この章では Wnn8 のライセンス管理の概要と実行コマンドおよび設定ファイルについて説明します。
Wnn8 では、「ライセンスサーバ dpkeyserv」によってライセンスを管理しています。
ネットワーク上で同時に使用されるクライアントソフトウェアの使用許諾数を、一括で管理するのが「ライセンスサーバ dpkeyserv」です。
入力クライアントアプリケーションが起動すると、まず「かな漢字変換サーバ jserver」に接続します。クライアントからの接続要求を受けた jserver は、dpkeyserv にライセンスの供給を依頼します。
dpkeyserv はライセンス数に空きがあれば jserver にライセンスを供給します。これでクライアントによるかな漢字変換が可能になります。
ライセンスサーバーは他のオムロンソフトウェア株式会社製ソフトウェアでも共用できます
ライセンスサーバーは、「eWnn」など他のオムロンソフトウェア株式会社ソフトウェア製品のライセンス管理も行うことができます。ソフトウェア許諾リスト dpkeylist に、それらのソフトウェアのパスワードを追記する事により、ライセンスの一元管理が可能になります。ただし Wnn6 および Wnn7 のパスワードは無視されますのでご注意ください。
もし全てのライセンスを既に消費していた場合は、ライセンスの供給は行われず変換不能となります。
使用中のライセンスはクライアントの終了時に解放されますので、起動中の他のクライアントを終了すれば、再びライセンスが供給されるようになります。
Solaris にバンドルされている Wnn8 ライセンス数は 5 です。Wnn の旧バージョン用の追加ライセンスは、Wnn8 では使用できません。追加ライセンスのご購入・ご質問は、下記もしくは本製品のご購入先にお問い合わせください。
オムロンソフトウェア株式会社 MS 事業部 営業部 TEL 044-246-6006 FAX 044-246-6011 Email:wnn-info@omronsoft.co.jp |
実行コマンドには、ライセンスサーバーの本体である dpkeyserv と、管理コマンドである dpkeystat があります。
ライセンスサーバーの本体です。ライセンスサーバーは、1 ホストマシン上で 1 プロセスのみ起動できます。root ユーザーのみ起動することが可能です。
ライセンスサーバーの実体は以下の場所にあります。
/usr/lib/wnn/dpkeyserv
ライセンスサーバーは通常はシステム立ち上げ時に起動されます。
手動で起動または停止する必要の有る場合は、以下のコマンドを実行してください。
【起動】# svcadm enable wnn8/server 【停止】# svcadm disable wnn8/server |
dpkeyserv は実行時に以下のコマンドオプションが利用できます。
ただし起動スクリプトの実行時には指定できません。
dpkeyserv [-a dpkeyallow_file] [-f dpkeylist_file] [-l <logfile>] [-L <logfile>] [-t min] [-v] |
アクセス制御リストのファイルパスを指定します。
指定がなければ標準の保存場所を検索します。
ソフトウェア許諾リストのファイルパスを指定します。
指定がなければ標準の保存場所を検索します。
通信状況のログを logfile に保存します。
ログファイル名 logfile の引数の省略時には以下の優先順位で対応します。
環境変数 DPKEY_LOGFILE での指定
環境変数 DPKEYVARDIR 以下の dpkeyserv.log
/var/lib/wnn/dp/dpkeyserv.log
通信パケットのダンプも含めた詳細なログを logfile に保存します。
ログファイル名省略時の対応は、-l オプションと同じです。
アプリケーションが未使用の状態でここで指定した時間を経過すると、そのライセンスを強制解放します。「分」単位で指定します。
dpkeylist における「未使用時間のタイマー」と同じ機能ですが、-t オプションでは管理する全ソフトウェアに対し有効となります。
バージョンを表示します。
dpkeyserv にアクセスし、ライセンス消費状況の確認や消費中のライセンスの解放を行うことができます。
dpkeystat は以下の場所にあります。
/usr/lib/wnn/dpkeystat
dpkeystat 実行時には、まず基本情報が表示されます。
localhost : FIW8 : 2 : ----/--/--
ホスト名 : ソフトウェア名 : ライセンス数 : 有効期限
":" (コロン) で各要素が区切られます。
ホスト名 |
管理対象となる dpkeyserv が起動しているホスト名です。 |
ソフトウェア名 |
ライセンスを供給するソフトウェア名です。 |
ライセンス数 |
供給可能なライセンスの最大数です。 ライセンスパスワードで提供されるライセンス数の合計になります。 |
有効期限 |
期限付きパスワードを使用している場合は有効期限が表示されます。正規パスワードの場合は上記例のように期限は表示されません。 |
ライセンスの供給を受けているクライアントがある場合は、更にそれらの詳細情報が表示されます。
localhost : FIW8 : 2 : ----/--/- LNO HOST USR AP PID TIME 1 hostname username FIW8 100 Sat Jan 1 00:00:00 2005 |
ライセンス番号です。接続されたクライアントの順に自動で割り当てられます。ライセンスを強制解放する際には、このライセンス番号を指定します。
クライアントが起動しているホスト名です。
クライアントを起動しているユーザー名です。
供給しているライセンスのソフトウェア名です。
クライアントのプロセス ID です。
ライセンスの供給を開始した日時です。
dpkeystat は実行時に以下のコマンドオプションが利用できます。
dpkeystat [-D server_hostname] [-h client_hostname] [-a software_name] [-u username] [-i interval] [<-y> license_number] [-v] |
実行対象となるライセンスサーバーマシンのホスト名を指定します。
-D オプションで指定しない場合は、localhost または dpkeyservlist に登録されているホストが適用されます。
指定されたホストで起動しているクライアントの情報のみを表示します。
指定されたソフトウェアの情報のみを表示します。
指定されたユーザーの情報のみを表示します。
情報表示を interval で指定された間隔で繰り返し行います。
interval は数値で指定し、単位は「秒」です。
停止する場合は Ctrl + C などで強制終了してください。
消費中のライセンスを解放します。license_number には、LNO 欄に表示されるライセンス番号を指定します。
ライセンスの解放前には実行確認を行いますが、-y を同時に指定すると無条件でライセンスを解放します。このオプションの実行にはスーパーユーザーの権限が必要になります。
バージョンを表示します。
設定ファイルは 3 種類あります。ライセンスそのものの管理以外に、サーバーやクライアントの制御を行うことができます。
ライセンスパスワードを記述します。ライセンスを管理する上で、最も重要なファイルです。dpkeylist は、通常 Wnn8 のインストール時に自動的に設定されます。
下記の標準ディレクトリパスで運用してください。
標準以外のパスに設置した場合、dpkeyserv の起動オプションで指定する必要があります。
/etc/wnn/dp/dpkeylist
FIW8:2:1234567890ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWX:10
ソフトウェア名:ライセンス数:パスワード[:未使用時の解放タイマー]
":" (コロン) で各要素が区切られています。
root ユーザーになり、お好みのテキストエディタで直接編集してください。
パスワードは全て「半角英数字の大文字」になります。
なお、行頭に "#" (シャープ) をつけるとコメント行となり認識されません。
行の途中に "#" があった場合も、以降の記述はコメント扱いになります。
ライセンスパスワードの追加手順
追加ライセンスパスワードを入手された場合、手動で dpkeylist にパスワードを登録する必要があります。作業は全て root ユーザーにて行なってください。
稼動中の dpkeyserv を終了します。
# svcadm disable wnn8/server
お好みのテキストエディタで dpkeylist を開きます。
既に記載されているパスワードの次行として、追加パスワードを記述します。追加するパスワードが 2 つ以上ある場合も、同様に次行として順次追加していきます。
例)
FIW8:5:1234567890ABCDEFGHJKLMNPQRSTUVWX
FIW8:1:ABCDEFGHJKLMNPQRSTUVWX1234567890
ファイルを保存して、テキストエディタを閉じます。
dpkeyserv を起動します。
# svcadm enable wnn8/server
dpkeystat では同じソフトウェアのライセンスは合算して表示されます。
この例では 5 ライセンスに 1 ライセンス分のパスワードを追加しましたので、合計 6 ライセンスとして表示されます。
# dpkeystat
localhost:FIW8:6:----/--/--
追加したパスワードが正しく反映されているか、dpkeystat で確認します。
ライセンスサーバーに接続できるクライアントホストを制限することができます。dpkeyallow は初期状態では存在しませんので、必要に応じて新規に作成してください。
下記の標準ディレクトリパスで運用してください。
標準以外のパスに設置した場合、dpkeyserv の起動オプションで指定する必要があります。
/etc/wnn/dp/dpkeyallow
ライセンスサーバーへの接続を許可するクライアントホスト名を、1 行ずつ列記します。
半角英数字のみ使用できます。
hostname1
hostname2
hostname3
これでネットワーク上の hostname1、hostname2 および hostname3 からの接続のみ許可され、他のホストへのライセンスの供給は行われなくなります。
root ユーザーになり、お好みのテキストエディタで直接編集してください。
なお、行頭に "#" (シャープ) をつけるとコメント行となり認識されません。
行の途中に "#" があった場合も、以降の記述はコメント扱いになります。
設定の追加 / 変更後は、dpkeyserv を再起動してください。
再起動後に変更内容が反映されます。
dpkeyservlist を設定することにより、ネットワーク上の複数のライセンスサーバーホストを巡回することができます。
標準のライセンスサーバーホストに障害やライセンス不足が発生し、ライセンスの供給が受けられなくなった場合、別のサーバーホストに自動的にアクセスすることできます。
dpkeyservlist は初期状態では存在しませんので、必要に応じて新規に作成してください。
「jserver が稼動するホスト」の下記の標準ディレクトリパスで運用してください。
/etc/wnn/dp/dpkeyservlist
dpkeyservlist を参照するのは jserver です。
jserver がライセンスの供給依頼を発行する際に、ここで設定された順でライセンスサーバーホストにアクセスしていきます。
従って、必ず jserver の稼動するホスト上に配置してください。また dpkeyservlist 作成後は、そこで設定されたサーバーホストのみ参照する様になりますので注意してください。
dpkeyservlist には、ネットワーク上で稼動するライセンスサーバーホストのホスト名を 1 行ずつ列記します。記述された順にアクセスされます。
serverhost1
serverhost2
serverhost3
この例では、serverhost1 からライセンスを取得できなかった場合に、serverhost2、serverhost3 の順でライセンスを要求していきます。
ローカルマシン上でも dpkeyserv が稼動している場合は、先頭に localhost と記述してください。記述がない場合はローカルマシンの dpkeyserv を参照しなくなります。
localhost
sesrverhost1
sesrverhost2
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