Sun Cluster 3.0 12/01 の概念

負荷均衡ポリシー

負荷均衡は、スケーラブルサービスのパフォーマンスを応答時間とスループットの両方の点で向上させます。

スケーラブルデータサービスには、 puresticky の 2 つのクラスがあります。 pure サービスとは、そのいずれかのインスタンスがクライアント要求に応答できるサービスをいいます。sticky サービスとは、クライアントが同じインスタンスに要求を送るサービスをいいます。これらの要求は、別のインスタンスには変更されません。

pure サービスは、ウェイト設定した (weighted) 負荷均衡ポリシーを使用します。この負荷均衡ポリシーのもとでは、クライアント要求は、デフォルトで、クラスタ内のサーバーインスタンスに一律に分配されます。たとえば、3 ノードクラスタでは、各ノードに 1 のウェイトがあるものと想定します。各ノードは、そのサービスに代わって、クライアントからの要求の 3 分の 1 のサービスを提供します。管理者は、scrgadm(1M) コマンドインタフェースか SunPlex Manager GUI を使って、ウェイトをいつでも変更できます。

sticky サービスには、ordinary sticky と wildcard sticky の 2 種類があります。sticky サービスを使用すると、内部状態メモリーを共有でき (アプリケーションセッション状態)、複数の TCP 接続でアプリケーションレベルの同時セッションが可能です。

ordinary sticky サービスを使用すると、クライアントは、複数の同時 TCP 接続で状態を共有できます。単一ポートを待機しているそのサーバーインスタンスという点で、そのクライアントは sticky であると呼ばれます。クライアントは、インスタンスが起動していてアクセス可能であり、負荷分散ポリシーがサーバーのオンライン時に変更されていなければ、すべての要求が同じサーバーのインスタンスに送られることを保証されます。

たとえば、クライアント上の Web ブラウザは、3 つの異なる TCP 接続を使用して、ポート 80 にある 共有 IP アドレスに接続しますが、これらの接続はサービスでキャッシュされたセッション情報を交換します。

sticky ポリシーを一般化すると、同じインスタンスの背後でセッション情報を交換する複数のスケーラブルサービスにまで及びます。これらのサービスが同じインスタンスの背後でセッション情報を交換する場合、同じノードで異なるポートと通信する複数のサーバーインスタンスという点で、そのクライアントは sticky であると呼ばれます。

たとえば、電子商取引サイトの顧客は、ポート 80 の HTTP を使用して買い物をしますが、購入した製品の支払いをクレジットカードで行うためには、ポート 443 で SSL に切り替えて機密データを送ります。

wildcard sticky サービスは、動的に割り当てられたポート番号を使用しますが、クライアント要求がやはり同じノードに送られるものと想定します。クライアントは、同じ IP アドレスという点で、ポートに対して sticky wildcard です。

このポリシーの例としては、受動モード FTP があります。クライアントは、ポート 21 の FTP サーバーに接続して、動的ポート範囲のリスナーポートサーバーに接続するよう、そのサーバーによって通知されます。この IP アドレスに対する要求はすべて、サーバーが制御情報によってクライアントに通知した、同じノードに転送されます。

これらの各 sticky ポリシーでは、ウェイト設定した (weighted) 負荷均衡ポリシーがデフォルトで有効であるため、クライアントの最初の要求は、負荷均衡によって指定されたインスタンスにリダイレクトされます。インスタンスが実行されているノードとクライアントが関係を確立すると、そのノードがアクセス可能で、負荷分散ポリシーが変更されない限り、今後の要求はそのインスタンスに送られます。

次に、各負荷均衡ポリシーの詳細について説明します。