DO ループであって、DO WHILE または Fortran 95 の配列構文ではない場合
ループの各反復に対する配列変数の値が、そのループのほかの反復に対する配列変数の値に依存しない場合
ループがスカラーを変更する場合、そのスカラーがループ終了後に参照されない場合。このようなスカラー変数は、ループ終了後定義された値を持つとは保証されません。 なぜなら、コンパイラはこのような変数に対しては適切な書き戻しを自動的に行わないからです。
各反復において、ループの内側から呼び出される副プログラムが、ほかの反復に対する配列変数の値を参照しない、または変更しない場合
DO ループの添字が必ず整数である場合
非公開変数または専用配列は、ループの 1 回の反復だけで使用されます。ある反復で非公開変数または非公開配列に代入された値は、そのループの別の反復には伝達されません。
共有変数または共有配列は、ほかのすべての反復で共有されます。ある反復で共有変数または共有配列に代入された値は、そのループの別の反復からも参照されます。
明示的に並列化されたループで共有の値を参照する場合、共有によって正確性の問題が発生しないように注意してください。共有変数が更新またはアクセスされたとき、コンパイラは同期処理を行いません。
あるループの中で変数が非公開であると指定した場合、さらに、その変数の唯一の初期化がほかのループの中にある場合、その変数の値はループの中で未定義のままとなる可能性があります。
ループで (または呼び出し元ルーチン内から呼び出された副プログラムで) 副プログラムを呼び出すと、データ依存性が生じる可能性があり、これは呼び出しのチェーンをたどってデータや制御フローを深く分析しなければ気づかないでしょう。作業量の多い一番外側のループを並列化すればよいのですが、これらは副プログラムをいくつも呼び出してループがとても深くなっている傾向があります。
このような手続き間の分析は難しく、またコンパイル時間がかなり長くなってしまうので、自動並列化モードでは行われません。明示的な並列化では、コンパイラは、PARALLEL DO または DOALL 指令によりマークしたループ内にサブプログラムへの呼び出しが含まれていても、そのループの並列化コードを生成します。この場合も、ループ内に、また呼び出し先サブプログラムを含めてループ内のすべてにおいてデータ依存が存在しないようにすることはプログラマの仕事です。
さまざまなスレッドから 1 つのルーチンを何度も起動すると、局所静的変数への参照でお互いに干渉し合うような問題が発生することがあります。ルーチン内のすべての局所変数を静的変数ではなく自動変数にすることで、この問題は防ぐことができます。このようにしてサブプログラムを起動すると、そのたびに局所変数が固有の領域に保存され、それらがスタック上で保守されるので、何度起動してもお互いに干渉することはなくなります。
局所サブプログラム変数は、自動変数にすることが可能で、AUTOMATIC 文で指定するか、または -stackvar オプションを指定してサブプログラムをコンパイルすることでスタック上に常駐させることができます。ただし、DATA 文で初期化された局所変数については、実際の割り当てで初期化されるように書きかえる必要があります。
局所変数をスタックに割り当てると、スタックがオーバーフローしてしまう可能性があります。スタックのサイズを大きくする方法については、「10.1.6 スタック、スタックサイズ、並列化」を参照してください。
一般に、ユーザーがコンパイラにループを並列化するように明示的に指示している場合、コンパイラはそのようにします。ただし、例外もあり、ループによってはコンパイラが並列化を行わないものがあります。
次に、DO ループの明示的な並列化を妨げる抑制の中で、検出可能なものを示します。
DO ループが、並列化された別の DO ループ内に入れ子にされている場合
この例外は、間接の入れ子についても当てはまります。ユーザーがサブルーチンを呼び出しているループを明示的に並列化すると、コンパイラにそのサブルーチン内のループを並列化するように要求しても、これらのループは実行時に並列で実行されません。
フロー制御文により、DO ループから外部へのジャンプが許可されている場合
ループの添字変数が、等価になるなどの影響を受ける場合
-vpara および -loopinfo を指定してコンパイルすると、コンパイラが明示的にループを並列化している最中に問題を検出すると診断メッセージが発せられます。
次に、一般にコンパイラにより検出される並列化の問題を示します。
表 10–3 明示的な並列化時の問題
問題 |
並列化されます |
警告メッセージ |
---|---|---|
ループは、並列化されている別のループ内に入れ子にされています。 |
いいえ |
いいえ |
ループは、並列化されたループの本文内で呼び出されているサブルーチン内にあります。 |
いいえ |
いいえ |
フロー制御文で、ループから外部へのジャンプが許可されています。 |
いいえ |
はい |
ループの添字変数が、悪影響を受けています。 |
はい |
いいえ |
ループ内の変数に、ループ繰越の依存があります。 |
はい |
はい |
ループ内の入出力文 — 通常、出力順序は予想できないので賢明な処理ではありません。 |
はい |
いいえ |
例: 入れ子にされたループ
... !$OMP PARALLEL DO do 900 i = 1, 1000 ! 並列化されます (外側のループ) do 200 j = 1, 1000 ! 並列化されません。警告も発しません ... 200 continue 900 continue ... |
例: サブルーチン内で並列化されたループ
program main ... !$OMP PARALLEL DO do 100 i = 1, 200 <- 並列化されます ... call calc (a, x) ... 100 continue ... subroutine calc ( b, y ) ... !$OMP PARALLEL DO do 1 m = 1, 1000 <- 並列化されません ... 1 continue return end |
この例では、サブルーチン自体が並列で実行されているので、その中のループは並列化されません。
例: ループから外部へのジャンプ
!$omp parallel do do i = 1, 1000 ! <- 並列化されず、エラーとなります ... if (a(i) .gt. min_threshold ) go to 20 ... end do 20 continue ... |
並列化のマークが付いたループの外にジャンプがあると、コンパイラはエラーと診断します。
例: ループ依存性を持つループの変数
demo% cat vpfn.f real function fn (n,x,y,z) real y(*),x(*),z(*) s = 0.0 !$omp parallel do private(i,s) shared(x,y,z) do i = 1, n x(i) = s s = y(i)*z(i) enddo fn=x(10) return end demo% f95 -c -vpara -loopinfo -openmp -O4 vpfn.f "vpfn.f", line 5: Warning: the loop may have parallelization inhibiting reference "vpfn.f", line 5: PARALLELIZED, user pragma used |
ループは並列化されますが、可能なループ依存性は警告中で診断されます。しかし、ループ依存性のすべてがコンパイラによって診断できないことに注意してください。
並列に実行するループで入出力を実行できます。 ただし、次の条件があります。
さまざまなスレッドからの出力がインタリーブされても問題とならないこと (プログラム出力は確定的ではありません)。
ループの並列実行の安全性が確実であること。
例: ループ内の入出力文
!$OMP PARALLEL DO PRIVATE(k) do i = 1, 10 ! 並列化されます k = i call show ( k ) end do end subroutine show( j ) write(6,1) j 1 format(’Line number ’, i3, ’.’) end demo% f95 -openmp t13.f demo% setenv PARALLEL 4 demo% a.out |
Line number 9. Line number 4. Line number 5. Line number 6. Line number 1. Line number 2. Line number 3. Line number 7. Line number 8. |
ただし、入出力が再帰的な場合、つまり、入出力文に、入出力を行う関数への呼び出しが含まれている場合は、実行時エラーが発生します。