Solaris 10 10/09 リリース以降では、enableShadowUpdate スイッチが使用できます。enableShadowUpdate を true に設定すると、LDAP はアカウント管理のファイルネームサービスと同じ機能を提供します。
クライアントで enableShadowUpdate スイッチが true に設定されている場合、ローカルアカウントで使用可能なアカウント管理機能が LDAP アカウントでも使用できます。この機能には、パスワードの有効期限管理、アカウントの有効期限管理および通知、ログインに失敗したアカウントのロックなどが含まれます。また、passwd コマンドの -dluNfnwx オプションが LDAP でサポートされるようになりました。これにより、passwd コマンドの完全な機能と、ファイルネームサービスの pam_unix* モジュールが LDAP ネームサービスでサポートされます。enableShadowUpdate スイッチは、ファイルと LDAP スコープの両方に定義されたユーザーに対して一貫したアカウント管理を実装する 1 つの方法を提供します。
ユーザーが自身のアカウント管理データを変更するのを防ぐため、また、パスワードポリシーを回避するために、LDAP サーバーは、サーバー上にあるユーザー自身のシャドウデータに対するユーザーの書き込みアクセスを防止するように構成されています。管理者資格を持つ管理者は、クライアントシステムに対してシャドウデータの更新を実行します。しかし、この構成は、ユーザーによるパスワードの変更が必要な pam_ldap モジュールと競合してしまいます。したがって、pam_ldap と pam_unix によるアカウント管理には互換性がありません。
同じ LDAP ネームドメインで pam_ldap と pam_unix の両方を使用しないでください。すべてのクライアントが pam_ldap を使用するか、またはすべてのクライアントが pam_unix を使用します。この制限により、専用の LDAP サーバーが必要になる場合があります。たとえば、Web または電子メールアプリケーションでは、ユーザーが LDAP サーバー上にあるパスワードを変更する必要がある場合があります。
また、enableShadowUpdate の実装では、管理者資格 (adminDN と adminPassword ) が、各クライアント上にローカルで格納されている必要があります。adminPassword は暗号化されており、ldap_cachemgr デーモンによって /var/ldap/ldap_client_cred ファイルからのみ読み取りが可能ですが、管理者資格を保護するために細心の注意が必要です。管理者資格を保護するために、サーバーのディレクトリマネージャー (cn=directory manager) とは異なる情報を使用してください。別の保護方法としては、serviceAuthenticationMethod を構成する際に、passwd-cmd サービスに対して tls:simple またはより保護されたレベルを使用します。このようにすることで、adminPassword の値が平文で送信されず、漏洩に対して脆弱になりません。
pam_ldap をアカウント管理に対して使用するのとは異なり、pam_unix をアカウント管理に対して使用する場合は、/etc/pam.conf ファイルの変更は必要ありません。デフォルトの /etc/pam.conf ファイルで十分です。