a には次のいずれかを指定します。
表 A–29 -xcode の値
値 |
意味 |
---|---|
abs32 |
32 ビット絶対アドレスを生成します。高速ですが範囲が限定されます。コード、データ、および bss を合計したサイズは 2**32 バイトに制限されます。 |
abs44 |
SPARC: 44 ビット絶対アドレスを生成します。中程度の速さで中程度の範囲を使用できます。コード、データ、および bss を合計したサイズは 2**44 バイトに制限されます。64 ビットのアーキテクチャーでのみ利用できます。動的 (共有) ライブラリで使用しないでください。 |
abs64 |
SPARC: 64 ビット絶対アドレスを生成します。低速ですが範囲は制限されません。64 ビットのアーキテクチャーでのみ利用できます。 |
pic13 |
位置に依存しないコード (小規模モデル) を生成します。高速ですが範囲が限定されます。-Kpic と同義です。32 ビットアーキテクチャーでは最大 2**11 個の固有の外部シンボルを、64 ビットでは 2**10 個の固有の外部シンボルをそれぞれ参照できます。 |
pic32 |
位置独立コード (ラージモデル) を生成します。pic13 ほど高速でない可能性がありますが、フルレンジ対応です。-KPIC と同義です。32 ビットアーキテクチャーでは最大 2**30 個の固有の外部シンボルを、64 ビットでは 2**29 個の固有の外部シンボルをそれぞれ参照できます。 |
-xcode=pic13 または -xcode=pic32 を使用の決定に際しては、 elfdump -c (詳細は elfdump(1) のマニュアルページを参照) を使用することによって、セクションヘッダー (sh_name: .got) を探して、大域オフセットテーブル (GOT) のサイズを確認してください。sh_size 値が GOT のサイズです。GOT のサイズが 8,192 バイトに満たない場合は -xcode=pic13、そうでない場合は -xcode=pic32 を指定します。
一般に、-xcode の使用方法の決定に際しては、次のガイドラインに従ってください。
実行可能ファイルを構築する場合は、-xcode=pic13 と -xcode=pic32 のどちらも使わない。
実行可能ファイルへのリンク専用のアーカイブライブラリを構築する場合は、-xcode=pic13 と -xcode=pic32 のどちらも使わない。
共有ライブラリを構築する場合は、-xcode=pic13 からスタートし、GOT のサイズが 8,192 バイトを超えたら、-xcode=pic32 を使用する。
共有ライブラリへのリンク用のアーカイブライブラリを構築する場合は、-xcode=pic32 のみ使用する。
32 ビットアーキテクチャーの場合は -xcode=abs32 です。64 ビットアーキテクチャーの場合は -xcode=abs44 です。
共有動的ライブラリを作成する場合、64 ビットアーキテクチャーでは -xcode のデフォルト値である abs44 と abs32 を使用できません。-xcode=pic13 または -xcode=pic32 を指定してください。SPARC の場合、-xcode=pic13 および -xcode=pic32 では、わずかですが、次の 2 つのパフォーマンス上の負担がかかります。
-xcode=pic13 および -xcode=pic32 のいずれかでコンパイルしたルーチンは、共有ライブラリの大域または静的変数へのアクセスに使用されるテーブル (_GLOBAL_OFFSET_TABLE_) を指し示すようレジスタを設定するために、入口で命令を数個余計に実行します。
大域または静的変数へのアクセスのたびに、_GLOBAL_OFFSET_TABLE_ を使用した間接メモリー参照が 1 回余計に行われます。-xcode=pic32 でコンパイルした場合は、大域および静的変数への参照ごとに命令が 2 個増えます。
こうした負担があるとしても、-xcode=pic13 あるいは -xcode=pic32 を使用すると、ライブラリコードを共有できるため、必要となるシステムメモリーを大幅に減らすことができます。-xcode=pic13 あるいは -xcode=pic32 でコンパイルした共有ライブラリを使用するすべてのプロセスは、そのライブラリのすべてのコードを共有できます。共有ライブラリ内のコードに非 pic (すなわち、絶対) メモリー参照が 1 つでも含まれている場合、そのコードは共有不可になるため、そのライブラリを使用するプログラムを実行する場合は、その都度、コードのコピーを作成する必要があります。
.o ファイルが -xcode=pic13 または -xcode=pic32 でコンパイルされたかどうかを調べるには、次のように nm コマンドを使用すると便利です。
% nm file.o | grep _GLOBAL_OFFSET_TABLE_ U _GLOBAL_OFFSET_TABLE_ |
位置独立コードを含む .o ファイルには、_GLOBAL_OFFSET_TABLE_ への未解決の外部参照が含まれます。このことは、英文字の U で示されます。
-xcode=pic13 または -xcode=pic32 を使用すべきかどうかを判断するには、nm を使用して、共有ライブラリで使用または定義されている明確な大域および静的変数の個数を確認します。_GLOBAL_OFFSET_TABLE_ のサイズが 8,192 バイトより小さい場合は、-Kpic を使用できます。そうでない場合は、-xcode=pic32 を使用する必要があります。