Solaris のシステム管理 (ネーミングとディレクトリサービス : NIS+ 編)

第 20 章 サーバー使用のカスタマイズ

この章では、NIS+ クライアントが使用するサーバーのカスタマイズおよび制御方法について説明します。


注 –

NIS+ は、将来のリリースではサポートされなくなる可能性があります。NIS+ から LDAP への移行支援ツールは、Solaris 9 リリース以降で使用できます (『Solaris のシステム管理 (ネーミングとディレクトリサービス : DNS、NIS、LDAP 編)』を参照)。詳細については、http://www.sun.com/directory/nisplus/transition.html を参照してください。


NIS+ サーバーと NIS+ クライアント

クライアントマシン、ユーザー、アプリケーション、あるいはプロセスは、アクティブな NIS+ サーバー (マスターまたは複製) を検索して、そこから必要な情報を取り込みます。巨大なネットワーク、サブネットを多く持ったネットワーク、あるいは広域リンクにまたがったネットワークでは、サーバーの使用法をカスタマイズすることにより NIS+ の性能を強化できます。

デフォルトでのクライアントの検索動作

カスタマイズ前の状態で、nisprefadm コマンドによるサーバーの優先順位設定がなにも設定されていなければ、クライアントは、まず自分自身のローカルサブネット上の NIS+ サーバーから情報を入手しようとします。そのサブネットにアクティブなサーバーが見つかれば、応答のあった最初のローカルサーバーから必要な情報を入手します。ローカルサブネットにサーバーがない場合、次にクライアントは、ローカルサブネットの外部を検索し、応答のあった最初の遠隔サーバーから必要な NIS+ 情報を入手します。

ネットワークが大規模で、混雑している場合、上記のデフォルトの検索動作では NIS+ の性能を十分に発揮させることができないことがあります。それは次のような理由によります。

優先サーバーを指定する

Solaris リリースには、新規機能 (サーバー使用のカスタマイズ) が搭載されています。この機能を使用すると、クライアントが NIS+ サーバーを検索する順序をコントロールできます。この新規機能では、次のような方法でサーバーの使用の度合いをバランスよくカスタマイズできます。

指定した検索基準は、ドメイン内のすべてのクライアント、サブネット上のすべてのクライアント、またはマシンごとに独立したクライアントに適用できます。


注 –

サーバー使用の優先順位を特定のマシンに設定すると、この優先順位は、そのマシンで実行中のユーザー、アプリケーション、処理、またはほかのクライアントすべてに適用されます。同じマシン上の別のクライアントに、異なるサーバー使用のパターンを設定できません。


広域ネットワーク (WAN) 上での NIS+

使用サーバーのカスタマイズは、多数のサブネットを持つ大規模ネットワークや、モデムまたは専用回線で接続された複数の地理的サイトにまたがるネットワークで使用すると特に効果があります。ネットワークの性能を最大にするには、サブネット間やより低速な接続によってリンクされたサイト間のトラフィックを最小限にする必要があります。これは、クライアントが使用できる NIS+ サーバーとその優先順位を指定することによって実現できます。このようにして、可能な限り NIS+ ネットワークトラフィックがローカルサブネットから出ないようにします。

サーバー使用の最適化 - 概要

この節では、サーバー使用のカスタマイズの概要について説明します。

nis_cachemgr が必要

使用サーバーをカスタマイズするには、クライアントで nis_cachemgr を実行している必要があります。クライアントマシンが nis_cachemgr を実行していない場合は、使用サーバーのカスタマイズ機能は利用できません。クライアントマシン上で、nis_cachemgr を実行していない場合は、そのクライアントは、「デフォルトでのクライアントの検索動作」で説明した方法で識別された最初のサーバーを使用します。

グローバルテーブルまたはローカルファイル

nisprefadm コマンドは、次のように、その使用方法により、ローカルの client_info ファイルまたはドメインの client_info テーブルのどちらかを作成します。


注意 – 注意 –

client_info ファイルと client_info テーブルを変更する場合は、nistbladm コマンドだけを使用してください。nistbladm などの、ほかの NIS+ コマンドは絶対に使用しないでください。


client_info テーブルまたは client_info ファイルを処理する場合は、-G または -L オプションを使用して、グローバルテーブル (-G) またはコマンドを実行中のマシンのローカルファイル (-L) のどちらにそのコマンドを適用させるかを指定する必要があります。

優先順位の番号の指定

サーバーの優先順位は、各サーバーに「優先順位を表す番号」を指定することによって制御されます。クライアントは、数値で指定された優先順位にしたがって NIS+ サーバーを検索します。検索の順序は、まず、優先順位格付け番号が小さいサーバーを先に検索し、次に大きい数値の付いたサーバーを検索します。

つまり、クライアントは、まず初めにゼロの優先順位の付いた NIS+ サーバーから名前空間情報を入手しようとします。使用できる優先順位 = 0 のサーバーがない場合、クライアントは、優先順位 = 1 のサーバーに問い合わせを行います。1 のサーバーが使用できない場合は 2 のサーバー、次に 3 というように、この検索は必要な情報が入手できるか検索するサーバーがなくなるまで続きます。

優先順位格付け番号は、nisprefadm コマンドを使用してサーバーに割り当てます。これについては、「グローバルサーバー優先順位を指定する」で説明しています。

サーバーの優先順位番号は、client_info テーブルと client_info ファイル内に格納されます。マシンに、固有の /var/nis/client_info ファイルがある場合は、このファイル内に格納された優先順位番号が使用されます。マシンに、固有の client_info ファイルがない場合は、ドメインの client_info.org_dir テーブル内に格納された優先順位番号が使用されます。このような client_info テーブルと client_info ファイルを、「優先サーバーのリスト」、または単に「サーバーリスト」と呼びます。

各クライアントのサーバーの優先順位を制御することで、サーバーの使用法をカスタマイズします。たとえば、ドメインに mailer という名前のクライアントマシンがあり、このマシンは名前空間情報を頻繁に利用していて、さらにこのドメインには、マスターサーバー (nismaster) と複製サーバー (replica1) の両方があるとします。ここで、mailer マシン用に nismaster に優先順位番号 1 を割り当て、replica1 に優先順位番号 0 を割り当てると、mailer マシンは、名前空間情報を、必ず最初に replica1 から入手しようとし、その後で nismaster に移ります。 次に、このサブネット上にあるほかのすべてのマシンに対して、優先順位番号を nismaster サーバーには 0 を、replica1 には 1 を割り当てます。この結果、ほかのマシンは、必ず最初に nismaster に問い合わせを行います。

同じ優先順位番号を、ドメイン内の複数のサーバーに割り当てることができます。たとえば、nismaster1replica2 の両方に優先順位番号 0 を割り当て、replica3replica4replica5 に優先順位番号 1 を割り当てることができます。

サーバーの優先順位のデフォルト

client_info ファイルまたはテーブルがない場合は、キャッシュ管理プログラムが自動的に、ローカルサブネット上のすべてのサーバーにデフォルトの優先順位番号ゼロ (0) を割り当て、ローカルサブネットの外部のすべてのサーバーに無限大の優先順位を割り当てます。nisprefadm は、このデフォルトの優先順位番号を自由に変更するためのものです。

効率とサーバーの優先順位番号

クライアントは、すべてのサーバーを指定された優先順位番号を使用して昇順に検索しなければなりません。クライアントが指定された優先順位番号をもつすべてのサーバーを検索するには、5 秒以上必要です。つまり、ドメイン内に 1 つのマスターサーバーと 4 つの複製サーバーがあり、それぞれのサーバーに 0 から 4 の異なる優先順位番号を指定した場合、クライアントがこれらの優先レベルをすべて実行するには、25 秒以上かかるということです。

性能を最大にするために、サーバーの優先レベルを 2 つまたは 3 つ以上使用しないでください。たとえば、上記のような場合は、5 つのサーバーのうちの 1 つに優先順位= 0 を割り当て、ほかすべてのサーバーには優先順位 1 を割り当てるか、または 5 つのサーバーのうち 2 つに優先順位 1 を、残りの 3 つのサーバーに 2 を割り当てるといった方法をとってください。

優先サーバー限定と全サーバー

サーバーリストには、クライアントが優先サーバーを検出できなかった場合の処置も指定できます。「優先サーバー」とは、優先順位にゼロが指定されたサーバー、または nisprefadm を使用して優先順位番号を割り当てたサーバーです。

デフォルトでは、クライアントは優先サーバーに到達できないと、検索モードを使用して、ネットワーク上のあらゆる場所を検索し、検出できるあらゆるサーバーを検索します。これについては、「デフォルトでのクライアントの検索動作」で説明しています。このデフォルト機能を、nisprefadm -o オプションを使用して変更し、クライアントが優先サーバーだけを使用し、使用できるサーバーがない場合でも、優先サーバー以外のサーバーには問い合わせしないように指定できます。詳細については、「優先サーバー限定指定」を参照してください。


注 –

マシンのドメインに優先サーバーが全くない場合、このオプションは無視されます。


優先順位の表示

現在特定のクライアントマシンに対して有効なサーバーの優先順位を表示するには、-l オプションを指定した nisprefadm を実行してください。これについては、「現行のサーバー優先順位の表示」で説明しています。

サーバー名とクライアント名

サーバーまたはクライアントマシンを指定する場合、次の点に注意してください。

サーバーの優先順位

以下のマシンにサーバーの優先順位を指定する方法は、それぞれ次のとおりです。

サーバーの優先順位が有効になるタイミング

マシンまたはサブネットのサーバー優先順位の変更内容は、通常、指定したマシンがその nis_cachemgr データを更新するまでは有効になりません。マシンの nis_cachemgr がそのサーバー使用情報を更新するタイミングは、マシンがサーバーの優先順位をグローバル client_info テーブルまたはローカル /var/nis/client_info ファイルのどちらから入手するかによって決まります (「グローバルテーブルまたはローカルファイル」を参照してください)。

ただし、nisprefadm-F オプションを指定して実行すると、サーバーの優先順位の変更内容を強制的にただちに有効にできます。-F オプションを使用すると、nis_cachemgr で、ただちにその情報が更新されます。詳細は、「優先順位の変更内容をただちに実現する方法」を参照してください。

nisprefadm コマンドの使用方法

ここからの節では、nisprefadm コマンドを使用して、サーバーの優先順位を設定、変更、削除する方法について説明します。

nisprefadm コマンドは、クライアントが優先的に選択するサーバーを指定するために使用します。

nisprefadm コマンドの構文は次のとおりです。


nisprefadm -a|-m|-r|-u|-x|-l -L|-G [-o type] \
 [-d domain] \
 [-C machine] \
 servers
nisprefadm -F
表 20–1 nisprefadm コマンドのオプション

オプション 

目的 

-G

ドメインの org_dir ディレクトリ内に格納されるグローバル client_info テーブルを作成する。つまり、グローバルな優先されるサーバーリストを作成する。このオプションは、指定したサブネット上のすべてのマシンに対して優先順位を指定する場合は -C subnet、個別のマシンに優先順位を指定する場合は -C machine のどちらかと同時に使用しなければならない

-L

ローカルマシンの /var/nis ディレクトリに格納されるローカル client_info ファイルを作成する。つまり、コマンドを実行中のマシンにだけ適用される優先サーバーのリストを作成する

-o type

オプションを指定する。有効なオプションには、クライアントが接続できる優先サーバーがない場合、優先サーバー以外のサーバーを使用できるように指定する pref_type=all と、指定した優先サーバーだけをクライアントが使用するように指定する pref_type=pref_only がある

-d domain

指定したドメインまたはサブドメインに、グローバルな優先サーバーの client_info テーブルを作成する

-C subnet

優先順位を適用するサブネットの番号 

-C machine

クライアントマシン名 

servers

1 つまたは複数の NIS+ サーバー。ここで指定されたサーバーは優先的に選択される 

-a

サーバーリストに指定サーバーを追加する 

-m

サーバーリストを変更する。たとえば、-m オプションを使用すると、1 つまたは複数のサーバーに指定された優先順位番号を変更できる

-r

サーバーリストから指定したサーバーを削除する 

-u

サーバーリストを消去してから、指定したサーバーを追加する (つまり、現行のサーバーリストを優先サーバーの新規リストに置換する) 

-x

サーバーリストを完全に削除する 

-l

現行の優先サーバー情報を一覧表示 (表示) する 

-F

優先サーバーのリストを強制的にただちに変更する 


注 –

-C machine オプションは、-L (ローカル) フラグとともに使用しても無効となるので、使用しないでください。たとえば、nisprefadmaltair マシン上で実行しているとします。ここで、-L フラグを使用して、指定した優先順位が altair のローカル client_info ファイルに書き込まれるように指定し、さらに、-C vega オプションを使用して、作成した優先順位が vega マシンに適用されるように指定します。すると、nisprefadm コマンドは、vega 用の優先順位を altair のファイルに書き込みます。しかし、vega は、サーバーの優先順位を必ず自身のローカル client_info ファイルまたはドメインのグローバル client_info テーブルから入手するため、これらの情報を参照することはありません。そのため、-C オプションは、nisprefadm-G (グローバル) フラグを指定して実行する場合にだけ意味をもちます。


現行のサーバー優先順位の表示

現行のサーバー優先順位を表示するには、nisprefadm-l オプションを指定して実行してください。

マシンに指定された優先順位の表示方法

    そのマシン上で、nisprefadm-L-l を指定して実行します。


sirius# nisprefadm -L -l

このようにすると、マシンのローカル /var/nis/client_info ファイル内に定義されたサーバーの優先順位がすべて表示されます。ローカルファイルがない場合は、情報は表示されず、シェルプロンプトに戻ります。

1 台のマシンに設定されたグローバルな優先順位の表示方法

    nisprefadm に、-l-G-C machinename オプションを指定して実行します。


sirius# nisprefadm -G -l -C machinename

machinename には、マシンの IP アドレス (番号) が入ります。

このようにすると、このサブネット用にドメインのグローバル client_info テーブル内に設定された優先順位が表示されます。

サブネットに設定されたグローバル優先順位の表示方法

    nisprefadm に、-l-G-C subnet オプションを指定して実行します。


sirius# nisprefadm -G -l -C subnet

subnet には、サブネットの IP アドレス (番号) が入ります。

このようにすると、このサブネット用にドメインのグローバル client_info テーブル内に設定された優先順位が表示されます。

優先順位格付け番号の指定方法

デフォルトでは、-a オプションの後ろにリストしたサーバーには、すべて優先順位番号ゼロが指定されます。別の優先順位番号を指定する場合は、次のように、サーバー名の直後に指定する番号をカッコで囲んで入れてください (-a name(n))。-a name(n). name にはサーバー名が、n には優先順位番号が入ります。

たとえば、replica2 サーバーに優先順位番号 3 を割り当てる場合は、次のように入力します。


# nisprefadm -G -a replica2(3)

注 –

シェルの中には、次のように要素を 2 重引用符で囲まなければならないものがあります。"name(n)"


サーバーの優先順位格付け番号の基礎知識については、「優先順位の番号の指定」を参照してください。

グローバルサーバー優先順位を指定する

ローカルまたは遠隔ドメインに、グローバルサーバー優先順位を設定できます。優先順位は、個別のマシンと 1 つのサブネット上のすべてのマシンに設定できます。

この節では、NIS+ ドメインのマスターサーバーに存在するグローバル client_info テーブル内にサーバーの優先順位を設定する方法を説明します。マスターサーバー上にテーブルがある場合、NIS+ は、そのテーブルをドメインの既存の複製サーバー上に複写します。

サーバーの優先順位番号を割り当てるには、次のどちらかを指定した nisprefadm を実行してください。

サブネットにグローバル優先順位を設定する方法

1 つのサブネット上のすべてのマシンのグローバルテーブルにサーバーの優先順位を割り当てるには、次のようにします。

    nisprefadm-G および -C subnet オプションを指定して実行します。


#nisprefadm -G -a -C subnet servers (preferences)

引数の意味はそれぞれ以下のとおりです。

個別のマシンにグローバル優先順位を設定する方法

    -G-C machine オプションを指定した nisprefadm を実行します。


#nisprefadm -G -a -C machine servers (preferences)

引数の意味はそれぞれ以下のとおりです。


polaris# nisprefadm -u -G -C cygnus replica7 replica9

遠隔ドメインにグローバル優先順位を設定する方法

遠隔ドメイン内の個別のマシン、または遠隔ドメイン内の 1 つのサブネット上にあるすべてのマシンにサーバーの優先順位を割り当てるには、次のようにします。

    nisprefadm-C-G-d オプションを指定して実行します。


#nisprefadm -a -G -C name \
 -d domain servers(preferences)

引数の意味はそれぞれ以下のとおりです。

たとえば、デフォルトの優先順位番号ゼロを指定した nismaster2 サーバーを、遠隔ドメイン sales.doc.com 内のサブネット 10.10.111.11 の優先サーバーのリストに追加する場合は、次のように入力します。


polaris# nisprefadm -a -G -C 10.10.111.11 -d sales.doc.com. nismaster2

ローカルサーバー優先順位を指定する

ここでは、ローカル client_info ファイルの作成および変更方法について説明します。ローカル client_info ファイルは、このファイルが存在するマシンにサーバーの優先順位を指定するためのものです。

マシンに /var/nis/client_info ファイルがある場合、このマシンは、NIS+ サーバー上のグローバル client_info テーブルではなく、そのマシンのローカルファイルからサーバーの優先順位を入手します。つまり、ローカルファイルはグローバルテーブルよりも優先されます。

サーバーの優先順位を割り当てるには、次のどちらかを指定した nisprefadm を実行してください。

ローカルマシン上に優先順位を設定する方法

nisprefadm コマンドを実行中のローカルマシンにサーバーの優先順位を割り当てるには、次のようにします。

    nisprefadm-L オプションと -a または -u オプションを指定して実行します。


#nisprefadm -a -L servers(preferences)

ここで、servers (preferences) には、1 つまたは複数のサーバーが入ります。それらには優先順位格付け番号を指定できます。

たとえば、deneb マシンが NIS+ 情報を、まず初めにデフォルトの優先順位番号ゼロが指定された replica3 から検索し、次に manf.doc.com ドメイン内の (優先順位番号 1 が指定された) サーバー replica6 を検索するように指定する場合は、次のように入力します。


deneb# nisprefadm -a -L replica3 replica6.manf(1)

サーバーの優先順位を変更する

サーバーの優先順位番号は、変更することができ、また別のサーバーに優先順位番号の割り当てを移すこともできます

優先サーバーまたはサーバーに割り当てた優先順位番号を変更するには、nisprefadm-m oldserver-=newserver(n) オプションを指定して実行してください。

サーバーの優先順位番号を変更する方法

    nisprefadm-m server=server(new) オプションを指定して実行します。


#nisprefadm -L|-G -C name -m oldserver=newserver(n)

引数の意味はそれぞれ以下のとおりです。

たとえば、deneb マシン上で、deneb のローカル client_info ファイルの replica6.manf サーバーに指定された番号を 2 に変更する場合は、次にように入力します。


deneb# nisprefadm -L -m replica6.manf=replica6.manf(2)

優先順位リスト内で 1 つのサーバーを別のサーバーに置換する方法

優先順位リスト内で、1 つのサーバーを別のサーバーに変更するには、次のようにします。

    nisprefadm-m oldserver=newserver オプションを指定して実行します。


#nisprefadm -L|-G -C name -m \
 oldserver=newserver(prefnumber)

引数の意味はそれぞれ以下のとおりです。

-G オプションを使用して、グローバル client_info テーブル内のサーバーを置換する場合には、その置換内容は -C オプションで特定したサブネットまたはマシンにだけ適用されるので注意してください。それ以外にリストされている置換対象 (旧) サーバーは影響を受けません。

たとえば、3 つのサブネットを持つドメインを所有していて、この中の 2 つのサブネット用に replica1 サーバーが優先サーバーのリストに入っている場合を考えます。これ以上 replica1 を使用しないので、使用サーバーから除外する場合は、nisprefadm -m を実行して、最初のサブネットの replica1 を新規サーバーに置換します。この時、2 番目のサブネットに対しても同様の処理を行うまでは、replica1 はそのサブネットの優先サーバーのリストに入っています。個別のマシンの優先サーバーでも同様です。

たとえば、ドメインのグローバル client_info テーブル内で、サブネット 172.21.123.12 用に指定された replica3 サーバーを replica6 サーバーに置換し、replica6 に優先順位番号 1 を割り当てる場合は、次のように入力します。


nismaster# nisprefadm -G -C 172.21.123.12 -m replica3 replica6(1)

優先順位リストからサーバーを削除する方法

優先順位リストから 1 つまたは複数のサーバーを削除するには、次のようにします。

    nisprefadm-r オプションを指定して実行します。


#nisprefadm -L|-G -C name -r servers

引数の意味はそれぞれ以下のとおりです。

たとえば、ドメインのグローバル client_info テーブル内から、マシン polaris に指定された replica3 および replica6.manf サーバーを削除する場合は、次のように入力します。


polaris# nisprefadm -G -C polaris -r replica3 replica6.manf

優先サーバーリスト全体を置換する方法

グローバル client_info テーブルまたはマシンのローカル client_info ファイルどちらかの中にある、サブネットまたはマシンに指定された優先サーバーのリスト全体を置換するには、nisprefadm-u オプションを指定して実行してください。

-u オプションは、マシンまたはサブネットに指定されたサーバーの優先順位を、まず初めにすべて削除してから指定した新規の優先順位を追加しますが、これ以外は、-a オプションと同じ処理を行います。既存の優先順位がある場合、-a オプションでは旧リストに新しい優先順位を追加します。

-u オプションの使用例については、「個別のマシンにグローバル優先順位を設定する方法」を参照してください。

優先サーバー限定指定

優先サーバーが使用できない場合に、クライアントがとる動作を指定できます。

デフォルトでは、クライアントは、優先サーバーに到達できない場合、検出できたサーバーであればどれでも使用してしまいます。優先サーバー限定オプションを設定すると、クライアントが優先サーバーだけを使用するように指定できます。優先サーバー限定オプションと全サーバーオプションの基礎知識については、「優先サーバー限定と全サーバー」を参照してください。

優先サーバーが使用できない場合のクライアントの動作を指定するには、nisprefadm-o value オプションを指定して実行してください。

優先サーバーだけを指定する方法

サーバーリストを使用するクライアントが、リスト内に記述されたサーバーだけから NIS+ 情報を入手するように指定するには、次のようにします。

    nisprefadm-o pref_only オプションを指定して実行してください。


#nisprefadm -L|-G -o pref_only

引数の意味はそれぞれ以下のとおりです。


注 –

このオプションは、優先サーバーが全くないドメインでは無視されます。


たとえば、altair のローカル client_info ファイル内に、altair が必ず優先サーバーを使用し、altair の優先サーバーリストにないサーバーは使用しないように指定するには、次のように入力します。


altair# nisprefadm -L -o pref_only

優先サーバー以外のサーバーを使用する方法

サーバーリストを使用するクライアントが、優先サーバーが使用できない場合に、リストに記載されていないサーバーから NIS+ 情報を入手するように指定するには、次のようにします。

    nisprefadm-o all オプションを指定して実行してください。


#nisprefadm -L|-G -o all

引数の意味はそれぞれ以下のとおりです。


注 –

これは、デフォルトの動作です。そのため、-o all オプションは、以前に -o pref_only オプションを使用して優先サーバーだけを指定していた場合に限り使用する必要があります。


たとえば、altair が優先サーバーを使用できない場合には、altair のローカル client_info ファイル内に、優先サーバー以外のサーバーを使用できるように指定し直すには、次のように入力してください。


altair# nisprefadm -L -o all

サーバーの優先順位の使用の終了

使用サーバーのカスタマイズ機能の使用を終了し、「デフォルトでのクライアントの検索動作」で説明した NIS+ 情報の入手方法に戻すことができます。

サーバーの優先順位の使用を終了するには、nisprefadm-x オプションを指定して実行してください。


注 –

サーバーの優先順位の使用を終了する場合、クライアントは、「サーバーの優先順位が有効になるタイミング」で説明していることがらが通常どおり進行するまではサーバーの優先順位の使用を終了しません。また、サーバーの優先順位の使用を強制的にただちに終了させることもできます。これについては、「サーバーの優先順位の有効化」で説明しています。


グローバルサーバー優先順位を削除する方法

    nisprefadm-G および -x オプションを指定して実行してください。


#nisprefadm -G -x

これにより、グローバルサーバーの優先順位が削除されます。

ローカルサーバー優先順位を削除する方法

ローカル優先順位を終了するということは、次の異なる 3 つの事項のいずれか 1 つを意味すると考えられます。

ローカルからグローバルサブネットの優先順位に置換する方法

    マシンの /var/nis/client_info ファイルを削除します。


# rm /var/nis/client_info

この結果、マシンはドメインのグローバル client_info テーブル内でマシンのサブネットに指定された優先順位を使用するようになります。

ローカルからマシン固有のグローバル優先順位に置換する方法

  1. マシンの /var/nis/client_info ファイルを削除します。


    # rm /var/nis/client_info
  2. -G-C オプションを使用して、グローバルテーブル内にそのマシン用の優先順位を指定します。

    詳細は、「個別のマシンにグローバル優先順位を設定する方法」を参照してください。

マシンにサーバーの優先順位の使用を中止させる方法

  1. マシンの /var/nis/client_info ファイルを削除します。


    # rm /var/nis/client_info

    マシンのドメインにグローバル client_info テーブルがない場合、必要な処理はこの手順だけです。ドメインに client_info テーブルがある場合は、手順 2 に進んでください。

  2. 空の /var/nis/client_info ファイルを作成します。


    # touch /var/nis/client_info

    マシンに固有の /var/nis/client_info ファイルがある場合、そのマシンは client_info テーブルのグローバル優先順位は使用しません。マシンに空の /var/nis/client_info ファイルがある場合、そのマシンはどの優先順位も使用せず、「デフォルトでのクライアントの検索動作」で説明した方法で NIS+ 情報を入手します。

サーバーの優先順位の有効化

使用サーバーの変更内容は、通常、クライアントマシンを再起動するか、またはマシンのキャッシュ管理プログラムを更新した時に有効になります。

ローカル client_infoファイル (-L オプション) を使用するローカルマシン上で、nisprefadm を使用してサーバーの優先順位の設定または変更した場合は、その変更内容はただちに有効になります。

グローバル client_info テーブル (-G オプション) からサーバーの優先順位を入手しているマシンの場合、nisprefadm-F オプションを指定して実行すると、サーバーの優先順位に加えた変更を強制的にただちに有効にできます。


# nisprefadm -F

-F オプションとは、マシンのキャッシュ管理プログラムに、そのサーバーの優先順位情報をドメインのグローバル client_info テーブルを使って強制的にただちに更新させるオプションです。nisprefadm -F を実行するマシンが、/var/nis 内にそのマシン固有のローカル client_info ファイルを持つ場合、そのマシン上で nisprefadm -F を実行しても無効になります。


注 –

-F オプションは、ほかの nisprefadm オプションと同時に使用できません。nisprefadm -F コマンドは、必ず、このコマンドを適用するマシン上で、単独で使用してください。-G オプションを使用して、ドメイン内にあるすべてのマシンのキャッシュ管理プログラムを更新できません。nisprefadm -F コマンドは、各マシン上でそれぞれ実行する必要があります。


優先順位の変更内容をただちに実現する方法

新しく作成、または変更したサーバーリストを、指定したマシン上で強制的にただちに有効にするためには、次のようにします。

    マシン上で、nisprefadm-F オプションを指定して実行します。


# nisprefadm -F

たとえば、vega の優先サーバーリストへの変更内容を、強制的にただちに実現させるには (ローカルまたはグローバルのどちらの場合でも)、次のように入力してください。


vega# nisprefadm -F