Solaris 10 10/08 インストールガイド (インストールとアップグレードの計画)

第 10 章 インストール時の RAID-1 ボリューム (ミラー) の作成 (計画)

この章では、カスタム JumpStart または Solaris Live Upgrade インストールを使って RAID-1 ボリュームを作成するために必要な条件とガイドラインについて説明します。

この章の内容は次のとおりです。

Solaris Live Upgrade や JumpStart に固有の追加情報については、次の資料を参照してください。

システム要件

RAID-1 ボリュームを作成して、特定のスライスにデータを複製するには、インストール時に、使用するディスクがシステムに直接接続されていて使用可能である必要があります。

状態データベースの複製のガイドラインと要件

シングルポイント障害を避けるため、状態データベースの複製は、複数のスライス、ドライブ、およびコントローラに分散させる必要があります。これは、単一のコンポーネントに障害が発生した場合でも、大半の複製を利用可能な状態に保つ必要があるからです。たとえばデバイス障害時などに、複製が失われた場合、Solaris ボリュームマネージャーの実行やシステムの再起動が正常に行われなくなることがあります。Solaris ボリュームマネージャーが動作するためには、少なくとも半数の複製が使用可能でなければならず、システムをマルチユーザーモードで再起動するためには過半数 (半数+1) の複製が使用可能でなければなりません。

状態データベースの複製の作成および管理方法の詳細は、『Solaris ボリュームマネージャの管理』を参照してください。

状態データベースの複製用のスライスの選択

状態データベースの複製用のスライスを選択する前に、次のガイドラインと推奨事項を参考にしてください。

作業 

説明 

専用スライスの選択 

状態データベースの複製は、複製ごとに 4M バイト以上の容量を持つ専用スライス上に作成するようにしてください。必要な場合は、あとで RAID-0 または RAID-1 ボリュームの一部とするスライス上にも、状態データベースの複製を作成できます。ただし、その場合は、スライスをボリュームに追加する前に複製を作成する必要があります。 

スライスサイズの変更 

状態データベースの複製のデフォルトサイズは 4M バイト (8192 ディスクブロック) です。ディスクスライスのサイズがこれより大きい場合は、状態データベースの複製を格納できるように、スライスのサイズを変更できます。スライスサイズの変更については、『Solaris のシステム管理 (デバイスとファイルシステム)』の第 11 章「ディスクの管理 (手順)」を参照してください。

使用されていないスライスの選択 

状態データベースの複製は、未使用のスライス上に作成できます。状態データベースの複製用に予約されているスライスの部分を、ほかの目的に使用することはできません。

 

状態データベースの複製を、既存のファイルシステムや、ルート (/)、/usrswap ファイルシステムに作成することはできません。必要であれば、swap 領域を使用して新しいスライスを作成してから (スライス名が使用可能な場合)、そのスライスに状態データベースの複製を作成できます。

ボリュームになるスライスの選択 

ボリュームの一部となるスライス上に状態データベースの複製が置かれている場合、ボリュームの容量は、複製によって占有される領域分だけ少なくなります。複製が占める領域はシリンダ単位で切り上げられるため、この領域はボリュームによってスキップされます。  

状態データベースの複製の数の選択

状態データベースの複製の数を選択する前に、次のガイドラインを参考にしてください。

コントローラ間で状態データベースの複製を分散

複数のコントローラがある場合、できるだけすべてのコントローラに均等になるように複製を分散させます。これによって、コントローラ障害に対する冗長性が確保できるだけでなく、負荷の分散も可能になります。同じコントローラ上に複数のディスクが存在する場合は、各コントローラで 2 個以上のディスクに複製を配置します。

RAID-1 ボリュームと RAID-0 ボリュームの要件とガイドライン

RAID-1 ボリューム (ミラー) と RAID-0 ボリューム (単一スライスの連結) を使用する際は、次のガイドラインに従ってください。

カスタム JumpStart と Solaris Live Upgrade のガイドライン

カスタム JumpStart インストールと Solaris Live Upgrade は、Solaris ボリュームマネージャーで使用可能な機能の一部をサポートします。これらのインストールプログラムでミラー化されたファイルシステムを作成するときは、次のガイドラインに従ってください。

インストールプログラム 

サポートされている機能  

サポートされていない機能 

カスタム JumpStart と Solaris Live Upgrade 

  • RAID-0 および RAID-1 ボリュームはサポートされますが、RAID-5 ボリュームなどほかの Solaris ボリュームマネージャーコンポーネントはサポートされません。

  • RAID-0 ボリュームは、単一スライスの連結としてのみサポートされています。

Solaris ボリュームマネージャーでは、RAID-0 ボリュームは、ディスクストライプまたはディスク連結を表します。インストール時またはアップグレード時に RAID-0 ストライプボリュームを作成することはできません。 

カスタム JumpStart 

  • 初期インストール時にのみ RAID-1 ボリュームの作成がサポートされます。

  • 1 つの RAID-1 ボリュームに対して、最大 2 つの RAID-0 ボリューム (サブミラー) を作成できます。通常、ほとんどのアプリケーションでは、2 つのサブミラーで十分なデータの冗長性が得られます。ディスクドライブのコストも比較的小さくてすみます。

  • RAID-1 ボリュームが構成されている場合のアップグレードはサポートされません。

  • 3 つ以上の RAID-0 ボリュームはサポートされません。

Solaris Live Upgrade 

  • 1 つの RAID-1 ボリュームに対して、最大 3 つの RAID-0 ボリューム (サブミラー) を作成できます。3 つのサブミラーでは、1 つのサブミラーをオフラインにしてバックアップを実行するときも、残りの 2 つのサブミラーでデータの冗長性を確保することができます。

  • アップグレード時の RAID-1 ボリュームの作成がサポートされます。

例については、『Solaris 10 10/08 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)』「RAID-1 ボリューム (ミラー) を持つブート環境を作成する」を参照してください。

4 つ以上の RAID-0 ボリュームはサポートされません。 

RAID-1 ボリュームを使用した Solaris フラッシュの作成とインストール 

Solaris ボリュームマネージャー RAID-1 ボリュームが構成されているマスターシステムから Solaris フラッシュアーカイブを作成できます。クローンシステムの整合性を保つため、RAID-1 ボリュームの情報はすべて、Solaris フラッシュ作成ソフトウェアによってアーカイブから削除されます。カスタム JumpStart では、JumpStart プロファイルを使用して RAID-1 ボリュームを再構築できます。Solaris Live Upgrade では、RAID-1 ボリュームが構成されたブート環境を作成し、アーカイブをインストールできます。Solaris インストールプログラムでは、Solaris フラッシュアーカイブを使用して RAID-1 ボリュームのインストールを行うことはできません。 

JumpStart プロファイルでの RAID-1 ボリュームの例については、『Solaris 10 10/08 インストールガイド (カスタム JumpStart/ 上級編)』「プロファイルの例」を参照してください。

Veritas VxVM では、Solaris フラッシュで使用できない領域に構成情報が格納されます。Veritas VxVm ファイルシステムが構成されている場合は、Solaris フラッシュアーカイブを作成しないでください。また、JumpStart と Solaris Live Upgrade も含め、Solaris インストールではインストール時の VxVM ボリュームの再構築はサポートされていません。したがって、Solaris フラッシュアーカイブを使った Veritas VxVM ソフトウェアの配備を計画している場合は、VxVM ファイルシステムを構成する前にアーカイブを作成する必要があります。その後、クローンシステムにアーカイブを適用しシステムをリブートしてから、クローンシステムの構成を個別に行う必要があります。 

カスタム JumpStart と Solaris Live Upgrade を行うときの RAID ボリューム名の要件とガイドライン

ボリュームに名前を割り当てるときには、次の規則に従ってください。

Solaris Live Upgrade を行うときの RAID ボリュームの命名規則

RAID-1 ボリューム (ミラー) または RAID-0 ボリューム (サブミラー) を作成するのに Solaris Live Upgrade を使用する場合は、ソフトウェアでボリューム名を検出して割り当てるか、またはユーザーがボリューム名を割り当てることができます。ソフトウェアで名前を検出すると、ソフトウェアは使用可能な最初のミラー名またはサブミラー名を割り当てます。ユーザーがミラー名を割り当てる場合は、インストール時にサブミラーに 1 および 2 で終わる名前を使用できるように、0 で終わる名前を割り当てます。ユーザーがサブミラー名を割り当てる場合は、1 または 2 で終わる名前を割り当てます。誤った番号を割り当てると、ミラーが作成されない可能性があります。たとえば、ミラー名に 1 または 2 で終わる番号 (d1 または d2) を持つ名前を指定すると、ミラー名がサブミラーの名前と重複した場合、Solaris Live Upgrade はミラーの作成に失敗します。


注 –

以前のリリースでは、省略されたボリューム名を入力できました。10 10/08 以降のリリースでは、完全ボリューム名だけを入力できます。たとえば、/dev/md/dsk/d10 などの完全ボリューム名だけをミラーの指定に使用できます。



例 10–1 Solaris Live Upgrade: ソフトウェアによるミラーとサブミラーの検出および命名の有効化

次の例では、Solaris Live Upgrade がボリューム名を割り当てています。RAID-1 ボリュームの d0d1 だけが使用中のボリュームです。ミラー d10 に対し、デバイス c0t0d0s0 用のサブミラー名として d2 を、デバイス c1t0d0s0 用のサブミラー名として d3 を、Solaris Live Upgrade が割り当てます。


lucreate -n newbe -m /:/dev/md/dsk/d10:mirror,ufs -m /:/dev/dsk/c0t0d0s0:attach
-m /:/dev/dsk/c1t0d0s0:attach


例 10–2 Solaris Live Upgrade: ミラーおよびサブミラー名の割り当て

次の例では、コマンドでボリューム名を割り当てています。ミラー d10 に対し、デバイス c0t0d0s0 用のサブミラー名が d11、デバイス c1t0d0s0 用のサブミラー名が d12 です。


lucreate -n newbe -m /:/dev/md/dsk/d10:mirror,ufs -m /:/dev/dsk/c0t0d0s0,/dev/md/dsk/d11:attach
-m /:/dev/dsk/c1t0d0s0,/dev/md/dsk/d12:attach

Solaris ボリュームマネージャーの命名規則については、『Solaris ボリュームマネージャの管理』を参照してください。


カスタム JumpStart を行うときの RAID ボリュームの命名規則

RAID-1 ボリューム (ミラー) または RAID-0 ボリューム (サブミラー) を作成するのにカスタム JumpStart インストール方式を使用する場合は、ソフトウェアでミラーリングするボリューム名を検出して割り当てるか、またはプロファイルでボリューム名を割り当てることができます。


注 –

物理ディスクスライスや Solaris ボリュームマネージャーのボリュームの名前は、省略形にすることができます。省略名は、デバイスを一意に識別できる最短の名前です。次に例を示します。



例 10–3 ソフトウェアによるミラー名とサブミラー名の検出の有効化

次のプロファイル例では、ミラーには使用可能な最初のボリューム番号が割り当てられています。次に使用可能な 0 で終わるミラーが d10 の場合、名前 d11 および d12 はサブミラーに割り当てられます。

filesys                 mirror c0t0d0s1  / 


例 10–4 ミラー名とサブミラー名の割り当て

次のプロファイル例では、プロファイル内でミラー番号 d30 が割り当てられています。サブミラー名は、ミラー番号および最初に使用可能なサブミラーに基づき、ソフトウェアによって割り当てられます。サブミラー名は d31 と d32 です。

filesys                 mirror:d30 c0t1d0s0 c0t0d0s0  /

Solaris ボリュームマネージャーの命名規則については、『Solaris ボリュームマネージャの管理』を参照してください。

ディスクとコントローラの選択のガイドライン

ファイルシステムのミラー化に使用するディスクやコントローラを選択するときは、次のガイドラインに従ってください。

スライスの選択のガイドライン

ファイルシステムのミラー化に使用するスライスを選択するときは、次のガイドラインに従ってください。

シングルユーザーモードでのブート時に表示されるミラー保守管理に関する通知

ルート (/)、/usr、およびswap のミラーを持つシステムをシングルユーザーモードでブートした場合、これらのミラーの保守管理が必要であることが、システムから通知されます。metastat コマンドでこれらのミラーを確認すると、「Needing Maintenance」という状態情報が表示されます。システム上のすべてのミラーでこの現象が起きる場合もあります。

これは危険な状況に見えますが、心配はいりません。metasync -r コマンドは通常、ブート時にミラーの再同期のために実行されますが、 システムがシングルユーザーモードでブートされた場合には実行を中断されます。システムをリブートすると、metasync -r コマンドが実行され、すべてのミラーの再同期が取られます。

この中断が問題になる場合は、手動で metasync -r コマンドを実行してください。

metasync の詳細については、metasync(1M) のマニュアルページと、『Solaris ボリュームマネージャの管理』を参照してください。