ここでは、Sun Cluster HA for SAP Web Application Server のインストールと構成の計画について説明します。
作業を始める前に、SAP のマニュアルを参照して、Sun Cluster のマニュアルには記載されていない構成に関する制限事項および要件または Sun Cluster ソフトウェアによる構成に関する制限事項および要件を確認してください。
使用しているリリースの SAP Web Application Server に対応する SAP 注意事項はすべて読んでください。
構成に関する制限事項は、設計上の意思決定のために計画して使用されるものです。これらの制限事項を守らないと、データサービスの構成がサポートされない場合があります。
すべてのデータサービスに適用される制限事項については、Sun Cluster のお使いのリリースに関する文書を http://docs.sun.com で参照してください。次の構成に関する制限事項は、Sun Cluster HA for SAP Web Application Server にのみ該当します。
次の構成に関する制限事項は、Sun Cluster HA for SAP Web Application Server にのみ該当します。
ノード名の最大長は、SAP リリースによって異なります。お使いの SAP のリリースについては、SAP のインストールガイドを参照してください。この制限は、SAP ソフトウェアの制限事項です。
SAP enqueue server リソースとは別のリソースグループになるように、データベースリソースを構成します。
ただし、Oracle をデータベースとして使用しており、かつ、SAP enqueue server リソースと同じリソースグループで Oracle を構成する必要がある場合は、Sun Cluster HA for Oracle の restart_type 拡張プロパティーを RESOURCE_RESTART に設定する必要があります。このプロパティーの設定は、Oracle データベースの障害への応答が Oracle リソースを再起動することであった場合に、Oracle データベースだけが再起動されることを意味します。このプロパティーを RESOURCE_GROUP_RESTART に設定しており、かつ、Oracle データベースの障害への応答が Oracle リソースを再起動することであった場合、そのリソースグループのすべてのリソースが再起動されます。しかし、SAP replica server が構成されており、別のノード上でオンラインである場合、SAP enqueue server はローカルでは再起動できません。したがって、restart_type プロパティーは RESOURCE_RESTART に設定する必要があります。
構成に関する要件は、実行が必要な処理を表します。これらの要件を満たしていないデータサービス構成は、サポートされない場合があります。
すべてのデータサービスに適用される要件については、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』の「Sun Cluster データサービス構成のガイドライン」を参照してください。
次の構成に関する要件は、Sun Cluster HA for SAP Web Application Server にのみ該当します。
SAP message server のリソースタイプの障害モニター検証には、msprot プログラムが必要です。このバイナリは、service.sap.com からダウンロードする必要があります。msprot プログラムの入手および使用については、関連する SAP 注意事項を参照してください。
Java 専用の SAP Web Application Server スタックを使用している場合は、次の要件が該当します。
Sun Cluster HA for SAP Web Application Server データサービスは、SAP J2EE engine を Sun Cluster 内で正しく構成するための構成ファイルと登録スクリプトを提供します。構成ファイルの場所は、 /opt/SUNWscswa/util/ha_sap_j2ee_config です。登録スクリプトの場所は、/opt/SUNWscswa/util/ha_sap_j2ee_register です。このファイルとスクリプトは、Sun Cluster HA for SAP Web Application Server の登録と構成で使用されます。
Sun Cluster HA for SAP Web Application Server は、前の節で指定されている要件を満たす構成をサポートしています。
次に、Sun Cluster HA for SAP Web Application Server のすべての構成の要件を示します。
SAP enqueue server は、フェイルオーバーリソースとして構成します。
SAP replica server は、フェイルオーバーリソースとして構成します。
SAP message server は、フェイルオーバーリソースとして構成します。
SAP web application server コンポーネントは、フェイルオーバーとしてもスケーラブルデータサービスリソースとしても構成できます。
SAP J2EE engine は、フェイルオーバーとしてもスケーラブルデータサービスリソースとしても構成できます。
SAP enqueue server と SAP message server は、SAP central services リソースグループ内のリソースとします。SAP replica server は、SAP replica server リソースグループのリソースとします。
SAP replica server リソースは、SAP enqueue server リソースに依存するように構成します。この依存関係により、SAP enqueue server がオンラインになるまで、SAP replica server は起動しようとしません。
SAP central services リソースグループは、SAP replica server リソースグループと弱い「肯定的」なアフィニティーを持つように構成します。このアフィニティーによって、ハードウェアまたはソフトウェア障害が SAP central services リソースグループを制御するノードで発生した場合、SAP central services リソースグループは、SAP replica server リソースグループが現在実行されているノードにフェイルオーバーします。
SAP central services リソースグループは、SAP replica server リソースグループと強い「否定的」なアフィニティーを持つように構成します。このアフィニティーによって、SAP central services リソースグループがフェイルオーバーすると、SAP central services リソースグループが同じノードでオンラインになる前に、SAP replica server リソースグループは現在このリソースグループが実行されているノードから負荷解除されます。使用可能なノードがある場合は、SAP replica server リソースグループは別のノードで起動されます。
Sun Cluster HA for SAP Web Application Server のサポート構成を次の例に示します。
SAP web application server コンポーネントは、フェイルオーバーリソースとして構成されます。
SAP web application server コンポーネントは、スケーラブルリソースとして構成されます。
この例では、フェイルオーバーリソースとして構成された SAP web application server コンポーネントを含む Sun Cluster HA for SAP Web Application Server の標準構成を示します。
実線のボックスは、フェイルオーバー前のリソースグループの位置を表します。
破線のボックスは、最初のノードの問題によりフェイルオーバーが行われた後のリソースグループの位置を表します。SAP central services リソースグループはフェイルオーバーを行い、SAP replica server リソースグループは結果的に別のノードに移ります。SAP web application server コンポーネントリソースグループもフェイルオーバーを行います。
この例では、スケーラブルリソースとして構成された SAP web application server コンポーネントを含む Sun Cluster HA for SAP Web Application Server の標準構成を示します。
実線のボックスは、フェイルオーバー前のリソースグループの位置を表します。
破線のボックスは、最初のノードの問題によりフェイルオーバーが行われた後のリソースグループの位置を表します。前の例のように、SAP central services リソースグループはフェイルオーバーを行い、SAP replica server リソースグループは結果的に別のノードに移ります。SAP web application server コンポーネントリソースグループはスケーラブルなので、フェイルオーバーは行いませんが、別のノードの対応リソースグループが継続的に実行されます。
次の考慮事項は、Sun Cluster HA for SAP Web Application Server のインストールと構成に影響を与えます。
SAP enqueue server と SAP replica server は、別のクラスタノードで実行されます。したがって、SAP アプリケーションファイル (バイナリファイル、構成ファイル、およびパラメータファイル) は、広域ファイルシステムまたはローカルファイルシステムのどちらにもインストールできます。ただし、これらの各アプリケーションのアプリケーションファイルは、これらのアプリケーションが実行されているノードから常にアクセス可能でなければなりません。
『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』の「Sun Cluster データサービス構成のガイドライン」を参照してください。この節では、SAP バイナリをローカルファイルシステムまたはクラスタファイルシステムに配置するメリットとデメリットを詳述します。
SAP enqueue server のシステムプロパティー Retry_count のデフォルト値は 0 です。この値を設定すると、最初の障害の発生後、SAP enqueue server は確実にフェイルオーバーを行います。複製の実行中は、エンキューロックが解除されるため、このデフォルト値を変更しないでください。複製の動作中にエンキューサーバーを再起動すると、同じノードであってもロックは無効になります。
SAP web application server コンポーネントのリソースグループは、フェイルオーバーリソースグループまたはスケーラブルリソースグループとして構成できます。SAP web application server コンポーネントがスケーラブルリソースグループになるように構成されている場合、「スケーラブル SAP Web Application Server コンポーネントのインストールを変更するには」で説明するように、 SAP web application server コンポーネントがインストールされている各ノードでは、ディレクトリ /usr/sap/ SAPSID/INSTANCE_NAME がローカルに存在する必要があります。SAPSID は SAP システムの ID、INSTANCE_NAME は SAP web application server インスタンスの名前を表します。
インストールおよび構成プロセスでは、アプリケーションを実行するすべてのノードにコピーする必要があるので、変更したシステムファイルを追跡します。
新しいインストールごとに、SAP の起動スクリプトと停止スクリプトは上書きされます。したがって、新しいインストールごとに、これらのスクリプトを必要に応じて修正する必要があります。
Sun Cluster HA for SAP Web Application Server のインストールと構成を計画するときには、この項の質問を使用します。これらの質問に対する答えは、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』の「構成のワークシート」に記載されているデータサービスワークシートに記入します。
アプリケーションの SAP web application server コンポーネントをフェイルオーバーリソースまたはスケーラブルリソースとして実行しますか。
SAP J2EE engine をフェイルオーバーリソースまたはスケーラブルリソースとして実行しますか。
データサービスへアクセスするクライアントの論理ホスト名は何ですか。
システム構成ファイルはどこに置きますか。
SAP バイナリをローカルファイルシステムに置く場合とクラスタファイルシステムに置く場合のメリットとデメリットについては、『Sun Cluster データサービスの計画と管理 (Solaris OS 版)』の「Sun Cluster データサービス構成のガイドライン」を参照してください。