Sun Cluster Data Service for SAP ガイド (Solaris OS 版)

Sun Cluster HA for SAP の登録と構成

この節では、Sun Cluster HA for SAP を構成する手順について説明します。

Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティー

「Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティー (セントラルインスタンス)」「Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティー (アプリケーションサーバー)」の拡張プロパティーを使用して、自分のリソースを作成します。リソースを作成するときに、コマンド行の scrgadm -x parameter=value を使用して、拡張プロパティーを構成します。すでに自分のリソースを作成している場合は、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』の第 2 章「データサービスリソースの管理」の手順を使用して、 拡張プロパティーを構成します。拡張プロパティーの中には動的に変更できるものがあります。それ以外の拡張プロパティーは、リソースを作成するか無効にするときにしか更新できません。そのプロパティーをいつ変更できるかについては、説明欄の「調整 : 」を参照してください。すべての Sun Cluster プロパティーについての詳細は、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』の付録 A「標準プロパティー」を参照してください。

Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティー (セントラルインスタンス)

SAP の構成拡張プロパティーは次のとおりです。

SAPSID

SAP システム ID すなわち SID

初期値: なし

調整:無効時

Ci_instance_id

2 桁の SAP システム番号

初期値: 00

調整:無効時

Ci_services_string

セントラルインスタンスサービスのリスト

初期値: DVEBMGS

調整:無効時

SAP 開始拡張プロパティーは次のとおりです。

Ci_start_retry_interval

セントラルインスタンスを起動する前にデータベースとの接続を試みる間隔 (秒単位)

初期値: 30

調整:無効時

Ci_startup_script

SIDadm ホームディレクトリにおけるこのインスタンスの SAP 起動スクリプトの名前

初期値: なし

調整:無効時

SAP 停止拡張プロパティーは次のとおりです。

Stop_sap_pct

stop-timeout 変数の割合がこの値に達すると、SAP プロセスが停止されます。プロセスの停止には SAP 停止スクリプトが使用されます。その後で、Process Monitor Facility (PMF) が呼び出されてプロセスが停止され、終了されます。

初期値: 95

調整:無効時

Ci_shutdown_script

SIDadm ホームディレクトリにおけるこのインスタンスの SAP 停止スクリプトの名前

初期値: なし

調整:無効時

プローブ拡張プロパティーは次のとおりです。

Message_server_name

SAP Message Server の名前

初期値: sapms SAPSID

調整:無効時

Lgtst_ms_with_logicalhostname

SAP lgtst ユーティリティーで SAP Message Server を検査する方法です。lgtst ユーティリティーでは、SAP Message Server の場所としてホスト名 (IP アドレス) が必要です。このホスト名は、Sun Cluster の論理ホスト名またはローカルホスト (ループバック) 名です。このリソースプロパティーを TRUE に設定した場合は、論理ホスト名を使用します。それ以外の場合は、ローカルホスト名を使用します。

初期値: TRUE

調整: 任意の時点

Check_ms_retry

SAP Message Server の検査に何回失敗したら、これを完全な失敗として報告し、リソースグループマネージャー (RGM) を起動するか。

初期値: 2

調整:無効時

Probe_timeout

検証のタイムアウト値 (秒)。

初期値: 120

調整: 任意の時点

Monitor_retry_count

障害モニターに許されている PMF 再起動の回数

初期値: 4

調整: 任意の時点

Monitor_retry_interval

障害モニターを再起動する間隔 (分単位)

初期値: 2

調整: 任意の時点

開発システム拡張プロパティーは次のとおりです。

Shutdown_dev

RGM に、セントラルインスタンスを起動する前に開発システムを停止させるかどうか。

初期値: FALSE

調整:無効時

Dev_sapsid

開発システムの SAP システム名。Sun Cluster HA for SAP では、Shutdown_devTRUE に設定された場合、このプロパティーが必要です。

初期値: なし

調整:無効時

Dev_shutdown_script

開発システムの停止に使用されるスクリプト。Shutdown_devTRUE を設定する場合、Sun Cluster HA for SAP ではこのプロパティーが必要です。

初期値: なし

調整:無効時

Dev_stop_pct

起動タイムアウトの割合がどのくらいになったら、Sun Cluster HA for SAP が開発システムをシャットダウンしてセントラルインスタンスを起動するか。

初期値: 20

調整:無効時

Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティー (アプリケーションサーバー)

SAP の構成拡張プロパティーは次のとおりです。

SAPSID

アプリケーションサーバーの SAP システム名または SAPSID

初期値: なし

調整:無効時

As_instance_id

アプリケーションサーバーの 2 桁の SAP システム番号

初期値: なし

調整:無効時

As_services_string

アプリケーションサーバーサービスのリスト

初期値: D

調整:無効時

SAP 開始拡張プロパティーは次のとおりです。

As_db_retry_interval

アプリケーションサーバーを起動する前にデータベースとの接続を試みる間隔 (秒単位)

初期値: 30

調整:無効時

As_startup_script

アプリケーションサーバーの SAP 起動スクリプトの名前

初期値: なし

調整:無効時

SAP 停止拡張プロパティーは次のとおりです。

Stop_sap_pct

stop-timeout 変数の割合がこの値に達すると、SAP プロセスが停止されます。プロセスの停止には SAP 停止スクリプトが使用されます。その後で、Process Monitor Facility (PMF) が呼び出されてプロセスが停止され、終了されます。

初期値: 95

調整:無効時

As_shutdown_script

アプリケーションサーバーの SAP 停止スクリプトの名前

初期値: なし

調整:無効時

プローブ拡張プロパティーは次のとおりです。

Probe_timeout

検証のタイムアウト値 (秒)。

初期値: 60

調整: 任意の時点

Monitor_retry_count

この検証の間に障害モニターが実行可能な PMF 再起動の回数

初期値: 4

調整: 任意の時点

Monitor_retry_interval

障害モニターを再起動する間隔 (分単位)

初期値: 2

調整: 任意の時点

ProcedureSun Cluster HA for SAP の登録と構成を行う (セントラルインスタンス)

次の手順で、セントラルインスタンスを指定して Sun Cluster HA for SAP を構成します。

手順
  1. コアインスタンスを収容するクラスタのノードの 1 つでスーパーユーザーになります。

  2. セントラルインスタンスのリソースタイプを登録します。


    # scrgadm -a -t SUNW.sap_ci | SUNW.sap_ci_v2
    
  3. セントラルインスタンスリソースグループに HAStoragePlus リソースを追加します。


    # scrgadm -a -t SUNW.HAStoragePlus
    # scrgadm -a -j ci-storage-resource \
    -g sap-ci-resource-group \
    -t SUNW.HAStoragePlus -x filesystemmountpoints=mountpoint, ... | 

    HAStoragePlus リソースを設定する方法についての詳細は、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』「高可用性ローカルファイルシステムの有効化」を参照してください。

  4. セントラルインスタンスストレージリソースを有効にします。


    # scswitch -e -j ci-storage-resource
    
  5. このフェイルオーバーリソースグループの中に SAP セントラルインスタンスリソースを作成します。


    # scrgadm -a -j sap-ci-resource \
    -g sap-ci-resource-group\
    -t SUNW.sap_ci | SUNW.sap_ci_v2
    -x SAPSID=SAPSID -x Ci_instance_id=ci-instance-id \
    -x Ci_startup_script=ci-startup-script \
    -x Ci_shutdown_script=ci-shutdown-script \
    -y resource_dependencies=ci-storage-resource
    

    拡張プロパティーについては、「Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティー」を参照してください。

  6. SAP セントラルインスタンスリソースが含まれているフェイルオーバーリソースグループを有効にします。


    # scswitch -Z -g sap-ci-resource-group
    

    セントラルインスタンスリソースが開発システムを停止するように構成すると、次のようなコンソールメッセージが表示されます。


    ERROR  : SAPSYSTEMNAME not set
    Please check environment and restart

    このメッセージは、開発システムがインストールされていないノードでセントラルインスタンスが起動したときに表示されます。セントラルインスタンスの実行を指示するものではありません。SAP がこのメッセージを表示しても、無視してかまいません。

次の手順

「Sun Cluster HA for SAP をフェイルオーバーデータサービスとして登録して構成する」または「スケーラブルデータサービスとして Sun Cluster HA for SAP を登録して構成する」に進みます。

ProcedureSun Cluster HA for SAP をフェイルオーバーデータサービスとして登録して構成する

次の手順に従って、Sun Cluster HA for SAP をフェイルオーバーデータサービスとして構成します。

手順
  1. アプリケーションサーバーを格納するクラスタノードの 1 つでスーパーユーザーになります。

  2. フェイルオーバーアプリケーションサーバーのリソースタイプを登録します。


    # scrgadm -a -t SUNW.sap_as | SUNW.sap_as_v2
    
  3. フェイルオーバーアプリケーションサーバーリソースグループに HAStoragePlus リソースを追加します。


    # scrgadm -a -t SUNW.HAStoragePlus
    # scrgadm -a -j sap-as-storage-resource -g sap-as-fo-resource-group \
    -t SUNW.HAStoragePlus \
    -x filesystemmountpoints=mountpoint, ...
    

    HAStoragePlus リソースを設定する方法についての詳細は、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』「高可用性ローカルファイルシステムの有効化」を参照してください。

  4. フェイルオーバーアプリケーションサーバーストレージリソースを有効にします。


    # scswitch -e -j sap-as-storage-resource
    
  5. SAP アプリケーションサーバーリソースをそのフェイルオーバーリソースグループに作成します。


    # scrgadm -a -j sap-as-resource \
    -g sap-as-fo-resource-group \
    -t SUNW.sap_as | SUNW.sap_as_v2
    -x SAPSID=SAPSID -x As_instance_id=as-instance-id \
    -x As_startup_script=as-startup-script \
    -x As_shutdown_script=as-shutdown-script \
    -y resource_dependencies=sap-as-storage-resource
    

    拡張プロパティーについては、「Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティー」を参照してください。

  6. SAP アプリケーションサーバーリソースが含まれているフェイルオーバーリソースグループを有効にします。


    # scswitch -Z -g sap-as-fo-resource-group
    
次の手順

「Sun Cluster HA for SAP のインストール、構成、セントラルインスタンスを確認する」に進みます。

Procedureスケーラブルデータサービスとして Sun Cluster HA for SAP を登録して構成する

次の手順に従って、Sun Cluster HA for SAP をスケーラブルデータサービスとして構成します。

手順
  1. アプリケーションサーバーを格納するクラスタノードの 1 つでスーパーユーザーになります。

  2. アプリケーションサーバー用のスケーラブルリソースグループを作成します。


    # scrgadm -a -g sap-as-sa-appinstanceid-resource-group \
    -y Maximum_primaries=value \
    -y Desired_primaries=value
    

    注 –

    SAP ログオングループがアプリケーションサーバーの負荷を分散させるため、スケーラブルデータサービスとしての Sun Cluster HA for SAP は、共用アドレスを使用しません。



    注 –

    このスケーラブルアプリケーションサーバーリソースグループの SUNW.RGOffload リソースタイプを使用してアプリケーションサーバーの負荷分散を行なう場合は、Desired_primaries=0 を指定します。RGOffload リソースタイプの使用についての詳細は、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』「重要ではないリソースグループをオフロードすることによるノードリソースの解放」を参照してください。


  3. スケーラブルアプリケーションサーバーのリソースタイプを登録します。


    # scrgadm -a -t SUNW.sap_as_v2
    
  4. フェイルオーバーアプリケーションサーバーリソースグループに HAStoragePlus リソースを追加します。


    # scrgadm -a -t SUNW.HAStoragePlus 
    # scrgadm -a -j sap-as-storage-resource -g \
    -g sap-as-sa-appinstanceid-resource-group \
    -t SUNW.HAStoragePlus \
    -x filesystemmountpoints=mountpoint, ... \

    HAStoragePlus リソースを設定する方法についての詳細は、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』「高可用性ローカルファイルシステムの有効化」を参照してください。

  5. フェイルオーバーアプリケーションサーバーストレージリソースを有効にします。


    # scswitch -e -j sap-as-storage-resource
    
  6. このスケーラブルリソースグループの中に SAP アプリケーションサーバーリソースを作成します。


    # scrgadm -a -j sap-as-resource \
    -g sap-as-sa-appinstanceid-resource-group \
    -t SUNW.sap_as_v2 \
    -x SAPSID=SAPSID  \
    -x As_instance_id=as-instance-id \
    -x As_startup_script=as-startup-script \
    -x As_shutdown_script=as-shutdown-script \
    -y resource_dependencies=sap-as-storage-resource
    

    拡張プロパティーについては、「Sun Cluster HA for SAP 拡張プロパティー」を参照してください。

  7. SAP アプリケーションサーバーリソースが含まれているスケーラブルリソースグループを有効にします。

    • このアプリケーションサーバーで RGOffload リソースタイプを使用しない場合は、次のコマンドを実行します。


      # scswitch -Z -g sap-as-sa-appinstanceid-resource-group
      
    • このアプリケーションサーバーで RGOffload リソースタイプを使用する場合は、次のコマンドを実行します。


      # scswitch -z -h node1, node2 -g sap-as-sa-appinstanceid-resource-group
      

    注 –

    このアプリケーションサーバーで SUNW.RGOffload リソースタイプを使用する場合は、 (-j オプションではなく) -z オプション を使用して、このリソースをどのノードでオンラインにするのかを指定する必要があります。


次の手順

「Sun Cluster HA for SAP のインストール、構成、セントラルインスタンスを確認する」に進みます。