Solstice Backup 5.1 管理者ガイド

クローン作成

クローン作成とは、ストレージボリュームのセーブセットの完全な複製を、クローンボリューム上に作成するプロセスのことです。バックアップ、アーカイブ、またはマイグレートによるセーブセットデータのクローンを作成できます。セーブセットのクローン作成は (バックアップ、アーカイブ、またはマイグレート操作の一部として) 自動的に行うことも、別の時点で手動で行うこともできます。

クローン作成は、信頼性を高めたいときやデータに手軽にアクセスできるようにしたいときに行います。たとえば、クローンをオフサイトに保管する、データを別の場所に送る、バックアップしたデータを検証するといった目的に使用できます。

クローン作成は 2 つの手順で行います。Backup によってデータがソースボリュームから復旧されたあとに、このデータをクローンボリューム (タイプが「clone」のプールボリューム) に書き込みます。クローン作成には、ソースボリュームの読み込み用と新たに作成されたクローンデータの書き込み用に少なくとも 2 つのアクティブデバイスが必要です。クローン作成の際には、データがソースボリュームからクローンボリュームに複製されます。クライアントまたはサーバーに格納されているデータはいっさい関与しません。Backup では、1 ボリュームにつきセーブセットのクローンを 1 つしか格納できないので、セーブセットのクローンを 3 つ指定すると、各クローンは別々のボリュームに書き込まれます。

自動クローン作成 (スケジュールされたグループバックアップ操作に関連付けられたクローン作成) では、すべてのバックアップ操作が完了したあとに行われます。スケジュールされたバックアップのあとに発行されるセーブグループ完了レポートにも、各セーブセットのクローン作成操作の成否が報告されます。

クローンデータが書き込まれるデバイスの位置は、Backup サーバーの「Clients」リソースの「Storage Nodes」属性の内容によって決まります。ストレージノードと Backup サーバーの名前はいつでも追加または削除できますが、バックアップデータを受け取るストレージノードのリストとは別に、クローンデータを受け取るストレージノードのリストを指定することはできません。

グループのバックアップが終わったあとにクローンを作成する場合、クローン作成はボリュームごとに手動で行うか、あるいはスクリプトとバッチファイルを組み合わせてコマンド行から行います。クローン作成を手動で行うと、レポートは生成されません。

データのクローン作成の際には、ストレージメディアの容量に応じて、必要なクローンボリュームの数が増減することがあります。クローン作成操作によって、クライアントファイルインデックスとメディアデータベースの両方にエントリが残るので、これによって追跡が可能です。追跡できるかどうかによって、クローン作成によって生成されたものか、オペレーティングシステムまたはハードウェアデバイスによるコピー操作によって生成されたものかを区別できます。

スケジュールされたバックアップ操作が完了してからクローン作成を開始するには、「Group」構成のなかでクローン作成を有効にします。個々のセーブセットに対してクローンを作成する場合、または 1 つのストレージボリュームに対してクローンを作成する場合は、nwadmin の GUI の「Save Set Clone」ウィンドウか「Volume Clone」ウィンドウ、あるいはコマンド行で nsrclone プログラムを使用します。

特定のボリュームに対してクローン作成を指定すると、指定したボリューム上のセーブセットがソースデータとして使用されます。

特定のセーブセットのクローンを指定すると、そのセーブセットがすでにクローンを持っているかどうかが調べられます。セーブセットのクローンが複数存在する場合には、通常は、手動でマウントしなければならないボリュームではなく、すでにオートチェンジャの中に入っているボリューム上のセーブセットのクローンがソースデータとして選択されます。必要に応じて、コマンド行オプションを使って、ソースとして使用するセーブセットクローンを明確に指定できます。

クローン操作を手動で実行する場合は、完了レポートは生成されません。nsrclone プログラムが生成するメッセージは、管理プログラムの GUI のメッセージウィンドウに表示され、Backup メッセージファイルの /nsr/logs/messages にも記録されます。

クローンストレージノードのアフィニティ

ストレージノードのクライアントのリソースと、そのストレージノードクライアントからクローンセーブセットを受け取れるストレージノードのリストとの間の関係は、「クローンストレージノードのアフィニティ」と呼ばれます。データは、元のセーブセットが格納されているメディアから、指定されたクローンストレージノードにコピーされます。このクローンストレージノードのアフィニティは、ストレージノードの Client リソースにある「Clone Storage Nodes」属性で定義します。あるストレージノードクライアントの「Clients」リソースにある「Clone Storage Nodes」属性を変更すると、そのストレージノードクライアントに対して構成されているすべての「Clients」リソースで、この属性が変更されます。

「Clone Storage Nodes」属性を使って、ストレージノードのリモートデバイスに対して指定したネットワークインタフェースとは別のネットワークインタフェースを、そのストレージノードのクローンを作成するときに使用できます。

サーバーは、「Clone Storage Nodes」属性に指定されているホスト名をそのまま使用します。「Devices」リソースで構成されているリモートデバイス名の前にホスト名を付けて使用するわけではありません。

Backup サーバーは、ボリュームのクローンを作成する際に、そのストレージノードクライアントの「Clone Storage Nodes」属性の値を調べます。「Clone Storage Nodes」属性に「Null」が指定されている場合には、サーバーの「Clone Storage Nodes」属性に指定されている値を使用します。この属性にも「Null」が指定されている場合には、サーバーの「Storage Nodes」属性を使用します。

従来のクローン機能との互換性が保たれていて、サーバーの Storage Node 属性に従います。

各ストレージノードのクローンの受け取り先を個別に指定するには、ストレージノードに対して構成されている「Clients」リソースの「Clone Storage Nodes」属性に、クローンの受け取り先とするストレージノードのホスト名を追加します。この属性に列挙されているエントリのうち、正常に機能している有効なデバイスを持つ最初のエントリが、そのストレージノードからのクローンデータの受け取り先として選択されます。

すべてのストレージノードのクローンを同じ宛先に送るには、ストレージノードに対して構成する「Clients」リソースの「Clone Storage Nodes」属性には何も指定せずに、Backup サーバーの「Clone Storage Nodes」属性だけを構成します。この方法で、クローンの宛先を 1 か所で管理できます。

ストレージノード上のリモートデバイスにあるメディアを宛先にしてクローンが作成されるセーブセットのファイルインデックスとメディアデータベースのエントリは、Backup サーバー上にそのまま残ります。したがって、サーバーにローカルに接続されているデバイスのメディア上に存在するすべてのクローンセーブセットと同じブラウズポリシーと保持ポリシーが適用されます。

ボリュームのクローン作成と複製

ボリュームのクローンを作成する時には、そのボリュームは単に複製されるわけではありません。ボリューム上のすべてのセーブセットが完全に作成し直されるため、クローンボリューム上の占有領域はソースボリューム上の占有領域と正確に一致しない場合があります。

管理者によっては、障害復旧に備えるために、Backup ボリュームの完全コピー (複製) を作るべきであると考えることもあるでしょう。このようなやり方は、一般には推奨できませんが (UNIX では tcopy コマンドを使用)、特定の環境では効果があります。コピーコマンドを使用する場合は、まずコピー先のボリュームが、Backup のソースボリュームと同じバイト数を保持できることを確認しなければなりません。また、複製されたボリュームはサーバーのメディアデータベースに挿入されないため、Backup はそのボリュームについては何も認識できないことに注意してください。自動メディア管理機能が有効になっている場合に、Backup が管理しているオートチェンジャにそのボリュームを入れたままにしておくと、そのボリュームはラベルを付け直す対象としてみなされ、有効な Backup ラベルがないために、スケジュールされたバックアップ処理で使用される可能性があります。

同様に、アーカイブボリュームの完全コピーも作成できます。ただし、各アーカイブセットに関連付けられている注釈は、ボリュームそのものではなく、Backup サーバーのメディアデータベースに格納されている情報です。このため、アーカイブされたセーブセットの複製ボリュームには注釈は含まれていません。メディアデータベースから元のアーカイブセーブセットのエントリが削除されると、それを記述している注釈も失われます。

クローン作成とデータ追跡の情報

クローン作成操作によってクライアントファイルインデックスにエントリが挿入されるわけではありません。クローンセーブセットは、メディアデータベースを介してのみ追跡されます。クローン操作の際には、クローンセーブセットの位置が、メディアデータベースの中の既存のセーブセットのエントリに追加されます。つまり、各セーブセットクローンは、ソースのセーブセットと同じ ssid を共有します。ソースのセーブセットが持つすべての特性は、クローンセーブセットにも当てはまります。ソースのセーブセットがブラウズ可能であれば、クローンもブラウズ可能です。ソースのセーブセットがブラウズポリシーの期限を越えていれば、クローンは復旧可能な状態になっています。

クローンプールに属するボリュームも、メディアデータベースの中のボリュームエントリによって追跡されます。すべてのセーブセットがメディアデータベース内の同じセーブセットエントリを共有しているため、以下の処理は「ボリューム単位」ではなく「セーブセット単位」で実行されることになります。


注意 - 注意 -

特定のクローンボリュームを再利用する目的で、そのクローンボリュームのモードを手動で recyc に変更する場合には、ボリュームのモードが再利用可能になるのは、そのボリューム上のすべてのセーブセットが再利用可能になったときです。したがって、ボリュームのモードを recyc に変更すると、実際にはクローンボリューム上のすべてのセーブセットの状態が recyc に変更されます。セーブセットはメディアデータベース内の同じエントリを共有しているので、「オリジナル」のセーブセットと「クローン」のセーブセットの間には実質的な違いはありません。その結果、再利用可能になったボリュームだけでなく、それ以外のすべてのボリューム上にあるすべてのセーブセットが、ただちに再利用の対象となります。


特定のクローンボリュームを再利用したいが、データが誤って失われるのを防ぐために、他のボリューム上にあるセーブセットのインスタンスは残しておきたい場合には、まずデータ保護するボリュームのモードを man_recyc に変更します。これにより、Backup はそのボリュームを自動的に再利用できなくなります。これで、再使用したいボリュームを安全に recyc モードに変更できます。

同様に、クローンボリュームをパージすると、実際にはそのクローンボリューム上に (全体または一部が) あるすべてのセーブセットに関連付けられているすべてのファイルエントリが、クライアントファイルインデックスから削除されます。

クローンボリュームを削除すると、Backup インデックス管理プログラム nsrim によって、クローンボリューム上にある各セーブセットのエントリがメディアデータベースの中で検索されます。nsrim プログラムは、このエントリに対して、特定のセーブセットのクローンの位置に関する情報を削除の対象としてマークします。このアクションは個々のセーブセットのエントリに対して実行されます。さらに、nsrim はデータベースの中で、特定のクローンボリューム (そのボリューム ID 番号によって識別される) のエントリを削除の対象としてマークします。

クローン作成のパフォーマンス

一般に、バックアップ操作の一部として実行されるボリューム書き込みと、クローン作成操作の一部として実行されるボリューム書き込みは、同じ速度で実行されます。しかし、クローン作成操作がスケジュールされたバックアップの一部として自動的に要求される場合には、それ以降に行われる別のスケジュールされたバックアップ処理でのパフォーマンスが低下する可能性があります。Backup では一般に、1 つのグループのスケジュールされたバックアップ処理を完了させてから、別のグループに対するスケジュールされたバックアップ処理を開始します。ただし、Backup では自動クローン作成が完了した時点ではなく、バックアップ操作が完了した時点をもってグループバックアップ処理が終了したと見なしています。このため、前のグループのクローン操作の実行中に次のグループのバックアップ処理が開始されると、nsrmmd のリソースや特定のボリューム上で競合が生じる可能性があります。この問題を避けるためには、自動クローン作成は行わずに、バックアップが完了したあとのオフピークの時間帯に実行させるジョブの一部として、クローン操作をあとから単独で行います。この場合には、nsrclone に ssid のセットを渡します。

クローン作成と復旧

クローンボリュームが復旧操作に使用されるのは、Backup が特定のセーブセットの復旧を試みたときに、元のセーブセットのボリュームが削除されている場合か、元のセーブセットが「suspect」としてマークされている場合です。

クローンボリュームに対して scanner プログラムを実行すれば、クライアントファイルインデックス、メディアデータベース、またはこの両方のエントリをいつでも再構築できます。いったんエントリが再度作成されれば、通常の復旧操作を行うことができます。scanner プログラムを使ってデータを復旧する方法については、『Solstice Backup 5.1 障害復旧ガイド』を参照してください。