Trusted Extensions ソフトウェアは、Solaris オペレーティングシステム (Solaris OS) を実行しているシステムにラベルを追加します。ラベルは、「必須アクセス制御」 (MAC) を実装します。MAC は任意アクセス制御 (DAC) とともに、システムのサブジェクト (プロセス) とオブジェクト (データ) を保護します。Trusted Extensions ソフトウェアには、ラベルの構成、ラベルの割り当て、およびラベルポリシーを処理するためのインタフェースが用意されています。
Trusted Extensions ソフトウェアは、権利プロファイル、役割、監査、特権、および Solaris OS のその他のセキュリティー機能を使用します。Solaris Secure Shell (SSH)、BART、Solaris 暗号フレームワーク、IPsec、および IPfilter を、Trusted Extensions で使用できます。
Solaris OS の場合と同様、ユーザーが使用できるアプリケーションを、各自の職務を実行するために必要なアプリケーションだけに制限できます。ほかのユーザーには、その他の作業を承認することができます。
Solaris OS の場合と同様、これまでスーパーユーザーに割り当てられていた機能を、個別の「役割」に割り当てられます。
Solaris OS の場合と同様、特権でプロセスを保護します。プロセスを分離するため、ゾーンも使用されます。
Solaris OS と同様に、システムのイベントを監査できます。
Trusted Extensions は、policy.conf や exec_attr などの、Solaris OS のシステムの設定ファイルを使用します。
Trusted Extensions ソフトウェアは、Solaris OS を拡張します。次のリストに概要を示します。クイックリファレンスについては、付録 A Trusted Extensions 管理の手引きを参照してください。
Trusted Extensions は、「ラベル」という特別なセキュリティータグを使用して、データへのアクセスを制御します。ラベルでは「必須アクセス制御」(MAC) が使用されます。MAC 保護は、UNIX のファイルアクセス権、つまり随意アクセス制御 (DAC) に追加されます。ラベルは、ユーザー、ゾーン、デバイス、ウィンドウ、およびネットワークの終端に直接割り当てられます。ラベルは、プロセス、ファイル、およびその他のシステムオブジェクトにも暗黙的に割り当てられます。
一般ユーザーが MAC を上書きすることはできません。Trusted Extensions では、一般ユーザーはラベルが割り当てられたゾーンで作業する必要があります。デフォルトでは、ラベルが割り当てられたゾーンのユーザーまたはプロセスは MAC を上書きできません。
Solaris OS と同様に、MAC の上書きを許可する場合は、セキュリティーポリシーを上書きできる機能を特定のプロセスまたはユーザーに割り当てます。たとえば、ファイルのラベルを変更できるようにユーザーを承認することができます。これらの処理は、ファイル内の情報の機密度をアップグレードまたはダウングレードします。
Trusted Extensions は、既存の構成ファイルやコマンドを拡張します。たとえば、Trusted Extensions は監査イベント、承認、特権、権利プロファイルを追加します。
Trusted Extensions システムでは、Solaris システムでオプションとされている機能の中に必要なものがあります。たとえば、Trusted Extensions が設定されたシステムではゾーンと役割が必要です。
Trusted Extensions システムでは、Solaris システムでオプションとされている機能の中に推奨されるものがあります。たとえば、Trusted Extensions では、root ユーザーを root 役割に変更するようにしてください。
Trusted Extensions では、Solaris OS のデフォルトの動作が変更される場合があります。たとえば、Trusted Extensions が設定されたシステムでは、監査がデフォルトで有効です。また、デバイス割り当てが必要です。
Trusted Extensions では、利用できる選択肢が Solaris OS よりも制限される場合があります。たとえば、Trusted Extensions が設定されたシステムでは、NIS+ ネームサービスはサポートされません。また、Trusted Extensions では、すべてのゾーンはラベル付きゾーンです。Solaris OS と異なり、ラベル付きゾーンは同じプールのユーザー ID とグループ ID を使用する必要があります。Trusted Extensions では、複数のラベル付きゾーンで 1 つの IP アドレスを共有することもできます。
Trusted Extensions には、トラステッドバージョンの 2 つのデスクトップがあります。ラベル付き環境で作業するには、Trusted Extensions のデスクトップユーザーはこれらのデスクトップのいずれかを使用する必要があります。
Solaris Trusted Extensions (CDE) – トラステッドバージョンの共通デスクトップ環境 (CDE) です。この名称はTrusted CDE と略すことができます。
Solaris Trusted Extensions (JDS) – トラステッドバージョンの Java Desktop System, Release number です。この名称は Trusted JDS と略すことができます。
Trusted Extensions には、グラフィカルユーザーインタフェース (GUI) とコマンド行インタフェース (CLI) が追加されています。たとえば、Trusted Extensions にはデバイスを管理するデバイス割り当てマネージャーが用意されています。また、updatehome コマンドは、一般ユーザーの各ラベルのホームディレクトリに、起動ファイルを配置するために使用します。
Trusted Extensions では、管理に特定の GUI を使用する必要があります。たとえば、Trusted Extensions が設定されたシステムでは、Solaris 管理コンソールを使用してユーザー、役割、およびネットワークを管理します。同様に、Trusted CDE では、システムファイルを編集するには管理エディタを使用します。
Trusted Extensions は、ユーザーが表示できる内容を制限します。たとえば、ユーザーが割り当てできないデバイスは、そのユーザーに対して表示されません。
Trusted Extensions は、ユーザーのデスクトップオプションを制限します。たとえば、ユーザーがワークステーションを非活動のままにできる時間は制限されています。この時間を過ぎると、画面がロックされます。
マルチヘッドの Trusted Extensions システムのモニターが水平に設定されている場合、1 つのトラステッドストライプが複数のモニターにまたがって表示されます。モニターを垂直に設定すると、トラステッドストライプは一番下のモニターに表示されます。
さまざまなワークスペースがマルチヘッドシステムのモニターに表示される場合、Trusted CDE とTrusted JDS とではトラステッドストライプの表示の仕方が異なります。
Trusted JDS デスクトップでは、各モニターにトラステッドストライプが表示されます。
Trusted CDE デスクトップでは、1 つのトラステッドストライプが主モニターに表示されます。
Trusted CDE マルチヘッドのシステム上で 2 つめのトラステッドストライプが表示される場合、それはオペレーティングシステムによって生成されたものではありません。システムに承認されていないプログラムが存在する可能性があります。
ただちにセキュリティー管理者に連絡してください。正しいトラステッドストライプを確認するには、「デスクトップの現在のフォーカスへの制御を取り戻す」を参照してください。