、Sun Cluster ソフトウェアで DR 機能を使用する前に、必ず、Solaris 8 の DR 機能についての説明を参照してください。特に、DR Detach 操作中に、ネットワークに接続されていない入出力デバイスに影響する問題について確認してください。『Sun Enterprise 10000 Dynamic Reconfiguration ユーザーマニュアル』と『Sun Enterprise 10000 Dynamic Reconfiguration リファレンスマニュアル』が、http://docs.sun.com で参照できます。

動的再構成の概要

DR 機能では、システムハードウェアの切り離しなどの操作をシステムの稼動中に行うことができます。 DR プロセスの目的は、システムを停止したり、クラスタの可用性を中断したりせずにシステム操作を継続できるようにすることです。

DR はボードレベルで機能します。したがって、DR 操作は、ボードのすべてのコンポーネントに影響を及ぼします。ボードには、CPU やメモリー、ディスクドライブやテープドライブ、ネットワーク接続の周辺機器インタフェースなど、複数のコンポーネントが取り付けられています。

ボードを切り離すと、ボード上のすべてのコンポーネントが使用不能になります。DR サブシステムは、ボードを切り離す前に、ボードのコンポーネントが使用されていないかどうかを確認します。 使用されているデバイスを切り離すと、システムエラーになります。 DR サブシステムは、デバイスが使用されているのを発見すると、DR のボード切り離し操作を拒否します。したがって、DR のボード切り離し操作のタイミングによって問題が発生することはありません。

同様に、DR のボード追加操作も常に安全です。新たに追加されたボードの CPU とメモリーは、システムによって自動的にサービス状態になります。ただし、そのボードの他のコンポーネントを使用するには、クラスタを手動で構成する必要があります。


注 -

DR サブシステムにはいくつかのレベルがあります。下位のレベルがエラーを報告すると、上位のレベルもエラーを報告します。 しかし、下位のレベルがエラーを特定しても、上位のレベルが「原因不明のエラー (Unknown Error)」と報告することがあります。この上位レベルのエラーは無視してください。


次の各項では、デバイスタイプごとに DR の注意事項を説明します。

CPU デバイスに対する DR クラスタリング

DR のボード切り離し操作によってボード上の CPU に影響があると、DR サブシステムは操作を受け入れた上で、これらの CPU をそのノードから使用できないようにします。

さらに、DR のボード追加操作によってボードの CPU に影響があると、DR サブシステムは、これらの CPU をそのノードから使用できるようにします。

メモリーに対する DR クラスタリング

DR では、メモリーを 2 種類に分けて考える必要があります。これらの違いはその使用方法だけであり、実際のハードウェアは同じものです。

オペレーティングシステムが使用するメモリーは、カーネルメモリーケージと呼ばれます。Sun Cluster ソフトウェアは、カーネルメモリーケージを含むボードに対するボード切り離し操作をサポートしていないため、このような操作を拒否します。DR のボード切り離し操作によってカーネルメモリーケージ以外のメモリーに影響があると、DR サブシステムはその操作を受け入れた上で、メモリーをそのノードから使用できないようにします。

DR のボード追加操作によってメモリーに影響があると、DR サブシステムは、新しいメモリーをそのノードから使用できるようにします。

ディスクドライブとテープドライブに対する DR クラスタリング

主ノードのアクティブなドライブに対し、 DR 切り離し操作を行うことはできません。DR 切り離し操作を実行できるのは、主ノードのアクティブでないドライブや二次ノードのドライブの場合だけです。 クラスタのデータアクセスは、DR 操作の前でも後でも同じように行われます。


注 -

定足数デバイスの可用性に影響を与える DR 操作を行うことはできません。 定足数デバイスの考慮事項と、定足数デバイスに対する DR 操作の実行手順については、「定足数デバイスに対する DR クラスタリング」を参照してください。


次の各手順は、ディスクドライブやテープドライブに対する DR の切り離し操作を要約したものです。詳細な手順については、『Sun Cluster 3.0 12/01 のシステム管理』を参照してください。

  1. ディスクドライブやテープドライブが、アクティブなデバイスグループに属しているかどうかを確認します。

    • ドライブがアクティブなデバイスグループに属していない場合は、そのドライブに対して DR 切り離し操作を行うことができます。

    • DR 切り離し操作によってアクティブなディスクドライブやテープドライブに影響がある場合には、システムは操作を拒否し、操作によって影響を受けるドライブを特定します。そのドライブがアクティブなデバイスグループに属している場合は、手順 2 に進みます。

  2. ドライブが主ノードのコンポーネントであるか、二次ノードのコンポーネントであるかを確認します。

    • ドライブが二次ノードのコンポーネントである場合は、そのドライブに対して DR 切り離し操作を行うことができます。

    • ドライブが主ノードのコンポーネントである場合は、主ノードと二次ノードを切り替えてから、そのデバイスに対して DR 切り離し操作を行う必要があります。


注意 - 注意 -

二次ノードに対して DR 操作を行っているときに現在の主ノードに障害が発生すると、クラスタの可用性が損なわれます。 これは、新しい二次ノードが提供されるまでは、主ノードのフェイルオーバー先が存在しないためです。


定足数デバイスに対する DR クラスタリング

定足数デバイスとして構成されているデバイスに対し、 DR 切り離し操作を行うことはできません。DR のボード切り離し操作によって定足数デバイスに影響がある場合には、システムは操作を拒否し、操作によって影響を受ける定足数デバイスを特定します。定足数デバイスとしてのデバイスに対して DR 切り離し操作を行う場合は、まずそのデバイスを無効にする必要があります。

次の各手順は、定足数デバイスに対する DR 切り離し操作を要約したものです。詳細な手順については、『Sun Cluster 3.0 12/01 のシステム管理』を参照してください。

  1. DR 操作を行うデバイス以外のデバイスを定足数デバイスとして有効にします。

  2. DR 操作を行うデバイスを定足数デバイスとして無効にします。

  3. そのデバイスに対して DR 切り離し操作を行います。

プライベートインターコネクトインタフェースに対する DR クラスタリング

アクティブなプライベートインターコネクトインタフェースに対し、 DR 操作を行うことはできません。DR のボード切り離し操作によってアクティブなプライベートインターコネクトインタフェースに影響がある場合には、システムは操作を拒否し、操作によって影響を受けるインタフェースを特定します。アクティブなインタフェースを切り離す場合は、まずそれを無効にする必要があります (下記の注意を参照)。プライベートインターコネクトへのインタフェースが置き換えられても、その状態は変わりません。そのため、Sun Cluster の再構成を新たに行う必要はありません。

次の各手順は、プライベートインターコネクトインタフェースに対する DR 切り離し操作を要約したものです。詳細な手順については、『Sun Cluster 3.0 12/01 のシステム管理』を参照してください。


注意 - 注意 -

Sun Cluster の個々のクラスタノードには、他のすべてのクラスタノードに対する有効なパスが、少なくとも 1 つは存在していなければなりません。したがって、個々のクラスタノードへの最後のパスをサポートするプライベートインターコネクトインタフェースを無効にしないでください。


  1. DR 操作を行うインターコネクトインタフェースを含むトランスポートケーブルを無効にします。

  2. 物理プライベートインターコネクトインタフェースに対して DR 切り離し操作を行います。

パブリックネットワークインタフェースに対する DR クラスタリング

DR 切り離し操作は、アクティブでないパブリックネットワークインタフェースに対して行うことができます。DR のボード切り離し操作によってアクティブなパブリックネットワークインタフェースに影響がある場合には、システムは操作を拒否し、操作によって影響を受けるインタフェースを特定します。パブリックネットワークインタフェースがアクティブである場合は、まず、ネットワークアダプタフェイルオーバー (NAFO) グループの、アクティブネットワークインスタンスというステータスから削除する必要があります。


注意 - 注意 -

無効にされたネットワークアダプタに対して DR 切り離し操作を行っている間にアクティブなネットワークアダプタに障害が発生すると、システムの可用性が損なわれます。これは、DR 操作の間は、アクティブなネットワークアダプタのフェイルオーバー先が存在しないためです。


次の各手順は、パブリックネットワークインタフェースに対する DR 切り離し操作を要約したものです。詳細な手順については、『Sun Cluster 3.0 12/01 のシステム管理』を参照してください。

  1. NAFO グループから削除するために、アクティブアダプタをバックアップアダプタに切り替えます。

  2. アダプタを NAFO グループから削除します。

  3. パブリックネットワークインタフェースに対して DR 操作を行います。