Sun Studio 12: C ユーザーズガイド

スレッド固有変数と共有変数のデフォルトのスコープの規則

スレッド固有変数は、for ループのある繰り返しを処理するためにそれぞれのプロセッサが専用に使用する値を保持します。別の言い方をすれば、for ループのある繰り返しでスレッド固有変数に割り当てられた値は、そのループの別の繰り返しを処理しているプロセッサからは見えません。これに対して共有変数は、for ループの繰り返しを処理しているすべてのプロセッサから現在の値にアクセスできる変数のことです。ループのある繰り返しを処理しているプロセッサが共有変数に代入した値は、そのループの別の繰り返しを処理しているプロセッサからでも見ることができます。共有変数を参照しているループを #pragma MP taskloop 指令によって明示的に並列化する場合には、値の共有によって正確性に問題が起きないことを確認しなければいけません (競合条件の確認など)。明示的に並列化されたループの共有変数へのアクセスおよび更新では、コンパイラによる同期はとられません。

明示的に並列化されたループの解析において、変数がスレッド固有と共有のどちらで あるかを決定するために、次の「デフォルトのスコープの規則」が使用されます。

明示的に並列化された for ループ内で使用されているすべての変数を、shared (共有)、private (非公開)、reduction (縮約)、または readonly (読み取り専用) として明示的に指定し、「デフォルトのスコープの規則」が適用されないようにしてください

コンパイラは、共有変数に対するアクセスの同期を一切実行しないので、たとえば、配列参照を含んだループに対して MP taskloop プラグマを使用する前には、十分な考察が必要になります。このように明示的に並列化されたループで、繰り返し間でのデータ依存性がある場合には、並列実行を行うと正しい結果を得られないことがあります。コンパイラによって、このような潜在的な問題を検出し、警告メッセージを出力することもできますが、一般的にこれを検出することは非常に困難です。なお、共有変数に対する潜在的な問題を持ったループでも、明示的に並列化を指示されると、コンパイラはこの指示に従います。