Solaris と DTrace では、さまざまなオペレーティングプラットフォームとプロセッサがサポートされています。このため、DTrace では、インタフェースを「依存クラス」に分類して、すべての Solaris プラットフォームとプロセッサに共通のインタフェースであるのか、特定のシステムアーキテクチャ専用のインタフェースであるのかを区別しています。依存クラスは、上で説明した安定性レベルとは別の観点からの分類です。たとえば、安定しているが SPARC マイクロプロセッサでしかサポートされない DTrace インタフェースもあれば、変更の可能性はあるがすべての Solaris システムに共通の DTrace インタフェースもあります。以下では、DTrace の依存クラスについて、共通性の低いものから順に説明します。もっとも共通性が低いクラスは、特定のアーキテクチャに固有のクラスです。もっとも共通性が高いクラスは、すべてのアーキテクチャに共通のクラスです。
アーキテクチャの依存関係が不明なインタフェースです。DTrace は、すべての構成要素 (オペレーティングシステム実装内で定義されたデータ型など) について、アーキテクチャの依存関係を認識できるとは限りません。通常、「不明」に分類されるのは、依存関係を計算できない、安定性の非常に低いインタフェースです。現在使用中のアーキテクチャ以外で DTrace を使用するときには、このインタフェースが使用できない可能性があります。
現在のシステムの CPU モデル固有のインタフェースです。現在の CPU モデルと実装名を表示するには、psrinfo(1M) ユーティリティーの -v オプションを使用します。CPU モデル依存インタフェースは、その他の CPU 実装では使用できない可能性があります。同じ命令セットアーキテクチャ (ISA) をエクスポートする CPU でも同様です。たとえば、UltraSPARC-III+ と UltraSPARC-II は、どちらも SPARC 命令セットをサポートします。しかし、UltraSPARC-III+ マイクロプロセッサ上の CPU 依存インタフェースは、UltraSPARC-II マイクロプロセッサでは使用できない可能性があります。
現在のシステムのハードウェアプラットフォーム固有のインタフェースです。通常、プラットフォームは、システムコンポーネントとアーキテクチャの特性のセット (たとえばサポート対象の CPU モデルのセット) に、「SUNW,Ultra-Enterprise-10000」のようなシステム名を関連付けています。現在のプラットフォーム名を表示するには、uname(1) -i オプションを使用します。このインタフェースは、ほかのハードウェアプラットフォームでは使用できない可能性があります。
現在のシステムのハードウェアプラットフォームグループ固有のインタフェースです。通常、プラットフォームグループは、プラットフォームのセットと関連する特性を、「sun4u」のような 1 つの名前で関連付けています。現在のプラットフォームグループ名を表示するには、uname(1) -m オプションを使用します。このインタフェースは、現在のプラットフォームグループ内のその他のプラットフォーム上では使用可能ですが、このグループのメンバーでないハードウェアプラットフォーム上では使用できない可能性があります。
このシステム上のマイクロプロセッサがサポートする命令セットアーキテクチャ (ISA) 固有のインタフェースです。ISA は、マイクロプロセッサ上で実行可能なソフトウェアの仕様 (アセンブリ言語命令、レジスタなどの詳細情報を含む) について説明したものです。システムがサポートするネイティブの命令セットを表示するには、isainfo(1) ユーティリティーを使用します。このインタフェースは、同じ命令セットをエクスポートしないシステム上ではサポートされない可能性があります。たとえば、Solaris SPARC システム上の ISA 依存インタフェースは、Solaris x86 システム上ではサポートされない可能性があります。
配下のハードウェアとは関係なく、すべての Solaris システムに共通のインタフェースです。「共通」インタフェースだけに依存する DTrace プログラムと階層化アプリケーションは、Solaris と DTrace のリビジョンが共通しているその他の Solaris システムに配備し、実行できます。大部分の DTrace インタフェースは「共通」インタフェースです。したがって、Solaris を使用する場合いつでも使用できます。