Oracle Solaris ZFS 管理ガイド

損傷したデータを修復する

ここでは、データ破壊の種類を確認する方法と、破壊したデータを修復する (可能な場合) 方法について説明します。

ZFS では、データ破壊のリスクを最小限に抑えるために、チェックサム、冗長性、および自己修復データが使用されます。それでも、プールが冗長でない場合、プールの機能が低下しているときに破壊が発生した場合、または予期しないことが一度に起こってデータの複数のコピーが破壊された場合は、データの破壊が発生することがあります。どのような原因であったとしても、結果は同じです。 データが破壊され、その結果アクセスできなくなっています。対処方法は、破壊されたデータの種類とその相対的な価値により異なります。破壊されるデータは、大きく 2 つの種類に分けられます。

データの検証は、通常の操作中およびスクラブ時に行われます。プールデータの完全性を検証する方法については、「ZFS ファイルシステムの整合性をチェックする」を参照してください。

データ破壊の種類を確認する

デフォルトでは、zpool status コマンドでは、破壊が発生したことだけが報告され、破壊が発生した場所は報告されません。次に例を示します。


# zpool status monkey
  pool: monkey
 state: ONLINE
status: One or more devices has experienced an error resulting in data
        corruption.  Applications may be affected.
action: Restore the file in question if possible.  Otherwise restore the
        entire pool from backup.
   see: http://www.sun.com/msg/ZFS-8000-8A
 scrub: scrub completed after 0h0m with 8 errors on Tue Jul 13 13:17:32 2010
config:

        NAME        STATE     READ WRITE CKSUM
        monkey      ONLINE       8     0     0
          c1t1d0    ONLINE       2     0     0
          c2t5d0    ONLINE       6     0     0

errors: 8 data errors, use '-v' for a list

特定の時刻にエラーが発生したことだけが、エラーごとに報告されます。各エラーが現在もシステムに存在するとは限りません。通常の状況下では、これが当てはまります。なんらかの一時的な機能停止によって、データが破壊されることがあります。それらは、機能停止が終了したあとで自動的に修復されます。プール内のすべてのアクティブなブロックを検査するために、プールのスクラブは完全に実行されることが保証されています。このため、スクラブが完了するたびに、エラーログがリセットされます。エラーが存在しないことを確認したので、スクラブが完了するのを待っている必要がない場合には、zpool online コマンドを使ってプール内のすべてのエラーをリセットします。

データ破壊がプール全体のメタデータで発生している場合は、出力が少し異なります。次に例を示します。


# zpool status -v morpheus
  pool: morpheus
    id: 1422736890544688191
 state: FAULTED
status: The pool metadata is corrupted.
action: The pool cannot be imported due to damaged devices or data.
   see: http://www.sun.com/msg/ZFS-8000-72
config:

        morpheus    FAULTED   corrupted data
          c1t10d0   ONLINE

プール全体が破壊された場合、プールは必要な冗長レベルを提供できないため、FAULTED 状態になります。

破壊されたファイルまたはディレクトリを修復する

ファイルまたはディレクトリが破壊されても、破壊の種類によってはシステムがそのまま動作する場合があります。データの正常なコピーがシステムに存在しなければ、どの損傷も事実上修復できません。貴重なデータの場合は、影響を受けたデータをバックアップから復元する必要があります。このような場合でも、プール全体を復元しなくても破壊から回復できる場合があります。

ファイルデータブロックの中で損傷が発生した場合は、ファイルを安全に削除することができるため、システムのエラーを解消できます。永続的なエラーが発生しているファイル名のリストを表示するには、zpool status -v コマンドを使用します。次に例を示します。


# zpool status -v
  pool: monkey
 state: ONLINE
status: One or more devices has experienced an error resulting in data
        corruption.  Applications may be affected.
action: Restore the file in question if possible.  Otherwise restore the
        entire pool from backup.
   see: http://www.sun.com/msg/ZFS-8000-8A
 scrub: scrub completed after 0h0m with 8 errors on Tue Jul 13 13:17:32 2010
config:

        NAME        STATE     READ WRITE CKSUM
        monkey      ONLINE       8     0     0
          c1t1d0    ONLINE       2     0     0
          c2t5d0    ONLINE       6     0     0

errors: Permanent errors have been detected in the following files: 

/monkey/a.txt
/monkey/bananas/b.txt
/monkey/sub/dir/d.txt
monkey/ghost/e.txt
/monkey/ghost/boo/f.txt

永続的なエラーが発生しているファイル名のリストは、次のようになります。

ディレクトリまたはファイルのメタデータの中で破壊は発生している場合には、そのファイルを別の場所に移動するしかありません。任意のファイルまたはディレクトリを不便な場所に安全に移動することができ、そこで元のオブジェクトを復元することができます。

ZFS ストレージプール全体の損傷を修復する

プールのメタデータが損傷していて、その損傷によりプールを開けないかインポートできない場合の選択肢には、次のものがあります。