Solaris のシステム管理 (IP サービス)

モバイル IP の動作

モバイル IP により、IP データグラムをモバイルノードへ経路制御できます。モバイルノードのホームアドレスは、モバイルノードの接続場所に関係なく、常にモバイルノードを指します。ホームから離れているときは、気付アドレスにモバイルノードのホームアドレスを関連付けます。気付アドレスが、モバイルノードの現在の接続点に関する情報を提供します。モバイル IP は、登録機構を利用して気付アドレスをホーム エージェントに登録します。

ホームエージェントは、データグラムをホームネットワークからその気付アドレスに転送します。ホームエージェントは、モバイルノードの気付アドレスを含む新しい IP ヘッダーを宛先 IP アドレスとして作成します。この新しいヘッダーは元の IP データグラムをカプセル化します。その結果、モバイルノードのホームアドレスは、カプセル化されたデータグラムが気付アドレスに到達するまで、その経路制御に影響を与えません。このようなカプセル化を「トンネリング」とも呼びます。気付アドレスに到達後、データグラムはカプセル化を解除されます。そのあと、データグラムはモバイルノードに配信されます。

次の図では、外部ネットワーク B に移動する前の、ホームネットワーク A 上にあるモバイルノードを示しています。どちらのネットワークもモバイル IP をサポートしています。モバイルノードは、モバイルノードのホームアドレス 128.226.3.30 によって常に関連付けられています。

図 27–2 ホームネットワーク上にあるモバイルノード

この図では、ホームネットワーク上にあるモバイルノード、ホームエージェントへの接続、および外来エージェントとの関連性を示しています。

次の図では、外部ネットワーク B に移動したモバイルノードを示しています。モバイルノード宛てのデータグラムはホームネットワーク A 上のホームエージェントが取得し、カプセル化します。そのデータグラムをネットワーク B 上の外来エージェントに転送します。カプセル化されたデータグラムを受信すると、外来エージェントは外側のヘッダーを取り除きます。そのあと、そのデータグラムをネットワーク B にあるモバイルノードに配信します。

図 27–3 モバイルノードの外部ネットワークへの移動

この図では、外部ネットワーク上のモバイルノード、外来エージェントへの接続、およびホームエージェントとの関連性を示しています。

気付アドレスは外来エージェントに含まれる場合があります。また、動的ホスト構成プロトコル (DHCP) またはポイントツーポイントプロトコル (PPP) を使ってモバイルノードにより取得される場合もあります。PPP により取得される場合、モバイルノードは、共存気付アドレスを持っています。

モビリティーエージェント (ホームエージェントと外来エージェント) は「エージェント通知」メッセージを使用してその存在を通知します。オプションとしてモバイルノードは、エージェント通知メッセージを要請できます。モバイルノードは、「エージェント要請」メッセージによって、ローカルに接続されている任意のモビリティーエージェントを使用します。モバイルノードは、そのエージェント通知を受信して、モバイルノードがホームネットワーク上または外部ネットワーク上にあるのかを判断します。

モバイルノードは、特別な「登録」処理を使用して現在の場所に関する情報をホームエージェントに提供します。また、常に存在を通知するモビリティーエージェントを「待機」します。さらに、それらの通知を利用して、モバイルノードが別のサブネットに移動する時期を判断します。モバイルノード自体がサブネットに移動したと判断すると、新しい外来エージェントを使用して登録メッセージをホームエージェントに転送します。ある外部ネットワークから別の外部ネットワークにモバイルノードが移動したときにも、モバイルノードでは同じ処理を行います。

モバイルノード自体がホームネットワークにいることを判断すると、モビリティーサービスを利用せずに動作します。モバイルノードがホームネットワークに戻ると、ホームエージェントの「登録を解除」します。