この節では、Sun Cluster Geographic Edition 製品内で Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 による複製を構成する前に行う必要がある当初の作業について説明します。
この節では、 2 つのクラスタ cluster-paris と cluster-newyork からなるパートナーシップに対して構成される、保護グループ avspg の例を使用します。apprg1 リソースグループ内にカプセル化されたアプリケーションは、avspg 保護グループによって保護されます。アプリケーションデータは、avsdg デバイスグループ内のボリュームに保持されます。これらのボリュームは、Solaris ボリュームマネージャーボリューム、VERITAS Volume Manager ボリューム、または raw デバイスボリュームのいずれかです。
リソースグループ apprg1 とデバイスグループ avsdg は、cluster-paris と cluster-newyork のどちらのクラスタ上にも存在します。avspg によるアプリケーションデータの保護は、cluster-paris と cluster-newyork 間のデータ複製を通して行われます。
デバイスグループを個別に複製するには、論理ホストがローカルクラスタ上とパートナークラスタ上に 1 つずつ必要です。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアでは、クラスタタグ内でスラッシュ (/) を使用することはできません。raw DID デバイスを使用している場合、あらかじめ定義された DID デバイスグループ名 (dsk/s3 など) を使用することはできません。
raw デバイスグループに DID を使用する場合は、次の作業を行なってください。
Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 ボリュームセットを定義するには、次のものを決定する必要があります。
複製対象のデータボリューム。たとえば、cluster-paris クラスタ上の avsdg 内の vol-data-paris、cluster-newyork クラスタ上の avsdg 内の vol-data-newyork などがあります。
複製に必要なビットマップボリューム。たとえば、cluster-paris クラスタ上の avsdg 内の vol-bitmap-paris、cluster-newyork クラスタ上の avsdg 内の vol-bitmap-newyork などがあります。
デバイスグループ avsdg の複製専用の論理ホスト。たとえば、cluster-paris 上の論理ホスト logicalhost-paris-1、cluster-newyork 上の論理ホスト logicalhost-newyork-1 などがあります。
Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 複製に使用する論理ホストは、Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャー論理ホストと同じにすることはできません。論理ホスト名の構成については、「論理ホスト名の構成」を参照してください。
volset ファイルは、保護グループの主クラスタおよび二次クラスタに含まれる全ノード上に /var/cluster/geo/avs/device-group-name-volset.ini という名前で作成されます。たとえば、デバイスグループ avsdg の volset ファイルは、/var/cluster/geo/avs/avsdg-volset.ini です。
次の表では、Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアで処理されるボリュームセットファイルのフィールドについて説明します。ボリュームセットのその他のパラメタ (ディスクキュー、メモリーキューのサイズ、非同期スレッドの数など) は、Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアでは処理されません。これらのパラメタは、Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 コマンドで手動で調整する必要があります。
フィールド |
意味 |
説明 |
---|---|---|
phost |
主ホスト |
主ボリュームが存在するサーバーの論理ホスト。 |
pdev |
主デバイス |
主ボリュームパーティション。必ず完全パス名を指定してください。 |
pbitmap |
主ビットマップ |
主パーティションのビットマップが格納されるボリュームパーティション。必ず完全パス名を指定してください。 |
shost |
二次ホスト |
二次ボリュームが存在するサーバーの論理ホスト。 |
sdev |
二次デバイス |
二次ボリュームパーティション。必ず完全パス名を指定してください。 |
sbitmap |
二次ビットマップ |
二次パーティションのビットマップが格納されるボリュームパーティション。必ず完全パス名を指定してください。 |
ip |
ネットワーク転送プロトコル |
IP を指定します。 |
sync | async |
動作モード |
sync モードでは、二次クラスタ上のボリュームが更新されるまで、入出力操作が完了したとは見なされません。 async モードでは、二次クラスタ上のボリュームが更新される前に、主ホストの入出力操作が完了したと見なされます。 |
g io-groupname |
入出力グループ名 |
入出力グループ名は、文字 g を使用して指定できます。このセットは、主クラスタおよび二次クラスタ両方の上の同じ入出力グループ内に構成する必要があります。 |
C |
C タグ |
ボリューム名からデバイスグループ名が判断できない場合、ローカルデータおよびビットマップボリュームのデバイスグループ名またはリソースタグを指定します。たとえば、/dev/md/avsset/rdsk/vol からは、デバイスグループ名が avsset であることがわかります。また、/dev/vx/rdsk/avsdg/vol からは、デバイスグループ名が avsdg であることがわかります。 |
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアでは、Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 パラメタの値は変更されません。このソフトウェアでは、スイッチオーバーとテイクオーバーの操作中に、ボリュームセットの役割が制御されるだけです。
ボリュームセットファイルの書式については、Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 のマニュアルを参照してください。
あらかじめ定義されている DID デバイスグループから、使用する DID をすべて削除します。
スラッシュを含まない名前を持つ raw デバイスグループにそれらの DID を追加します。
このグループ名をパートナーシップの各クラスタ上に作成します。各クラスタで同じ DID を使用することができます。
デバイスグループ名が必要な場合には、この新しい名前を使用してください。
この手順では、Sun Cluster で Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 ボリュームを構成する例を示します。これらのボリュームは、Solaris ボリュームマネージャーボリューム、VERITAS Volume Manager ボリューム、または raw デバイスボリュームのいずれかです。
ボリュームは、Sun Cluster のデバイスグループレベルでカプセル化されます。Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 ソフトウェアは、このデバイスグループインタフェースを介して、Solaris ボリュームマネージャーディスクセット、VERITAS Volume Manager ディスクグループ、または raw デバイスと対話します。ボリュームのパスは、次の表に示すように、ボリュームタイプによって異なります。
ボリュームタイプ |
パス |
---|---|
Solaris ボリュームマネージャー |
/dev/md/diskset-name /rdsk/d# (# は 1 桁の数字) |
VERITAS Volume Manager |
/dev/vx/rdsk/disk-group-name /volume-name |
raw デバイス |
/dev/did/rdsk/d#s# |
Solaris ボリュームマネージャーまたはディスクグループ avsdg のどちらか、VERITAS Volume Manager、または cluster-paris と cluster-newyork 上の raw デバイスのどちらかを使用し、ディスクセット avsset を作成します。
たとえば、raw デバイスを使用してボリュームを構成する場合は、cluster-paris と cluster-newyork 上の raw デバイスグループ dsk/d3 を選択します。
cluster-paris 上のディスクセットまたはディスクグループ内にボリュームを 2 つ作成します。
システムがロギングモードの場合、Sun StorEdge Availability Suite ソフトウェアはデータボリュームの変更を追跡するため、データボリュームごとに専用のビットマップボリュームを必要とします。
raw デバイスを使用してボリュームを構成する場合は、cluster-paris 上のデバイス /dev/did/rdsk/d3 に、/dev/did/rdsk/d3s3 と /dev/did/rdsk/d3s4 の 2 つのパーティションを作成します。
cluster-newyork 上のディスクセットまたはディスクグループ内にボリュームを 2 つ作成します。
raw デバイスを使用してボリュームを構成する場合は、cluster-paris 上のデバイス /dev/did/rdsk/d3 に、/dev/did/rdsk/d3s5 と /dev/did/rdsk/d3s6 の 2 つのパーティションを作成します。
Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 ボリュームセットは、次の 2 つの方法で有効にできます。
デバイスグループを保護グループ avspg に追加する際に、自動的に有効にする
Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 ソフトウェアを最初に設定するときは、この方法で device-group-name-volset.ini ファイルを準備します。ファイルの準備が完了し、デバイスグループを保護グループに追加するとき、デバイスグループの Enable_volume_set プロパティーを True に設定します。device-group-name-volset.ini ファイル内の情報が Sun StorEdge Availability Suite コマンドに読み込まれ、自動的にデバイスグループが有効になります。
デバイスグループを保護グループ avspg に追加したあと、手動で有効にする
すでに構成が完了しているシステム上にボリュームを作成するときは、この方法でボリュームセットを有効にします。
この例では、主クラスタを cluster-paris、Solaris ボリュームマネージャーディスクセットを含むデバイスグループを avsset と想定します。
この例では、/var/cluster/geo/avs/avsset-volset.ini に次のエントリが入っていると想定します。
logicalhost-paris-1 /dev/md/avsset/rdsk/d100 /dev/md/avsset/rdsk/d101 logicalhost-newyork-1 /dev/md/avsset/rdsk/d100 /dev/md/avsset/rdsk/d101 ip async g - C avsset |
avsset-volset.ini ファイルには、次のエントリがあります。
lh-paris-1 は主ホスト。
/dev/md/avsset/rdsk/d100 は主データ。
/dev/md/avsset/rdsk/d101 は主ビットマップ。
lh-newyork-1 は二次ホスト。
/dev/md/avsset/rdsk/d100 は二次データ。
/dev/md/avsset/rdsk/d101 は二次ビットマップ。
ip はプロトコル。
async はモード。
g は G フラグ。
- は IO グループ。
C は C タグ。
avsset はディスクセット。
このサンプル構成ファイルに定義されているボリュームセットは、このファイル内に指定されているビットマップボリュームと論理ホスト名を使用して、cluster-paris の d100 を cluster-newyork の d100 に複製します。
この例では、主クラスタを cluster-paris、VERITAS Volume Manager ディスクグループを含むデバイスグループを avsdg と想定します。
この例では、/var/cluster/geo/avs/avsdg-volset.ini ファイルに次のエントリが入っていると想定します。
logicalhost-paris-1 /dev/vx/rdsk/avsdg/vol-data-paris \ /dev/vx/rdsk/avsdg/vol-bitmap-paris logicalhost-newyork-1 /dev/vx/rdsk/avsdg/vol-data-newyork \ /dev/vx/rdsk/avsdg/vol-bitmap-ny ip async g - C avsdg |
avsdg-volset.ini ファイルには、次のエントリがあります。
lh-paris-1 は主ホスト。
/dev/vx/rdsk/avsdg/vol-data-paris は主データ。
/dev/vx/rdsk/avsdg/vol-bitmap-paris は主ビットマップ。
lh-newyork-1 は二次ホスト。
/dev/vx/rdsk/avsdg/vol-data-newyork は二次データ。
/dev/vx/rdsk/avsdg/vol-bitmap-ny は二次ビットマップ。
ip はプロトコル。
async はモード。
g は G フラグ。
- は IO グループ。
C は C フラグ。
avsdg はデバイスグループ。
このサンプル構成ファイルに定義されているボリュームセットは、cluster-paris の vol-data-paris を cluster-newyork の vol-data-newyork に複製します。このボリュームセットは、ファイル内に指定されているビットマップボリュームと論理ホスト名を使用します。
この例では、主クラスタを cluster-paris、raw デバイスディスクグループ /dev/did/rdsk/d3 を含むデバイスグループの名前を rawdg と想定します。
この例では、/var/cluster/geo/avs/avsdg-volset.ini ファイルに次のエントリが入っていると想定します。
logicalhost-paris-1 /dev/did/rdsk/d3s3 /dev/did/rdsk/d3s4 logicalhost-newyork-1 /dev/did/rdsk/d3s5 /dev/did/rdsk/d3s6 ip async g - C rawdg |
そして、rawdg-volset.ini ファイルには次のエントリがあるとします。
logicalhost-paris-1 は主ホスト。
/dev/did/rdsk/d3s3 は主データ。
/dev/did/rdsk/d3s4 は主ビットマップ。
logicalhost-newyork-1 は二次ホスト。
/dev/did/rdsk/d3s5 は二次データ。
/dev/did/rdsk/d3s6 は二次ビットマップ。
ip はプロトコル。
async はモード。
g は G フラグ。
- は IO グループ。
C は C フラグ。
rawdg はデバイスグループ。
このサンプル構成ファイルに定義されているボリュームセットは、cluster-paris の d3s3 を cluster-newyork のd3s5 に複製します。このボリュームセットは、ファイル内に指定されているビットマップボリュームと論理ホスト名を使用します。
保護グループ avspg にデバイスグループを追加したところで、Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 ボリュームセットを手動で有効にすることができます。
次に、Solaris ボリュームマネージャーボリュームセットを手動で有効にする例を示します。
phys-paris-1# /usr/opt/SUNWesm/sbin/sndradm -e logicalhost-paris-1 \ /dev/md/avsset/rdsk/d100 /dev/md/avsset/rdsk/d101 \ logicalhost-newyork-1 /dev/md/avsset/rdsk/d100 \ /dev/md/avsset/rdsk/d101 ip async C avsset |
次に、VERITAS Volume Manager ボリュームセットを手動で有効にする例を示します。
phys-paris-1# /usr/opt/SUNWesm/sbin/sndradm -e logicalhost-paris-1 /dev/vx/rdsk/avsdg/vol-data-paris /dev/vx/rdsk/avsdg/vol-bitmap-paris logicalhost-newyork-1 /dev/vx/rdsk/avsdg/vol-data-newyork /dev/vx/rdsk/avsdg/vol-bitmap-newyork ip async C avsdg |
次に、raw デバイスボリュームセットを手動で有効にする例を示します。
phys-paris-1# /usr/opt/SUNWesm/sbin/sndradm -e logicalhost-paris-1 /dev/did/rdsk/d3s3 /dev/did/rdsk/d3s4 logicalhost-newyork-1 /dev/did/rdsk/d3s5 /dev/did/rdsk/d3s6 ip async C dsk/d3 |
sndradm コマンドの実行に関する情報は、Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 ログファイル /var/opt/SUNWesm/ds.log に出力されます。ボリュームセットを手動で有効にする過程でエラーが発生した場合は、このファイルを参照してください。
Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 ソフトウェアは、Solaris ボリュームマネージャー、VERITAS Volume Manager、および raw デバイスボリュームをサポートします。
複製するボリュームセットを含むデバイスグループが Sun Cluster に登録されていることを確認します。
これらのコマンドについては、scsetup(1M) または scconf(1M) のマニュアルページを参照してください。
VERITAS Volume Manager デバイスグループを使用している場合は、Sun Cluster コマンドの 1 つ (scsetup または scconf) を使用して VERITAS Volume Manager 構成を同期させます。
デバイスグループの構成後、scstat -D コマンドを実行すると、その出力に構成内容が表示されます。
このコマンドの詳細については、scstat(1M) のマニュアルページを参照してください。
cluster-paris と cluster-newyork の両方で、手順 1 〜 3 を繰り返します。
前の手順で作成したボリュームセット vol-data-paris 上に、必要なファイルシステムを作成します。
アプリケーションは、このファイルシステムに書き込みを行います。
マウント位置などの情報を含む /etc/vfstab ファイルにエントリを追加します。
このファイル内の mount at boot フィールドの値は no に設定する必要があります。この値を設定することによって、クラスタの起動時、ファイルシステムは二次クラスタにマウントされないようになります。代わりに、Sun Cluster ソフトウェアと Sun Cluster Geographic Edition フレームワークは、主クラスタ上でアプリケーションがオンラインになる場合に HAStoragePlus リソースを使用してファイルシステムをマウントします。二次クラスタにはデータをマウントしないでください。二次クラスタにデータをマウントすると、主クラスタ上のデータは二次クラスタに複製されなくなります。この方法以外では、主クラスタから二次クラスタへのデータ複製は行われません。
新しいファイルシステムを処理するには、アプリケーションリソースグループ apprg1 に HAStoragePlus リソースを追加します。
このリソースを追加することで、必要なファイルシステムがアプリケーションの起動前に再マウントされます。
HAStoragePlus リソースタイプについての詳細は、『Sun Cluster 3.1 データサービスの計画と管理』を参照してください。
cluster-paris と cluster-newyork の両方で、手順 1 〜 3 を繰り返します。
この例では、リソースグループ apprg1 がすでに存在すると仮定します。
UNIX ファイルシステム (UFS) を作成します。
phys-paris-1# newfs /dev/md/avsset/rdsk/d100 |
/etc/vfstab ファイル内に、次のようにエントリが作成されます。
/dev/md/avsset/dsk/d100 /dev/md/avsset/rdsk/d100 /global/sample ufs 2 no logging |
HAStoragePlus リソースを追加します。
phys-paris-1# scrgadm -a -j rs-hasp -g apprg1 -t SUNW.HAStoragePlus -x FilesystemMountPoints=/global/sample -x AffinityOn=TRUE |
この例では、apprg1 リソースグループがすでに存在すると仮定します。
UNIX ファイルシステム (UFS) を作成します。
phys-paris-1# newfs /dev/vx/rdsk/avsdg/vol-data-paris |
/etc/vfstab ファイル内に、次のようにエントリが作成されます。
/dev/vx/dsk/avsdg/vol-data-paris /dev/vx/rdsk/avsdg/vol-data-paris /global/sample ufs 2 no logging |
HAStoragePlus リソースを追加します。
phys-paris-1# scrgadm -a -j rs-hasp -g apprg1 -t SUNW.HAStoragePlus -x FilesystemMountPoints=/global/sample -x AffinityOn=TRUE |
この例では、apprg1 リソースグループがすでに存在すると仮定します。
UNIX ファイルシステム (UFS) を作成します。
phys-paris-1# newfs /dev/did/rdsk/d3s3 |
/etc/vfstab ファイル内に、次のようにエントリが作成されます。
/dev/did/dsk/d3s3 /dev/did/rdsk/d3s3 /global/sample ufs 2 no logging |
HAStoragePlus リソースを追加します。
phys-paris-1# scrgadm -a -j rs-hasp -g apprg1 -t SUNW.HAStoragePlus -x FilesystemMountPoints=/global/sample -x AffinityOn=TRUE |