特定のシステム (コアホスト) で作成されたコアファイルを、デバッグのためにそのファイルを別のマシン (dbx ホスト) に読み込む場合があります。この場合、ライブラリに関する 2 つの問題が発生する可能性があります。
コアホストのプログラムで使用される共有ライブラリが dbx ホストのライブラリと異なる場合があります。ライブラリに関して正しいスタックトレースを取得するには、dbx ホストでもオリジナルのライブラリを利用できなくてはいけません。
dbx は、システム上の実行時リンカーとスレッドのライブラリについて実装詳細をわかりやすくするために、/usr/lib に配置されているライブラリを使用します。また、dbx が実行時リンカーのデータ構造とスレッドのデータ構造を理解できるように、コアホストからそれらのシステムライブラリを提供する必要性が出てくることもあります。
ユーザーライブラリとシステムライブラリは、パッチや主要な Solaris オペレーティング環境のアップグレードで変更できるため、収集したコアファイルで dbx を実行する前にパッチをインストールした場合など、この問題が同一ホストでも発生する可能性があります。
dbx は、一致しないコアファイルを読み込むと、次のエラーメッセージを 1 つ以上表示することがあります。
dbx: core file read error: address 0xff3dd1bc not available dbx: warning: could not initialize librtld_db.so.1 -- trying libDP_rtld_db.so dbx: cannot get thread info for 1 -- generic libthread_db.so error dbx: attempt to fetch registers failed - stack corrupted dbx: read of registers from (0xff363430) failed -- debugger service failed |
dbx 環境変数 core_lo_pathmap を on に設定します。
pathmap コマンドを使用して、コアファイルの正しいライブラリの配置場所を dbx に伝えます。
debug コマンドを使用して、プログラムとコアファイルを読み込みます。
たとえば、コアホストのルートパーティションが NFS を介してエクスポートされており、dbx ホストマシンの /net/core-host/ からアクセスできると想定した場合、次のコマンドを使用して、プログラム prog とコアファイル prog.core をデバッグのために読み込みます。
(dbx) dbxenv core_lo_pathmap on (dbx) pathmap /usr /net/core-host/usr (dbx) pathmap /appstuff /net/core-host/appstuff (dbx) debug prog prog.core |
コアホストのルートパーティションをエクスポートしていない場合、手動でライブラリをコピーする必要があります。シンボリックリンクを再作成する必要はありません (たとえば、libc.so から libc.so.1 へのリンクを作成する必要はありません。ただし、libc.so.1 が利用可能である必要があります)。
一致しないコアファイルをデバッグする際に、次の点に注意してください。
pathmap コマンドは '/' のパスマップを認識しないため、次のコマンドを使用できません。
pathmap / /net/core-host
pathmap コマンドの単一引数モードは、ロードオブジェクトのパス名を使用すると機能しません。そのため、2 つの引数をとる form-path to-path モードを使用してください。
dbx ホストがコアホストと同一のバージョンまたはコアホストより最近のバージョンの Solaris オペレーティング環境を有している場合、コアファイルのデバッグが良好に機能する傾向にあります。ただし、これは必須ではありません。
必要となるシステムライブラリを次に示します。
実行時リンカーの場合 :
/usr/lib/ld.so.1
/usr/lib/librtld_db.so.1
/usr/lib/64/ld.so.1
/usr/lib/64/librtld_db.so.1
スレッドライブラリ用 (使用している libthread の実装によって異なる) :
/usr/lib/libthread_db.so.1
/usr/lib/64/libthread_db.so.1
64 ビットバージョンの xxx _db.so ライブラリが必要になるのは、dbx を 64 ビット対応バージョンの Solaris OS で実行している場合です。これらのシステムライブラリはターゲットプログラムではなく dbx の一部として読み込まれて使用されるためです。
ld.so.1 ライブラリは、libc.so などのライブラリのコアファイルイメージの一部であるため、コアファイルを作成したプログラムに一致する 32 ビットまたは 64 ビットの ld.so.1 ライブラリが必要です。
スレッド化されたプログラムからコアファイルを調べていて、および where コマンドがスタックを表示しない場合、 lwp コマンドを使用してみてください。次に例を示します。
(dbx) where current thread: t@0 [1] 0x0(), at 0xffffffff (dbx) lwps o>l@1 signal SIGSEGV in _sigfillset() (dbx) lwp l@1 (dbx) where =>[1] _sigfillset(), line 2 in "lo.c" [2] _liblwp_init(0xff36291c, 0xff2f9740, ... [3] _init(0x0, 0xff3e2658, 0x1, ... ... |
lwp コマンドの -setfp および -resetfp オプションは、LWP のフレームポインタ (fp) が壊れているときに便利です。これらのオプションは、assign $fp=... が利用できないコアファイルのデバッグ時に機能します。
スレッドスタックの欠如は、thread_db.so.1 に問題があることを示している場合があります。そのため、コアホストから正しい libthread_db.so.1 ライブラリをコピーしてください。