スレッド private 変数は、for ループのある繰り返しを処理するためにそれぞれのプロセッサが専用に使用する値を保持します。別の言い方をすれば、for ループのある繰り返しでスレッド private 変数に割り当てられた値は、for のループの別の繰り返しを処理しているプロセッサからは見えません。これに対して shared 変数は、for ループの繰り返しを処理しているすべてのプロセッサから現在の値にアクセスできる変数のことです。ループのある繰り返しを処理しているプロセッサが shared 変数に代入した値は、そのループの別の繰り返しを処理しているプロセッサからでも見ることができます。共有変数を参照しているループを #pragma MP taskloop 指令によって明示的に並列化する場合には、値の共有によって正確性に問題が起きないことを確認しなければいけません (競合条件の確認など)。明示的に並列化されたループの共有変数へのアクセスおよび更新では、コンパイラによる同期はとられません。
明示的に並列化されたループの解析において、変数がスレッド private と shared のどちらであるかを決定するために、次の「デフォルトのスコープの規則」が使用されます。
変数がプラグマによって明示的に分類されていない場合には、その変数がポインタまたは配列として宣言されていて、かつループ内では配列構文を使用して参照しているかぎり、その変数はデフォルトで shared 変数として分類されます。これ以外の場合は、スレッド private 変数として分類されます。
ループのインデックス変数は常にスレッド private 変数として扱われ、また常に storeback 変数です。
明示的に並列化された for ループ内で使用されているすべての変数を、shared、private、reduction、または readonly として明示的に指定し、「デフォルトのスコープの規則」が適用されないようにしてください。
コンパイラは、共有変数に対するアクセスの同期を一切実行しないので、たとえば、配列参照を含んだループに対して MP taskloop プラグマを使用する前には、十分な考察が必要になります。このように明示的に並列化されたループで、繰り返し間でのデータ依存性がある場合には、並列実行を行うと正しい結果を得られないことがあります。コンパイラによって、このような潜在的な問題を検出し、警告メッセージを出力することもできますが、一般的にこれを検出することは非常に困難です。なお、共有変数に対する潜在的な問題を持ったループでも、明示的に並列化を指示されると、コンパイラはこの指示に従います。