dbx コマンドによるデバッグ

機械命令レベルでのステップ実行とトレース

機械命令レベルの各コマンドは、対応するソースレベルのコマンドと同じように動作します。ただし、動作の単位はソース行ではなく、単一の命令です。

機械命令レベルでステップ実行する

ある機械命令から次の機械命令に 1 つだけステップ実行するには、nexti または stepi コマンドを使用します。

nextistepi は、それぞれ対応するソースコードレベルのコマンドと同じように動作します。nexti は関数を実行して呼び出し側に戻り、stepi は次の命令から呼び出された関数に入ります (呼び出された関数の最初の命令で停止します)。コマンドの書式も同じです。詳細は nextstep の説明を参照してください。

nextistepi からの出力は、対応するソースレベルのコマンドと 2 つの点で異なります。まず、プログラムが停止したアドレス (ソースコードの行番号ではない) が出力に含まれるという点。2 番目は、デフォルトの出力に逆アセンブルされた命令が示されるという点です。

例を示します。


(dbx) func
hand::ungrasp
(dbx) nexti
ungrasp +0x18:  call support
(dbx)

機械命令レベルでトレースする

機械命令レベルでのトレースは、ソースコードレベルでのトレースと同じように行われます。ただし、tracei を使用する場合は例外で、実行中のアドレスまたはトレース対象の変数の値がチェックされた場合にだけ、単一の命令が実行されます。tracei は、stepi のような動作を自動的に行います。すなわち、プログラムは 1 度に 1 つの命令だけ進み、関数呼び出しに入ります。

tracei を使用すると、各命令が実行され、アドレスの実行またはトレース中の変数または式の値を dbx が調べている間、プログラムは一瞬停止します。このように tracei の場合、実行速度がかなり低下します。

トレースとそのイベント仕様と修飾子の詳細については、第 5 章「ブレークポイントとトレースの設定」を参照してください。

構文は次のとおりです。


tracei event-specification [modifier]

共通に使用される tracei 書式は次のとおりです。

tracei step

各命令をトレース 

tracei next

各命令をトレースするが、呼び出しを飛び越します。 

tracei at address

指定のコードアドレスをトレース 

SPARC の場合は次のとおりです。


(dbx) tracei next -in main 
(dbx) cont
0x00010814: main+0x0004:  clr     %l0
0x00010818: main+0x0008:  st      %l0, [%fp - 0x8]
0x0001081c: main+0x000c:  call    foo
0x00010820: main+0x0010:  nop     
0x00010824: main+0x0014:  clr     %l0
....
....
(dbx) tracei step -in foo -if glob == 0
(dbx) cont
0x000107dc: foo+0x0004:  mov     0x2, %l1
0x000107e0: foo+0x0008:  sethi   %hi(0x20800), %l0
0x000107e4: foo+0x000c:  or      %l0, 0x1f4, %l0     ! glob
0x000107e8: foo+0x0010:  st      %l1, [%l0]
0x000107ec: foo+0x0014:  ba      foo+0x1c
....
....