Sun Enterprise 10000 SSP 3.5 ユーザーマニュアル

第 10 章 SSP の内部構造

SSP の処理は、一連のデーモンとコマンドによって実行されます。この章では、SSP の仕組みと、SSP 3.5 デーモン、プロセス、コマンド、システムファイルについて説明します。デーモン、コマンド、システムファイルの詳細については、『Sun Enterprise 10000 SSP 3.5 リファレンスマニュアル』を参照してください。

システム起動の流れ

SSP の起動時に発生するイベントを以下に示します。

  1. SSP (モニター、CPU/ディスク、CD-ROM) の電源を入れます。SSP は自動的に起動します。

  2. SSP の起動プロセスでシステムが実行レベル 2 に入ると、/etc/rc2.d/s99ssp 起動スクリプトが呼び出されます。このスクリプトが ssp_startup を起動し、このコマンドが他の SSP デーモンを起動します。これらの SSP デーモンのいずれかが終了している場合は、ssp_startup がそのデーモンを再起動します。

  3. まず、ssp_startup がメインとスペアの両方の SSP で SSP デーモンの machine_serverfadfod を起動します。fod デーモンは、別の SSP 上の fod デーモンをまず照会することによって SSP の役割を特定します。この照会が失敗すると、fod は制御ボードに接続して SSP の役割を特定します。

    SSP がメインである場合は、ssp_startup はデーモンの datasyncdcbsstrapssnmpdedd も起動します。ドメインが実行中の場合は、obp_helper および netcon_servercb_reset を呼び出して、制御ボードを初期設定します。制御ボードサーバー (CBS) は、主制御ボードに接続します。このボードは、JTAG インタフェースを提供します。

    SSP がスペアである場合は、ssp_startup が終了します。

    ssp_startup は SSP の役割を監視します。役割の変更が検出されると、ssp_startup は SSP フェイルオーバーを起動します。フェイルオーバーの後に、ssp_startup がスペア SSP を新しいメイン SSP として構成し、新しいメイン SSP に必要なデーモン (上記のデーモン) を起動します。

  4. メインまたはスペアとしての SSP の起動が完了したことを示すメッセージがプラットフォームメッセージファイルに表示されたら、domain_create(1M) や bringup(1M) などの SSP 3.5 コマンドを使用することができます。

Sun Enterprise 10000 クライアントサーバーアーキテクチャー

Sun Enterprise 10000 システムの制御ボードインタフェースへのアクセスは、TCP/IP プロトコルを使用し、Ethernet 接続を介して行われます。制御ボードエグゼクティブ (CBE) が制御ボード上で動作します。SSP 上の制御ボードサーバー (cbs(1M)) がサービス要求を行います。SSP 制御ボードサーバーは、SSP クライアントのサーバーになります。

図 10-1 に、Sun Enterprise 10000 システムのクライアントサーバーアーキテクチャーを示します。

図 10-1 Sun Enterprise 10000 のクライアントサーバーアーキテクチャー

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注 -

SSP がサポートするプラットフォームに対して、edd(1M) のインスタンスが 1 つあります。プラットフォーム上の各ドメインに対して、obp_helper(1M) と netcon_server(1M) のインスタンスが 1 つずつあります。


SSP デーモン

SSP の中で、中心的な役割を果たすのが SSP デーモンです。以下にこれらのデーモンの概要を示します。

表 10-1 SSP デーモン

名称 

説明 

cbs

制御ボードサーバー (cbs) は、SSP で動作するクライアントプログラムが Sun Enterprise 10000 の制御ボードにアクセスできるようにします。

edd

イベント検出デーモン (edd) は、制御ボード上のイベントの監視を開始します。監視タスクがイベントを検出すると、edd(1M) は応答動作スクリプトを実行します。

fad

ファイルアクセスデーモン (fad) は、SSP 構成ファイルの監視、読み取り、書き込みを必要とする SSP クライアントのために分散ファイルアクセスサービスを提供します。

fod

フェイルオーバーデーモンは、メイン SSP の正常な動作を妨げる障害状態がないかどうか、SSP のコンポーネント (SSP、制御ボード、ドメインへの接続) と SSP リソースを監視します。 

datasyncd

データ同期デーモンは、SSP 構成データと指定のファイルをメイン SSP からスペア SSP に伝播します。これによって、フェイルオーバーのためにスペア SSP と メイン SSP 上の SSP データの同期がとられます。 

machine_server

マシンサーバーデーモンは、プラットフォームおよびドメインのメッセージを適切なメッセージファイルに送信します。machine_server(1M) を参照してください。

netcon_server

ネットワークコンソールサーバーデーモンは、すべての netcon(1M) クライアントの接続ポイントとなります。netcon_server(1M) は、ドメインとの通信を管理します。

obp_helper

OpenBoot PROM (OBP) ヘルパーデーモンは、OpenBoot を実行します。obp_helper(1M) は、NVRAM シミュレーション、IDPROM シミュレーション、時刻などのサービスを OBP に提供します。

snmpd

SNMP プロクシーエージェントデーモンは、UDP ポートをチェックして着信要求を検出し、 Ultra-Enterprise-10000.mib に指定されているオブジェクトのグループにサービスを提供します。

straps

SNMP トラップシンクサーバーは、SNMP トラップポートを調べて着信トラップメッセージを検出し、受信したメッセージをすべてのクライアントに転送します。 

xntpd / ntpd

NTP(Network Time Protocol) デーモンは、時間同期サービスを提供します。ntpdは Solaris 2.6、7、8 オペレーティング環境で使用されるデーモンであり、Solaris 2.5.1 オペレーティング環境で使用される xntpd デーモンの後継です。ntpdの詳細は『Sun Enterprise 10000 SSP 3.5 インストールマニュアルおよびご使用の手引き』とマニュアルページの xntpd(1M) を参照してください。

イベント検出デーモン

イベント検出デーモン (edd(1M)) は、Sun Enterprise 10000 システムの信頼性、可用性、保守性 (RAS: Reliability、Availability、Serviceability) を実現する上で核となるコンポーネントです。edd(1M) は、Sun Enterprise 10000 制御ボード上のイベントの監視を開始し、制御ボードで実行されるイベント検出監視タスクが生成するイベントを待ちます。検出されたイベントに対しては、SSP 上で応答動作スクリプトを実行して応答します。イベント発生の条件およびイベントに対する応答は、すべて設定することができます。

edd(1M) は、イベント管理のメカニズムを提供するだけであり、イベントの検出と監視を直接行うわけではありません。イベントの検出は、制御ボードで実行されるイベント監視タスクによって処理されます。edd(1M) は、監視対象のイベントの種類を指定するベクトルをダウンロードして、イベント監視タスクを構成します。イベントの処理は、応答動作スクリプトによって行われます。このスクリプトは、SSP 上で edd(1M) がイベントを検出したときに呼び出されます。

SSP の起動時に、edd(1M) は以下のように多くの初期制御パラメタを取得します。

RAS 機能は、相互に協調するいくつかのプログラムによって実現されます。プラットフォーム内の制御ボードは、制御ボードエグゼクティブ (CBE) プログラムを実行します。CBE は Ethernet を介して SSP 上の制御ボードサーバーデーモン (cbs(1M)) と通信します。これらの 2 つのコンポーネントによって、プラットフォームと SSP の間のデータ通信が実現されます。

SSP には、制御ボードサーバーおよび SNMP(Simple Network Management Protocol) エージェントを介して制御ボードへアクセスするための一連のインタフェースが用意されています。edd(1M) は、制御ボードサーバーインタフェースを使用して、制御ボードエグゼクティブ上にイベント検出監視タスクを構成します (図 10-2)。

図 10-2 イベント検出スクリプトのアップロード

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構成されたイベント検出監視タスクは、プラットフォーム内のさまざまな状態 (環境の状態、シグニチャーブロック、電圧、パフォーマンスデータなど) を調べます。イベント発生の原因となる状態変化が検出されると、適切な情報を収めたイベントメッセージが作成され、制御ボードサーバー (cbs(1M)) に送られます。イベントメッセージを受け取った制御ボードサーバーは、イベントを SNMP エージェントに送り、SNMP エージェントは SNMP トラップを生成します (図 10-3)。

図 10-3 イベントの検出と通知

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SNMP トラップを受け取った edd(1M) は、応答動作を開始するかどうかを決定します。応答動作が必要な場合は、edd(1M) は適切な応答動作スクリプトをサブプロセスとして実行します (図 10-4)。

図 10-4 応答動作

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応答動作スクリプトの実行中に、同じ種類または関連する種類のイベントメッセージが作成されることがあります。同様のイベントに対する応答動作スクリプトがすでに実行中である場合は、重要度の低いイベントメッセージは無視できます。たとえば、edd(1M) が過熱イベントに対する応答動作スクリプトを実行するときに、イベント監視スクリプトが別の過熱イベントを生成することがあります。edd(1M) は最初の応答スクリプトが完了するまでは、(最初と同様の過熱状態に対して発生した) 別の過熱イベントには応答しません。応答すべきイベントを必要に応じて分離するのは、アプリケーション (edd(1M) など) の役割です。イベント処理のサイクルは、この時点で完了します。

イベントに対する edd(1M) の応答のもう 1 つの例として、edd(1M) はドメインクラッシュに応答します。ドメインクラッシュの後に、edd(1M) は bringup(1M) スクリプトを呼び出します。bringup(1M) スクリプトは POST プログラムを実行し、このプログラムは Sun Enterprise 10000 のコンポーネントをテストします。次に、このプログラムは obp_helper(1M) デーモンを使用して、SUNW_HOSTNAME 環境変数で指定したドメイン内の OBP をダウンロードし OBP の実行を開始します。この処理が行われるのは、ドメインに障害がある (たとえば、カーネルパニックの後) 場合のみです。この場合、ドメインは自動的に再起動されます。停止やシャットダウンの後には、bringup(1M) を手動で実行する必要があります。bringup(1M) を実行すると、OBP がダウンロードされ実行されます。

制御ボードサーバー

制御ボードサーバー (CBS) は SSP 上で実行されます。SSP で実行されるクライアントプログラムから Sun Enterprise 10000 システムへのアクセスは、cbs(1M) を通じて行われます。cbs(1M) は、Sun Enterprise 10000 システムの主制御ボードで実行されている制御ボードエグゼクティブ (CBE) と直接通信します。主制御ボードは、JTAG インタフェースを提供します。cbs(1M) はクライアントの要求を、CBE が理解する制御ボード管理プロトコル (CBMP) に変換します。以下の図に CBS と CBE の接続方法を示します。

図 10-5 CBS を介した SSP と Sun Enterprise 10000 システムの間の通信

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cbs(1M) は cb_config(4) ファイルに基づいて、管理するプラットフォームを特定し、やり取りの相手となる制御ボードを特定します。cb_config(4) ファイルはドメインの管理ツールおよびコマンドにより自動的に保守されるので、直接変更しないでください。

ファイルアクセスデーモン

ファイルアクセスデーモン (fad(1M)) は、SSP 構成ファイルの監視、読み取り、書き込みを必要とする SSP クライアントのために、ファイルのロックなどの分散ファイルアクセスサービスを提供します。クライアントがファイルをロックした場合は、そのクライアントがロックを解除しない限り、他のクライアントが該当ファイルをロックすることはできません。

フェイルオーバーデーモン

フェイルオーバーデーモン fod(1M) は、以下を連続監視し、メイン SSP の正常な動作を妨げる障害状態を検出します。

この fod デーモンは、メイン SSP とスペア SSP の両方で実行されます。検出された障害状態の種類によって、fod デーモンは、制御ボードのフェイルオーバーを開始するか、ssp_startup とともに SSP フェイルオーバーを開始します。以下の節では、フェイルオーバー検出ポイント、およびフェイルオーバーを開始または使用不可にする状態について説明します。

フェイルオーバー検出箇所

次の図は、自動フェイルオーバーに必要なデュアル SSP とボード構成の標準レイアウトです。番号は fod デーモンによって検出される障害箇所を示し、まとめると表 10-2 のようになります。

図 10-6 自動フェイルオーバー検出箇所

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次の表は、それぞれの障害状態とそれに対応するフェイルオーバー動作をまとめたものです。それぞれの障害箇所については、次の節の障害箇所に関する詳細説明を参照してください。

表 10-2 フェイルオーバー検出箇所とフェイルオーバー動作の要約

障害箇所 

SSP フェイルオーバー 

SSP フェイルオーバーが 使用不可 

制御ボード フェイル オーバー 

制御ボード フェイル オーバーが 使用不可 

1 メイン SSP とドメインの間 

 

 

 

2 スペア SSP とドメインの間 

 

 

 

3 メイン SSP 

 

 

 

4 スペア SSP 

 

 

 

5 メイン SSP とスペアハブの間 

 

 

6 スペア SSP とメインハブの間 

 

 

 

7 メイン SSP とメインハブの間 

X  

 

 

 

8 スペア SSP とスペアハブの間 

 

 

 

9 メインハブ 

 

 

 

10 スペアハブ 

 

 

11 主制御ボードとメインハブの間 

 

 

 

12 スペア制御ボードとスペアハブの間 

 

 

 

13 主制御ボード 

 

 

 

14 スペア制御ボード 

 

 

 

フェイルオーバー検出箇所の説明

この節では、表 10-2に示したそれぞれのフェイルオーバー検出箇所について詳しく説明します。

  1. メイン SSP とドメインの間の障害

    メイン SSP がメイン SSP からドメインまでのネットワークインタフェースの障害を検出し、SSP フェイルオーバーを開始します。

    ネットワークインタフェースの障害はメイン SSP にとって重大ではありませんが、DR (動的再構成)、Sun Enterprise Cluster、および Sun Management Center の動作に影響を与えます。この障害により、次の影響が出ます。

    • DR 処理で、動作中のドメイン内の DR デーモンとの通信動作ができなくなる。

    • JTAG インタフェースに対する netcon セッションが制限される。

    • SSP のネットワーク起動ができなくなる。

    • CD-ROM にアクセスできなくなる。

    • Sun Enterprise Cluster 構成内のメイン SSP がスプリットブレーン状態のクラスタノードを停止できなくなる。これにより、クラスタデータベースが破壊されることがある。

    • Sun Management Center が現在の状態と構成についてドメインに照会できなくなる。


    注 -

    fod デーモンは SSP と Sun Enterprise 10000 の間の接続を監視します。ただし監視頻度は、SSP と制御ボードの間の接続に対する監視より少なくなります。メイン SSP がドメインと通信できずスペア SSP がドメインの一部またはすべてと通信できる場合は、フェイルオーバーが開始されるまで、この障害状況が 25 分継続します。25 分経過すると、fod デーモンがフェイルオーバーを開始します。ただし、フェイルオーバーが開始されるのは、スペア SSP が主制御ボードと通信可能であり、スペア SSP に十分なメモリーとディスク容量がある場合のみです。


  2. スペア SSP とドメインの間の障害

    スペア SSP が、スペア SSP からドメインまでのネットワークインタフェースの障害を検出します。このネットワークインタフェースの障害によって SSP の重要な機能は影響を受けませんが、DR、SRS (Sun Remote Services)、Sun Management Center、Sun Cluster コンソールが影響を受けます。

    その結果、SSP フェイルオーバーが使用不可になります。

  3. メイン SSP の障害

    メイン SSP の障害の原因として、以下が考えられます。

    • SSP リソース (仮想メモリーやディスク容量など) の減少。メイン SSP がこの障害を検出し、フェイルオーバーを開始します。

    • システムクラッシュ。このクラッシュは、スペア SSP と制御ボードが検出します。スペア SSP がフェイルオーバーを開始します。

  4. スペア SSP の障害

    制御ボードとメイン SSP の両方がこの障害を検出します。この障害により、SSP フェイルオーバーが使用不可になります。

  5. メイン SSP とスペアハブの間の障害

    両方の SSP が、メイン SSP からスペアハブおよびスペア制御ボードまでの制御ボードネットワーク接続の障害を検出します。SSP と制御ボードの両方のフェイルオーバーが使用不可になります。

  6. スペア SSP とメインハブの間の障害

    両方の SSP と主制御ボードが、スペア SSP からメインハブおよび主制御ボードまでの制御ボードネットワーク接続の障害を検出します。

    スペア SSP が必要に応じて SSP を監視できないため、SSP フェイルオーバーが使用不可になります。

  7. メイン SSP とメインハブの間の障害

    両方の SSP と主制御ボードが、メイン SSP からメインハブおよび主制御ボードまでの制御ボードネットワーク接続の障害を検出します。スペア SSP から主制御ボードまでの接続が確認されると、SSP フェイルオーバーが試みられます。SSP フェイルオーバーが失敗した場合は、代わりに制御ボードフェイルオーバーが行われます。

  8. スペア SSP とスペアハブの間の障害

    両方の SSP とスペア制御ボードが、スペア SSP からスペアハブおよびスペア制御ボードまでの制御ボードネットワーク接続の障害を検出します。SSP フェイルオーバーが使用不可になります。

  9. メインハブの障害

    両方の SSP と主制御ボードが、メインハブの障害と主制御ボードへのすべての接続の障害を検出します。ドメインへの接続が存在しドメインが実行中であれば、この障害が原因で、スペア制御ボードへの部分的な制御ボードフェイルオーバー (JTAG のフェイルオーバーのみ) が行われます。現在実行中のドメインがない場合は、この障害が原因で、完全な制御ボードフェイルオーバー (JTAG とシステムクロックのフェイルオーバー) が行われます。

    部分的な制御ボードフェイルオーバーが行われた場合は、JTAG インタフェースとシステムクロックが主制御ボードとスペア制御ボードの間で分離されていても、制御ボードの完全な機能は保持されます。

  10. スペアハブの障害

    両方の SSP とスペア制御ボードが、スペアハブの障害と、スペア制御ボードへのすべての接続の障害を検出します。

  11. 主制御ボードからメインハブまでの障害

    両方の SSP と主制御ボードが、メインハブから主制御ボードまでの制御ボードネットワーク接続の障害を検出します。ドメインが実行中であれば、この障害が原因で、スペア制御ボードへの部分的な制御ボードフェイルオーバー (JTAG のフェイルオーバーのみ) が行われます。実行中のドメインがない場合は、この障害が原因で、完全な制御ボードフェイルオーバーが行われます。

    部分的な制御ボードフェイルオーバーが行われた場合は、JTAG インタフェースとシステムクロックが主制御ボードとスペア制御ボードの間で分離されていても、制御ボードの完全な機能は保持されます。

  12. スペア制御ボードとスペアハブの間の障害

    両方の SSP とスペア制御ボードが、スペアハブからスペア制御ボードまでの制御ボードネットワーク接続の障害を検出します。この障害によって、制御ボードフェイルオーバーが使用不可になります。

  13. 主制御ボードの障害

    両方の SSP がこの障害を検出します。ドメインが実行中であれば、この障害が原因で、スペア制御ボードへの部分的な制御ボードフェイルオーバー (JTAG のフェイルオーバーのみ) が行われます。実行中のドメインがない場合は、この障害が原因で、完全な制御ボードフェイルオーバーが行われます。

    部分的な制御ボードフェイルオーバーが行われた場合は、JTAG インタフェースとシステムクロックが主制御ボードとスペア制御ボードの間で分離されていても、制御ボードの完全な機能は保持されます。

  14. スペア制御ボードの障害

    両方の SSP がこの障害を検出します。この障害によって、制御ボードフェイルオーバーが使用不可になります。

データ同期デーモン

データ同期デーモン datasyncd(1M) は、すべての SSP 構成情報をメイン SSP からスペア SSPに伝播します。datasyncd デーモンは、データ伝播リストを使用して、監視し伝播する SSP ファイルとそれ以外のファイルを識別します。SSP ファイル以外のファイルをデータ伝播リストに追加するには、setdatasync(1M) コマンドを使用します。

datasyncd デーモン はメイン SSP 上で実行され、fad デーモンとともにメイン SSP 上のファイルに対する更新を監視します。次に、datasyncd デーモンが更新されたファイルをスペア SSP にコピーし、両方の SSP 上のデータの同期がとられます。

OpenBoot PROM

ドメイン上の OpenBoot PROM (OBP) は、ハードウェア PROM ではありません。OBPは、SSP 上のファイルから読み込まれます。SSP ファイルは、従来の OBP NVRAM と idprom (hostid) の役割も果たします。

OBP ファイルは、SunOS リリースに固有のディレクトリパスにあります。SunOS 5.6 は Solaris 2.6 オペレーティング環境、SunOS 5.7 は Solaris 7 オペレーティング環境、SunOS 5.8 は Solaris 8 オペレーティング環境にそれぞれ対応します。SunOS のバージョンは、uname -r で確認することができます。たとえば、SunOS 5.7 では OBP ファイルは以下のディレクトリにあります。


/opt/SUNWssp/release/Ultra-Enterprise-10000/5/7/hostobjs/obp

ここで、パスの /5/7 の部分は SunOS のバージョン番号に対応します。別のバージョンのオペレーティングシステムを使用している場合は、パスのこの部分が変わります。

OBP の主要な役割は、外部記憶装置またはネットワークからオペレーティングシステムを起動・構成することです。また、OBP にはハードウェアとソフトウェアを対話式にテストする拡張機能も備わっています。起動手順の一部として、OBP は すべてのシステムボード上の SBus スロットを調べ、デバイスツリーを作成します。このデバイスツリーは、オペレーティングシステムに渡されます。このデバイスツリーを表示するには、prtconf コマンドを使用します (詳細は、SunOS マニュアルページの prtconf(1M) を参照してください)。

さらに OBP は SBus カードの FCode を解釈し実行します。これによりロード可能で簡単なドライバがインストールされ、起動が可能になります。また、OBP はカーネルデバッガも提供します。このデバッガは常に読み込まれています。

以下の節では、obp_helper デーモンと download_helper ファイルによる OBP の制御について説明します。

obp_helper デーモン

obp_helper(1M) は、起動プロセッサ以外のプロセッサを起動します。このデーモンは、ブートバス SRAM(BBSRAM) を介して OBP と通信し、要求に応答して時刻を通知します。また、擬似 EEPROM の内容を取得または提供し、マルチプロセッサモードの場合にスレーブプロセッサを解放します。スレーブプロセッサを解放するには、obp_helper(1M) が download_helper をすべてのスレーブプロセッサの BBSRAM に読み込み、スレーブプロセッサであるという指示を BBSRAM に通知します。次に、ブートバスコントローラリセットを解放してプロセッサを起動します。

bringup(1M) コマンドは、obp_helper(1M) をバックグラウンドで起動します。これにより、以前の obp_helper(1M) (存在する場合) が削除されます。obp_helper(1M) は download_helper を実行し、その後に OBP をダウンロードして実行します。

詳細については、マニュアルページの obp_helper(1M) と bringup(1M)、およびdownload_helper ファイル」を参照してください。

download_helper ファイル

download_helper によって、BBSRAM にではなく、ドメインが使用するメモリーにプログラムをダウンロードすることが可能になります。この結果、メモリー上に再配置する方法を知らなくても、ホストプログラムを実行できるようになります。プログラムは BBSRAM より大きくても問題ありません。

download_helper の機能は、BBSRAM のメールボックスを通じてプロトコルを実行することで実現します。このプロトコルには、物理メモリーから仮想メモリーへの割り当てとマッピング、また BBSRAM のバッファーと仮想メモリー間のデータの移動のためのコマンドが用意されています。割り当てとマッピングが完了すると、実行のスレッドは、SSP が提供するエントリポイントにおいて新しいプログラムに渡されます。これ以降、download_helper は BBSRAM に常駐し、リセット処理を実行します。通常、download_helper は使用しません。download_helper を使用するのは、obp_helper(1M) デーモンだけです。詳細については、マニュアルページの obp_helper(1M) を参照してください。

POST

電源投入自己診断 (POST) は、Sun Enterprise 10000 システムの初期化されていないハードウェア・コンポーネントを検出してテストし、必要に応じて初期化済みシステムに組み込んで、OBP (OpenBoot PROM) に渡します。POST はテストが成功したコンポーネントのみからなるリストも OBP に渡します。blacklist(4) ファイルに含まれているコンポーネントは除かれます。

hpost(1M) は SSP に常駐の実行可能プログラムであり、POST の動作とシーケンスを制御します。 hpost(1M) はオプションファイル .postrc(postrc(4) を参照) から命令を読み取ってから、ホストとのやり取りを開始します。


注意 - 注意 -

hpost(1M) を bringup(1M) コマンドの外部で実行すると、システムに障害が発生することがあります。hpost(1M) を単独で実行しても、プラットフォームの状態は調べられません。また、システムはリセットされる可能性があります。


POST は SSP にある blacklist(4) を調べてから、システムを起動可能な状態にします。blacklist(4) には、POST によって構成されるべきでない Sun Enterprise 10000 コンポーネントが指定されています。

POST は、テストの結果を「ボード記述子配列」と呼ばれる内部データ構造体に格納します。ボード記述子配列には、Sun Enterprise 10000 システムの主要なコンポーネントの状態情報が含まれています。UltraSPARCTM モジュールの状態情報もこの中に含まれています。

POST は、センタープレーンへの各システムボードの接続と切り離しを、1 度に 1 つずつ試みます。その後、テストをパスしたシステムボードのみをセンタープレーンに接続します。

環境変数

必要な環境変数のほとんどは、ssp ユーザーがログインするときに設定されます。表 10-3 に環境変数を示します。


注 -

SUNW_HOSTNAME を除く以下の環境変数の値は変更しないでください。


表 10-3 環境変数

SUNW_HOSTNAME

SSP によって制御されるドメインの名前。この環境変数には、操作を実行しているドメインのホスト名を設定します。 

SSPETC

SSP 関連の各種ファイルを収めたディレクトリへのパス。 

SSPLOGGER

プラットフォームログを収めたディレクトリと、ドメインログのためのディレクトリへのパス。 

SSPOPT

SSP パッケージのバイナリファイル、ライブラリファイル、オブジェクトファイルへのパス。 

SSPVAR

変更可能なファイルを収めたディレクトリへのパス。