Solaris のシステム管理 (IP サービス)

IPsec とは

IPsec は、パケットの認証または暗号化、もしくはこの両方を実行することで、IP パケットを保護します。IPsec は、アプリケーション層よりかなり下の IP モジュール内で実行されます。したがって、インターネットアプリケーションは、IPsec を使用するために自分自身を設定することなく、IPsec を利用できます。正しく使用すれば、IPsec は、ネットワークトラフィックの保護に有効なツールとなります。

IPsec による保護では、次の 5 つのコンポーネントが主に使用されます。

IPsec は、セキュリティー機構を IP 宛先アドレスに転送される IP データグラムに適用します。受信側ユーザーは、SADB の情報を使用して、到着パケットが正当なことを確認し、それらを復号化します。アプリケーションで IPsec を呼び出すと、ソケット単位レベルでも IP データグラムにセキュリティー機構が適用されます。

ソケットの動きはポートとは異なりますので注意してください。

IPsec RFC

インターネットエンジニアリングタスクフォース (IETF) は、IP 層のセキュリティーアーキテクチャーを説明するいくつかの RFC (Requests for Comments) を公表しています。すべての RFC の著作権は、インターネット協会が有しています。RFC へのリンクについては、http://www.ietf.org/を参照してください。次の RFC リストは、比較的一般的な IP セキュリティーの参考文献です。

IPsec の用語

IPsec RFC は、IPsec をシステムに実装する際に分かっていると便利な用語を多数定義しています。次の例は、IPsec の用語、それらの一般的に使用されている用語を示し、各用語を定義しています。キーのネゴシエーションで使用する用語の一覧は、表 22–1 を参照してください。

表 19–1 IPsec の用語、略語、および使用方法

IPsec の用語 

略語 

定義 

セキュリティーアソシエーション 

SA 

ネットワーク上の 2 つのノード間の一意の接続。接続は、 セキュリティープロトコル、セキュリティーパラメータインデックス、および IP 宛先の 3 つで定義されます。IP 宛先は、IP アドレスまたはソケットのどちらでもかまいません。 

セキュリティーアソシエーションデータベース 

SADB 

アクティブなセキュリティーアソシエーションをすべて含むデータベース。 

セキュリティーパラメータインデックス 

SPI 

セキュリティーアソシエーションの索引値。SPI は、同じ IP 宛先およびセキュリティープロトコルを持つ SA を区別する 32 ビットの値です。 

セキュリティーポリシーデータベース

SPD 

出力パケットと入力パケットの保護レベルが指定どおりかを判断するデータベース。 

キー交換 

 

非対称暗号化アルゴリズムのキーを生成する処理。主な手法には RSA プロトコルと Diffie-Hellman プロトコルがあります。 

Diffie-Hellman プロトコル 

DH 

キー生成とキー認証に関るキー交換プロトコル。しばしば「認証されたキー交換」と呼ばれます。

RSA プロトコル 

RSA 

キーの生成とキーの配布に関係するキー交換プロトコル。このプロトコル名は、作成者の Rivest、Shamir、Adleman の三氏に因んでいます。 

インターネットセキュリティーアソシエーションおよび鍵管理プロトコル 

ISAKMP 

SA 属性の形式を設定し、SA のネゴシエーション、変更、削除を行うための共通フレームワーク。ISAKMP は、IPsec SA 処理の IETF 標準です。