この節では、ASET のタスクについて説明します。管理者は、ASET の各タスクを理解しておく必要があります。ASET の目的と処理、ASET が影響を与えるシステムコンポーネントなどを理解することで、レポート内容を判断し、効果的に活用できます。
ASET のレポートファイルには、各 ASET タスクで検出された問題をできるだけ詳細に記述するメッセージが含まれています。これらのメッセージによって、問題を診断して解決できます。ただし、ASET を活用するには、システム管理とシステム構成要素を全般的に理解していることが前提となります。システム管理者になったばかりのユーザーは、ほかの Solaris システム管理マニュアルを参照することをお勧めします。また、関連するマニュアルページを参照して、ASET 管理の概要を把握するとよいでしょう。
taskstat ユーティリティーは、完了したタスクとまだ実行中のタスクを識別します。完了したタスクごとにレポートファイルが生成されます。taskstat ユーティリティーの詳細は、taskstat(1M) を参照してください。
このタスクでは、システムファイルのアクセス権を指定したセキュリティーレベルに設定します。このタスクは、システムのインストール時に実行されます。以前に設定したレベルをあとから変更する場合は、このタスクを再度実行してください。低セキュリティーレベルでは、アクセス権は開放型の情報共有環境に適した値に設定されています。中セキュリティーレベルでは、アクセス権はほとんどの環境に十分なセキュリティーが適用される程度に厳しくなります。高セキュリティーレベルでは、アクセス権がもっとも厳しく制限されます。
このタスクによってシステムファイルのアクセス権やパラメータの設定に加えられた変更は、tune.rpt ファイル内にレポートされます。ASET がアクセス権を設定するときに調整するファイルの例は、「調整ファイルの例」を参照してください。
このタスクでは、システムファイルが検査され、各ファイルと、マスターファイル内のそれらの記述とが比較されます。マスターファイルは、ASET がこのタスクを実行するときに初めて作成されます。マスターファイルには、指定したセキュリティーレベルの checklist によって適用されるシステムファイル設定が含まれています。
ファイルが確認されるディレクトリのリストは、セキュリティーレベルごとに定義されます。デフォルトのリストを使用するか、レベルごとに異なるディレクトリを指定してリストを変更できます。
ファイルごとに次の条件が確認されます。
所有者とグループ
アクセス権ビット
サイズとチェックサム
リンク数
最終変更時刻
ASET によって矛盾が見つかると、cklist.rpt ファイルに記録されます。このファイルには、システムファイルのサイズ、アクセス権、およびチェックサムの値について、マスターファイルと比較した結果が入っています。
このタスクでは、ユーザーアカウントとグループの整合性と完全性が確認されます。このタスクは、passwd ファイルと group ファイル内の定義を使用します。ローカルパスワードファイルと、NIS または NIS+ パスワードファイルが検査されます。NIS+ のパスワードファイルの問題はレポートされますが、解決はされません。
このタスクでは、次の違反が検査されます。
重複名または重複 ID
正確でない形式のエントリ
パスワードが付いていないアカウント
無効なログインディレクトリ
アカウント nobody
空のグループパスワード
NIS サーバーまたは NIS+ サーバー上の /etc/passwd ファイル内のプラス記号 (+)
矛盾は、usrgrp.rpt ファイル内にレポートされます。
このタスクでは、ASET はあらゆるシステムテーブルを検査します。テーブルのほとんどは /etc ディレクトリに入っています。
次のシステム構成ファイルが検査されます。
/etc/default/login
/etc/hosts.equiv
/etc/inetd.conf
/etc/aliases
/var/adm/utmpx
/.rhosts
/etc/vfstab
/etc/dfs/dfstab
/etc/ftpd/ftpusers
ASET は、これらのファイルに関して各種の検査と変更を実行し、問題を sysconf.rpt ファイル内にレポートします。
このタスクでは、スーパーユーザー用とその他のユーザー用の PATH 環境変数と UMASK 環境変数がどのように設定されているかを検査します。この検査のために、/.profile、/.login、および /.cshrc ファイルがチェックされます。
環境のセキュリティー状況を検査した結果は、env.rpt ファイル内にレポートされます。
このタスクでは、eeprom セキュリティーパラメータの値が検査され、適切なセキュリティーレベルに設定されていることを確認します。eeprom セキュリティーパラメータは、none、command、または full に設定できます。
ASET はこの設定を変更しませんが、推奨値を eeprom.rpt ファイル内にレポートします。
このタスクでは、システムをネットワークリレーとして安全に使用できることが保証されます。「ファイアウォールシステム」で説明しているように、このタスクでは、ファイアウォール専用システムが設定され、内部ネットワークが外部の公共ネットワークから保護されます。このファイアウォールシステムでは、ネットワークが 2 つに分割されます。このとき、分割された各ネットワークは、互いに信頼されないネットワークとして通信します。ファイアウォールの設定タスクによって、インターネットプロトコル (IP) パケットを転送できなくなります。ファイアウォールによって、ルーティング情報も外部ネットワークから見えないように隠されます。
ファイアウォールのタスクはすべてのセキュリティーレベルで実行されますが、ファイアウォールとしての本来の機能は最上位レベルでのみ動作します。ASET を高セキュリティーレベルで実行するときでも、システムにはファイアウォール保護が不要であることがわかった場合は、asetenv ファイルを編集してファイアウォールタスクをはずすことができます。