Sun Cluster 3.1 データサービス (DHCP 編)

Sun Cluster HA for DHCP のインストールと構成

Sun Cluster HA for DHCP のインストールと構成

表 1–1 に、 Sun Cluster HA for DHCP のインストールと構成に必要な作業を示します。指定された順番どおりに、各作業を行ってください。

表 1–1 作業マップ : Sun Cluster HA for DHCP のインストールと構成

作業 

参照先 

インストールを計画する 

Sun Cluster HA for DHCP のインストールと構成の計画

DHCP をインストールして構成する 

DHCP のインストールおよび構成方法

インストールと構成を確認する 

DHCP のインストールおよび構成の確認方法

Sun Cluster HA for DHCP パッケージをインストールする 

scinstall ユーティリティーを使った Sun Cluster HA for DHCP パッケージのインストール方法

Sun Cluster HA for DHCP を登録して構成する 

Sun Cluster HA for DHCP の登録および構成方法

Sun Cluster HA for DHCP のインストールと構成を確認する 

Sun Cluster HA for DHCP のインストールおよび構成の確認方法

Sun Cluster HA for DHCP の障害モニターを理解する 

Sun Cluster HA for DHCP 障害モニターの概要

Sun Cluster HA for DHCP をデバッグする 

Sun Cluster HA for DHCP のデバッグを有効にする方法

Sun Cluster HA for DHCP の概要

Solaris DHCP は、DHCP クライアントに動的 TCP/IP 構成を提供します。Sun Cluster HA for DHCP データサービスは Solaris 8/9 にバンドルされている DHCP ソフトウェアを使用します。DHCP の詳細は、dhcp(4) のマニュアルページを参照してください。

Sun Cluster HA for DHCP データサービスのメカニズムによって、DHCP サービスの順序正しい起動、停止、障害モニター、自動フェイルオーバーを実行できます。次の DHCP コンポーネントは、Sun Cluster HA for DHCP データサービスによって保護されます。

表 1–2 コンポーネントの保護

コンポーネント 

WebSphere MQ Integrator コンポーネントを保護するデータサービス 

DHCP サーバー 

Sun Cluster HA for DHCP 

Sun Cluster HA for DHCP のインストールと構成の計画

ここでは、Sun Cluster HA for DHCP のインストールと構成の計画について説明します。

構成の制限事項


注意 – 注意 –

次の制限事項を守らないと、データサービスの構成がサポートされない場合があります。


ここで示す制限事項を考慮して、Sun Cluster HA for DHCP のインストールと構成の計画を行ってください。ここでは、Sun Cluster HA for DHCP にのみ適用されるソフトウェアとハードウェア構成の制限事項を示します。

すべてのデータサービスに適用される制限事項については、Sun Cluster ご使用にあたって を参照してください。

構成の要件


注意 – 注意 –

次の要件を満たさないと、データサービスの構成がサポートされない場合があります。


ここで示す要件に従って、Sun Cluster HA for DHCP のインストールと構成の計画を行ってください。これらの要件は、Sun Cluster HA for DHCP にのみ適用されます。 Sun Cluster HA for DHCP のインストールと構成を始める前に、次の要件を満たしておく必要があります。


注 –

/etc/inet/dhcpsvc.conf が DHCP サービスのホストとなる Sun Cluster 内の全ノードで整合性が保たれているか、または /etc/inet/dhcpsvc.conf がクラスタファイルシステム上のディレクトリ上にリンクされるようにしてください。



注 –

DHCP 要求への応答に関しては、DHCP ネットワークテーブル用に SUNWbinfiles を使用して、DHCPが最高のパフォーマンスを発揮するようにしてください。


DHCP のインストールと構成

ここでは DHCP をインストールして構成する手順について説明します。

DHCP のインストールおよび構成方法

次の手順で、DHCP をインストールして構成します。

  1. Solaris CD から次のパッケージをインストールします

    • SUNWdhcsu

    • SUNWdhcsb

    • SUNWdhcm

  2. DHCP クラスタファイルシステムをマウントします。必ず、DHCP ネットワークテーブルに対応するクラスタファイルシステムをマウントしてください。


    注 –

    DHCP ネットワークテーブルでフェイルオーバーファイルシステムを使用する場合は、手動でこのファイルシステムをマウントする必要があります。


  3. 必要な DHCP パッチをインストールします。インストールしなければならないパッチのリストについては、構成の要件を参照してください。

  4. 次のコマンドを実行して DHCP を構成します。


    # /usr/sadm/admin/bin/dhcpmgr
    
    • DHCP サーバとして構成」を選択します。

    • テキストファイル」または「バイナリファイル 」を選択します。

    • DHCP ネットワークテーブルのパスを入力します。

    • ホストレコードの保管に使用するネームサービスを選択します。

    • リース期間」とクライアントがリースを更新できるかどうかを選択します。

    • 使用する場合は、このサーバーの DHCP クライアント用 DNS 構成を指定します。

    • IP アドレスを提供するネットワークとネットワークマスクを追加します。

    • ネットワークタイプ」 として「ローカルエリア (LAN)」を選択します。

    • 使用する場合は、このサーバーの DHCP クライアント用 NIS 構成を指定します。

    • 使用する場合は、このサーバーの DHCP クライアント用 NIS+ 構成を指定します。

    • アドレスとマクロを作成します。

  5. /etc/inet/dhcpsvc.conf を確認します。次のパラメタが定義されていなければなりません。

    • DAEMON_ENABLED はつねに True です。

    • PATH はクラスタファイルシステムを示します。

    • RUN_MODE はつねに SERVER です。

    • RESOURCE SUNWbinfiles または SUNWfiles のどちらかに設定します。

  6. /etc/inet/dhcpsvc.confの整合性を確認 – DHCP サービスのホストとなる Sun Cluster 内の全ノードにわたって整合性を保つ必要があります。

    2 とおりの実現方法があります。

    • /etc/inet/dhcpsvc.conf を Sun Cluster 内の全ノードにコピーします。

    • 編集済みの dhcpsvc.conf をクラスタファイルシステムに移動し、クラスタファイルシステム内の dhcpsvc.conf に対して /etc/inet/dhcpsvc.conf からシンボリックリンクを作成します。

  7. 全ノードで DHCP が停止していることを確認します


    # /etc/rc2.d/K21dhcp stop
    
  8. 全ノードでブート時の DHCP の起動を無効にします


    # rm /etc/rc3.d/S34dhcp
    

DHCP のインストー ルと構成の確認

ここでは、 インストールと構成を確認する手順について説明します。

DHCP のインストールおよび構成の確認方法

次の手順でインストールと構成を確認します。データサービスをまだインストールしていないため、この手順ではアプリケーションの可用性が高いかどうかを確認することはできません。

  1. /etc/inet/dhcpsvc.conf を確認します。

    要件に基づいて各パラメタが設定されているかどうかを確認します。

    • SERVER_MODE

    • PATH

    • DAEMON_ENABLED

  2. Sun Cluster 内の全ノードにわたって /etc/inet/dhcpsvc.conf が矛盾していないかどうかを確認します。

  3. ブート時の DHCP の起動が無効になっていることを確認します。

Sun Cluster HA for DHCP パッケージのインストール

Sun Cluster の初期インストール時に Sun Cluster HA for DHCP パッケージをインストールしていない場合は、次の手順でパッケージをインストールします。この手順は、Sun Cluster HA for DHCP パッケージをインストールするクラスタノードごとに行なってください。この手順を実行するには、Sun Cluster Agents CD-ROM が必要です。

複数のデータサービスを同時にインストールする場合は、『Sun Cluster 3.1 10/03 ソフトウェアのインストール』の「ソフトウェアのインストール」の手順を実行してください。

以下のインストールツールのどちらかを使って、Sun Cluster HA for DHCP パッケージをインストールします。


注 –

Sun Cluster 3.1 Data Services 10/03 以前のリリースでは、Web Start プログラムは使用できません


Web Start プログラムを使った Sun Cluster HA for DHCP パッケージのインストール方法

Web Start プログラムは、コマンド行インタフェース (CLI) またはグラフィカルユーザーインタフェース (GUI) を使って実行できます。 CLI と GUI の命令の内容とシーケンスは類似しています。Web Start プログラムの詳細は、installer(1M) のマニュアルページを参照してください。

  1. Sun Cluster HA for DHCP パッケージをインストールするクラスタノードで、スーパーユーザーになります。

  2. (省略可能) GUI を使って Web Start プログラムを実行する場合は、DISPLAY 環境変数が設定されていることを確認してください。

  3. Sun Cluster Agents CD-ROM を CD-ROM ドライブに挿入します。

    ボリューム管理デーモン vold(1M) が実行されており、CD-ROM デバイスを管理するように構成されている場合は、CD-ROM は自動的に /cdrom/scdataservices_3_1_vb ディレクトリにマウントされます。

  4. CD-ROM の Sun Cluster HA for DHCP コンポーネントディレクトリに移動します。

    Sun Cluster HA for DHCP データサービス向け Web Start プログラムは、このディレクトリにあります。


    # cd /cdrom/scdataservices_3_1_vb/components/SunCluster_HA_DHCP_3.1
    
  5. Web Start プログラムを開始します。


    # ./installer
    
  6. プロンプトが表示された後、インストールの種類を選択します。

    • C ロケールだけをインストールする場合は、一般を選択します。

    • 他のロケールをインストールする場合は、カスタムを選択します。

  7. 画面の指示に従い、Sun Cluster HA for DHCP パッケージをノードにインストールします。

    インストールの完了後、Web Start プログラムはインストールの概要を提供します。この概要によって、インストール中に Web Start プログラムによって作成されたログを参照できます。これらのログは、/var/sadm/install/logs ディレクトリにあります。

  8. Web Start プログラムを終了します。

  9. CD-ROM ドライブからの Sun Cluster Agents CD-ROM の読み込みを解除します。

    1. CD-ROM が使用されていないことを確認するために、CD-ROM 以外の場所にあるディレクトリに移動します。

    2. CD-ROM を取り出します。


      # eject cdrom
      

scinstall ユーティリティーを使った Sun Cluster HA for DHCP パッケージのインストール方法

この手順で、scinstall ユーティリティーを使って、Sun Cluster HA for DHCP パッケージをインストールします。この作業には、Sun Cluster Agents CD-ROM が必要です。この手順は、Sun Cluster の初期インストール時にデータサービスパッケージをインストールしていない場合を想定しています。

Sun Cluster のインストール時に Sun Cluster HA for DHCP パッケージをインストールした場合は、Sun Cluster HA for DHCP の登録と構成 へ進んでください。

それ以外の場合は、次の手順で、Sun Cluster HA for DHCP パッケージをインストールします。Sun Cluster HA for DHCP を実行できるすべてのノードで、この作業を行なう必要があります。

  1. CD-ROM ドライブに Sun Cluster Agents CD-ROM を挿入します。

  2. オプションは指定せずに、scinstall ユーティリティーを実行します。

    scinstall ユーティリティーが対話型モードで起動します。

  3. メニューオプション「新しいデータサービスのサポートをこのクラスタノードに追加」を選択します。

    scinstall ユーティリティーにより、ほかの情報を入力するためのプロンプトが表示されます。

  4. Sun Cluster Agents CD-ROM のパスを指定します。

    ユーティリティーはこの CD をデータサービス CD-ROM として示します。

  5. インストールするデータサービスを指定します。

    選択したデータサービスが scinstall ユーティリティーによって示され、この選択内容の確認が求められます。

  6. scinstall ユーティリティーを終了します。

  7. ドライブから CD を取り出します。

Sun Cluster HA for DHCP の登録と構成

ここでは Sun Cluster HA for DHCP の構成手順について説明します。

Sun Cluster HA for DHCP の登録および構成方法

次の手順で、Sun Cluster HA for DHCP をフェイルオーバーデータサービスとして構成します。この手順は、Sun Cluster の初期インストール時にデータサービスパッケージをインストールしている場合を想定しています。

Sun Cluster のインストール時に Sun Cluster HA for DHCP をインストールしていない場合は、scinstall ユーティリティーを使った Sun Cluster HA for DHCP パッケージのインストール方法 へ進んでください。

それ以外の場合は、次の手順で Sun Cluster HA for DHCP データサービスを構成します。

  1. DHCP のホストとなるクラスタノードの 1 つで、スーパーユーザーになります。

  2. SUNW.gds というリソースタイプを登録します。


    # scrgadm -a -t SUNW.gds
    
  3. SUNW.HAStoragePlus というリソースタイプを登録します。


    # scrgadm -a -t SUNW.HAStoragePlus
    
  4. フェイルオーバーリソースグループを作成します。


    # scrgadm -a -g DHCP-failover-resource-group
    
  5. DHCP ディスク記憶装置に対応するリソースを作成します。


    # scrgadm -a -j DHCP-has-resource  \
     -g DHCP-failover-resource-group   \
     -t SUNW.HAStoragePlus  \
     -x FilesystemMountPoints=DHCP- instance-mount-points
    
  6. DHCP 論理ホスト名に対応するリソースを作成します。


    # scrgadm -a -L -j DHCP-lh-resource  \
     -g DHCP-failover-resource-group  \
     -l DHCP-logical-hostname
    
  7. DHCP ディスク記憶装置と 論理ホスト名のリソースが組み込まれたフェイルオーバーリソースグループを有効にします。


    # scswitch -Z -g DHCP-failover-resource-group
    
  8. DHCP コンポーネントを作成して登録します。


    # cd /opt/SUNWscdhc/util
    

    dhcp_config ファイルを編集し、ファイルの中のコメントの記述に従います。


    # These parameters can be customized in (key=value) form
    #        RS - name of the resource for the application
    #        RG - name of the resource group containing RS
    #      PORT - name of any port number, as it's ignored
    #        LH - name of the LogicalHostname SC resource
    #   NETWORK - name of the DHCP Network, however comprised of following
    #               <network>@<nafo or nodename>@<node number>
    #    HAS_RS - name of the DHCP HAStoragePlus SC resource

    次に、IPMP が組み込まれた 2 ノード ( tequila/sunrise) の Sun Cluster 3.1 に対応する DHCP の例を示します。


    RS=dhcp-res
    RG=dhcp-rg
    PORT=23
    LH=dhcp-lh-res
    NETWORK=192.168.100.0@tequila@1/192.168.100.0@sunrise@2
    HAS_RS=dhcp-has-res
    

    dhcp_config の編集後、リソースを登録する必要があります。


    # ./dhcp_register
    
  9. 各 DHCP リソースを有効にします。

    前の手順と同様、DHCP コンポーネントごとにこの手順を繰り返します。


    # scstat 
    

    # scswitch -e -j DHCP-resource
    

Sun Cluster HA for DHCP のインストールと構成の確認

ここでは、データサービスが正しくインストールされて構成されているかどうかを確認する手順について説明します。

Sun Cluster HA for DHCP のインストールおよび構成の確認方法

次の手順で、Sun Cluster HA for DHCP が正しくインストールされ、構成されているかどうかを確認します。

  1. DHCP のホストとなるクラスタノードの 1 つで、スーパーユーザーになります。

  2. すべての DHCP リソースがオンラインになっていることを scstat で確認します。


    # scstat 
    

    オンラインになっていない DHCP リソースごとに、次のように scswitch コマンドを使用します。


    # scswitch -e -j DHCP- resouce
    
  3. scswitch コマンドを実行し、 DHCP リソースグループをほかのクラスタノード (node2 など) に切り替えます。


    # scswitch -z -g DHCP-failover-resource-group -h node2
    

Sun Cluster HA for DHCP 障害モニターの概要

この情報は、Sun Cluster HA for DHCP 障害モニターを理解するうえで役立ちます。ここでは、Sun Cluster HA for DHCP 障害モニターのプローブアルゴリズムまたは機能について説明し、プローブの失敗に関連する条件、メッセージ、回復処理を示します。

障害モニターの概念については、『Sun Cluster 3.1 の概念』を参照してください。

リソースプロパティ

Sun Cluster HA for DHCP 障害モニターでは、リソースタイプ SUNW.gds と同じリソースプロパティを使用します。 使用するリソースプロパティの全リストについては、SUNW.gds(5) のマニュアルページを参照してください。

検証アルゴリズムと機能

Sun Cluster HA for DHCP のデバッグ

Sun Cluster HA for DHCP のデバッグを有効にする方法

ここでは、Sun Cluster HA for DHCP のデバッグを有効にする方法について説明します。

DHCP コンポーネントの DEBUG ファイルは、 /opt/SUNWscdhc/etc にあります。

このファイルを使用すると、Sun Cluster 内の特定ノード上にある DHCP リソースに対して、デバッグを有効にできます。Sun Cluster 全体にわたって、DHCP リソースのデバッグを有効にしなければならない場合は、Sun Cluster 内のすべてのノードでこの手順を繰り返す必要があります。

  1. /etc/syslog.conf を編集します。

    /etc/syslog.conf を編集し、daemon.notice daemon.debug に変更します。


    # grep daemon /etc/syslog.conf
    *.err;kern.debug;daemon.notice;mail.crit        /var/adm/messages
    *.alert;kern.err;daemon.err                     operator
    #

    daemon.notice daemon.debug に変更し、syslogd を再起動します。次に示す grep daemon /etc/syslog.conf コマンドの出力例では、daemon.debug が設定されています。


    # grep daemon /etc/syslog.conf
    *.err;kern.debug;daemon.debug;mail.crit        /var/adm/messages
    *.alert;kern.err;daemon.err                    operator
    #
    # pkill -1 syslogd
    #
  2. /opt/SUNWscdhc/etc/config を編集します。

    /opt/SUNWscdhc/etc/config を編集し、 DEBUG=DEBUG=ALL または DEBUG= resource に変更します。


    # cat /opt/SUNWscdhc/etc/config
    #
    # Copyright 2003 Sun Microsystems, Inc.  All rights reserved.
    # Use is subject to license terms.
    #
    # Usage:
    #       DEBUG=<RESOURCE_NAME> or ALL
    #
    DEBUG=ALL
    #

    注 –

    デバッグを無効にするには、この手順を逆に実行して下さい。