「ウィークバージョン定義の作成」では、ウィークバージョン定義を使用して、内部実装の変更をマークする方法について説明しました。これらのバージョン定義は、オブジェクトに対して行われたバグ修正と性能の改善に適しています。ウィークバージョンの存在が必要である場合、ウィークバージョン定義への明示的な依存関係を作成できます。オブジェクトを正しく機能させるためにバグ修正や性能の改善が重要な場合、このような依存関係の作成も重要になります。
上記の libfoo.so.1 の例で、バグ修正がウィークバージョン定義 SUNW_1.2.1 としてソフトウェア Release X+3 に組み込まれている場合を想定します。
$ pvs -dsv libfoo.so.1 libfoo.so.1: _end; _GLOBAL_OFFSET_TABLE_; _DYNAMIC; _edata; _PROCEDURE_LINKAGE_TABLE_; _etext; SUNW_1.1: {STAND_A, STAND_B}: SUNW_1.1; SUNW_1.2: {SUNW_1.1}: bar; STAND_A: foo1; STAND_A; STAND_B: foo2; STAND_B; SUNW_1.2.1 [WEAK]: {SUNW_1.2}: SUNW_1.2.1; |
通常、アプリケーションは、この libfoo.so.1 に対して構築されている場合、バージョン定義 SUNW_1.2.1 に対する弱い依存関係を記録します。この依存関係は情報提供だけを目的とします。実行時に使用される libfoo.so.1 の実装にバージョン定義が見つからなくても、この依存関係によってアプリケーションが強制終了されることはありません。
ファイル制御指令 $ADDVERS を使用すると、バージョン定義に対する明示的な依存関係を生成できます。この定義がウィークである場合、この明示的参照によって、バージョン定義が強い依存関係に高められます。
アプリケーション prog は、次のファイル制御指令を使用して、SUNW_1.2.1 インタフェースを実行時に使用できるという要件を実施するように構築できます。
$ cat mapfile libfoo.so - SUNW_1.1 $ADDVERS=SUNW_1.2.1; $ cat prog extern void foo1(); main() { foo1(); } $ cc -M mapfile -o prog prog.c -L. -R. -lfoo $ pvs -r prog libfoo.so.1 (SUNW_1.2.1); |
prog には、インタフェース STAND_A に対する明示的な依存関係があります。バージョン定義 SUNW_1.2.1 は、強いバージョンに高められているため、依存関係 STAND_A によって正規化されます。実行時にバージョン定義 SUNW_1.2.1 が見つからないと、重大なエラーが生成されます。
依存関係が少ない場合、リンカーの -u オプションを使用して、バージョン定義に明示的に結合できます。このオプションで、バージョン定義シンボルを参照します。ただし、シンボル参照は非選択的です。類似の名前を持つ複数のバージョン定義を含む可能性がある複数の依存関係を処理する場合は、この手法で明示的な結合を作成できないことがあります。