Sun Cluster の概念 (Solaris OS 版)

ディスクパスの監視

現在のリリースの Sun Cluster ソフトウェアはディスクパスの監視 (Disk-Path Monitoring: DPM) をサポートします。 この節では、DPM、DPM デーモン、およびディスクパスを監視するときに使用する管理ツールについての概念的な情報を説明します。 ディスクパスの状態を監視、監視解除、表示する手順については、『Sun Cluster のシステム管理 (Solaris OS 版)』を参照してください。


注 –

DPM は、Sun Cluster 3.1 4/04 ソフトウェア より前にリリースされたバージョンが動作するノードではサポートされません。 ローリングアップグレードが行われているときには DPM コマンドを使用しないでください。 すべてのノードをアップグレードしたら、DPM コマンドを使用する前にこれらのノードをオンラインにする必要があります。


概要

DPM は、二次ディスクパスの可用性を監視することによって、フェイルオーバーおよびスイッチオーバーの全体的な信頼性を向上させます。 リソースを切り替える前には、scdpm コマンドを使用して、そのリソースが使用しているディスクパスの可用性を確認します。 scdpm コマンドのオプションを使用すると、クラスタ内の単一またはすべてのノードへのディスクパスを監視できます。 コマンド行オプションの詳細については、scdpm(1M)のマニュアルページを参照してください。

DPM コンポーネントは SUNWscu パッケージからインストールされます。 SUNWscu パッケージは標準の Sun Cluster インストール手順でインストールされます。 インストールインタフェースの詳細については、scinstall(1M) のマニュアルページを参照してください。 次の表に、DPM コンポーネントのデフォルトのインストール場所を示します。

保存場所 

コンポーネント 

デーモン 

/usr/cluster/lib/sc/scdpmd

コマンド行インタフェース 

/usr/cluster/bin/scdpm

共用ライブラリ 

/user/cluster/lib/libscdpm.so

デーモン状態ファイル (実行時に作成される) 

/var/run/cluster/scdpm.status

マルチスレッド化された DPM デーモンは各ノード上で動作します。 DPM デーモン (scdpmd) はノードの起動時に rc.d スクリプトによって起動されます。 問題が発生した場合、DPM デーモンは pmfd によって管理され、自動的に再起動されます。 以下で、最初の起動時に scdpmd がどのように動作するかについて説明します。


注 –

起動時、各ディスクパスの状態は UNKNOWN に初期化されます。


  1. DPM は、以前の状態ファイルまたは CCR データベースから、ディスクパスとノード名の情報を収集します。 CCR の詳細については、クラスタ構成レポジトリ (CCR)を参照してください。 DPM デーモンの起動後、指定したファイルから監視すべきディスクのリストを読み取るように DPM デーモンに指示できます。

  2. DPM デーモンは通信インタフェースを初期化して、デーモンの外部にあるコンポーネント (コマンド行インタフェースなど) からの要求に応えます。

  3. DPM デーモンは scsi_inquiry コマンドを使用して、監視リストにある各ディスクパスに 10 分ごとに ping を送信します。 各エントリはロックされるため、通信インタフェースは監視中のエントリの内容にアクセスできなくなります。

  4. DPM デーモンは UNIX の syslogd(1M) 機構を通じて、ディスクパスの新しい状態を Sun Cluster Event Framework に通知および記録します。


注 –

DPM デーモンに関連するすべてのエラーは pmfd(1M) によって報告されます。 API のすべての関数は、成功時に 0 を戻し、失敗時に -1 を戻します。


DPM デーモンは、MPxIO、HDLM、PowerPath などのマルチパスドライバを通じて論理パスの可用性を監視します。 このようなマルチパスドライバは物理パスの障害を DPM デーモンから隠すため、DPM デーモンはマルチパスドライバが管理する物理パスを監視できません。

ディスクパスの監視

この節では、クラスタ内のディスクパスを監視するための 2 つの方法について説明します。 1 つめの方法は scdpm コマンドを使用する方法です。 scdpm コマンドを使用すると、クラスタ内のディスクパスの状態を監視、監視解除、または表示できます。 また、scdpm コマンドは障害が発生したディスクのリストを表示したり、1 つのファイルからディスクパスを監視するときにも使用できます。

2 つめの方法は、SunPlex Manager の GUI (Graphical User Interface) を使用してクラスタ内のディスクパスを監視する方法です。 SunPlex Manager は、クラスタ内の監視しているディスクをトポロジビューで表示します。 このトポロジビューは 10 分ごとに更新され、失敗した ping の数が表示されます。 SunPlex Manager の GUI が報告する情報と scdpm(1M) コマンドを組み合わせて使用すると、ディスクパスを管理できます。 SunPlex Manager については、『 Sun Cluster のシステム管理 (Solaris OS 版)』の「グラフィカルユーザーインタフェースによる Sun Cluster の管理」を参照してください。

scdpm コマンドによるディスクパスの監視

scdpm(1M) コマンドが提供する DPM 管理コマンドを使用すると、次の作業を行うことができます。

任意のアクティブなノードから、ディスクパス引数を付けて scdpm(1M) コマンドを発行することによって、そのクラスタ上で DPM 管理作業を実行できます。 ディスクパス引数はノード名とディスク名からなります。 ただし、ノード名は必須ではありません。指定しないと、all が使用されます。 次の表に、ディスクパスの命名規約を示します。


注 –

広域ディスクパス名はクラスタ全体で一貫性があるため、ディスクパス名には広域名を使用することを強くお勧めします。 UNIX ディスクパス名には、クラスタ全体での一貫性がありません。 つまり、あるディスクの UNIX ディスクパスは、クラスタノードによって異なる可能性があります。 たとえば、 あるディスクパス名があるノードでは c1t0d0 、別のノードでは c2t0d0 となっている場合があります。 UNIX ディスクパス名を使用する場合は、scdidadm -L コマンドを使って UNIX ディスクパス名と広域ディスクパス名を対応付けてから DPM コマンドを実行してください。 詳細については、scdidadm(1M) のマニュアルページを参照してください。


表 3–3 ディスクパス名の例

名前型  

ディスクパス名の例  

説明  

広域ディスクパス  

schost-1:/dev/did/dsk/d1

schost-1 ノード上のディスクパス d1

all:d1

クラスタのすべてのノードでのディスクパス d1

UNIX ディスクパス  

schost-1:/dev/rdsk/c0t0d0s0

schost-1 ノード上のディスクパス c0t0d0s0

schost-1:all

schost-1 ノードでのすべてのディスクパス

すべてのディスクパス 

all:all

クラスタのすべてのノードでのすべてのディスクパス 

SunPlex Manager によるディスクパスの監視

SunPlex Manager を使用すると、次のような DPM の基本的な管理作業を実行できます。

SunPlex Manager を使用してディスクパスを管理する手順については、SunPlex Manager のオンラインヘルプを参照してください。