Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)

実行可能ファイルを原因とするセキュリティーへの悪影響を防止する

セキュリティーのバグの多くは、デフォルトで読み取り権、書き込み権、および実行権が設定された実行可能スタックで発生します。実行可能スタックには実行権が割り当てられていますが、ほとんどのプログラムは実行可能スタックがなくても正しく機能します。

noexec_user_stack 変数を使うと、スタックを実行可能として割り当てるかどうかを指定できます。この変数は、Solaris 2.6 から利用可能です。デフォルトでは、この変数は 0 に設定されるため (64 ビットアプリケーションを除く)、プログラムは ABI に準拠して動作します。この変数が 0 以外の値に設定された場合、システムはシステム中のすべてのプロセスのスタックに読み取り権と書き込み権のマークを付けますが、実行権のマークは付けません。

この変数が設定されている場合、プログラムがスタック上でコードを実行しようとすると SIGSEGV シグナルが送信されます。このシグナルが送信されると、通常、プログラムはコアダンプして終了します。このようなプログラムは、違反しているプログラム名、プロセス ID、およびプログラムを実行した実ユーザー ID を含む警告メッセージも生成します。次に例を示します。


a.out[347] attempt to execute code on stack by uid 555 

メッセージは、syslog kern 機能が notice レベルの設定されているときに、syslog デーモンによってログに記録されます。このログへの記録は、デフォルトで syslog.conf ファイルに設定されていて、メッセージがコンソールと /var/adm/messages ファイルの両方に送信されることを意味します。詳細は、syslogd(1M) および syslog.conf(4) のマニュアルページを参照してください。

syslog メッセージは、潜在的なセキュリティーの問題を調べるときに役立ちます。また、このメッセージは、この変数を設定したために正しく動作しなくなった、実行可能スタックに依存するプログラムを確認するのにも役立ちます。メッセージを記録しない場合、システム管理者は、/etc/system ファイルで noexec_user_stack_log 変数を 0 に設定します。メッセージが記録されなくなりますが、SIGSEGV シグナルは送られるので、実行中のプログラムはコアダンプを生成して終了します。

mprotect() 関数を使用すれば、プログラムのスタックが実行可能であることを明示的にマーク付けできます。詳細は、mprotect(2) のマニュアルページを参照してください。

ハードウェアの制限のため、実行可能スタックの問題を捕えて報告する機能は、ほとんどの x86 ベースシステムで利用できません。AMD64 プロダクトファミリ内のシステムであれば、実行可能スタックの問題を捕えて報告できます。