現行の libC ライブラリに含まれているマルチスレッドで使用しても安全なクラスを使用すると、シングルスレッドアプリケーションの場合でさえも多少のオーバーヘッドが発生します。libC の unsafe_ クラスを使用すると、このオーバーヘッドを回避できます。
次のようにスコープ決定演算子を使用すると、unsafe_ 基底クラスのメンバー関数を実行できます。
cout.unsafe_ostream::put(’4’); |
cin.unsafe_istream::read(buf, len); |
unsafe_ クラスは、マルチスレッドアプリケーションでは安全に使用できません。
unsafe_ クラスを使用する代わりに、cout オブジェクトと cin オブジェクトを unsafe にしてから、通常の操作を行うこともできます。ただし、パフォーマンスが若干低下します。unsafe な cout と cin は、次のように使用します。
#include <iostream.h> //disable mt-safety cout.set_safe_flag(stream_MT::unsafe_object); //disable mt-safety cin.set_safe_flag(stream_MT::unsafe_object); cout.put(”4’); cin.read(buf, len); |
iostream オブジェクトがマルチスレッドで使用しても安全な場合は、相互排他ロックを行うことで、そのオブジェクトのメンバー変数が保護されます。 しかし、シングルスレッド環境でしか実行されないアプリケーションでは、このロック処理のために、本来なら必要のないオーバーヘッドがかかります。iostream オブジェクトのマルチスレッドでの安全性の有効/無効を動的に切り替えると、パフォーマンスを改善できます。たとえば、iostream オブジェクトのマルチスレッドでの安全性を無効にするには、次のようにします。
fs.set_safe_flag(stream_MT::unsafe_object);// disable MT-safety .... do various i/o operations |
iostream が複数のスレッド間で共有されないコード領域では、マルチスレッドでの安全性の無効化ストリームであっても、安全に使用できます。たとえば、スレッドが 1 つしかないプログラムや、スレッドごとに非公開の iostream を使用するプログラムでは問題は起きません。
プログラムに同期処理を明示的に挿入すると、iostream が複数のスレッド間で共有される場合にも、マルチスレッドで使用すると安全ではない iostream を安全に使用できるようになります。この例を次に示します。
generic_lock(); fs.set_safe_flag(stream_MT::unsafe_object); ... do various i/o operations generic_unlock(); |
ここで、generic_lock 関数と generic_unlock 関数は、相互排他ロック (mutex)、セマフォー、読み取り/書き込みロックといった基本型を使用する同期機能であれば、何でもかまいません。
libC クラスによって提供される stream_locker クラスは、この目的で優先される機構です。
詳細は 「11.4.5 オブジェクトのロック」を参照してください。