Java Desktop System Release 3 ご使用にあたって (Solaris 10 版)

第 1 章 Java Desktop System Release 3 ご使用にあたって

本書では、次のリリース製品を対象に説明します。

1.1 製品の特徴

Java Desktop System には、次のような機能が備わっています。

オープンソーススタンダード

GNOME デスクトップ環境、StarSuite 統合オフィスツール、Mozilla ブラウザ、Evolution メールおよびカレンダクライアント、Java 2 Platform Standard Edition などのコンポーネントが装備されています。

高度なシステム管理

サーバー側管理ツールにより、ユーザーのデスクトップ環境を集中的に設定、導入、管理できます。

開発者向けツール

高度な開発者向けツールが、Java ベースのデスクトップ用アプリケーションの作成を支援します。

アプリケーション機能

このリリースの Java Desktop System には、次のような新しいアプリケーション機能が備わっています。

  • Microsoft Exchange Server V2.0.1 用コネクタ

  • Sun Java Calendar Preview

1.2 新機能

このリリースの Solaris 10 OS 向け Java Desktop System では、オープンソースのソフトウェアコミュニティと Sun Microsystems の革新的な技術により、包括的、統合済み、相互運用可能なデスクトップ環境が実現しています。このリリースの Java Desktop System に加えられた更新と新機能を次の表に示します。

機能 

説明 

モバイル性 

  • Web ブラウザプロファイルのローミング用プロファイル管理の改善

相互運用性 

  • Exchange コネクタにより、電子メールおよびカレンダアプリケーションと Microsoft Exchange ネットワークの相互運用が実現

  • 新機能 Sun Java Calendar Preview、Java カレンダおよびアドレスブッククライアントが Microsoft Exchange サーバーおよび Sun Java System Messaging サーバーへの接続をサポート

  • Internet Explorer とのブラウザ互換性の向上

  • Samba 3.0 が Windows ファイル共有との相互運用性を確保

新しいアクセシビリティアプリケーション 

  • スクリーンリーダと拡大鏡

  • オンスクリーンキーボード

詳細は『Java Desktop System Release 3 Accessibility Guide』および『Java Desktop System Release 3 Accessibility Release Notes』を参照してください。

国際化 

  • 簡体字中国語による入力方式 SunPinYin

  • 新機能、ファイルシステム検査器により、レガシー環境から UTF–8 文字エンコーディングへの移行が容易

全般的な改善点 

  • Java Desktop System、GNOME 2.0x、電子メールおよびカレンダアプリケーション、Mozilla および Gaim の主要コンポーネントをすべて更新

  • StarSuite 7 には Product Patch 4 が同梱

  • 業界標準 PC/SC API を介したスマートカード統合用フレームワークを装備

1.3 既知の問題点

このリリースの Java Desktop System における既知の問題点のうち、製品リリース時に回避策がまだ見つかっていないものを次の表に示します。

トピック 

既知の問題点 

アプリケーション 

  • バグ ID: 6200999

    Mozilla: ローミングアクセスサーバーと「ユーザ設定」をやり取りできるよう指定できます。「編集」 -> 「設定」 -> 「ローミング」 -> 「項目の選択」の順に選択し、 「ユーザ設定」を選択します。この選択が反映されません。

  • バグ ID: 6204976

    電子メールおよびカレンダ: Evolution アプリケーションでは、特定の言語による添付文書を保存できません。

  • バグ ID: 5082008

    アーカイブ管理: アーカイブ管理 から、次の種類のアーカイブを作成できません。

    • .arj

    • .lha

    • .bzip

    • .lzop

    • .zoo

  • ボリュームコントロール

    ボリュームコントロールデスクトップアプリケーションを起動できる、ボリュームコントロールパネルアプリケーションのオプションが動作しません。

  • サウンドレコーダ

    新しい .wav ファイルを録音するとき、スライドバーとサイドカウンタが動作しません。

各国語化 

  • BMP 以外の Unicode 文字を含んでいる文書を Mozilla から印刷することはできません。

1.4 旧リリースとの相違点

このリリースの Solaris 10 OS 向け Java Desktop System は、GNOME 2.6 Desktop をベースにしています。このリリースの Java Desktop System には、次のコンポーネントは含まれません。

これらのコンポーネントが必要な場合は、GNOME コミュニティにお問い合わせください。http://gnome.orgをご覧ください。

1.5 マニュアルの場所

Java Desktop System の PDF 形式および HTML 形式のマニュアルは、次の場所にあります。

1.5.1 各国語版のユーザーマニュアルへのアクセス

ヘルプブラウザでは、一部の言語による Java Desktop System のユーザーマニュアルを表示できません。

各国語版のユーザーマニュアルを表示するには、http://docs.sun.com で次の手順を実行します。

  1. 次のページを開きます。

    http://docs.sun.com

  2. 言語選択ボタンから、希望の言語を選択します。

    言語選択ボタンは、そのページの「Search/browse within」領域の隣にあります。

  3. 希望のマニュアル名を「検索」フィールドに入力します。

  4. 表示されたリストから、希望のマニュアルを選択します。

1.5.2 サンプルアプリケーションのマニュアル

このリリースの Java Desktop System には、GNOME フリーソフトウェアコミュニティによって提供されるヘルプマニュアルを持つサンプルアプリケーションが含まれています。Sun Microsystems は、フリーソフトウェアコミュニティによって提供されるヘルプマニュアルの完全性または正確性については、責任を負いません。

Sun は、アプリケーションと機能に関する約 130 のマニュアルページを提供します。マニュアルページの著作者として Sun Microsystems または Sun Microsystems の代理店の明確な著作者表示がないマニュアルについては、Sun Microsystems では、マニュアルの内容や正確さに関する責任は一切負いません。

Sun は、サンプルアプリケーションの各国語版マニュアルは提供しません。

1.5.3 リムーバブルメディアに関する情報

リムーバブルメディアについては、 http://docs.sun.com の『Java Desktop System Release 3 ユーザーズガイド』を参照してください。

1.6 評価用サンプルアプリケーション

Sun は、ユーザーが批評および評価できるよう、Java Desktop System と共に各種サンプルアプリケーションを提供します。サンプルアプリケーションは、GNOME フリーソフトウェアコミュニティや Sun 以外の販売会社の製品です。Sun は、これらのサンプルアプリケーションについては、以下のいずれも提供しません。

1.6.1 サンプルアプリケーション

次の表に、Sun Microsystems がサンプルアプリケーションとして提供する GNOME フリーウェアコミュニティによるアプリケーションを一覧表示します。

アプリケーション 

説明 

Calendar Client Preview

カレンダアプリケーション 

ダイアグラムエディタ

フローチャート、地図、UML 図など、数多くの図を作成できる図形エディタ 

辞書

単語の定義および正確なスペルを調べることができるオンライン辞書 

デジタルカメラブラウザ

画像を管理するデジタルカメラブラウザ 

ディスクアナライザ

ディスクの中身を視覚的に表示できるディスク解析プログラム 

画像エディタ

画像を編集する GNU 画像処理プログラム 

画像管理

画像のサムネイルをデスクトップに表示する画像ビューアとブラウザ 

インタフェースエディタ

GNOME アプリケーションのユーザーインタフェースを作成するプログラミングアプリケーション 

ムービープレイヤー

動画を再生できるマルチメディアプレイヤー 

オンスクリーンキーボード 

Java Desktop System の入力装置として使用できるオンスクリーンキーボード 

プロジェクト管理

プロジェクトスケジュールの管理用ツール 

拡大鏡 

画面の拡大表示や、その他のユーザー補助機能を提供します。 

ソースエディタ

プログラマのための汎用的な拡張可能なエディタ 

天気予報

さまざまな地域の現在の天候を表示する天気予報プログラム 

1.6.2 Sun 以外のアプリケーション

次の表に、このリリースの Java Desktop System に関連する Sun 以外の製品を示します。これらのアプリケーションの機能やサポートに関しては、Sun Microsystems では責任を一切負いません。

Sun 以外の製品 

説明 

プラットフォーム 

Adobe Acrobat Reader

Java Desktop System で PDF 形式のファイルを表示できます。このアプリケーションに関する情報は、次の場所にあります。http://www.adobe.com.  

SPARC 

x86 プラットフォームでは、GNOME PDF ドキュメントビューアを使って PDF ファイルを表示できます。PDF ドキュメントビューアを開始するには、「起動」をクリックし、「アプリケーション」 -> 「グラフィックス」 -> 「PDF ドキュメントビューア」の順に選択します。

1.6.3 サンプルゲーム

Sun Microsystems では、評価目的においてのみ、次のゲームを提供します。

1.7 Mozilla 1.7 用プラグイン

このセクションでは、Mozilla 1.7 用プラグインについて説明します。

1.7.1 Java プラグイン

Java プラグイン は、Mozilla 1.7 ではデフォルトで有効になっています。Java Plugin が動作しない場合は、/usr/sfw/lib/mozilla/plugins ディレクトリで、次の表の正しいファイルを示すシンボリックリンクを作成します。

プラットフォーム 

パス 

SPARC 

$JAVA_PATH/plugin/sparc/ns7/libjavaplugin_oji.so

x86 

$JAVA_PATH/plugin/i386/ns7/libjavaplugin_oji.so

Java Desktop System Release 3 では、$JAVA_PATH/usr/java/jre です。


注 –

libjavaplugin_oji.so ファイルをコピーするのではなく、必ずシンボリックリンクを作成してください。libjavaplugin_oji.so をコピーすると、Java はクラッシュします。


すべての Java プラグインを /usr/sfw/lib/mozilla/plugins ディレクトリにインストールします。

1.7.2 その他のプラグイン

Mozilla 1.7 には、Adobe Acrobat Reader プラグインも使用できます。

Mozilla のプラグインについての詳細は、次の場所を参照してください。 http://plugindoc.mozdev.org/solaris.html

1.8 各国語化サポート

このリリースの Java Desktop System では、次の言語がサポートされます。


注 –

このリリースの Java Desktop System は、上記サポート言語以外にも GNOME コミュニティから入手した、その他の言語の各国語化ファイルを含んでいます。Sun Microsystems は、これらの言語の各国語化に対する完全性や正確性については責任を持ちません。


1.9 推奨ロケール

ログイン画面に従来のロケールも表示されていますが、Java Desktop System では UTF-8 と zh_CN.GB18030 ロケールの使用を推奨します。デフォルトのログイン画面 (dtlogin) から GNOME 2.x Display Manager (gdm) に手動で切り替えた場合、UTF-8 および zh_CN.GB18030 ロケールだけが表示されます。GNOME 2.x Display Manager のログイン画面に従来のロケールを追加するには、/etc/X11/gdm/locale.alias ファイルで、追加するロケールのコメントタグを削除し、システムをリブートします。

1.10 Unicode 多言語コンピューティングへの移行

Java Desktop System は、Unicode UTF-8 エンコーディングで言語をサポートする、Unicode 完全対応の多言語システムです。Java Desktop System には、従来の (UTF-8 以外) エンコーディングをサポートするコードセット変換も備わっています。ここでは、Unicode 多言語コンピューティングへの移行時に起こり得る問題について説明します。

1.10.1 データのインポートとエクスポート

Unicode 多言語コンピューティングへの移行によって影響を受けるデータは、様々な方法でインポートおよびエクスポートできます。

1.10.1.1 Microsoft Office ファイル

Microsoft Office ファイルは、Unicode でエンコードされています。StarSuite アプリケーションでは、Unicode でエンコードされたファイルの読み取りや書き込みができます。

1.10.1.2 HTML ファイル

Mozilla Composer などの HTML エディタを使用して作成した HTML ファイルや、Web ブラウザによって保存された HTML ファイルには、通常、charset エンコーディングタグが含まれています。エクスポートまたはインポートしたあとの HTML ファイルは、 HTML ファイル内のエンコーディングタグに基づいて、Mozilla Navigator Web ブラウザで表示したり、Mozilla Composer を使用してファイルを編集することができます。

1.10.1.3 壊れた HTML ファイルの修正

HTML ファイルは文字化けする場合があります。この問題は、概ね次の理由によります。

HTML ファイルの charset エンコーディングタグを見つけるには、次の手順を実行します。

  1. Mozilla を使用してファイルを開きます。

  2. Ctrl+i を押すか、「表示」をクリックして、「表示」メニューを開きます。

  3. 「ページ情報」をクリックします。

charset 情報は、「一般」タブの下に次のように表示されます。Content-Type text/html; charset=us-ascii

文字列 charset=us-ascii が、ファイルの実際のエンコーディングと一致しない場合、そのファイルは壊れているように見えることがあります。HTML ファイルのエンコーディングを編集するには、次の手順を実行します。

  1. Mozilla Composer でファイルを開きます。

  2. 「ファイル」メニューを開きます。

  3. 「文字エンコードの保存および変更」を選択します。

  4. 正しいエンコーディングを選びます。Mozilla Composer は、自動的にエンコーディングと charset タグを適切に変換します。

1.10.1.4 汎用形式で保存された電子メール

現在使用されている電子メールは、MIME charset タグでタグ付けされています。電子メールおよびカレンダアプリケーションでは、MIME charset タグを使用できます。したがって、エンコーディング変換を実行する必要はありません。

1.10.1.5 プレーンテキストファイル

プレーンテキストファイルには、charset タグがありません。ファイルが UTF-8 エンコーディングでない場合、エンコーディング変換を行う必要があります。たとえば、繁体字中国語の big5 でエンコードされているプレーンテキストを UTF-8 に変換するには、次のコマンドを実行します。

iconv -f big5 -t UTF-8 inputfilename > outputfilename

エンコーディング変換には、ファイルシステム検査器 も使用できます。

また、テキストエディタを使えば、様々な文字エンコーディングのテキストを自動的に読み出したり書き込んだりできます。または、ファイルを開いたり保存するときに、明示的にエンコーディングを指定することもできます。

テキストエディタを開始するには、 「起動」をクリックし、 「アプリケーション」 -> 「アクセサリ」 -> 「テキストエディタ」の順に選択します。

1.10.1.6 ファイル名とディレクトリ名

マルチバイト文字を含むファイル名やディレクトリ名が UTF-8 エンコーディングになっていない場合は、エンコーディング変換を行う必要があります。ファイルシステム検査器 を使って、レガシー文字エンコーディングによるファイル名やディレクトリ名、プレーンテキストファイルの内容を、UTF-8 エンコーディングに変換できます。詳細は、ファイルシステム検査器 のオンラインヘルプを参照してください。

ファイルシステム検査器 を開始するには、 「起動」をクリックし、「アプリケーション」 -> 「ユーティリティ」 -> 「ファイルシステム検査器」の順に選択します。

ファイルマネージャを使用して SMB 経由で Microsoft の Windows 上のファイルにアクセスする場合は、エンコーディング変換せずに UTF-8 以外のファイル名やディレクトリ名にアクセスできます。このとき、バグの為ファイルマネージャーの「場所: 」に表示されるファイルパスが文字化けした様に見えますが、ファイル内容の表示に支障はありません。

1.10.1.7 従来のロケール固有のアプリケーションの起動

Unicode UTF-8 への移行準備が整っていないアプリケーションの場合、フロントパネルにランチャーを作成すると、従来のロケールでアプリケーションを開始できます。コマンドラインからアプリケーションを直接開始することもできます。アプリケーションのランチャーを作成するには、次の手順を実行します。

  1. フロントパネル上のランチャーを配置したい場所で右クリックします。

  2. 「パネルに追加」 -> 「ランチャー」と選択します。

  3. 「ランチャーの作成」ダイアログの「コマンド」フィールドに、次の形式で入力を行います。

    env LANG=locale LC_ALL=locale アプリケーション名

    たとえば、/usr/dt/bin から motif-app という名前のアプリケーションを中国語の Big5 ロケールで開始する場合は、「ランチャーの作成」ダイアログの「コマンド」フィールドに、次のテキストを入力します。

    env LANG=zh_TW.BIG5 LC_ALL=zh_TW.BIG5 /usr/dt/bin/motif-app

    アプリケーションの正しい LD_LIBRARY_PATH を指定しなければならない場合もあります。

  4. 「了解」をクリックすると、パネルにランチャーが作成されます。

従来のロケール固有の CLI (コマンドラインインタフェース) アプリケーションを実行する場合は、まず従来のロケールで端末エミュレータウィンドウを開いた後、同じ端末エミュレータウィンドウで CLI アプリケーションを実行します。端末エミュレータウィンドウを従来のロケールで開くには、次のコマンドを入力します。

env LANG=locale LC_ALL=locale gnome-terminal --disable-factory.

端末エミュレータウィンドウの「文字エンコーディングの設定」メニューでエンコーディングを変換すれば、従来のロケールで新規の端末エミュレータウィンドウを開く代わりに、現在の端末エミュレータウィンドウでロケール設定を UTF-8 から従来のロケールに切り替えることができます。この場合、現在のシェルに対して LANG および LC_ALL 環境変数を設定し直す必要があります。