Sun Studio 12 Update 1: C++ ユーザーズガイド

6.2 クラステンプレート

クラステンプレートは、複数の関連するクラスまたはデータ型を記述します。クラステンプレートに記述されているクラスは、型、整数値、大域リンケージによる変数へのポインタや参照だけが互いに異なっています。クラステンプレートは、一般的ではあるけれども型が保証されているデータ構造を記述するのに特に便利です。

6.2.1 クラステンプレートの宣言

クラステンプレートの宣言では、クラスの名前とそのテンプレート引数だけを指定します。このような宣言は「不完全なクラステンプレート」と呼ばれます。

次の例は、任意の型の引数をとる Array というクラスに対するテンプレート宣言の例です。


template <class Elem> class Array;

次のテンプレートは、unsigned int の引数をとる String というクラスに対する宣言です。


template <unsigned Size> class String;

6.2.2 クラステンプレートの定義

クラステンプレートの定義では、次の例のようにクラスデータと関数メンバーを宣言する必要があります。


template <class Elem> class Array {
        Elem* data;
        int size;
    public:
        Array( int sz );
        int GetSize();
        Elem& operator[]( int idx );
};

template <unsigned Size> class String {
        char data[Size];
        static int overflows;
    public:
        String( char *initial );
        int length();
};

関数テンプレートとは違って、クラステンプレートには class Elem のような型パラメータと unsigned Size のような式パラメータの両方を指定できます。式パラメータには次の情報を指定できます。

6.2.3 クラステンプレートメンバーの定義

クラステンプレートを完全に定義するには、その関数メンバーと静的データメンバーを定義する必要があります。動的 (静的でない) データメンバーの定義は、クラステンプレート宣言で十分です。

6.2.3.1 関数メンバーの定義

テンプレート関数メンバーの定義は、テンプレートパラメータの指定と、それに続く関数定義から構成されます。関数識別子は、クラステンプレートのクラス名とそのテンプレートの引数で修飾されます。次の例は、template <class Elem> というテンプレートパラメータ指定を持つ Array クラステンプレートの 2 つの関数メンバー定義を示しています。それぞれの関数識別子は、テンプレートクラス名とテンプレート引数 Array<Elem> で修飾されています。


template <class Elem> Array<Elem>::Array( int sz )
    {size = sz; data = new Elem[size];}

template <class Elem> int Array<Elem>::GetSize()
    { return size; }

次の例は、String クラステンプレートの関数メンバーの定義を示しています。


#include <string.h>
template <unsigned Size> int String<Size>::length( )
    {int len = 0;
      while (len < Size && data[len]!= ’\0’) len++;
      return len;}

template <unsigned Size> String<Size>::String(char *initial)
    {strncpy(data, initial, Size);
      if (length( ) == Size) overflows++;}

6.2.3.2 静的データメンバーの定義

テンプレートの静的データメンバーの定義は、テンプレートパラメータの指定と、それに続く変数定義から構成されます。この場合、変数識別子は、クラステンプレート名とそのテンプレートの実引数で修飾されます。


template <unsigned Size> int String<Size>::overflows = 0;

6.2.4 クラステンプレートの使用

テンプレートクラスは、型が使用できる場所ならどこででも使用できます。テンプレートクラスを指定するには、テンプレート名と引数の値を設定します。次の宣言例では、Array テンプレートに基づいた変数 int_array を作成します。この変数のクラス宣言とその一連のメソッドは、Elemint に置き換わっている点以外は、Array テンプレートとまったく同じです (「6.3 テンプレートのインスタンス化」を参照)。


Array<int> int_array(100);

次の宣言例は、String テンプレートを使用して short_string 変数を作成します。


String<8> short_string("hello");

テンプレートクラスのメンバー関数は、ほかのすべてのメンバー関数と同じように使用できます。


int x = int_array.GetSize( );

int x = short_string.length( );
.