Oracle Solaris カーネルのチューンアップ・リファレンスマニュアル

IP チューニング可能パラメータ

ip_icmp_err_interval ip_icmp_err_burst

備考欄

IP で IPv4 または IPv6 ICMP エラーメッセージを生成する頻度を制御します。IP は、ip_icmp_err_interval の間に最大で ip_icmp_err_burst の IPv4 または IPv6 ICMP エラーメッセージを生成します。

ip_icmp_err_interval パラメータは、サービス拒否攻撃から IP を保護するためのものです。パラメータの値を 0 に設定すると、レート制限が無効になります。エラーメッセージの生成処理は無効になりません。

デフォルト

ip_icmp_err_interval は 100 ミリ秒

ip_icmp_err_burst は 10 エラーメッセージ

範囲

ip_icmp_err_interval は 0 から 99,999 ミリ秒

ip_icmp_err_burst は 1 から 99,999 のエラーメッセージ

動的か

はい

どのような場合に変更するか

診断の目的でエラーメッセージの生成頻度を増やし たい場合

コミットレベル

変更の可能性あり

ip_respond_to_echo_broadcast ip6_respond_to_echo_multicast

備考欄

IPv4 や IPv6 が、ブロードキャスト ICMPv4 エコー要求またはマルチキャスト ICMPv6 エコー要求に応答するかどうかを制御します。

デフォルト

1 (有効)

範囲

0 (無効)、1 (有効)

動的か

はい

どのような場合に変更するか

セキュリティー上の理由でこの動作を行いたくない場合、無効にします

コミットレベル

変更の可能性あり

ip_send_redirectsip6_send_redirects

備考欄

IPv4 または IPv6 が、ICMPv4 または ICMPv6 リダイレクトメッセージを送信するかどうかを制御します。

デフォルト

1 (有効)

範囲

0 (無効)、1 (有効)

動的か

はい

どのような場合に変更するか

セキュリティー上の理由でこの動作を行いたくない場合、無効にします

コミットレベル

変更の可能性あり

ip_forward_src_routed ip6_forward_src_routed

備考欄

IPv4 または IPv6 が、パケットをソース IPv4 ルーティングオプションを指定して転送するか、IPv6 ルーティングヘッダーを指定して転送するかを制御します。

デフォルト

0 (無効)

範囲

0 (無効)、1 (有効)

動的か

はい

どのような場合に変更するか

サービス妨害攻撃を防ぐためにこのパラメータは無効のままにします。

コミットレベル

変更の可能性あり

変更履歴

詳細は、ip_forward_src_routed ip6_forward_src_routed (Solaris 10 リリース)」を参照してください。

ip_addrs_per_if

備考欄

実インタフェースに対応する論理インタフェースの 最大数を指定します。

デフォルト

256

範囲

1 から 8192

動的か

はい

どのような場合に変更するか

この値は変更しないでください。論理インタフェースの数を増やす必要がある場合は、例外的に値を増やすことができるかもしれません。ただし、この変更が IP のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。

コミットレベル

変更の可能性あり

ip_strict_dst_multihoming ip6_strict_dst_multihoming

備考欄

非転送インタフェースに到着したパケットを、そのインタフェース上に明示的に構成されていない IP アドレス向けとして受け入れるかどうかを制御します。ip_forwarding が有効になっているか、該当するインタフェースに対し xxx:ip_forwarding が有効になっていると、このパラメータは無視されます (そのパケットが実際に転送されるため)。

RFC 1122 の 3.3.4.2 を参照してください。

デフォルト

0 (緩やかなマルチホーミング)

範囲

0 = オフ (緩やかなマルチホーミング)

1 = オン (厳密なマルチホーミング)

動的か

はい

どのような場合に変更するか

厳密なネットワーキングドメイン (たとえばファイアウォールや VPN ノードなど) を通過するインタフェースがマシンにある場合は、このパラメータに 1 を設定します。

コミットレベル

変更の可能性あり

ip_multidata_outbound

備考欄

ネットワークスタックが、転送時、一度に複数のパケットをネットワークデバイスドライバ宛てに送信できるようにします。

このパラメータを有効にすると、ホスト CPU の利用率またはネットワークスループット (あるいはこの両方) が向上し、パケットあたりの処理コストが減少します。

現在このパラメータは、IP フラグメントを転送するための複数データ送信 (MDT) 機能を制御します。たとえば、リンク MTU より大きい UDP ペイロードを送信する場合があります。このチューニング可能パラメータが有効になっている場合、UDP などの特定の上位レベルプロトコルの IP フラグメントがバッチ内でネットワークデバイスドライバに送信されます。この機能を無効にすると、ネットワークスタック内の TCP および IP 断片化ロジックの両方がもとに戻り、一度に 1 つのパケットをドライバに送信するようになります。

MDT 機能を利用できるのは、この機能をサポートするデバイスドライバのみです。

tcp_mdt_max_pbufsも参照してください。

デフォルト

1 (有効)

範囲

0 (無効)、1 (有効)

動的か

はい

どのような場合に変更するか

このパラメータをデバッグやその他の目的で有効にする必要がない場合は、無効にします。

コミットレベル

変更の可能性あり

変更履歴

詳細は、ip_multidata_outbound (Solaris 10 リリース)」を参照してください。

ip_squeue_fanout

備考欄

squeue と TCP/IP 接続 を関連付けるモードを判定します。

値 0 の場合、新しい TCP/IP 接続と、この接続を作成した CPU が関連付けられます。値 1 の場合、異なる CPU に属する複数の squeue との接続が関連付けられます。接続を展開するために使用される squeue の数は、ip_soft_rings_cntに基づいています。

デフォルト

0

範囲

0 または 1

動的か

はい

どのような場合に変更するか

特定の条件下で、すべての CPU に負荷を分散したい場合、このパラメータの値を 1 に設定します。たとえば、CPU 数が NIC 数を上回り、単一の NIC のネットワーク負荷を処理できない CPU ができた場合、このパラメータの値を 1 にします。

ゾーン構成

このパラメータを設定できるのは、大域ゾーン内だけです。

コミットレベル

変更の可能性あり

変更履歴

詳細は、ip_squeue_fanout (Solaris 10 11/06 リリース)」を参照してください。

ip_soft_rings_cnt

備考欄

受信 TCP/IP 接続を展開するために使用される squeue の数を決定します。


注 –

着信トラフィックは、いずれかのリングに置かれます。リングが過負荷になっている場合、パケットは破棄されます。パケットが破棄されるたびに、kstat dls カウンタ dls_soft_ring_pkt_drop が増分されます。


デフォルト

2

範囲

0 から nCPU。nCPU は、システム内の CPU の最大数です。

動的か

いいえ。このパラメータを変更する場合は、インタフェースを再び plumb します。

どのような場合に変更するか

10 Gbps の NIC および多くの CPU が搭載されたシステムでは、このパラメータを 2 より大きい値に設定することを検討してください。

ゾーン構成

このパラメータを設定できるのは、大域ゾーン内だけです。

コミットレベル

旧式

変更履歴

詳細は、ip_soft_rings_cnt (Solaris 10 11/06 リリース)」を参照してください。

特別な注意を要する IP チューニング可能パラメータ

次のパラメータの変更は非推奨です。

ip_ire_pathmtu_interval

備考欄

IP がパス最大転送単位 (PMTU) 検出情報をフラッシュしてから PMTU を再び検出開始するまでの間隔をミリ秒単位で指定します。

PMTU の検出については、RFC 1191 を参照してください。

デフォルト

10 分

範囲

5 秒から 277 時間

動的か

はい

どのような場合に変更するか

この値は変更しないでください。

コミットレベル

変更の可能性あり

ip_icmp_return_data_bytes ip6_icmp_return_data_bytes

備考欄

IPv4 や IPv6 は、ICMPv4 または ICMPv6 のエラーメッセージを送信するときに、エラーメッセージの原因になったパケットのIP ヘッダーを含めます。このパラメータでは、パケットのうち IPv4 や IPv6 のヘッダーを除いてあと何バイトを ICMPv4 や ICMPv6 のエラーメッセージに含めるかを制御します。

デフォルト

64 バイト

範囲

8 から 65,536 バイト

動的か

はい

どのような場合に変更するか

この値は変更しないでください。 ただし、ICMP エラーメッセージに含む情報を増やすとネットワークの問題を診断する上で役立つことがあります。この機能が必要な場合は、値を増やします。

コミットレベル

変更の可能性あり