リンカーとライブラリ

SPARC: Local Dynamic (LD)

このコードシーケンスは、「スレッド固有領域のアクセスモデル」で説明されている LD モデルを実装します。

表 8–3 SPARC: Local Dynamic スレッド固有変数のアクセスコード

コードシーケンス

初期の再配置

シンボル

# %l7 - initialized to GOT pointer

0x00 sethi %hi(@tmndx(x1)), %o0
0x04 add   %o0, %lo(@tmndx(x1)), %o0
0x08 add   %l7, %o0, %o0
0x0c call  x@TLSPLT

# %o0 - contains address of TLS block of current object

0x10 sethi %hi(@dtpoff(x1)), %l1
0x14 xor   %l1, %lo(@dtpoff(x1)), %l1
0x18 add   %o0, %l1, %l1

# %l1 - contains address of local TLS variable x1

0x20 sethi %hi(@dtpoff(x2)), %l2
0x24 xor   %l2, %lo(@dtpoff(x2)), %l2
0x28 add   %o0, %l2, %l2

# %l2 - contains address of local TLS variable x2
 
 
R_SPARC_TLS_LDM_HI22
R_SPARC_TLS_LDM_LO10
R_SPARC_TLS_LDM_ADD
R_SPARC_TLS_LDM_CALL
 
 
 
R_SPARC_TLS_LDO_HIX22
R_SPARC_TLS_LDO_LOX10
R_SPARC_TLS_LDO_ADD
 
 
 
R_SPARC_TLS_LDO_HIX22
R_SPARC_TLS_LDO_LOX10
R_SPARC_TLS_LDO_ADD
 
 
x1
x1
x1
x1
 
 
 
x1
x1
x1
 
 
 
x2
x2
x2
 

未処理の再配置: 32 ビット

シンボル

GOT[n]
GOT[n + 1]
R_SPARC_TLS_DTPMOD32
<none>
x1
 

未処理の再配置: 64 ビット

シンボル

GOT[n]
GOT[n + 1]
R_SPARC_TLS_DTPMOD64
<none>
x1

最初の sethi 命令は R_SPARC_TLS_LDM_HI22 再配置を生成し、add 命令は R_SPARC_TLS_LDM_LO10 再配置を生成します。これらの再配置は、現在のオブジェクトの TLS_index 構造体を保持する領域を GOT に割り当てるように、リンカーに指示します。リンカーは、この新しい GOT エントリに GOT からの相対オフセットを代入することによって、この再配置を処理します。

読み込みオブジェクトインデックスは実行時まで不明です。したがって、R_SPARC_TLS_DTPMOD32 再配置が作成され、TLS_index 構造体の ti_tlsoffset フィールドにゼロが埋め込まれます。

2 つめの add 命令には R_SPARC_TLS_LDM_ADD 再配置によってタグが付けられ、call 命令には R_SPARC_TLS_LDM_CALL 再配置によってタグが付けられます。

以降の sethi 命令は R_SPARC_LDO_HIX22 再配置を生成し、xor 命令は R_SPARC_TLS_LDO_LOX10 再配置を生成します。各局所シンボルの TLS オフセットはリンク編集時に認識されるため、これらの値は直接埋め込まれます。add 命令には、R_SPARC_TLS_LDO_ADD 再配置によってタグが付けられます。

手続きが複数の局所シンボルを参照する場合には、コンパイラは TLS ブロックの基底アドレスを取得するコードを 1 度だけ生成します。以後、各シンボルのアドレスの計算にはこの基底アドレスが使用され、個別にライブラリを呼び出すことはありません。


注 –

R_SPARC_TLS_LDO_ADD によってタグが付けられた add 命令内の TLS オブジェクトアドレスが入ったレジスタは、命令シーケンス内の最初のレジスタでなければなりません。このように指定することで、リンカーはコード変換時にレジスタを識別できるようになります。