Oracle Solaris Studio 12.2 リリースの新機能

関数の多重定義の解決

C++ コンパイラの従来のリリースでは、C++ 標準の要件に従って関数の多重定義の解決を行いませんでした。今回のリリースでは、多重定義された関数の呼び出しを解決して、多くのバグを修正しています。特に、コンパイラは、呼び出しが実際にあいまいな場合は関数をピッキングしたり、実際にはそうでない場合にも、呼び出しがあいまいであると表示したりする場合がありました。

あいまいであることを示すメッセージに関する回避策には、不要なものもあります。以前には報告されなかった、あいまいに関する新しいエラーが発生しています。

あいまいな関数呼び出しの主な原因の 1 つは、組み込み型のサブセットにさえも多重定義が発生することです。


      int f1(short);
      int f1(float);
      ...
      f1(1); // ambiguous, "1" is type int
      f1(1.0); // ambiguous, "1.0" is type double

この問題を修正するには、f1 をまったく多重定義しないか、昇格を経験しない各型、つまり int、unsigned int、long、unsigned long、double を多重定義します (long long、unsigned long long、および long double 型がある場合もあります)。

もう 1 つのあいまいに関する主な原因はクラスにおける型変換関数で、特に多重定義された演算子またはコンストラクタが存在する場合です。


      class T {
      public:
              operator int();
              T(int);
              T operator+(const T&);
      };
      T t;
      1 + t // ambiguous

この演算は、次のように解決できるので、あいまいです


        T(1) + t     // overloaded operator
       1 + t.operator int()    // built-in int addition

多重定義された演算子または型変換関数を使用できますが、両方使用すると、あいまいと判断されます。

実際、型変換関数そのものは、あいまいと判断されたり、意図しなかった場所で変換が発生したりすることがたびたびあります。変換を有効にする必要がある場合は、型変換関数ではなく名前付き関数を使用してください。たとえば、operator int(); の代わりに int to_int(); を使用します。

この変更により、演算子 1 + t はあいまいではなくなります。T(1) + t としか解釈できません。ほかの解釈が必要な場合は、1 + t.to_int() のように記述する必要があります。