Solaris 10 10/08 インストールガイド (インストールとアップグレードの計画)

アップグレード計画

表 4–5 Solaris のアップグレード方法

現在の Solaris OS 

Solaris のアップグレード方法 

Solaris 8、Solaris 9、および Solaris 10 

  • Solaris Live Upgrade – 稼働中のシステムのコピーを作成し、それをアップグレードすることでシステムをアップグレードします

  • Solaris インストールプログラム - グラフィカルユーザーインタフェースまたはコマンド行インタフェースを使用して対話形式でアップグレードを行うことができます

  • カスタム JumpStart – 自動アップグレードを行うことができます

アップグレードに関する制限事項

次の表に、特定の条件下でシステムをアップグレードする際の制限事項を示します。

問題 

説明 

ZFS ルートプールの場合の、ほかのアップグレード制限事項 

ZFS ルートプールのアップグレードは、Solaris Live Upgrade を使ってしか行えません。要件と制限事項については、『Solaris 10 10/08 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)』の第 12 章「ZFS の Solaris Live Upgrade (計画)」を参照してください。

別のソフトウェアグループへのアップグレード 

システムのソフトウェアグループを、アップグレード時に別のソフトウェアグループに変更することはできません。たとえば、システムにエンドユーザーシステムサポートソフトウェアグループがインストールされている場合には、開発者システムサポートソフトウェアグループにアップグレードするオプションはありません。ただし、アップグレード中に、インストール済みのソフトウェアグループに属していないソフトウェアをシステムに追加することはできます。 

非大域ゾーンがインストールされている場合のアップグレード 

Solaris インストールプログラムである Solaris Live Upgrade または JumpStart を使用して、非大域ゾーンがインストールされているシステムをアップグレードできます。次の制限が適用されます。 

  • Solaris Live Upgrade は、システムのアップグレードまたはパッチを行う際に推奨されるプログラムです。ほかのアップグレードプログラムでは、膨大なアップグレード時間が必要となる場合があります。これは、アップグレードの実行に要する時間が、インストールされている非大域ゾーンの数に比例して増加するからです。Solaris Live Upgrade を使ってシステムにパッチを適用する場合は、システムをシングルユーザーモードにする必要がないため、システムの稼働時間を最大限に活用できます。

  • Solaris フラッシュアーカイブを使ってインストールを行う場合は、非大域ゾーンが含まれているアーカイブがシステムに正しくインストールされません。

Veritas ファイルシステムでのアップグレード 

Solaris 対話式インストールプログラムとカスタム JumpStart プログラムでは、次のような条件で Veritas VxVM ファイルシステムを使用している場合、システムをアップグレードする機会が与えられません。 

  • アップグレードするルートファイルシステムが Veritas の制御下にある場合。たとえば、ルート (/) ファイルシステムが /dev/vx/... デバイスにマウントされている場合。

  • Veritas の制御下にある任意のファイルシステムに何らかの Solaris ソフトウェアがインストールされている場合。たとえば、/usr ファイルシステムが /dev/vx/... デバイスにマウントされている場合。

Veritas VxVM が構成されている場合にアップグレードを行うには、次のいずれかの方法を使用します。  

アップグレードプログラム

Solaris インストールプログラムによる標準の対話式アップグレードか、カスタム JumpStart インストールによる自動的なアップグレードを実行できます。Solaris Live Upgrade を使用すると、稼働中のシステムをアップグレードできます。

アップグレードプログラム 

説明 

詳細 

Solaris Live Upgrade 

現在稼働中のシステムのコピーを作成することができます。このコピーはアップグレード可能で、リブートすると、アップグレードしたコピーが稼働システムになります。Solaris Live Upgrade を使用すると、Solaris OS のアップグレードに必要なシステム停止時間を短縮できます。また、Solaris Live Upgrade では、アップグレードに関連する問題も回避できます。たとえば、アップグレード中に電源障害が発生すると、アップグレードを回復することができなくなります。しかし、Solaris Live Upgrade では、現在実行中のシステムではなく、コピーをアップグレードするので、この問題は起こりません。  

Solaris Live Upgrade を使用する際のディスク容量割り当てを計画するには、『Solaris 10 10/08 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)』「Solaris Live Upgrade の要件」を参照してください。

Solaris インストールプログラム  

対話式 GUI のガイドに従ってアップグレードを実行できます。  

『Solaris 10 10/08 インストールガイド (基本編)』の第 2 章「Solaris インストールプログラムによる UFS ファイルシステムのインストール (作業)」

カスタム JumpStart プログラム 

自動アップグレードを行うことができます。プロファイルファイルを使用し、必要に応じてプリインストールスクリプトやポストインストールスクリプトも使用して、必要な情報を指定します。アップグレード用にカスタム JumpStart プロファイルを作成するときは、install_type upgrade を指定します。さらに、実際にアップグレードを行う前に、システムの現在のディスク構成およびシステムに現在インストールされているソフトウェアに対して、カスタム JumpStart プロファイルが目的どおりのことを実行しようとしているかを確認する必要があります。アップグレードしようとしているシステム上で、pfinstall - D コマンドを実行して、プロファイルをテストします。ディスク構成ファイルを使用してアップグレード用プロファイルをテストすることはできません。

アップグレードでなく Solaris フラッシュアーカイブをインストール

Solaris フラッシュのインストール機能では、マスターシステムからインストール全体のコピーを作成し、これを多数のクローンシステムに複製できます。このコピーは Solaris フラッシュアーカイブと呼ばれます。アーカイブは、どのインストールプログラムを使用してもインストールできます。


注意 – 注意 –

非大域ゾーンがインストールされていると、Solaris フラッシュアーカイブは正常に作成されません。Solaris フラッシュ機能には Solaris ゾーン区分技術との互換性はありません。Solaris フラッシュアーカイブを作成する場合、そのアーカイブの配備条件が次のいずれかの場合は、作成されたアーカイブは正しくインストールされません。

また、ZFS ルートプールのアーカイブを作成することや、ZFS ルートプールにアーカイブをインストールすることもできません。


大規模なファイルを含むアーカイブの作成

Solaris フラッシュアーカイブを作成する際、デフォルトのコピー方法として cpio ユーティリティーが使用されます。個別のファイルのサイズを、4G バイトより大きくすることはできません。大規模な個別ファイルが存在する場合、flarcreate コマンドに -L pax オプションを指定すると、pax ユーティリティーにより、個別ファイルのサイズ制限なしでアーカイブが作成されます。個別のファイルサイズを 4G バイトより大きくできます。

アーカイブのインストールについては、次の表を参照してください。

インストールプログラム 

参照先 

Solaris Live Upgrade 

『Solaris 10 10/08 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)』「ブート環境への Solaris フラッシュアーカイブのインストール」

カスタム JumpStart 

『Solaris 10 10/08 インストールガイド (カスタム JumpStart/ 上級編)』「カスタム JumpStart インストールを使用して Solaris フラッシュアーカイブをインストールする方法」

Solaris 対話式インストール 

『Solaris 10 10/08 インストールガイド (Solaris フラッシュアーカイブの作成とインストール)』の第 4 章「Solaris フラッシュアーカイブのインストールと管理 (作業)」

WANboot 

『Solaris 10 10/08 インストールガイド (ネットワークインストール)』の第 13 章「WAN ブートによるインストール (作業)」

ディスク容量の再配置を伴うアップグレード

Solaris インストールプログラムのアップグレードオプションとカスタム JumpStart プログラムの upgrade キーワードはどちらも、ディスク容量の再配置機能を提供します。この再配置により、ディスクスライスのサイズが自動的に変更されます。アップグレードするのに十分な容量が現在のファイルシステムにない場合、ディスク容量を割り当て直すことができます。たとえば、アップグレードに伴ってファイルシステムの容量を増やす必要があるのは、次のような場合です。

自動配置機能を使用すると、ファイルシステムに必要な容量を確保するようにディスク容量の再配置が行われます。自動配置機能では、デフォルトの制約にもとづいて容量の再配置が試みられます。このため、この機能によって容量の再配置が行われない場合は、ファイルシステムの制約を変更する必要があります。


注 –

自動配置機能には、ファイルシステムの容量を増やす能力はありません。自動配置機能では、次の処理によって容量の再配置が行われます。

  1. 変更の必要なファイルシステム上の必須ファイルをバックアップする。

  2. ファイルシステムの変更にもとづいてディスクパーティションを再分割する。

  3. アップグレードの前にバックアップファイルを復元する。


アップグレード時のパッチアナライザの使用

最初の Solaris 10 3/05 リリースに続く次のいずれかのリリースにアップグレードする場合に、パッチアナライザはシステムの解析を実行します。

すでに Solaris OS を実行していて、個別のパッチをインストール済みの場合、以降の Solaris 10 リリースにアップグレードしたときの動作は次のとおりです。

パッチアナライザを使用すると、削除されるパッチがどれであるかを判断できます。パッチアナライザの詳しい使用方法については、『Solaris 10 10/08 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)』の付録 C「アップグレード時のパッチアナライザの使用 (作業)」を参照してください。

アップグレード用のシステムのバックアップと再起動

Solaris OS のアップグレードを行う前に、既存のファイルシステムのバックアップを行うことを強くお勧めします。ファイルシステムをテープなどのリムーバブルメディアにコピーすれば、データの損失や損傷、破壊などを防止できます。

以前のリリースでは、再起動メカニズムによって電力損失などの問題が発生したあともアップグレードを続行できました。Solaris 10 10/08 リリース以降、再起動メカニズムは信頼できなくなりました。問題が発生した場合は、アップグレードが再起動されないことがあります。