リンカーとライブラリ

x64: プロシージャーのリンクテーブル

x64 動的オブジェクトの場合、プロシージャーリンクテーブルは共有テキスト内に存在しますが、非公開の大域オフセットテーブル内のアドレスを使用します。実行時リンカーは、宛先の絶対アドレスを判定し、これらの絶対アドレスに従って大域オフセットテーブルのメモリーイメージに変更を加えます。このようにして実行時リンカーは、位置からの独立性とプログラムのテキストの共有性を低下させることなくエントリをリダイレクトします。実行可能ファイルと共有オブジェクトファイルには、別個のプロシージャーのリンクテーブルが存在します。

表 7–41 x64: プロシージャーのリンクテーブルの例
.PLT0:
    pushq   GOT+8(%rip)                         # GOT[1]
    jmp     *GOT+16(%rip)                       # GOT[2]
    nop;    nop
    nop;    nop
.PLT1:
    jmp     *name1@GOTPCREL(%rip)               # 16 bytes from .PLT0
    pushq   $index1
    jmp     .PLT0
.PLT2:
    jmp     *name2@GOTPCREL(%rip)               # 16 bytes from .PLT1
    pushl   $index2
    jmp     .PLT0

次の手順は、実行時リンカーとプログラムがプロシージャーのリンクテーブルおよび大域オフセットテーブルによってシンボル参照をどのように協同で解決するかを示しています。

  1. 実行時リンカーは、プログラムのメモリーイメージを最初に作成するとき、大域オフセットテーブルの 2 番目と 3 番目のエントリに特殊な値を設定します。これらの値については、次の手順で説明します。

  2. プロセスイメージにおける各共有オブジェクトファイルには自身のプロシージャーのリンクテーブルが存在しており、制御は同じオブジェクトファイル内からのみプロシージャーのリンクテーブルエントリに渡されます。

  3. たとえば、プログラムが name1 を呼び出すと、制御が .PLT1 に渡されます。

  4. 最初の命令は、name1 の大域オフセットテーブルエントリのアドレスにジャンプします。大域オフセットテーブルは最初は、後続の pushq 命令のアドレスを保持します (name1 の実アドレスは保持しない)。

  5. プログラムは再配置インデックス (index1) をスタックにプッシュします。再配置オフセットは、再配置テーブルへの 32 ビットの負ではないインデックスです。再配置テーブルは DT_JUMPREL 動的セクションエントリによって識別されます。指定された再配置エントリには R_AMD64_JMP_SLOT が存在しており、オフセットは、前の jmp 命令で使用された大域オフセットテーブルエントリを指定します。再配置エントリにはシンボルテーブルインデックスも存在しており、実行時リンカーはこれを使って参照されたシンボル name1 を取得します。

  6. プログラムは、再配置インデックスをプッシュした後、.PLT0 (プロシージャーのリンクテーブルの先頭エントリ) にジャンプします。pushq 命令は、2 番目の大域オフセットテーブルエントリ (GOT+8) の値をスタックにプッシュして、実行時リンカーに 1 ワードの識別情報を与えます。プログラムは次に、3 番目の大域オフセットテーブルエントリ (GOT+16) のアドレスにジャンプして、実行時リンカーにジャンプします。

  7. 実行時リンカーはスタックを戻し、指定された再配置エントリを調べ、シンボルの値を取得し、name1 の実際のアドレスを大域オフセットテーブルエントリに格納し、そして宛先にジャンプします。

  8. その後のプロシージャーのリンクテーブルエントリに対する実行は、name1 に直接渡されます (実行時リンカーの再呼び出しは行われない)。.PLT1 における jmp 命令は、pushq 命令にジャンプする代わりに、name1 にジャンプします。

LD_BIND_NOW 環境変数は、動的リンク処理の動作を変更します。この環境変数の値がヌル文字以外の場合、実行時リンカーは、プログラムに制御を渡す前に R_AMD64_JMP_SLOT 再配置エントリを処理します。