Solaris のシステム管理 (印刷)

IPP サポートモデル

以降の節では、IPP サポートモデルのさまざまな側面について説明します。

IPP オブジェクトモデル

IPP には、プリンタとジョブという 2 つの基本的なオブジェクトタイプ が含まれています。各オブジェクトタイプには、実際のプリンタまたは実際の印刷ジョブの特性が含まれています。各オブジェクトタイプは、その特定のオブジェクトタイプでサポートできる、可能性のある属性のセットとして定義されます。

すべてのプリンタオブジェクトおよびジョブオブジェクトをあいまいなところがなく参照できるようにするために、これらのオブジェクトはすべて URI (Uniform Resource Identifier) で識別されます。識別子としての URI の概念と実装は、印刷サービス (IPP) と通信するための方法と、プリンタ待ち行列 (//server/printers/queue) またはジョブの個別のネットワーク識別子の両方を一意に識別するための手段が提供されるため、非常に有効です。

印刷要求が作成されたとき、生成される IPP プロトコルメッセージには、操作の実行対象となるプリンタオブジェクトの printer-uri が含まれている必要があります。printer-uri の取り得る値は、プリンタオブジェクトまたはネームサービスの printer-uri-supported 属性から取得できます。

IPP プリンタオブジェクト

プリンタオブジェクトは、IPP モデル内のメインのオブジェクトです。プリンタオブジェクトは、IPP に対するサーバー側のサポートを提供します。プリンタオブジェクトには、通常は物理的な出力デバイスに関連付けられた機能が含まれています。これらの機能には、印刷サーバーに関連付けられた複数のデバイスのスプール処理、スケジューリング、変換、および管理が含まれます。プリンタオブジェクトは、printer-uri によって一意に識別されます。プリンタオブジェクトは、名前、コンテキスト、プリンタの機能などのプリンタオブジェクトに関する静的な情報を検索する目的のために、ディレクトリ内のエントリとして登録できます。プリンタの待ち行列に入れられているジョブの数、エラー、警告などの動的な情報は、プリンタオブジェクト自体に関連付けられています。


注 –

デバイスのセマンティクスがプリンタオブジェクトのセマンティクスと整合性があるかぎり、プリンタオブジェクトを使用して実際のデバイスまたは仮想デバイスを表すことができます。


ユーザー、またはユーザーの代わりに実行されているプログラムが、印刷ジョブの送信や管理のためにプリンタオブジェクトにクエリーを実行する機能を持っている場合、IPP クライアントはプロトコルをクライアント側に実装します。IPP サーバーはプリンタオブジェクトの一部であり、印刷サービスのアプリケーションセマンティクスを実装します。プリンタオブジェクトは、出力デバイスに組み込むことも、または出力デバイスと通信するネットワークホスト上に実装することもできます。

ジョブがプリンタオブジェクトに送信されると、プリンタオブジェクトは要求内の属性を検証してから、ジョブオブジェクトを作成します。ジョブ状態のクエリーを実行したり、ジョブの進捗を監視したりする場合は、ジョブオブジェクトと対話します。印刷ジョブを取り消す場合は、ジョブオブジェクトのジョブ取り消し操作を使用します。ジョブオブジェクトの操作の詳細については、「IPP 操作キーワード」を参照してください。

IPP ジョブオブジェクト

ジョブオブジェクトは、印刷ジョブをモデル化するために使用されます。ジョブオブジェクトには文書が含まれています。ジョブオブジェクトを作成するために必要な情報は、IPP クライアントを通してプリンタオブジェクトへの印刷要求を開始したときに、作成要求の形式で印刷サーバーに送信されます。この作成要求はプリンタオブジェクトによって検証され、受け付けられた場合は、プリンタオブジェクトによって新しいジョブオブジェクトが作成されます。このオブジェクトは、printer-uri 属性と job-id 属性の組み合わせ、または job-uri 属性によって一意に識別されます。詳細は、「IPP 操作キーワード」を参照してください。