ノードがクラスタに結合されるとき、または、クラスタから切り離されるとき、RGM はコールバックメソッドを使用して、実際のリソース (つまりアプリケーション) を制御できます。
リソースタイプを実装するには、少なくとも、Start メソッドと Stop メソッドが必要です。RGM は、リソースタイプのメソッドプログラムを、適切なノード上で適切な回数だけ呼び出して、リソースグループをオフラインまたはオンラインにします。たとえば、クラスタノードのクラッシュ後、RGM は、そのノードがマスターしているリソースグループを新しいノードに移動します。Start メソッドを実装して、RGM が正常に動作しているホストノード上で各リソースを再起動できるようにする必要があります。
Start メソッドは、ローカルノード上でリソースが起動し、使用可能な状態になるまで終了してはいけません。初期化に時間がかかるリソースタイプでは、その Start メソッドに、十分な長さのタイムアウト値を設定する必要があります。十分なタイムアウトを確保するには、RTR ファイルで Start_timeout プロパティーのデフォルトと最小の値を設定します。
Stop メソッドは、RGM がリソースをオフラインにする状況に合わせて実装する必要があります。たとえば、リソースグループがノード 1 上でオフラインになり、ノード 2 上でもう一度オンラインになると仮定します。リソースグループをオフラインにしている間、RGM は、そのグループ内のリソース上で Stop メソッドを呼び出して、ノード 1 上のすべての活動を停止します。ノード 1 上ですべてのリソースの Stop メソッドが完了したあと、RGM は、ノード 2 上でそのリソースグループを再度オンラインにします。
Stop メソッドは、ローカルノード上でリソースがすべての活動を完全に停止し完全にシャットダウンするまで終了してはいけません。最も安全な Stop メソッドの実装方法は、ローカルノード上でリソースに関連するすべてのプロセスを終了することです。シャットダウンに時間がかかるリソースタイプでは、十分な長さのタイムアウト値をその Stop メソッドに設定する必要があります。Stop_timeout プロパティーは RTR ファイルで設定します。
Stop メソッドが失敗またはタイムアウトすると、リソースグループはエラー状態になり、クラスタ管理者の介入が必要となります。この状態を回避するには、Stop および Monitor_stop メソッドがすべてのエラー状態から回復するようにする必要があります。理想的には、これらのメソッドは 0 (成功) のエラー状態で終了し、ローカルノード上でリソースとそのモニターのすべての活動を正常に停止するべきです。
この節では、Start メソッドと Stop メソッドを使用するか、または、Prenet_start メソッドと Postnet_stop メソッドを使用するかを決定するときのいくつかの注意事項について説明します。使用する適切なメソッドを決定するには、クライアントおよびデータサービスのクライアントサーバー型ネットワークプロトコルについて十分に理解している必要があります。
ネットワークアドレスリソースを使用するサービスでは、論理ホスト名のアドレス構成から始まる特定の順番で、起動手順または停止手順を実行する必要があります。オプションのコールバックメソッド Prenet_start と Postnet_stop を使用してリソースタイプを実装すると、同じリソースグループ内のネットワークアドレスが「起動」に構成される前、または「停止」に構成されたあとに、特別な起動処理または停止処理を行います。
RGM は、データサービスの Prenet_start メソッドを呼び出す前に、ネットワークアドレスを取り付ける (plumb、ただし起動には構成しない) メソッドを呼び出します。RGM は、データサービスの Postnet_stop メソッドを呼び出したあとに、ネットワークアドレスを取り外す (unplumb) メソッドを呼び出します。RGM がリソースグループをオンラインにするときは、次のような順番になります。
ネットワークアドレスを取り付けます。
データサービスの Prenet_start メソッドを呼び出します (存在する場合)。
ネットワークアドレスを起動状態に構成します。
データサービスの Start メソッドを呼び出します (存在する場合)。
RGM がリソースグループをオフラインにするときは、逆の順番になります。
データサービスの Stop メソッドを呼び出します (存在する場合)。
ネットワークアドレスを停止状態に構成します。
データサービスの Postnet_stop メソッドを呼び出します (存在する場合)。
ネットワークアドレスを取り外します。
Start、Stop、Prenet_start、Postnet_stop のうち、どのメソッドを使用するかを決定する際には、まずサーバー側を考慮します。データサービスアプリケーションリソースとネットワークアドレスリソースの両方を持つリソースグループをオンラインにするとき、RGM は、データサービスリソースの Start メソッドを呼び出す前に、ネットワークアドレスを起動状態に構成するメソッドを呼び出します。したがって、データサービスを起動するときにネットワークアドレスが「起動」に構成されている必要がある場合は、Start メソッドを使用してデータサービスを起動します。
同様に、データサービスアプリケーションリソースとネットワークアドレスリソースの両方を持つリソースグループをオフラインにするとき、RGM は、データサービスリソースの Stop メソッドを呼び出したあとに、ネットワークアドレスを停止状態に構成するメソッドを呼び出します。したがって、データサービスを停止するときにネットワークアドレスが「起動」に構成されている必要がある場合は、Stop メソッドを使用してデータサービスを停止します。
たとえば、データサービスを起動または停止するために、データサービスの管理ユーティリティーまたはライブラリを実行しなければならない場合があります。また、クライアントサーバー型ネットワークインタフェースを使用して管理を実行するような管理ユーティリティーまたはライブラリを持っているデータサービスもあります。つまり、管理ユーティリティーがサーバーデーモンを呼び出すので、管理ユーティリティーまたはライブラリを使用するためには、ネットワークアドレスが「起動」に構成されている必要があります。このような場合は、Start メソッドと Stop メソッドを使用します。
データサービスが起動および停止するときにネットワークアドレスが「停止」に構成されている必要がある場合は、Prenet_start メソッドと Postnet_stop メソッドを使用して データサービスを起動および停止します。クラスタ再構成 (SCHA_GIVEOVER 引数を指定した scha_control() または scswitch によるスイッチオーバー) のあとネットワークアドレスとデータサービスのどちらが最初にオンラインになるかによってクライアントソフトウェアの応答が異なるかどうかを考えます。たとえば、クライアントの実装が最小限の再試行を行うだけで、データサービスのポートが利用できないと判断すると、すぐにあきらめる場合もあります。
データサービスを起動するときにネットワークアドレスが「起動」に構成されている必要がない場合、ネットワークインタフェースが「起動」に構成される前に、データサービスを起動します。このようにデータサービスを起動することで、ネットワークアドレスが「起動」に構成されるとすぐに、データサービスはクライアントの要求に応答できます。その結果、クライアントが再試行を停止する可能性も減ります。このような場合は、Start ではなく、Prenet_start メソッドを使用してデータサービスを起動します。
Postnet_stop メソッドを使用した場合、ネットワークアドレスが「停止」に構成されている時点では、データサービスリソースは「起動」のままです。Postnet_stop メソッドを実行するのは、ネットワークアドレスが「停止」に構成されたあとだけです。結果として、データサービスの TCP または UDP のサービスポート (つまり、その RPC プログラム番号) は、常に、ネットワーク上のクライアントから利用できます。ただし、ネットワークアドレスも応答しない場合を除きます。
クラスタに RPC サービスをインストールする場合、サービスはプログラム番号 100141、100142、および 100248 を使用できません。これらの番号は、Sun Cluster デーモン rgmd_receptionist 、fed、および pmfd 用に予約されています。インストールした RPC サービスがこれらのプログラム番号のいずれかを使用する場合は、RPC サービスのプログラム番号を変更します。
Start と Stop メソッドを使用するか、Prenet_start と Postnet_stop メソッドを使用するか、または両方を使用するかを決定するには、サーバーとクライアント両方の要件と動作を考慮に入れる必要があります。
RGM は、3 つの任意のメソッド Init、Fini、Boot を使用し、リソース上で初期化と終了コードを実行できます。
次の条件のいずれかの結果としてリソースが管理下に置かれる場合、RGM は Init メソッドを実行して、1 回だけリソースの初期化を実行します。
リソースが属しているリソースグループを、管理されていない状態から管理されている状態に切り替える。
すでに管理されているリソースグループでリソースが作成される。
次の条件のいずれかの結果としてリソースが管理下から外される場合、RGM は Fini メソッドを実行して、リソース使用後のクリーンアップ処理を実行します。
リソースが属しているリソースグループを、管理されていない状態に切り替える。
管理されているリソースグループからリソースが削除される。
クリーンアップは呼び出し回数に依存しない必要があります。つまり、すでにクリーンアップが行われている場合、Fini は成功で終了する必要があります。
RGM は、新たにクラスタに結合したノード、すなわち起動または再起動したノード上で、Boot メソッドを実行します。
Boot メソッドは、通常、Init と同じ初期化を実行します。この初期化は呼び出し回数に依存しない必要があります。つまり、ローカルノード上ですでにリソースが初期化されている場合、Boot と Init は成功で終了する必要があります。