ブート環境を作成するとき、Solaris Live Upgrade は Solaris ボリュームマネージャーテクノロジを使って RAID-1 ボリュームを作成します。ブート環境を作成するとき、Solaris Live Upgrade を使って次の作業を行うことができます。
単一スライスの連結 (サブミラー) を RAID-1 ボリューム (ミラー) から切り離します。必要な場合は、内容を保存して新しいブート環境の内容にすることができます。内容はコピーされないため、新しいブート環境を短時間で作成できます。ミラーから切り離されたサブミラーは、元のミラーの一部ではなくなります。サブミラーに対する読み取りや書き込みがミラーを介して実行されることはなくなります。
ミラーを含んだブート環境を作成します。
新しく作成したミラーに単一スライスの連結を接続します。
Solaris Live Upgrade のミラー化機能を使用するには、状態データベースと状態データベースの複製を作成する必要があります。状態データベースでは、Solaris ボリュームマネージャー構成の状態に関する情報がディスクに保存されます。
状態データベースの作成については、『Solaris ボリュームマネージャの管理』の第 6 章「状態データベース (概要)」を参照してください。
Solaris ボリュームマネージャーの概要と、Solaris Live Upgrade で実行できる作業については、「RAID-1 ボリュームファイルシステムを持つブート環境の作成」を参照してください。
Solaris Live Upgrade を使用するときに使用できない Solaris ボリュームマネージャーの複雑な構成についての詳細は、『Solaris ボリュームマネージャの管理』の第 2 章「記憶装置管理の概念」を参照してください。
スーパーユーザーになるか、同等の役割になります。
役割には、認証と特権コマンドが含まれます。役割の詳細は、『Solaris のシステム管理 (セキュリティサービス)』の「RBAC の構成 (作業マップ)」を参照してください。
次のように入力して新しいブート環境を作成します。
# lucreate [-A 'BE_description'] \ -m mountpoint:device[,metadevice]:fs_options [-m...] \ -n BE_name |
(省略可能) ブート環境名 ( BE_name) の説明を記述できます。記述の長さ、使用できる文字に制限はありません。
新しいブート環境のファイルシステム構成を vfstab で指定します。-m に引数として指定されるファイルシステムは、同じディスク上のファイルシステムでも、複数のディスク上のファイルシステムでも構いません。このオプションは、作成するファイルシステムの数だけ使用します。
mountpoint には、任意の有効なマウントポイント、またはスワップパーティションを示す - (ハイフン) を指定できます。
device フィールドには、次のいずれかを指定できます。
ディスクデバイスの名前。/dev/dsk/cwtxdysz の形式で表されます
Solaris ボリュームマネージャーのボリューム名。/dev/md/dsk/dnum の形式で表されます
Veritas Volume Manager のボリューム名。/dev/md/vxfs/dsk/dnum の形式で表されます
キーワード merged。指定されたマウントポイントのファイルシステムがその親とマージされることを示します
fs_options フィールドには、次のいずれかを指定できます。
ufs: UFS ファイルシステムを示します。
vxfs: Veritas ファイルシステムを示します。
swap: スワップファイルシステムを示します。スワップマウントポイントはハイフン (–) で表します。
論理デバイス (ミラー) であるファイルシステムについては、いくつかのキーワードを使って、そのファイルシステムに対して実行するアクションを指定できます。論理デバイスの作成、論理デバイスの構成変更、論理デバイスの削除などを行うキーワードがあります。
mirror を指定すると、指定したデバイスに RAID–1 ボリューム (ミラー) を作成できます。その後の -m オプションで attach を指定して、少なくとも 1 つの連結を新しいミラーに接続する必要があります。指定するデバイスには、正しく名前が付けられている必要があります。たとえば、論理デバイスの名前 /dev/md/dsk/d10 をミラー名として使用できます。デバイスの命名の詳細は、『Solaris ボリュームマネージャの管理』の「Solaris ボリュームマネージャコンポーネントの概要」を参照してください。
detach を指定すると、指定したマウントポイントに関連付けられているボリュームから連結を切り離すことができます。ボリュームを指定する必要はありません。
attach を指定すると、指定したマウントポイントに関連付けられているミラーに連結を接続できます。指定した物理ディスクスライスは、単一デバイスの連結になり、ミラーに接続されます。ディスクに接続する連結を指定するには、デバイス名の後ろにコンマと連結の名前を付加します。コンマと連結の名前を省略して lucreate を実行すると、空いているボリュームが連結用に選択されます。
lucreate で作成できるのは、単一の物理スライスから成る連結だけです。このコマンドでは、1 つのミラーに 3 つまで連結を接続できます。
preserve を指定すると、既存のファイルシステムとその内容を保存できます。このキーワードを使うと、ソースブート環境の内容をコピーする処理を省略できます。内容を保存することで、新しいブート環境を短時間で作成できます。特定のマウントポイントについて、preserve で指定できるのは 1 つの物理デバイスだけです。preserve を指定して lucreate コマンドを実行すると、指定したファイルシステムに対してデバイスの内容が適切かどうかが検査されます。この検査は限定的なものなので、適合性を保証することはできません。
preserve キーワードは、物理スライスと Solaris ボリュームマネージャーのボリュームの両方に使用できます。
UFS ファイルシステムが物理スライスに置かれている場合に preserve キーワードを使用すると、UFS ファイルシステムの内容がそのスライスに保存されます。次の -m オプションの例では、preserve キーワードを使って、物理デバイス c0t0d0s0 の内容を、ルート (/) ファイルシステムのマウントポイント用のファイルシステムとして保存します。
-m /:/dev/dsk/c0t0d0s0:preserve,ufs |
UFS ファイルシステムがボリュームに置かれている場合に preserve キーワードを使用すると、UFS ファイルシステムの内容がそのボリュームに保存されます。
次の -m オプションの例では、preserve キーワードを使って、RAID-1 ボリューム (ミラー) d10 の内容を、ルート (/) ファイルシステムのマウントポイント用のファイルシステムとして保存します。
-m /:/dev/md/dsk/d10:preserve,ufs |
次の -m オプションの例では、RAID-1 ボリューム (ミラー) d10 がルート (/) ファイルシステムのマウントポイント用のファイルシステムとして構成されます。単一スライスの連結 d20 が現在のミラーから切り離されます。d20 がミラー d10 に接続されます。ルート(/) ファイルシステムは、サブミラー d20 に保持されます。
-m /:/dev/md/dsk/d10:mirror,ufs -m /:/dev/md/dsk/d20:detach,attach,preserve |
作成するブート環境の名前。BE_name は、システム上で一意となるように指定する必要があります。
新しいブート環境の作成が終わると、この環境をアップグレードしてアクティブにする (ブート可能な状態にする) ことができます。第 5 章「Solaris Live Upgrade によるアップグレード (作業)」を参照してください。
この例では、ファイルシステムのマウントポイントを -m オプションで指定します。
「mydescription」という記述は、another_disk に対応しています。
lucreate コマンドにより、ルート (/) マウントポイントの UFS ファイルシステムが構成されます。d10 というミラーが作成されます。このミラー d10 に、現在のブート環境のルート (/) ファイルシステムがコピーされます。ミラー d10 にあるデータはすべて上書きされます。
2 つのスライス c0t0d0s0 および c0t1d0s0 は、サブミラー d1 および d2 として指定されています。これら 2 つのサブミラーは、ミラー d10 に追加されます。
新しいブート環境には another_disk という名前が付けられます。
# lucreate -A 'mydescription' \ -m /:/dev/md/dsk/d10:ufs,mirror \ -m /:/dev/dsk/c0t0d0s0,/dev/md/dsk/d1:attach \ -m /:/dev/dsk/c0t1c0s0,/dev/md/dsk/d2:attach -n another_disk |
この例では、ファイルシステムのマウントポイントを -m オプションで指定します。
「mydescription」という記述は、another_disk に対応しています。
lucreate コマンドにより、ルート (/) マウントポイントの UFS ファイルシステムが構成されます。d10 というミラーが作成されます。このミラー d10 に、現在のブート環境のルート (/) ファイルシステムがコピーされます。ミラー d10 にあるデータはすべて上書きされます。
2 つのスライス c0t1d0s0 および c0t2d0s0 は、サブミラーとして指定されています。サブミラーを指定せずに lucreate コマンドを実行すると、利用可能なボリューム名の一覧から名前が選択されます。これら 2 つのサブミラーは、ミラー d10 に接続されます。
新しいブート環境には another_disk という名前が付けられます。
# lucreate -A 'mydescription' \ -m /:/dev/md/dsk/d10:ufs,mirror \ -m /:/dev/dsk/c0t0d0s0:attach \ -m /:/dev/dsk/c0t1d0s0:attach -n another_disk |
新しいブート環境の作成が終わると、この環境をアップグレードしてアクティブにする (ブート可能な状態にする) ことができます。第 5 章「Solaris Live Upgrade によるアップグレード (作業)」を参照してください。
この例では、ファイルシステムのマウントポイントを -m オプションで指定します。
「mydescription」という記述は、another_disk に対応しています。
lucreate コマンドにより、ルート (/) マウントポイントの UFS ファイルシステムが構成されます。d10 というミラーが作成されます。
スライス c0t0d0s0 が現在のミラーから切り離されます。このスライスはサブミラー d1 として指定され、ミラー d10 に追加されます。このサブミラーの内容であるルート (/) ファイルシステムは保存され、コピー処理は発生しません。スライス c0t1d0s0 はサブミラー d2 として指定され、ミラー d10 に追加されます。
新しいブート環境には another_disk という名前が付けられます。
# lucreate -A 'mydescription' \ -m /:/dev/md/dsk/d10:ufs,mirror \ -m /:/dev/dsk/c0t0d0s0,/dev/md/dsk/d1:detach,attach,preserve \ -m /:/dev/dsk/c0t1d0s0,/dev/md/dsk/d2:attach -n another_disk |
新しいブート環境の作成が終わると、この環境をアップグレードしてアクティブにする (ブート可能な状態にする) ことができます。第 5 章「Solaris Live Upgrade によるアップグレード (作業)」を参照してください。
この例では、ファイルシステムのマウントポイントを -m オプションで指定します。
「mydescription」という記述は、another_disk に対応しています。
lucreate コマンドにより、ルート (/) マウントポイントの UFS ファイルシステムが構成されます。d20 というミラーが作成されます。
スライス c0t0d0s0 が現在のミラーから切り離され、ミラー d20 に追加されます。サブミラーの名前は指定されていません。このサブミラーの内容であるルート (/) ファイルシステムは保存され、コピー処理は発生しません。
新しいブート環境には another_disk という名前が付けられます。
# lucreate -A 'mydescription' \ -m /:/dev/md/dsk/d20:ufs,mirror \ -m /:/dev/dsk/c0t0d0s0:detach,attach,preserve \ -n another_disk |
新しいブート環境の作成が終わると、この環境をアップグレードしてアクティブにする (ブート可能な状態にする) ことができます。第 5 章「Solaris Live Upgrade によるアップグレード (作業)」を参照してください。
この例では、ファイルシステムのマウントポイントを -m オプションで指定します。
「mydescription」という記述は、another_disk に対応しています。
lucreate コマンドにより、ルート (/) マウントポイントの UFS ファイルシステムが構成されます。d10 というミラーが作成されます。このミラー d10 に、現在のブート環境のルート (/) ファイルシステムがコピーされます。ミラー d10 にあるデータはすべて上書きされます。
2 つのスライス c0t0d0s0 および c0t1d0s0 は、サブミラー d1 および d2 として指定されています。これら 2 つのサブミラーは、ミラー d10 に追加されます。
lucreate コマンドにより、/opt マウントポイントの UFS ファイルシステムが構成されます。d11 というミラーが作成されます。このミラー d11 に、現在のブート環境の /opt ファイルシステムがコピーされます。ミラー d11 にあるデータはすべて上書きされます。
2 つのスライス c2t0d0s1 および c3t1d0s1 は、サブミラー d3 および d4 として指定されています。これら 2 つのサブミラーは、ミラー d11 に追加されます。
新しいブート環境には another_disk という名前が付けられます。
# lucreate -A 'mydescription' \ -m /:/dev/md/dsk/d10:ufs,mirror \ -m /:/dev/dsk/c0t0d0s0,/dev/md/dsk/d1:attach \ -m /:/dev/dsk/c0t1d0s0,/dev/md/dsk/d2:attach \ -m /opt:/dev/md/dsk/d11:ufs,mirror \ -m /opt:/dev/dsk/c2t0d0s1,/dev/md/dsk/d3:attach \ -m /opt:/dev/dsk/c3t1d0s1,/dev/md/dsk/d4:attach -n another_disk |
新しいブート環境の作成が終わると、この環境をアップグレードしてアクティブにする (ブート可能な状態にする) ことができます。第 5 章「Solaris Live Upgrade によるアップグレード (作業)」を参照してください。