Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)

高可用性ローカルファイルシステムの有効化

高可用性ローカルファイルシステムを使用すると、出入力負荷が高いデータサービスのパフォーマンスを改善できます。Sun Cluster 環境でローカルファイルシステムを高可用性にするには、HAStoragePlus リソースタイプを使用します。

出入力負荷が高い各 Sun Cluster データサービスの作業手順では、データサービスを構成して HAStoragePlus リソースタイプとともに動作させる方法が説明されています。詳細については、個別の Sun Cluster データサービスのガイドを参照してください。

NFS エクスポートファイルシステム用に HAStoragePlus リソースタイプを設定する手順については、「NFS エクスポートファイルシステム用に HAStoragePlus リソースタイプを設定する」を参照してください。


注 –

HAStoragePlus リソースタイプを使用してルートファイルシステムを高可用性にしないでください。


高可用性ローカルファイルシステムの構成要件

多重ホストディスク上のすべてのファイルシステムは、これらの多重ホストディスクに直接接続されたすべてのホストからアクセス可能である必要があります。この要件を満たすには、次のように、高可用性ローカルファイルシステムを構成します。


注 –

高可用性ローカルファイルシステム用の広域デバイスと、ボリュームマネージャーの併用は、任意に選択できます。


ボリュームマネージャーを使用しないデバイスのデバイス名の形式

ボリュームマネージャーを使用しない場合、基本のストレージデバイスの名前には適切な形式を使用します。使用する形式は、次のように、ストレージデバイスの種類に依存します。

これらの論理名の変数の意味は次のとおりです。

高可用性ローカルファイルシステムの /etc/vfstab のサンプルエントリ

次の例に、高可用性ローカルファイルシステムに使用される広域デバイスの /etc/vfstab ファイルにあるエントリを示します。


例 2–27 ボリュームマネージャーのない広域デバイスの /etc/vfstab にあるエントリ

この例に、ボリュームマネージャーを使用しない物理ディスク上の広域デバイス用の /etc/vfstab ファイルにあるエントリを示します。

/dev/global/dsk/d1s0       /dev/global/rdsk/d1s0
/global/local-fs/nfs  ufs     5  no     logging


例 2–28 Solaris ボリュームマネージャー を使用する広域デバイスの /etc/vfstab にあるエントリ

この例では、Solaris ボリュームマネージャー を使用する広域デバイス用の /etc/vfstab ファイルにあるエントリを示します。

/dev/md/kappa-1/dsk/d0   /dev/md/kappa-1/rdsk/d0
/global/local-fs/nfs ufs     5  no     logging


例 2–29 VxVM を使用する広域デバイス用の /etc/vfstab にあるエントリ

この例では、VxVM を使用する広域デバイス用の /etc/vfstab ファイルにあるエントリを示します。


/dev/vx/dsk/kappa-1/appvol    /dev/vx/rdsk/kappa-1/appvol
/global/local-fs/nfs vxfs     5 no     log

ProcedureNFS エクスポートファイルシステム用に HAStoragePlus リソースタイプを設定する

HAStoragePlus リソースタイプには HAStorage と同じ機能があり、リソースグループとディスクデバイスグループとの間で起動の同期をとります。HAStoragePlus リソースタイプには、ローカルファイルシステムを高可用性にするための機能が追加されています。ローカルファイルシステムの可用性を高めるための背景情報については、「高可用性ローカルファイルシステムの有効化」を参照してください。これら 2 つの機能を両方とも使用するには、HAStoragePlus リソースタイプを設定します。


注 –

次では、UNIX ファイルシステムで HAStoragePlus リソースタイプを使用する方法を説明します。HAStoragePlus リソースタイプを Sun StorEdgeTM QFS ファイルシステムで使用する方法については、Sun StorEdge QFS のマニュアルを参照してください。


次の例では、簡単な NFS サービスを使用して、ローカルにマウントされたディレクトリ /global/local-fs/nfs/export/ からホームディレクトリのデータをエクスポートします。この例では、次の条件を前提にしています。

手順
  1. クラスタメンバー上でスーパーユーザーになります。

  2. HAStoragePlus リソースタイプと SUNW.nfs リソースタイプが登録されているかどうかを判別します。

    次のコマンドは、登録されているリソースタイプのリストを出力します。


    # scrgadm -p | egrep Type
    
  3. 必要に応じて、HAStoragePlus リソースタイプと SUNW.nfs リソースタイプを登録します。


    # scrgadm -a -t SUNW.HAStoragePlus
    # scrgadm -a -t SUNW.nfs
    
  4. フェイルオーバーリソースグループ nfs-rg を作成します。


    # scrgadm -a -g nfs-rg -y PathPrefix=/global/local-fs/nfs
    
  5. タイプ SUNW.LogicalHostname の論理ホストリソースを作成します。


    # scrgadm -a -j nfs-lh-rs -g nfs-rg -L -l log-nfs
    
  6. タイプ HAStoragePlus のリソース nfs-hastp-rs を作成します。


    # scrgadm -a -j nfs-hastp-rs -g nfs-rg -t SUNW.HAStoragePlus \
    -x FilesystemMountPoints=/global/local-fs/nfs \
    -x AffinityOn=True
    

    注 –

    FilesystemMountPoints 拡張プロパティーは、ファイルシステムの 1 つ以上のマウントポイントのリストを指定するために使用できます。このリストは、ローカルファイルシステムと広域ファイルシステムの両方のマウントポイントから構成されます。ブートフラグでのマウントは、広域ファイルシステムの HAStoragePlus によって無視されます。


  7. リソースグループ nfs-rg をクラスタノード上でオンラインにします。

    リソースグループがオンラインであるノードは、/global/local-fs/nfs ファイルシステムの基本となる広域デバイスパーティションの主ノードになります。次に、ファイルシステム /global/local-fs/nfs は当該ノード上にローカルにマウントされます。


    # scswitch -Z -g nfs-rg
    
  8. タイプ SUNW.nfs のリソース nfs-rs を作成して、リソース nfs-hastp-rs へのリソース依存関係を指定します。

    ファイル dfstab.nfs-rs/global/local-fs/nfs/SUNW.nfs に作成される必要があります。


    # scrgadm -a -g nfs-rg -j nfs-rs -t SUNW.nfs \
    -y Resource_dependencies=nfs-hastp-rs
    

    注 –

    nfs-rs リソースに依存関係を設定する前に、nfs-hastp-rs リソースがオンラインである必要があります。


  9. リソースグループ nfs-rg をオフラインにします。


    # scswitch -F -g nfs-rg
    
  10. nfs-rg グループをクラスタノード上でオンラインにします。


    # scswitch -Z -g nfs-rg
    

    注意 – 注意 –

    切り替えは、リソースグループに限定します。デバイスグループは切り替えないでください。デバイスグループを切り替えようとすると、リソースグループとデバイスグループの状態に矛盾が生じ、リソースグループのフェイルオーバーが発生します。


    サービスを新しいノードに移行するときには常に、/global/local-fs/nfs 用のプライマリ入出力パスはオンラインになり、NFS サーバーに配置されます。ファイルシステム /global/local-fs/nfs は NFS サーバーが起動する前にローカルにマウントされます。