Oracle Solaris カーネルのチューンアップ・リファレンスマニュアル

プロセス規模調整パラメータ

システムで使用されるプロセスの数や個々のユーザーが作成できるプロセスの数を制御するパラメータ (または変数) がいくつかあります。基本パラメータは maxusers です。このパラメータによって、max_nprocsmaxuprc に値が割り当てられます。

maxusers

備考欄

maxusers は、当初、システムがサポートできるログインユーザーの数を指定するものでした。カーネルの生成時に、この設定値に基づいて各種テーブルの大きさが決定されました。現在の Solaris リリースでは、規模調節の大半をシステム上のメモリー容量に基づいて行います。したがって、maxusers の使い方がこれまでとは大きく変わりました。引き続き、maxusers に基づいて決定されるサブシステムには次のものがあります。

  • システムで使用できるプロセスの最大数

  • システムに保持される割り当て構造体の数

  • ディレクトリ名検索キャッシュ (DNLC) の大きさ

データ型

符号付き整数

デフォルト

M バイト単位のメモリー総量か 2048 (小さい方)

範囲

/etc/system ファイルに設定されていない場合は、物理メモリーに基づいて、1 から 2048。

/etc/system ファイルに設定されている場合は、1 から 4096。

単位

ユーザー

動的か

いいえ。このパラメータに依存する変数を計算した後に maxusers が再び参照されることはありません。

検査

なし

どのような場合に変更するか

システムによって計算されたデフォルトのユーザープロセス数が小さすぎる場合。このような状況は、システムコンソールに表示される次のメッセージでわかります。


out of processes

次の状況のように、デフォルトのプロセス数が多すぎる場合に、このパラメータを変更するかもしれません。

  • 多量のメモリーがあり、動作しているプロセスの数が比較的少ないデータベースサーバーでは、maxusers のデフォルト値を少なくすることによってシステムメモリーを節約できます。

  • 多量のメモリーがあり、動作しているプロセスがほとんどないファイルサーバーでは、この値を減らせる場合があります。しかし、その場合、DNLCのサイズを明示的に設定する必要があります。ncsizeを参照してください。

  • 多量のメモリーがあり、動作しているプロセスがほとんどない計算サーバーでは、この値を減らせる場合があります。

コミットレベル

変更の可能性あり

reserved_procs

備考欄

UIDが root (0) のプロセス用に、プロセステーブルで確保するシステムプロセススロット数を指定します。たとえば、fsflush には root (0) の UID が与えられます。

データ型

符号付き整数

デフォルト

5

範囲

5 から MAXINT

単位

プロセス数

動的か

いいえ。最初のパラメータ計算の後は使用されません。

検査

Solaris 8 以降のリリースでは、どのような /etc/system 設定でも有効です。

コミットレベル

変更の可能性あり

どのような場合に変更するか

たとえば、システムの UID 0 (root) のプロセスの数を、通常の値から 10 大きくした場合を考えてみてください。この設定をしないとユーザーレベルのプロセスを作れないような状況でも、この設定を行うことによって root でシェルを起動するために必要な余裕が生まれます。

pidmax

備考欄

使用可能な最大プロセス ID の値を指定します。これは Solaris 8 以降のリリースで有効です。

pidmax では maxpid 変数の値を設定します。したがって、maxpid がいったん設定されると、pidmax は無視されます。maxpid は、カーネルの別のところで、最大のプロセス ID を判別したり、妥当性検査を行うために使用されます。

/etc/system ファイルに maxpid エントリを追加して設定しようとしても、効果はありません。

データ型

符号付き整数

デフォルト

30,000

範囲

266 から 999,999

単位

プロセス数

動的か

いいえ。pidmax の値を設定するためにブート時だけ使用されます。

検査

はい。reserved_procs の値と 999,999 に対して値を比較します。reserved_procs より小さい場合、または 999,999 より大きい場合、値は 999,999 に設定されます。

暗黙的制約

max_nprocs に対して範囲の検査が行われ、max_nprocs は常にこの値以下に保たれます。

どのような場合に変更するか

システム上で 30,000 を超える数のプロセスをサポートできるようにするために必要です。

コミットレベル

変更の可能性あり

max_nprocs

備考欄

システム上に作成できるプロセスの最大数を指定します。システムプロセスとユーザープロセスを含みます。/etc/system に指定した任意の値が maxuprc の計算に使用されます。

この値は、他のいくつかのシステムデータ構造体のサイズを決定する場合にも使用されます。このパラメータが作用する他のデータ構造体は、次のとおりです。

  • ディレクトリ名検索キャッシュのサイズを決めるとき (ncsize が指定されていない場合)

  • UFS のディスク割り当て構造体を割り当てるとき (ndquot が指定されていない場合)

  • 構成されたシステム V セマフォーによって使用されるメモリーの総量がシステム限度を超えていないか確認するとき

  • x86 プラットフォーム向けのハードウェアアドレス変換のリソースを構成するとき

データ型

符号付き整数

デフォルト

10 + (16 x maxusers)

範囲

266 から maxpid の値

動的か

いいえ

検査

はい。値は maxpid と比較され、それより大きい場合は maxpid に設定されます。x86 プラットフォームでは、さらにプラットフォーム固有の値と比較されます。max_nprocs は、max_nprocsmaxpid、プラットフォーム値のうち最も小さい値に設定されます。SPARC プラットフォームと x86 プラットフォームはどちらもプラットフォーム値として 65,534 を使用します。

どのような場合に変更するか

このパラメータの変更は、1 つのシステムで 30,000 を越えるプロセスを可能にするために必要となる手順の 1 つです。

コミットレベル

変更の可能性あり

変更履歴

max_nprocs (Solaris 9 リリース)」を参照してください。

maxuprc

備考欄

個々のユーザーがシステム上に作成できるプロセスの最大数を指定します。

データ型

符号付き整数

デフォルト

max_nprocs - reserved_procs

範囲

1 から max_nprocs - reserved_procs

単位

プロセス数

動的か

いいえ

検査

はい。この値は max_nprocs - reserved_procs と比較され、2 つの値のうちの小さい方に設定されます。

どのような場合に変更するか

1 ユーザーが作成できるプロセスの数を強く制限するために、デフォルト値より小さい値を指定したい場合 (システムが作成できるプロセスの数が多くても)。この限度を超えると、次の警告メッセージがコンソールかメッセージファイルに出力されます。


out of per-user processes for uid N
コミットレベル

変更の可能性あり