この章では、Solaris 10 8/07 リリースで導入されたすべての新機能の概要を示します。
Solaris 10 8/07 リリースでは、次のシステム管理機能および拡張機能が追加されました。
新しい機能を提供するために、ネームサービススイッチ (nss) と ネームスイッチキャッシュデーモン (nscd(1M)) に拡張機能が追加されました。具体的な拡張内容は次のとおりです。
更新されたフレームワーク内での nscd(1M) および接続の管理におけるキャッシュ機能の向上。
ユーザーごとにネームサービスでアクセス制御されるネームサービス検索。更新されたスイッチフレームワークでは、Microsoft Active Directory で使用した認証モデルと互換性のある方法で SASL/GSS/Kerberos を使用して、この検索方式のサポートを追加します。
将来追加される putXbyY インタフェース用のフレームワーク。
ユーザーごとの検索の詳細は、『Solaris のシステム管理 (ネーミングとディレクトリサービス : DNS、NIS、LDAP 編)』を参照してください。
iostat コマンドの -Y オプションによって、Solaris 入出力マルチパスを使用するマシンの新しいパフォーマンス情報が提供されます。
詳細については、iostat(1M) のマニュアルページを参照してください。
このリリース以降、次のうちいずれか 1 つの方法で Solaris OS の登録ができます。
Basic Registration 1.1 - Sun Connection がホストする配備アーキテクチャーか Update Manager を使用する場合は、この方法を使用します。
Solaris Registration - Sun Connection を使用して、登録しているシステムの目録を維持管理する場合は、この方法を使用します。
Basic Registration 1.1 は、Solaris 10 6/06 リリースで導入されたシステム管理機能です。Basic Registration 機能では、Update Manager の Solaris 10 ソフトウェア登録を自動化する登録プロファイルおよび ID を作成できます。Update Manager は、Sun Connection によって使用される単一のシステム更新クライアントです。Sun Connection は以前 Sun Update Connection System Edition と呼ばれていました。システムのリブート時に、Basic Registration ウィザードが表示されます。Basic Registration 1.1 機能についての詳細は、「Basic Registration 1.1」を参照してください。Sun Connection 製品のポートフォリオと、ウィザードによる登録方法についての詳細は、http://www.sun.com/bigadmin/hubs/connection/ で Sun Connection Information Hub を参照してください。
Solaris Registration を使用すると、Sun Online Account のユーザー名とパスワードを入力することで、1 つまたは複数の Solaris ソフトウェアインスタンスを同時に登録できます。登録については、http://jp.sun.com/products/software/solaris/10/service/sunupdate/faq.html を参照してください。
Sun Service Tag は、すばやく簡単に登録するために、使用されている Sun のシステム、ソフトウェア、およびサービスを自動的に検出するように設計された製品識別子です。サービスタグによって各タグ付き資産を一意に識別し、標準 XML の形式で資産の情報をローカルネットワーク全体で共有することができます。
サービスタグは、サービス管理機能 (SMF) および SMF generic_open.xml プロファイルの一部として有効になります。SMF generic_limited_net.xml プロファイルを選択した場合、サービスタグは有効になりません。
SMF についての詳細は、『Solaris のシステム管理 (基本編)』を参照してください。サービスタグ、収集される情報の種類、および自動登録の詳細については、http://www.sun.com/bigadmin/hubs/connection/tasks/register.jsp で BigAdmin の Sun Connection を参照してください。
MPxIO パスステアリング機能には、LU への指定されたパスに渡される SCSI コマンドを MPxIO LU に発行するためのメカニズムが含まれています。この機能を提供するために、新しい IOCTL コマンド MP_SEND_SCSI_CMD が追加され、既存の scsi_vhci IOCTL インタフェースを介して参照されます。この新しい IOCTL コマンドにアクセスできるようにする拡張機能がマルチパス管理ライブラリ(MP-API) に導入されました。これにより、ネットワーク管理者は指定されたパスを介して診断コマンドを実行できます。
raidctl は、複数の RAID コントローラを使用して RAID 構成作業を実行できるユーティリティーです。raidctl 機能には、コントローラ、ボリューム、物理ディスクなどの RAID コンポーネントに関する詳細な情報が含まれています。raidctl ユーティリティーを使用すると、RAID システムをより詳細に追跡して、さまざまな RAID コントローラ上での学習作業を簡略化できます。
詳細については、次を参照してください。
zoneadm(1M) コマンドは、ブランドゾーンで特定の zoneadm オペレーションに対して妥当性検査を行う外部プログラムを呼び出すように変更されました。この検査は、指定した zoneadm サブコマンドが実行される前に行われます。ただし、ブランドの構成ファイル /usr/lib/brand/<brand_name>/config.xml で、zoneadm(1M) 用のブランド固有の外部ハンドラプログラムを指定するようにしてください。ブランドの構成ファイルで外部プログラムを指定するには、<verify_adm> タグを使用します。
新しい種類のブランドゾーンを導入し、zoneadm(1M) サブコマンド用のブランド固有のハンドラの一覧を表示するには、ブランドの config.xml ファイルに次の行を追加します。
<verify_adm><absolute path to external program> %z %* %*</verify_adm> |
この行では、%z はゾーン名、最初の %* は zoneadm サブコマンド、そして 2 番目の %* はサブコマンドの引数です。
この機能は、ブランドゾーンがすべての zoneadm(1M) オペレーションをサポートしていない可能性がある場合に役立ちます。ブランド固有のハンドラを使用すると、サポートされていない zoneadm コマンドが正規の手順で失敗するように設定できます。
指定したハンドラプログラムがすべての zoneadm(1M) サブコマンドを認識していることを確認してください。
この障害管理機能には、AMD (TM) Opteron および Athlon 64 Rev F プロセッサを使用するシステムの CPU やメモリーを対象としたエラー処理と障害管理サポートが導入されています。これらのプロセッサは、Sun Fire X2200 M2 や Ultra 20 M2 などの Sun 社製の「M2」製品で使用されます。Solaris 10 8/07 より前のリリースでは、Opteron および Athlon 64 リビジョン B - E の障害管理サポートを提供していました。
障害管理サポートは、デフォルトで有効になっています。障害管理サービスで CPU やメモリーの訂正可能なエラーを検出し、結果として得られたテレメトリデータを診断エンジンが解析するため、エラーや障害は可能なかぎり訂正されます。システムがエラーを訂正できない場合、システム管理者は拡張されたテレメトリ機能の助けを借りることができます。
詳細は、http://www.opensolaris.org/os/community/fm/ を参照してください。
このリリースから、Solaris OS はシステム上のハードウェアエラーを自動的に検出および診断する一連の予測的自己修復機能を備えています。
Solaris 障害マネージャーは x64 ハードウェア上の障害を自動的に診断します。診断メッセージは fmd デーモンによって報告されます。
Solaris 障害マネージャーの詳細については、次の項目を参照してください。
このリリース以降、stmsboot ユーティリティーが x86 システムに移植されます。stmsboot は、ファイバチャネルデバイスの MPxIO を有効または無効にするために使用するユーティリティーです。SPARC システムには、この stmsboot ユーティリティーがすでにあります。
このユーティリティーを使用すると、MPxIO を自動的に有効または無効にできます。以前は MPxIO を手動で有効または無効にする必要があり、これは特に SAN システムのブートでは難しい作業でした。
詳細については、次を参照してください。
stmsboot(1M) のマニュアルページ
『Solaris Fibre Channel Storage Configuration and Multipathing Support Guide』(http://docs.sun.com) の「Enabling or Disabling Multipathing on x86 Based Systems」に関する項
このリリース以降、並行 READ/WRITE FPDMA QUEUED コマンドがサポートされるようになりました。特定の作業負荷がかかる状況のもとで、Solaris marvell88sx ドライバを使って入出力操作を行なっているときに、性能が大幅に向上します。ほかの作業負荷でも、程度は小さくなりますが、多少の性能向上が得られます。また、SATA 仕様のこのオプション部分をサポートするドライバに対する数多くの作業負荷においても、性能が著しく向上します。
タグ付きの待ち行列により、SATA ディスクのヘッドモーションとパフォーマンスを最適化できます。
Solaris 10 8/07 リリースでは、次のインストール機能と拡張機能が追加されました。
Solaris OS のインストール時に NFS version 4 のドメインを定義できるようになりました。Solaris 10 8/07 より前のリリースでは、NFS ドメイン名はインストール後にはじめてシステムを再起動した際に定義していました。
NFSv4 ドメイン名機能は、OS のインストールに次のような影響を与えます。
sysidtool コマンドに、拡張された sysidnfs4 プログラムが含まれています。sysidnfs4 プログラムはインストールプロセス中に起動し、NFSv4 ドメインがネットワークに構成されているかを判定するようになりました。
対話式インストールの過程で、OS から自動的に得られたデフォルトの NFSv4 ドメイン名がユーザーに提示されます。ユーザーはこのデフォルトをそのまま使用できます。または、ユーザーは別の NFSv4 ドメインを指定してもかまいません。
詳細は、sysidtool(1M) および sysidnfs4(1M) のマニュアルページを参照してください。
Solaris JumpStartTM インストールの過程で、sysidcfg ファイルに新しいキーワードを使用できます。ユーザーは新しいキーワード nfs4_domain を使用して、NFSv4 ドメインの値を割り当てることができるようになりました。
この新しいキーワードの詳細は、sysidcfg(4) のマニュアルページを参照してください。このマニュアルページには、nfs4_domain キーワードの使用例も提供されています。
NFSv4 ドメイン名の構成についての詳細は、『Solaris のシステム管理 (ネットワークサービス)』を参照してください。
このリリース以降、Solaris Live Upgrade には次の拡張機能が追加されました。
Solaris Live Upgrade を使用すれば、非大域ゾーンがシステムにインストールされているときに Solaris OS をアップグレードできます。
新しいパッケージ SUNWlucfg をほかの Solaris Live Upgrade パッケージ SUNWlur および SUNWluu とともにインストールする必要があります。
これらの 3 つのパッケージは、Solaris Live Upgrade を使ってアップグレードを行うのに必要なソフトウェアを構成します。これらのパッケージには、既存のソフトウェア、新しい機能、およびバグ修正が含まれています。Solaris Live Upgrade を使用する前にこれらのパッケージをシステムにインストールしないと、ターゲットリリースへのアップグレードは失敗します。
非大域ゾーンがシステムにインストールされているときにアップグレードする方法の詳細は、『Solaris 10 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)』を参照してください。
Solaris 10 8/07 以降のリリースでは、非大域ゾーンがインストールされている場合に、Solaris 10 8/07 より前のリリースに見られたほとんどの制限を受けずに Solaris OS をアップグレードできます。
アップグレードに対する唯一の制限は、Solaris フラッシュアーカイブに関するものです。Solaris フラッシュアーカイブを使ってインストールを行う場合は、非大域ゾーンが含まれているアーカイブがシステムに正しくインストールされません。
次の変更は、非大域ゾーンがインストールされているシステムに対応するためのものです。
Solaris 対話式インストールプログラムでは、非大域ゾーンがインストールされている場合に、CD および DVD を使ってシステムのアップグレードまたはパッチ適用が可能です。または、CD または DVD どちらかのネットワークインストールイメージを使用することもできます。以前は、DVD によるアップグレードに限定されていました。インストールされている非大域ゾーンの数に応じて、アップグレードやパッチに要する時間が大幅に長くなることがあります。
自動化された JumpStart インストールでは、アップグレードまたはパッチに適用されるキーワードを使ってアップグレードまたはパッチを行うことができます。Solaris 10 8/07 より前のリリースでは、使用できるキーワードは一部のものに限定されていました。インストールされている非大域ゾーンの数に応じて、アップグレードやパッチに要する時間が大幅に長くなることがあります。
Solaris Live Upgrade では、非大域ゾーンが含まれているシステムのアップグレードまたはパッチが可能です。システムに非大域ゾーンが含まれている場合は、アップグレードプログラムまたはパッチを追加するプログラムとして、Solaris Live Upgrade を推奨します。ほかのアップグレードプログラムでは、膨大なアップグレード時間が必要となる場合があります。これは、アップグレードの実行に要する時間が、インストールされている非大域ゾーンの数に比例して増加するからです。Solaris Live Upgrade を使ってシステムにパッチを適用する場合は、システムをシングルユーザーモードにする必要がないため、システムの稼働時間を最大限に活用できます。
次の変更は、非大域ゾーンがインストールされているシステムに対応するためのものです。
新しいパッケージ SUNWlucfg をほかの Solaris Live Upgrade パッケージ SUNWlur および SUNWluu とともにインストールする必要があります。このパッケージは、非大域ゾーンがインストールされているシステムだけでなく、どのシステムにも必要です。
これらの 3 つのパッケージには、Solaris Live Upgrade を使ってアップグレードを行うのに必要なソフトウェアが含まれています。これらのパッケージには、既存のソフトウェア、新しい機能、およびバグ修正が含まれています。Solaris Live Upgrade を使用する前にこれらのパッケージをシステムにインストールしないと、ターゲットリリースへのアップグレードは失敗します。
現在稼働しているブート環境から新しいブート環境を作成する方法は同じままですが、例外が 1 つあります。非大域ゾーン内の共有ファイルシステムに対して宛先ディスクスライスを指定できます。
-m オプションの引数には、新しい省略可能フィールド zonename が追加されました。新しい zonename フィールドによって、新しいブート環境を作成し、個別のファイルシステムを含むゾーンを指定できます。この引数は、ゾーンの個別のファイルシステムを新しいブート環境の個別のスライス上に配置します。
lumount コマンドは、非大域ゾーンが、非アクティブブート環境にある対応するファイルシステムにアクセスできるようにします。大域ゾーン管理者が lumount コマンドを使って非アクティブブート環境をマウントすると、そのブート環境が非大域ゾーンに対してもマウントされます。
lufslist コマンドによるファイルシステムの表示機能が向上し、大域ゾーンと非大域ゾーンの両方のファイルシステムの一覧が表示されるようになりました。
Trusted Extensions が構成された Solaris システムでは、ラベル付きゾーンをアップグレードするための追加手順が必要です。この手順についての詳細は、「Solaris 10 8/07 ご使用にあたって」の「インストールに関する注意事項とバグ情報」にある、『ラベル付きゾーンが構成された Trusted Extensions システムのアップグレード』を参照してください。
このリリース以降、sysidkdb ツールによって、使用する USB 言語やそれに対応するキー配列が設定されます。
新しい sysidkdb ツールを使用すると、次の手順で処理が行われます。
キーボードが自己識別型である場合は、インストール時にキーボードの言語および配列が自動的に設定されます。
キーボードが自己識別型でない場合は、インストール時にユーザーがキーボード設定の配列を選択できるように、 サポートされているキー配列の一覧が sysidkdb ツールによって提供されます。
以前は、USB キーボードのインストール時の自己識別値を 1 としていました。そのため、自己識別型でないキーボードはすべて、SPARC でのインストール時に必ず米国英語 (U.S. English) キー配列に設定されていました。
PS/2 キーボードは自己識別型ではありません。インストール時にキー配列を選択する必要があります。
JumpStart 仕様: キーボードが自己識別型でない場合に、JumpStart インストール時にプロンプトが表示されないようにするには、sysidkdb ファイルでキーボードの言語を選択します。JumpStart インストールの場合、デフォルトは米国英語 (U.S. English) のキー配列となります。別の言語とそれに対応するキー配列を選択するには、sysidkdb ファイルでキーボードのキーワードを設定します。
詳細は、『Solaris 10 インストールガイド (ネットワークインストール)』を参照してください。
パッチ 119254-42 および 119255-42 以降、パッチインストールユーティリティー patchadd および patchrm が変更され、機能を提供する特定のパッチの処理方法が変わりました。この変更は、これらのパッチをどの Solaris 10 リリースにインストールする場合にも影響を与えます。これらの「遅延起動」パッチによって、機能パッチで提供される大規模な変更の処理能力が向上します。
限られた数のパッチが遅延起動パッチとして指定されています。遅延起動パッチは通常、Solaris 10 3/05 リリース以降の Solaris 10 リリース (例: Solaris 10 8/07 リリース) に関連するカーネルパッチです。pkginfo ファイルに変数 SUNW_PATCH_SAFEMODE が設定されている場合、パッチは遅延起動パッチとして指定されています。遅延起動パッチとして指定されていないパッチは、引き続き従来のとおりにインストールされます。たとえば、カーネルパッチ 118833-36 (SPARC) や 118855-36 (x86) などの以前にリリースされたパッチは、インストールに遅延起動パッチユーティリティーを使用しません。
以前は、これらのカーネルパッチには複雑なパッチスクリプトが必要でした。このスクリプトは、アクティブパーティションでのパッチインストールプロセス中の問題を回避するために必要でした。この問題は、パッチが提供するオブジェクトと実行中のシステム (アクティブパーティション) との間の不一致によるものです。現在、遅延起動パッチは、実行中のシステムの安定性を保証するためにループバックファイルシステム (lofs) を使用します。パッチが実行中のシステムに適用されると、lofs はパッチプロセス中の安定性を保持します。これらの大規模なカーネルパッチは必ずリブートを必要としますが、この必須リブートで lofs による変更がアクティブ化されるようになりました。パッチの README には、どのパッチでリブートが必要になるかが説明されています。
非大域ゾーンを実行しているか、lofs を無効にしている場合は、遅延起動パッチをインストールまたは削除する際に次の点を考慮してください。
このパッチ操作のためには、すべての非大域ゾーンを停止状態にする必要があります。パッチを適用する前に非大域ゾーンを停止してください。
遅延起動パッチは、安全に完了させるためにループバックファイルシステム (lofs) を必要とします。Sun Cluster 3.1 か Sun Cluster 3.2 を実行しているシステムは、lofs が有効になったときの HA-NFS 機能の制限によって、lofs が無効になっている可能性が高いです。このため、遅延起動パッチをインストールする前に次の手順を実行して、ループバックファイルシステムを再び有効にする必要があります。
/etc/system ファイルにある次の行を削除するかコメントにします。
exclude:lofs. |
システムを再起動します。
パッチをインストールします。
パッチのインストール操作を完了した後、/etc/system ファイルから同じ行を復元するか、コメントを解除します。
リブートして通常の操作を再開します。
Sun は Solaris Live Upgrade によるパッチ管理を推奨します。Solaris Live Upgrade は、実行中システムへのパッチ適用の問題を防ぎます。Solaris Live Upgrade は、パッチの適用に伴う停止時間を短縮し、問題発生時のフォールバック機能を提供してリスクを低減します。『Solaris 10 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)』を参照してください。
Solaris 10 8/07 リリースでは、次のネットワーク機能と拡張機能が追加されました。
Solaris では、RFC 2401 に準拠して IPsec のトンネルモードを実装するようになりました。ipsecconf(1M) の新しい「tunnel」キーワードを使用すれば、トンネルごとのインタフェースに基づいて、内部パケットセレクタを指定できます。IKE および PF_KEY は、Phase 2/Quick Mode 用の Tunnel Mode ID を処理します。ほかの IPsec 実装との相互運用性が著しく向上しました。
詳細は、『Solaris のシステム管理 (IP サービス)』の「IPsec のトランスポートモードとトンネルモード」を参照してください。
パケットフィルタフック機能には、次の重要な機能性があります。
STREAMS モジュール手法と比較して性能が向上している
ゾーン間でパケットを傍受できる
パケットフィルタフック機能は、カーネルの内部にある新しい API の一部です。開発者は、この API を使ってカーネル内で IP を処理したり、パケットを傍受したりできます。
このリリース以降、routeadm(1M) の機能が向上して、SMF ベースのルーティングデーモンのサービスを管理できるようになりました。また、次のコマンドのサービス変換機能が追加されました。
結果として、これらのサービスは、svcadm や svccfg などの標準の SMF コマンドによって管理され、SMF が提供する再起動機能を利用できるようになりました。
Quagga Software Routing Suite は、OSPF や BGP など、Solaris 向けの一連の IETF 経路制御プロトコルを提供して、SMF の「routeadm」を使って管理できる動的な経路制御を介して Solaris の高可用性を配備できるようにします。
Quagga は、以前 Solaris に含まれていた GNU Zebra ソフトウェアのコミュニティーフォークであり、多くの更新やいくつかの新機能を提供します。詳細は、/etc/quagga/README.Solaris を参照してください。
RFC 3315 に記載されているように、このリリース以降、Solaris OS では IPv6 向けの動的ホスト構成プロトコル (DHCPv6) をサポートするようになりました。DHCPv6 を使用すると、手動の構成を行わなくても、Solaris はローカルの DHCP サーバーから自動的に IPv6 アドレスを取得できます。
詳細は、次のマニュアルページを参照してください。
このリリース以降、Solaris OS では 2 つの異なる hosts ファイルを持たなくなりました。/etc/inet/hosts は、IPv4 と IPv6 の両方のエントリを含む単一の hosts ファイルです。Solaris システム管理者は、常に同期している 2 つの hosts ファイルで IPv4 エントリを保持する必要がなくなりました。/etc/inet/ipnodes ファイルは、下位互換性のために、/etc/inet/hosts への同名のシンボリックリンクに置き換えられています。
詳細は、hosts(4) および ipnodes(4) のマニュアルページを参照してください。
大量送信オフロード (Large Send Offload、LSO) は、ハードウェアのオフロード技術の 1 つです。LSO は、NIC ハードウェアに対する TCP セグメンテーションをオフロードして、CPU の作業負荷を減らすことによりネットワークの性能を向上させます。LSO は、低速の CPU スレッドが含まれているか、CPU 資源が不足しているシステムに 10G ビットのネットワークを採用している場合に役に立ちます。この機能は、基本的な LSO フレームワークを Solaris の TCP/IP スタックに組み込んで、LSO 対応のどの NIC でも LSO 機能で有効にできるようにします。
このリリース以降、nge ドライバは Jumbo Frame サポートを使用できるように更新されました。nge ドライバのデフォルトの MTU が 9K バイトまで上がり、それによってシステム性能が向上して、CPU の利用率が大幅に低くなりました。
詳細は、nge(7D) のマニュアルページを参照してください。
この機能についての詳細は、「インストール時に設定可能な NFSv4 ドメイン名」を参照してください。
Solaris 10 8/07 リリースでは、次のセキュリティー機能と拡張機能が追加されました。
Solaris Key Management Framework (KMF) は、公開鍵 (PKI) オブジェクトを管理するためのツールとプログラミングインタフェースを提供します。pktool コマンドを使用すると、管理者は nss、pkcs11、およびファイルベースのキーストア内の PKI オブジェクトを単一のユーティリティーから管理できます。
API 層では、開発者は使用するキーストアの種類を指定できます。KMF には、これらの PKI 技術のためのプラグインモジュールもいくつか用意されています。開発者は、これらのプラグインモジュールを使って、サポートされているどのキーストアでも使用できるアプリケーションを新たに作成できます。
KMF には、KMF アプリケーションがキーストアの種類に関係なく使用できる、システム全体のポリシーデータベースを提供する独自の機能があります。管理者は、kmfcfg コマンドを使用して、大域データベースにポリシー定義を作成できます。次に、KMF アプリケーションによって適用するポリシーが選択されます。その結果、そのあとに行われる KMF 処理はすべて、適用されているポリシーの制約を受けることになります。ポリシー定義には、次の項目に関するルールが含まれます。
妥当性検査の実施計画
キーと拡張キーの使用上の要件
トラストアンカーの定義
OCSP のパラメータ
CRL DB のパラメータ (location など)
詳細については、次を参照してください。
pktool(1) のマニュアルページ
kmfcfg(1) のマニュアルページ
このリリースより、libmd ライブラリは、軽量 API を使用することで MD4、MD5、SHA1、および SHA2 (SHA256、SHA384、SHA512 を含む) の暗号化ハッシュアルゴリズムの実装を提供します。libmd によって提供されるこれらの API と関数についての詳細は、次のマニュアルページを参照してください。
Solaris Cryptographic Framework 機能は、トークンデバイスの鍵署名を保護します。elfsign コマンドは、署名と証明書についてのより詳細な情報も表示します。
詳細は、elfsign(1) のマニュアルページを参照してください。
暗号化キットの SUNWcry および SUNWcryr パッケージは、デフォルトで Solaris 10 8/07 ソフトウェアに含まれています。Solaris Cryptographic Framework、Kerberos、および OpenSSL の十分な強度の暗号化がデフォルトでインストールされるようになりました。
Solaris 10 8/07 リリースでは、次のファイルシステム機能と拡張機能が追加されました。
この Solaris リリースでは、iSCSI ターゲットデバイス (ディスクまたはテープデバイス) がサポートされます。Solaris 10 8/07 より前のリリースでは、iSCSI イニシエータがサポートされていました。Solaris iSCSI ターゲットを設定する利点は、ファイバチャネル HBA の費用をかけずに、クライアントに接続できる既存のファイバチャネルデバイスを持てることです。また、専用のアレイを持つシステムが、複製されたストレージを ZFS または UFS ファイルシステムでエクスポートすることも可能になりました。
iscsitadm コマンドを使用して、iSCSI ターゲットデバイスを設定および管理できます。iSCSI ターゲットとして選択したディスクデバイスでは、iSCSI デーモン用のバッキングストアとして、同サイズの ZFS または UFS ファイルシステムを提供する必要があります。
ターゲットデバイスの設定後に、iscsiadm コマンドを使って iSCSI ターゲットを識別します。これにより、iSCSI ターゲットデバイスが検出および使用されます。
iscsiadm(1M) のマニュアルページ
iscsitadm(1M) のマニュアルページ
『Solaris のシステム管理 (デバイスとファイルシステム)』の第 14 章「Solaris iSCSI ターゲットおよびイニシエータの構成 (手順)」
拡張された FILE スペースの機能は、fopen ライブラリコマンドの F モードを追加でサポートします。F モードは、255 の制限を超えてファイルを開けるようにします。この機能によって、開発者は fopen コマンドを使ってファイル記述子を limit または ulimit コマンドで設定した制限まで扱えるようになります。
Solaris 10 8/07 リリースでは、次のシステム資源機能と拡張機能が追加されました。
Sun の BrandZ 技術は、ネイティブでないオペレーティング環境を含む非大域ブランドゾーンを作成するためのフレームワークを提供します。非大域ゾーンの簡単な拡張機能として、ブランドゾーンは同一の孤立した安全な環境を提供しており、ブランド管理はすべて現在のゾーン構造の拡張機能を使って行われます。
現在使用可能なブランドは lx ブランドで、これは Linux アプリケーション用の Solaris コンテナです。これらの非大域ゾーンは、Solaris OS が稼働している x86 または x64 マシン上に Linux アプリケーション環境を作成できます。
lx ブランドには、非大域ゾーン内に CentOS 3.5 - 3.8 または Red Hat Enterprise Linux 3.5 - 3.8 をインストールするために必要なツールが含まれています。32 ビットまたは 64 ビットモードの Solaris OS が稼働しているマシンでは、32 ビットの Linux アプリケーションを実行できます。
詳細は、『Solaris のシステム管理 (Solaris コンテナ : 資源管理と Solaris ゾーン)』の Part III 「Branded Zones」を参照してください。
また、次のマニュアルページも参照してください。
brands(5)
lx(5)
資源管理機能とゾーン機能の統合がさらに進んだことで、zonecfg コマンドを使ってシステムの資源管理能力をより簡単に強化できるようになりました。ゾーンがブートされると、ユーザーが指定した資源構成が自動的に作成されます。資源管理の設定にまつわる手順を手動で行う必要はなくなりました。
大域ゾーンの資源管理の設定を行う場合は、zonecfg コマンドを使用できます。
ゾーン全体の資源制御は、推奨される大域プロパティー名の方法を使って設定できます。新しいプロジェクトおよびゾーンの資源制御も使用可能です。
zone.max-locked-memory
zone.max-msg-ids
zone.max-sem-ids
zone.max-shm-ids
zone.max-shm-memory
zone.max-swap - キャップされたメモリー資源によるゾーンのスワップキャッピングを行います
project.max-locked-memory - project.max-device-locked-memory を置き換えます
ゾーン内のデフォルトスケジューラを設定する方法がいくつか追加されました (例: 新しいスケジューリングクラスプロパティー)。
資源プールの機能が向上しました。ゾーンがブートされると動的に作成される一時的なプールを追加できます。このプールは、dedicated-CPU 資源を介して設定されます。
オプションの設定値をクリアーする際に clear サブコマンドを使用できます。
rcapd(1M) が改善されたことにより、機能が向上した、大域ゾーンからの物理メモリーのキャッピング機能を使用できます。制限値は、キャップされたメモリー資源を介して設定されます。
この機能は、lx ブランドゾーンやネイティブゾーン用の物理メモリーをキャップする際に使用できます。詳細は、「lx ブランドゾーン: Linux アプリケーション用の Solaris コンテナ」を参照してください。
常駐セットサイズ (RSS) の計算機能が向上しています。資源上限デーモン rcapd と prstat コマンドが改善されました。
詳細については、次を参照してください。
prstat(1M) のマニュアルページ
rcapd(1M) のマニュアルページ
zonecfg(1M) のマニュアルページ
resource_controls(5) のマニュアルページ
ゾーンに排他的 IP インスタンスを割り当てるか、それとも IP 層の構成および状態を大域ゾーンと共有するかに応じて、IP ネットワーク接続を 2 通りの方法で設定できるようになりました。IP の種類を設定するには、zonecfg コマンドを使用します。
IP 共有タイプがデフォルトになります。これらのゾーンは、大域ゾーンと同じ VLAN または LAN に接続され、IP 層を共有します。lx ブランドゾーンは、共有 IP ゾーンとして設定されます。詳細は、「lx ブランドゾーン: Linux アプリケーション用の Solaris コンテナ」を参照してください。
IP レベルの完全な機能は、排他的 IP ゾーンで使用できます。ゾーンをネットワーク上の IP 層で孤立させる必要がある場合は、そのゾーンに排他的 IP を割り当てることができます。排他的 IP ゾーンを使用すると、異なる VLAN や LAN の異なるサブネット上で通信しなければならないアプリケーションを統合することができます。
詳細については、次を参照してください。
zonecfg(1M) のマニュアルページ
zones(5) のマニュアルページ
『Solaris のシステム管理 (Solaris コンテナ : 資源管理と Solaris ゾーン)』
構成情報については、『Solaris のシステム管理 (Solaris コンテナ : 資源管理と Solaris ゾーン)』の第 17 章「非大域ゾーンの構成 (概要)」および『Solaris のシステム管理 (Solaris コンテナ : 資源管理と Solaris ゾーン)』の第 18 章「非大域ゾーンの計画と構成 (手順)」を参照してください。
機能コンポーネントについては、『Solaris のシステム管理 (Solaris コンテナ : 資源管理と Solaris ゾーン)』の第 26 章「Solaris のゾーン管理 (概要)」および『Solaris のシステム管理 (Solaris コンテナ : 資源管理と Solaris ゾーン)』の第 27 章「Solaris のゾーン管理 (手順)」を参照してください。
Solaris ゾーンのブートの拡張機能では、ブート引数を boot および reboot の一部としてサポートするようになりました。次のブート引数は、今回からサポートされます。
-m <smf_options>
-i </path/to/init/>
-s
ブート引数は、次の方法で渡すことができます。
global# zoneadm -z myzone boot -- -m verbose
global# zoneadm -z myzone reboot -- -m verbose
myzone# reboot -- -m verbose
また、zonecfg コマンドの新しいプロパティー bootargs を使用すれば、ブート引数を永続的に指定できます。
zonecfg:myzone> set bootargs="-m verbose"
reboot、zoneadm boot、または zoneadm reboot コマンドで無効にされないかぎり、この設定が適用されます。
ブート引数と bootargs プロパティーの詳細は、次の項目を参照してください。
zoneadm(1M) のマニュアルページ
zonecfg(1M) のマニュアルページ
非大域ゾーン内のプロセスが使用する System V 資源の合計量を制限するために、次に示すゾーン全体の資源制御が追加されました。
zone.max-shm-memory
zone.max-shm-ids
zone.max-msg-ids
zone.max-sem-ids
資源制御は、非大域ゾーン用の zonecfg コマンドの add rctl 資源プロパティーによって設定します。
大域ゾーンの消費量を制限する場合は、prctl コマンドによって資源制御を設定できます。
詳細については、次を参照してください。
prctl(1) のマニュアルページ
zonecfg(1M) のマニュアルページ
resource_controls(5) のマニュアルページ
Solaris システムでは、それぞれの非大域ゾーン (インストールされている場合) にグローバル一意識別子を自動的に割り当てます。zoneadm list -p コマンドを使えば、この識別子を大域ゾーンと非大域ゾーンのどちらからでも取り出すことができます。ユーザーは、ゾーン自体を 1 つのアセットとみなすことにより、アセットの追跡にゾーンの一意識別子を利用できます。この識別子は、次の処理にまたがってゾーンを識別する場合にも使用できます。
ゾーンの移動。
ゾーンの名前の変更。
ゾーン内容の破棄を伴わないすべてのイベント。
詳細は、zoneadm(1M) のマニュアルページを参照してください。
このリリース以降、新しい zoneadm 機能を使って、ゾーンに「incomplete (不完全)」のマークを付けられるようになりました。この新しい zoneadm 機能により、ゾーンの内容を更新する管理ソフトウェアで致命的または永続的なゾーン障害の状態を記録することができます。
詳細は、zoneadm(1M) のマニュアルページを参照してください。
dtrace_proc および dtrace_user 特権が非大域ゾーンに割り当てられている場合は、DTrace をその非大域ゾーンで使用できるようになりました。DTrace のプロバイダおよびアクションの有効範囲は、ゾーンに制限されます。dtrace_proc 特権があれば、fasttrap および pid プロバイダを使用できます。dtrace_user 特権があれば、profile および syscall プロバイダを使用できます。
zonecfg コマンドの limitpriv プロパティーを使用すると、これらの権限を非大域ゾーンで使用できる権限セットに追加することができます。
非大域ゾーンの特権の概要については、「非大域ゾーンに関する設定可能な特権」を参照してください。
ゾーン構成、ゾーンの特権の指定方法、および DTrace ユーティリティーの使用方法については、次の項目を参照してください。
zonecfg(1M) のマニュアルページ
dtrace(1M) のマニュアルページ
Solaris 10 8/07 リリースでは、次のデスクトップツール機能と拡張機能が追加されました。
Thunderbird 2.0 とは、Mozilla コミュニティーによって開発された、すべての機能を備えた電子メール、RSS、およびニュースグループのクライアントのことです。Mozilla の電子メールおよびニュースグループと同じ機能を提供します。
Firefox 2.0 は、共通した表示作業に携わるユーザーが対話形式で検索、ブックマーク、および履歴情報を処理しているときに役立つユーザーインタフェースの革新に的を絞っています。Firefox 2.0 では、タブ付きのブラウズ、RSS 処理、拡張機能の管理、セキュリティー、および性能が改善されました。
このリリース以降、新しいプラグイン Off-the-Record (OTR) が GAIM に追加されました。
OTR メッセージングは次のものを提供することで、ユーザーが GAIM およびそのサポートするすべてのメッセンジャーサービス経由でプライベートな会話ができるようにします。
暗号化
認証
受信拒否
完全な転送機密性
詳細は、http://www.cypherpunks.ca/otr/ を参照してください。
このリリース以降、x86 システムにおける XVideo の RealPlayer サポートによって、ビデオのプレイバック性能が大幅に向上しました。
Solaris 10 8/07 リリースでは、次の X11 ウィンドウ機能と拡張機能が追加されました。
CDE では現在、ログイン画面に階層メニューの形式でわかりにくいロケール名の一覧を表示します。dtlogin の言語選択のオーバーホールにより、よりユーザーに親しみやすい言語指向のログインリストになりました。CDE には、ディスプレイごとのデフォルトのログイン言語名を記憶する機能があります。SunRay 環境では、X リソースを使ってディスプレイがログイン言語を記憶できないようにすることが可能です。
詳細は、dtlogin のマニュアルページを参照してください。
このリリース以降、X ウィンドウシステムのサーバーには、X11 クライアントの接続に備えて USDT (User-land Statically Defined Tracing) DTrace プロバイダが追加されました。X ウィンドウシステムのサーバーには次のものがあります。
Xorg
Xsun
Xprt
Xnest
Xvfb
使用できるプローブとその引数、およびそれらを使用した DTrace スクリプトの例については、http://people.freedesktop.org/~alanc/dtrace/ を参照してください。
X11 ウィンドウシステム、関連したグラフィックス、および入力デバイスドライバ用の Xorg サーバーは、X11R7.2 リリースにアップグレードされました。X11R7.2 リリースには Xorg サーバーの version 1.2 が含まれています。また、x64 プラットフォームと SPARC プラットフォーム向けの 64 ビット版の Xorg サーバーも追加されましたが、共通した SPARC グラフィックスデバイス向けのドライバは Xorg ではまだ使用できません。
このリリースには、Xephyr で入れ子にした X サーバーや Xorg 版の Xvfb も組み込まれており、どちらも /usr/X11/bin ディレクトリにインストールされます。このバージョンの Xorg は、LBX (Low Bandwidth X) 拡張をサポートしなくなりました。帯域幅が極端に制限されたネットワークリンクにまたがって X ディスプレイを配置する必要があるサイトでは、ssh(1) の X トンネリング機能や圧縮機能を使用するようにしてください。
Solaris 10 8/07 リリースでは、次の言語サポート機能と拡張機能が追加されました。
既存の欧州/中東/アフリカ (European and Middle East and African、EMEA)、中南米、およびオセアニアのロケールのロケールデータは、「Common Locale Data Repository (CLDR) 1.3」に移行されました。この移行により、ロケールデータの質が向上し、コードセット間のロケールデータの一貫性が保証されます。
CLDR の詳細については、http://www.unicode.org/cldr を参照してください。
このリリース以降、日本語の HG フォントは JISX0213: 2004 に準拠するように更新されました。
このリリース以降、Unicode と日本語のコードセット間で次の 2 種類のコードセット変換が追加されました。
eucJP、PCK (SJIS)、および ms932 との間の変換において、iconv は、UTF-8 のほかに、UTF-16、UCS-2、UTF-32、UCS-4、およびそれらの固定エンディアン形式 (UTF-16BE や UTF-16LE など) をサポートするようになりました。
iconv は、コードセット名 eucJP-ms をサポートして、Windows と同じ方法で日本語 EUC と Unicode との間の変換を行えるようにしました。以前に説明した Unicode のコード化形式もすべて eucJP-ms でサポートされます。
詳細は、iconv_ja(5) のマニュアルページを参照してください。
入力方式スイッチアプリケーション gnome-im-switcher-applet は、スタンドアロン型の GTK+ アプリケーション iiim-panel に置き換えられました。UTF-8 またはアジアのロケールで Java デスクトップシステム (Java DS) にログインすると、iiim-panel が自動的に起動されて、GNOME パネルに常駐するようになりました。iiim-panel は、共通デスクトップ環境 (Common Desktop Environment、CDE) でも実行できます。
IIIMF は、フランス語、ポーランド語、オランダ語などの EMEA キー配列をエミュレートする言語エンジンをサポートします。
詳細は、入力方式設定エディタ (iiim-properties) のオンラインヘルプを参照してください。
この機能には、新しいコマンドオプション kbd -s language が用意されています。ユーザーは、このオプションを使ってカーネルのキー配列を設定できます。Zero-CountryCode キー配列機能は、特に SPARC システムで役立ちます。以前のリリースの SPARC システムでは、「自己識別型でないキーボード」は必ず米国英語配列のキーボードと見なされていました。
詳細は、kbd(1) のマニュアルページを参照してください。
Solaris 10 8/07 リリースでは、次の開発者用ツール機能と拡張機能が追加されました。
SunVTSTM (Sun Validation Test Suite) は、Sun x86 および SPARC ハードウェアのテストと検証を行う包括的なソフトウェア診断パッケージです。SunVTS ソフトウェアは、構成と、コントローラ、デバイス、およびプラットフォームが正常に機能しているかを検証します。
Solaris OS での SunVTS の主要な変更には次のものが含まれます。
新しいテストである xnetlbtest と iobustest が追加されています。Solaris 10 8/07 より前のリリースでは、これらのテストはいずれも社内開発用パッケージの一部としてのみ使用可能でした。
Test Hang Mitigation (THM) ライブラリと統合された SunVTS メモリーテスト。
パケットサイズを指定できる新しいオプションを含む、nettest の拡張。
LED テストをサポートする bmcenvironment テストの拡張。
nxge ドライバで crc バイトに対応するように netlbtest が変更されています。
disktest の拡張
改善されたオプション設定を含む、汎用テープテスト。
iobustest 拡張。これには、EFI ディスクのサポート、バス関連のパフォーマンスカウンタ、SIU/NCU の負荷、より高負荷のストレステストのカバー、PCI-E (PCI Express) のスキャン機能などがあります。
これらの機能とテストについての詳細は、http://www.sun.com/documentation で SunVTS 6.4 のマニュアルを参照してください。
Solaris 10 8/07 リリースでは、次の新しいドライバとドライバ機能拡張が追加されました。
このリリース以降、Reliable Datagram Sockets (RDS) が新しいプロトコルファミリとして追加され、ソケットが InfiniBand 相互接続を経由して複数の宛先に確実にメッセージを送信できるようになりました。
RDS は新しい SUNWrds パッケージで配布されます。SUNWrds パッケージは、それぞれソケットとトランスポートインタフェースに対応する rds と rdsib ドライバで構成されています。
機能が向上した USB EHCI ホストコントローラドライバは、USB 2.0 または高速のアイソクロナスデバイスでアイソクロナス転送を行えるようにします。
詳細は、usb_isoc_request(9S) のマニュアルページを参照してください。
この機能は、uscsi コマンドによる論理ユニット番号 (LUN) のリセットを行えるようにします。ユーザーは、この機能により USCSI_RESET_LUN として設定される uscsi_flags とともに LUN リセットコマンドを使用できます。
このリリース以降、READ/WRITE FPDMA QUEUED コマンドがサポートされるようになりました。特定の作業負荷がかかる状況のもとで、Marvell ドライバを使って入出力操作を行なっているときに、性能が大幅に向上します。ほかの作業負荷でも、程度は小さくなりますが、多少の性能向上が得られます。Sun Branded Hitachi 250GB HDS7225SBSUN250G ドライブでこの機能を使用すると、より多くの書き込みができ、大幅に性能が向上します。
また、SATA 仕様のこのオプション部分をサポートするドライバに対する数多くの作業負荷においても、性能が著しく向上します。
Compact Flash (CF) サポートの機能によって、CF-ATA アダプタを通して CF カードを ATA ディスクとして使用できるようになります。この機能は、CF カードからのシステム起動、および CF カードへのデータ格納を簡単にするのに役立ちます。
Compact Flash サポートについての詳細は、ata(7D) のマニュアルページを参照してください。
このリリース以降、usbsacm ドライバは、USB CDC ACM (Universal Serial Bus Communication Device Class Abstract Control Model) 仕様に準拠している USB モデムをサポートするようになりました。ユーザーは、usbsacm ドライバを、使用している携帯電話、PCMCIA カード、またはモデムのようなデバイスに接続できます。usbsacm ドライバは、/dev/term/ の下に端末ノードを出力します。ユーザーはその後、pppd(1M) を使って、これらのシリアルポートを介してデータグラムを転送できます。
CardBus サポートの機能によって、Solaris における 32 ビット PC カードのサポートが追加されました。16 ビットと 32 ビットの PC カードは、いずれも Solaris によって認識されるようになりました。詳細は、pcic(7D) および cardbus(4) のマニュアルページを参照してください。
このリリース以降、Solaris OS では IBM LTO-4 テープドライブをサポートするようになりました。
このリリース以降、Solaris OS では HP LTO-4 テープドライブをサポートするようになりました。
このリリース以降、Xorg 用の高速グラフィックスドライバと、NVIDIA Quadro および GeForce カード用の OpenGL が組み込まれるようになりました。これらのドライバ向けの構成ツール nvidia-settings および nvidia-xconfig も用意されています。
このリリース以降、下位互換性をサポートする sun4v プラットフォームにプログラム可能なウォッチドッグタイマーが追加されました。ユーザーは、下位互換性のある ntwdt 擬似ドライバによって提供される IOCTL を使ってアプリケーションウォッチドッグタイマーを操作できます。
最小の Solaris OS 用 ACPI サーマルゾーン・モニター擬似ドライバは、ACPI からサーマルゾーンイベントを処理します。サーマルゾーンイベントは、主に重大な温度イベントです。あるシステムの BIOS に特定の ACPI 方式が実装されている場合、この擬似ドライバはサーマルゾーンイベントを処理します。
更新された aac ドライバは、新世代のロケットチップベースの Adaptec ハードウェア RAID アダプタをサポートします。aac ドライバは、コントローラや接続されたハードドライブの構成や監視を行う ASM (Adaptec Storage Management Utility) もサポートしています。
詳細は、Adaptec の Web サイト http://www.adaptec.com/en-US/products/adps/ を参照してください。
audioixp ドライバは、ATI 社製の ATI IXP400 Southbridge チップセット用の Solaris オーディオドライバです。ATI IXP400 チップセットには、AC97 オーディオコントローラが組み込まれています。このチップセットは、Ferrari4000 モデルなど、多くのマザーボードメーカーによって広く採用されています。audioixp ドライバは、SADA (Solaris Audio Driver Architecture) フレームに準拠しています。
高精細度オーディオドライバ audiohd(7d) が拡張され、より多くのオーディオコーデックをサポートし、基本的なオーディオのプレイバックと記録機能を備えるようになりました。サポートされている高精細度オーディオコーデックには、次のものが含まれます。
Realtek ALC260/262/880/882/883/885/888
IDT/Sigmatel STAC9200(D)
アナログデバイス AD1986/1988
AHCI は、AHCI 仕様と互換性がある SATA コントローラ用の SATA HBA ホットプラグ対応ドライバです。AHCI ドライバは INTEL ICH6 と VIA vt8251 コントローラをサポートしていますが、ほかの AHCI 準拠のコントローラも動作する可能性があります。
詳細は、ahci(7D) のマニュアルページを参照してください。
Solaris 10 8/07 リリースでは、次のシステムパフォーマンス機能と拡張機能が追加されました。
UltraSPARC T2 システムの PCI Express Interface Units (PIU) には、busstat でダンプ可能な組み込みのパフォーマンスカウンタが備わっています。busstat -l コマンドの出力には、このようなシステムの次のようなデバイスが表示されます。
imu#
mmu#
peu#
bterr#
「#」はインスタンスの番号です。
この組み込みパフォーマンスカウンタの使用は、主に Sun のフィールドサービス担当者を対象としています。
Hashed Cache Index モードは、UltraSPARC T2 プロセッサで利用できる新しいハードウェア機能です。ハードウェアは、さらに多くのアドレスビットを使って L2 キャッシュインデックスを計算します。その結果、大規模ページ用のページカラーが増えます。
最適なパフォーマンスを実現するには、Solaris カーネルによって、キャッシュを共有するすべてのスレッドで使用されるページカラーの数をできるだけ多くする必要があります。Solaris 仮想メモリーサブシステムは、この新しいハードウェア機能に対応するように拡張されました。適切なカラー計算により、UltraSPARC T2 システム上のアプリケーションプログラムのパフォーマンスとスループットの整合性が改善されます。
複数レベル Chip Multi-Threaded (CMT) スケジューリング最適化機能は、プラットフォームに依存しない機構を Solaris カーネルに提供します。この機構によって、最新の、そして、今後より市場が大きくなると見込まれている CMT プロセッサアーキテクチャー (Niagara II を含む) で動作する、複数の CPU 間のハードウェア共有関係に関連する、さまざまなパフォーマンスを検出し、それを最適化することが可能になります。
この機能はまた、複数レベル CMT 負荷分散ポリシーによって、カーネルのスレッドスケジューラまたはディスパッチャーの機能を向上させます。これは、さまざまなマルチスレッド、マルチコア、およびマルチソケットのプロセッサベースシステムにとって有益です。
この機能の詳細については、OpenSolaris のパフォーマンスコミュニティーの Web サイト http://www.opensolaris.org/os/community/performance を参照してください。
プロセス数のスケーラビリティー機能により、Solaris OS のプロセス数のスケーラビリティーが向上します。現在では、すべての UltraSPARC システムが最大 8192 個のコンテキストをサポートします。プロセスの数が 8192 個を超えると、カーネルがコンテキストを横取りし、プロセスの実行を維持します。プロセスからコンテキストを横取りする動作には、次のタスクが含まれます。
プロセスが実行されていたすべての CPU の相互呼び出し
プロセスのスレッドを実行している CPU のコンテキストの無効化
プロセスのスレッドを実行しているすべての CPU の TLB からのコンテキストのフラッシュ
この手順は負荷が大きく、プロセスの数が 8K を超えると、状態はさらに悪化します。プロセス数のスケーラビリティー機能では、コンテキストの管理を徹底的に設計し直します。コンテキストを全体ではなく MMU ごとに管理することにより、TLB のフラッシュが効率的に行えるようになり、コンテキスト管理のスケーラビリティーが著しく向上します。
また、プロセス数のスケーラビリティー機能によって、8K を超えるアクティブなプロセスの作業負荷や、プロセスの作成と破棄を頻繁に実行することで生じる作業負荷に対するスループットも向上します。そのため、CPU を数多く備えたシステムで使用する場合に、もっとも効果的です。
共有メモリーに対する複数ページサイズサポート (MPSS) に、共有メモリーをマップする大規模ページのサポートが追加され、共有メモリーの大規模ページを使用するための out-of-box (OOB) ポリシーが提供されます。MPSS サポートは、/dev/zero の mmap(1) か MAP_ANON フラグによって作成される共有メモリー、および System V 共有メモリーを対象としています。この機能は、これらの共有メモリーセグメントのページサイズを変更する memcntl(2) のサポートも追加します。
MPSS サポートは、mmap(1)、/dev/zero の mmap (MAP_PRIVATE) によって作成されるメモリーの大規模ページを使用できるようにも拡張されています。
Solaris 10 8/07 リリースでは、次のデバイス管理機能と拡張機能が追加されました。
このリリース以降、st ドライバに新しい予約メカニズムが導入されました。新しいメカニズムでは、st ドライバは、予約を必要とするコマンドが送信されたときにだけテープドライブを予約できます。また、st ドライバは、異なるホストによってドライブが予約されている間も、別のホストから発行された照会コマンドを処理できます。
一部の 独立系ソフトウェアベンダー (Independent Software Vendor、ISV) のバックアップソフトウェアやメディア管理ツールは、機能が向上した st SCSI 予約機能の恩恵を受けています。この新しい機能のおかげで、バックアップツールがテープの読み込みや書き込みを行なっているときに、管理ツールはテープライブラリを照会したり表示したりできるようになりました。
この機能には、自動電源管理とは無関係に CPU デバイスの電源管理を行える 2 つの新しい power.conf キーワードが導入されています。新しい power.conf キーワードは、次のとおりです。
cpupm
Usage:
cpupm <behavior> |
ここでの behavior は、enable または disable です。
下位互換性を保つため、cpupm キーワードが /etc/power.conf ファイルに存在しない場合は、autopm が有効になっていれば CPU の電源管理が行われ、autopm が無効になっていれば CPU の電源管理は行われません。enable または disable は、autopm の設定とは無関係です。
cpu-threshold
Usage:
cpu-threshold <threshold> |
このキーワードを使用すると、システムのしきい値とは無関係に、電源管理可能なすべての CPU に適用されるしきい値を指定できます。
CPU の電源管理が有効になっている場合は、指定されたしきい値の時間だけ、アイドル状態になっているすべての CPU の電源レベルが次に低いレベルまで下げられます。
cpu-threshold を指定しないと、システムのしきい値が使用されます。
詳細は、power.conf(4) のマニュアルページを参照してください。
Solaris 10 8/07 リリースでは、次のコンソールサブシステムの拡張機能が追加されました。
Coherent Console サブシステム機能は、コンソール出力のレンダリングを支援するためにカーネルコンソールサブシステムの一部を実装しています。Coherent Console では、PROM (プログラム可能な読み取り専用メモリー) インタフェースではなく、Solaris カーネル機構を使用してコンソール出力をレンダリングします。これにより、コンソールレンダリングの OnBoot PROM (OBP) に対する依存性が減少します。
Coherent Console では、カーネル常駐の framebuffer ドライバを使用してコンソール出力を生成します。生成されるコンソール出力は、OBP レンダリングを使用する場合よりも効率的です。また、Coherent Console によって、SPARC コンソール出力時の CPU のアイドリングが回避され、ユーザー体験が向上します。
たとえば、Coherent Console を使用すると、SPARC コンソールテキストのスループットやスクロール速度が向上し、ANSI カラーも使用できるようになります。