Solaris 10 10/08 インストールガイド (ネットワークインストール)

第 7 章 ミニルートイメージへのパッチの適用 (作業)

この章では、インストールサーバーの設定時にミニルートイメージにパッチを適用する詳細な手順と例を示します。

この章で扱う内容は、次のとおりです。

ミニルートイメージへのパッチの適用 (作業)

setup_install_server によって作成されたネットワークインストールイメージ上のミニルート内にあるファイルに、パッチを適用する場合があります。

ミニルートイメージについて (概要)

ミニルートは、Solaris インストールメディアに含まれるブート可能な最小限のルート (/) ファイルシステムです。ミニルートは、システムをブートして、システムをインストールまたはアップグレードするために必要なすべての Solaris ソフトウェアで構成されます。ミニルートソフトウェアは、Solaris OS の完全インストールを実行するために、インストールメディアによって使用されます。ミニルートは、インストールプロセスの実行中にのみ使用されます。

ブートイメージにブートの問題がある、またはドライバやハードウェアサポートを追加する場合は、インストールの前にミニルートにパッチを適用することがあります。ミニルートイメージにパッチを適用しても、Solaris OS のインストールが行われるシステムや、patchadd コマンドを実行するシステムにパッチがインストールされることはありません。ミニルートイメージに適用されたパッチは、実際に Solaris OS インストールを実行するプロセスに、ドライバやハードウェアのサポートを追加するためだけに使用されます。


注 –

この章で説明しているのは、ミニルートにパッチを適用するための手順であり、完全なネットワークインストールイメージにパッチを適用するための手順ではありません。ネットワークインストールイメージにパッチを適用する場合は、インストールが完了したあとに作業を実行します。


Procedureミニルートイメージにパッチを適用する方法

ネットワークインストールのミニルートイメージにパッチを適用するには、次の手順に従います。


注 –

次の手順では、ネットワーク上に Solaris 最新リリースが実行されているシステムがあり、そのシステムにネットワークを経由してアクセスできると仮定しています。


  1. Solaris 最新リリースが実行されているシステム上で、スーパーユーザーとしてログインするか、同等の役割になります。

  2. 手順 5 で作成したインストールイメージの Tools ディレクトリに移動します。


    # cd install-server-path/install-dir-path/Solaris_10/Tools
    
    install-server-path

    たとえば /net/installserver-1 のように、ネットワーク上のインストールサーバーシステムへのパスを指定します。

  3. 新しいインストールイメージを作成し、そのイメージを Solaris 最新リリースが実行されているシステム上に置きます。


    # ./setup_install_server remote_install_dir_path
    
    remote_install_dir_path

    新しいインストールイメージを作成する Solaris 最新リリース上のパスを指定します。

    このコマンドにより、Solaris 最新リリース上に新しいインストールイメージが作成されます。このイメージにパッチを適用するには、このイメージを Solaris 最新リリースが実行されているシステム上に一時的に置きます。

  4. Solaris 最新リリース上で、ネットワークインストールのブートアーカイブを展開します。


    # /boot/solaris/bin/root_archive unpackmedia remote_install_dir_path \
      destination_dir
    
    remote_install_dir_path

    Solaris 最新リリース上のネットワークインストールイメージへのパスを指定します。

    destination_dir

    展開されたブートアーカイブを含むディレクトリのパスを指定します。

  5. Solaris 最新リリース上で、展開したブートアーカイブにパッチを適用します。


    # patchadd -C destination_dir path-to-patch/patch-id
    
    path-to-patch

    たとえば /var/sadm/spool のように、追加するパッチのパスを指定します。

    patch-id

    適用するパッチ ID を指定します。

    patchadd -M コマンドを使用すると、複数のパッチを指定できます。詳細については、patchadd(1M) のマニュアルページを参照してください。


    注意 – 注意 –

    patchadd -C を使用する前には必ず、パッチの README を読むか、ご購入先におたずねください。


  6. Solaris 最新リリース上で、ブートアーカイブを作成します。


    # /boot/solaris/bin/root_archive packmedia remote_install_dir_path \
      destination_dir
    
  7. パッチを適用したアーカイブをインストールサーバー上のインストールイメージにコピーします。


    # cd remote_install_dir_path
    # find boot Solaris_10/Tools/Boot | cpio -pdum \
       install-server-path/install_dir_path
    
次の手順

インストールサーバーの設定とミニルートへのパッチの適用が完了したあと、ブートサーバーの設定、またはネットワークからインストールするシステムの追加を行う場合があります。

ミニルートイメージへのパッチの適用 (例)

この例では、ミニルートイメージにパッチを適用して、修正済みのミニルートを作成する手順について説明します。

ミニルートイメージへのパッチの適用

この例では、最新リリースが実行されているシステム上でミニルートの展開と圧縮を実行します。

Procedureミニルートの変更方法 (例)

次の手順は、Solaris 10 10/08 ミニルートイメージにカーネル更新 (KU) パッチをインストールする方法を示しています。Solaris 10 OS が実行されているシステム上で次の手順に従います。ただし、次の点に注意してください。

ネットワークインストールイメージは、/net/jmpstart1/export/images/solaris_10_u1/Solaris_10/Tools にあります。

  1. Solaris 最新リリースが実行されているシステム上で、スーパーユーザーとしてログインするか、同等の役割になります。

  2. ミニルートを展開するディレクトリに移動し、そこにネットワークインストールイメージを置きます。


    # cd /net/server-1/export
    
  3. インストールディレクトリとミニルートディレクトリを作成します。


    # mkdir /export/u1 /export/mr
    
  4. Solaris 10 10/08 のインストールイメージが存在する Tools ディレクトリに移動します。


    # cd /net/jmp-start1/export/images/solaris_10/Solaris_10/Tools
    
  5. 新しいインストールイメージを作成し、そのイメージを Solaris 最新リリースが実行されているシステム上に置きます。


    # ./setup_install_server /export/u1
    Verifying target directory...
    Calculating the required disk space for the Solaris_10 product
    Calculating space required for the installation boot image
    Copying the CD image to disk...
    Copying Install Boot Image hierarchy...
    Copying /boot  netboot hierarchy...
    Install Server setup complete

    これでインストールサーバーの設定が完了しました。

  6. 次のコマンドを実行して、ミニルートを展開します。


     # /boot/solaris/bin/root_archive unpackmedia /export/u1 /export/mr
    
  7. ディレクトリを変更します。


    # cd  /export/mr/sbin
    
  8. rc2 ファイルと sulogin ファイルのコピーを作成します。


    # cp rc2 rc2.orig
    # cp sulogin sulogin.orig
    
  9. すべての必須パッチをミニルートに適用します。


    patchadd -C /export/mr /export patchid
    

    patchid には、適用するパッチ ID を指定します。

    この例では、ミニルートに 5 つのパッチが適用されます。


    # patchadd -C /export/mr /export/118344-14
    # patchadd -C /export/mr /export/122035-05
    # patchadd -C /export/mr /export/119043-10
    # patchadd -C /export/mr /export/123840-04
    # patchadd -C /export/mr /export/118855-36
    
  10. SVCCFG_REPOSITORY 変数をエクスポートします。


    # export SVCCFG_REPOSITORY=/export/mr/etc/svc/repository.db
    

    注意 – 注意 –

    SVCCFG_REPOSITORY 変数は、展開したミニルートの repository.db ファイルの場所を指すようにしてください。この例では、/export/mr/etc/svc ディレクトリです。repository.db ファイルは、展開したミニルートの下の /etc/svc ディレクトリにあります。この変数のエクスポートに失敗すると、ライブリポジトリが変更され、ライブシステムがブートできなくなります。


  11. ミニルートの repository.db ファイルを変更します。


    # svccfg -s system/manifest-import setprop start/exec = :true
    # svccfg -s system/filesystem/usr setprop start/exec = :true
    # svccfg -s system/identity:node setprop start/exec = :true
    # svccfg -s system/device/local setprop start/exec = :true
    # svccfg -s network/loopback:default setprop start/exec = :true
    # svccfg -s network/physical:default setprop start/exec = :true
    # svccfg -s milestone/multi-user setprop start/exec = :true
    

    詳細は、svccfg(1M) のマニュアルページを参照してください。

  12. ディレクトリを変更します。そのあと、rc2.orig ファイルと sulogin.orig ファイルのオリジナルコピーを復元します。


    # cd /export/mr/sbin
    # mv rc2.orig rc2
    # mv sulogin.orig sulogin
    
  13. 変更点を含む、修正済みのミニルートを圧縮します。変更したミニルートを /export/u1 ディレクトリに置きます。


    # /boot/solaris/bin/root_archive packmedia /export/u1 /export/mr
    

    この手順により、実質的に /export/u1/boot/miniroot ディレクトリがその他の必須ファイルと共に置き換えられます。

次の手順

インストールサーバーの設定とミニルートへのパッチの適用が完了したあと、ブートサーバーの設定、またはネットワークからインストールするシステムの追加を行う場合があります。