Sun Desktop Manager は、アプリケーションを実行するユーザー、組織、およびホストマシン用に、アプリケーションの構成設定をネットワーク上の中央の場所に保存するためのフレームワークを提供します。
この章では、Desktop Manager の全体的なアーキテクチャーと重要な概念について説明します。
Desktop Manager は、次の構成設定を直接的にサポートします。
Gconf (GNOME 構成フレームワーク)
StarSuiteTM Registry
MozillaTM Preferences
JavaTM Preferences
デスクトップランチャー
メニューエントリ
スタートアップアプリケーション
Desktop Manager がサポートするのは、これらの設定を使用するアプリケーションだけです。
デフォルトでは、システム管理者に関連する設定のみを Desktop Manager によって構成することができます。ただし、インストールとともに含まれるテンプレートを使用することによって、制御する構成設定が含まれるように Desktop Manager を拡張することができます。さらに、サポートされている構成システムを使用しないデスクトップアプリケーションは、既存のデータフレームワークを通じて中央の構成データにアクセスできます。

Desktop Manager に含まれるコンポーネントは、次のとおりです。
構成リポジトリ: 構成リポジトリは、構成プロファイルおよび組織構造を保存します。
管理ツール: 管理ツールは、Desktop Manager の Web ベース管理 GUI およびコマンド行インタフェース (CLI) を指します。これらのツールによって、構成プロファイルの作成、変更、削除、および割り当てを行うことができます。
管理ツールは、構成リポジトリのデータにアクセスし、テンプレートを使用してブラウザウィンドウにデータを表示します。
Configuration Agent とアダプタ: エージェントは、ユーザーアプリケーションに関して、構成リポジトリの構成設定を取り出したりキャッシュしたりします。アダプタは設定を適用します。エージェントとアダプタは、各クライアントにインストールする必要があります。
テンプレート: テンプレートは、Web ブラウザウィンドウに構成データを表示します。
Desktop Manager は、構成データを構成リポジトリに保存します。構成リポジトリに保存されるのは、次の 3 つのタイプの構成データです。
組織構造: 組織の構造を記述します。組織構造の 1 つのオブジェクトは「要素」と呼ばれます。組織構造の構成データは、次の情報を提供します。
組織およびサブ組織の構造を表すツリー。これには、組織を構成するユーザーのリスト、およびユーザーの組織構造内の位置が含まれます。
ホストドメインおよびサブドメインの構造を表すツリー。
構成プロファイル: 「構成プロファイル」と呼ばれる、アプリケーションまたはモジュールに関する構成データのセットを定義します。プロファイルは、組織、ドメイン、ホスト、およびユーザーに割り当てることができます。プロファイルは、構成設定のデフォルト値を提供したり、構成キーの値を強制的に設定したりします。1 つのプロファイルには、複数のアプリケーションを対象とする複数のプロファイルを含めることができます。
構成プロファイルを使用することによって、StarSuite Writer のルーラーのデフォルトの測定単位など、デフォルトの構成設定を組織に対して定義することができます。ただし、ユーザーはアプリケーションの設定を手動で行うことによって、デフォルト値を上書きすることができます。
構成設定の値を変更して、プロファイルのデフォルト設定を強制的に適用し、ユーザーが設定を手動で変更できないようにすることも可能です。
構成プロファイルは、組織構造またはドメイン構造の要素ノードに保存されます。

プロファイルの割り当てによって、プロファイルに含まれる構成データが要素に関連付けられます。プロファイルを割り当てることができるのは、プロファイルを保存する要素、または階層において保存要素の下位にある要素だけです。

Desktop Manager は、構成プロファイルとともに優先順位も保存します。優先順位は、プロファイル構成データを作成したときにプロファイルが割り当てられる順序を決定します (「プロファイル構成データの構造」を参照)。複数の構成プロファイルを同じ優先順位で要素に保存することはできません。
ローカルのユーザー固有の構成プロファイルをデスクトップマシンに直接保存するために Desktop Manager を使用することもできます。
割り当て: 割り当ては、組織の 1 つまたは複数の要素とプロファイルの関係を定義します。割り当てによって、構成データが適用可能な組織またはドメインの要素が定義されます。
組織階層において、子要素は親要素の割り当てを継承します。
実装可能な構成リポジトリは、次の 3 つのタイプです。
LDAP: LDAP ディレクトリサーバーに構成データを追加エントリとして保存します。Desktop Manager は、次の LDAP ディレクトリサーバーをサポートします。
SunTM Java Systems Directory Server
OpenLDAP
Microsoft Active Directory
このタイプのリポジトリを照会するために使用するアクセスプロトコルは LDAP です。ただし、その他の LDAPv3 準拠のディレクトリもリポジトリとして使用できます。
ファイル: ファイルシステムに構成データを保存します。Desktop Manager は、直接ファイルシステムから、または HTTP/HTTPS を介してこのタイプのリポジトリにアクセスします。HTTP/HTTPS アクセスの場合、エージェントが構成リポジトリにアクセスできるように Web サーバーを構成する必要があります。すなわち、プロファイルと割り当てを保存するファイルシステムに対して管理ツールが読み取り / 書き込みアクセスできる必要があります。
ハイブリッド: ハイブリッドリポジトリは、会社の組織構造を LDAP サーバーから読み取り、次に構成設定をファイルシステムに読み取ったり書き込んだりします。
LDAP 構成リポジトリは、最高の総体的パフォーマンスを実現します。ハイブリッドリポジトリは、LDAP ディレクトリに書き込みアクセスできない場合に最適です。ファイルベースのリポジトリは、評価目的にのみ適します。
管理ツールは、構成データを管理するための Web ベースのグラフィカルユーザーインタフェースおよびコマンド行インタフェースを提供します。このツール構成リポジトリに対してのみ動作し、エージェントが実行されている必要はありません。
LDAP 構成リポジトリを使用する場合、LDAP サービスを持つシステムから別のシステムに管理ツールを配備することができます。ファイルベースのリポジトリを使用する場合、noaccess ユーザーまたは Java Web Console が実行されているユーザーのために、直接アクセスと読み取り / 書き込みの権限が管理ツールに必要です。つまり、ツールがリポジトリと同じシステムにあるか、リポジトリが読み取り / 書き込み権をツールに付与した NFS マウントである必要があります。noaccess ユーザーは、 Desktop Manager の GUI を実行します。これはツールのインストール時に作成する必要があります。
管理ツールを使用して、プロファイルの作成、削除、変更、割り当て、および割り当て解除を行うことができます。管理ツールを使用して、階層内の要素を追加、削除、および変更することはできません。たとえば、ユーザーを追加することはできません。
Desktop Manager は、テンプレートを使用することによって、構成リポジトリの構成設定を表示、定義、および強制的に設定し、その構成設定を表示するための GUI を表示します。テンプレートは、Web ベースの管理ツールによって配備されます。
テンプレートの詳細については、『Sun Desktop Manager 1.0 開発者ガイド』を参照してください。
Desktop Manager から構成データにアクセスするには、デスクトップクライアントに Desktop Manager Configuration Agent が必要です。Configuration Agent は、リモートの構成データリポジトリおよびアダプタと通信すると同時に、データを特定の構成システムに統合します。現在サポートされている構成システムは、GConf、Java Preferences、Mozilla Preferences、および StarSuite Registry です。
構成アダプタは、Configuration Agent に構成データを照会し、そのデータをアプリケーションに提供します。一元的に管理するすべてのクライアントにアダプタをインストールする必要があります。
このセクションでは、構成データが、最終的に特定のホストで実行している特定のアプリケーションのユーザー設定になるまで、どのように処理されるかについて説明します。
各ユーザーアプリケーションは、次のソースから構成データを受け取ります。
デフォルト構成データソース: アプリケーションのデフォルト設定を保存します。この構成データソースは、アプリケーションとともに配備され、配備後は、ほとんど変更されません。このデータソースの照会メカニズムおよび書式は、アプリケーションごとに定義されます。一部のアプリケーションは独自の方法を使用して構成データを保存しますが、それ以外のアプリケーションは構成データのための共有システム (GConf など) を使用します。
ユーザー構成データソース: アプリケーションのユーザー設定を保存します。このデータソースの照会 / 更新メカニズムおよび書式は、アプリケーションごとに定義されます。
プロファイル構成データソース: このデータソースは Sun Desktop Manager 1.0 によって提供されます。この構成データは構成リポジトリに保存されます。そのデータにアクセスするためのメカニズムは、Configuration Agent と構成アダプタによって提供されます。
ホスト上のユーザーのアプリケーション設定は、2 ステップで計算されます。つまり、プロファイル構成ツリーが構築されてから、構成データソースが結合されます。
プロファイル構成データは、特定ホストで実行されるユーザーアプリケーションの構成プロファイルを保持します。
組織の各組織単位がそのユーザーとともに構成リポジトリに階層的に保存されます。各ドメインコンポーネントも同様に保存されます。
構成プロファイルは、階層の要素に割り当てられます。要素に割り当てられた構成プロファイルは、その要素の子によって継承されます。
アプリケーションの構成データは、アプリケーションを実行するユーザーやアプリケーションが実行されるホストに依存します。
ユーザーに影響を与える構成設定は、ユーザー要素からそのツリーのルートまでのパスにある要素に割り当てられている構成プロファイルに依存します。ユーザーに対する構成設定のセットが作成されるには、これらのプロファイルがマージされる必要があります。
ユーザーのアプリケーションが実行されているホストに基づいてプロファイルを定義できるので、そのホストに割り当てられているプロファイル、またはそのホストからツリーのルートまでのパスにある要素のいずれかに割り当てられているプロファイルも、ユーザーに影響を与える構成プロファイルとともにマージされるようにします。

プロファイル構成の構築のために、次の規則が使用されます。
処理の順序: プロファイルがマージされる順序は重要です。最初に構成プロファイルのホストローカルセットが処理され、ホストグローバルセット、ユーザーローカルセット、次にユーザーグローバルセットと続きます。
セット内に複数の構成プロファイルがある場合、プロファイルに関連付けられている優先順位番号によってプロファイルの処理順序が決定されます。つまり、もっとも小さい番号のプロファイルが最初に処理されます。
属性と値: 属性は、「背景色」など、定義することができる構成の要素です。値は、属性「背景色」の値を「白」とするように、属性に割り当てることができる値です。
プロファイルに新しい属性を導入すると、マージされた構成ツリーにその属性と値が追加されます。
強制的として指定した値を属性に指定すると、マージされたツリーにその新しい値が保存されます。その他のプロファイルで発生するその属性の新しい値は無視されます。
処理されるプロファイルで新しい値が定義される場合、属性に値がすでにあるときは、新しい値がその属性に割り当てられます。
3 つの異なる構成データソースによって提供される構成データは、ユーザーアプリケーションが実行時に使用する設定の単一のセットとなるように結合される必要があります。
デフォルト構成のプロバイダによって提供される構成データが読み取られ、構成ツリーが構築されます。
プロファイル構成データが、クライアントアプリケーションのユーザーおよびホストに基づいて構築されます。
ユーザー設定が読み取られ、構成ツリーが構築されます。
3 つのツリーが 1 つに組み合わされることによって、アプリケーションが使用する構成設定になります。この処理中に従う規則は、プロファイル構成データの構築で使用される規則と同じです。
処理結果のツリーはアプリケーションアダプタによって使用されて、構成設定を提供します。