終了スクリプトは、rules ファイル内に指定する、ユーザー定義の Bourne シェルスクリプトです。終了スクリプトは、Solaris ソフトウェアがシステムにインストールされたあと、システムがリブートする前に作業を実行します。終了スクリプトは、カスタム JumpStart インストールで Solaris をインストールするときのみ使用できます。
終了スクリプトは、次のような作業に利用できます。
ファイルの追加
パッケージまたはパッチの追加
ルート環境のカスタマイズ
システムのルートパスワードの設定
追加ソフトウェアのインストール
Solaris インストールプログラムは、システムのファイルシステムを /a にマウントします。ファイルシステムは、システムがリブートするまで /a にマウントされています。終了スクリプトを使用して、新しくインストールされたファイルシステムの階層 (/a) を変更し、ファイルの追加、変更、または削除ができます。
インストール中の終了スクリプトの出力は、/tmp/finish.log へ書き込まれます。インストール完了後に、このログファイルの出力先が /var/sadm/system/logs/finish.log へ変更されます。
終了スクリプト内では、カスタム JumpStart 環境変数を使用できます。環境変数のリストについては、「カスタム JumpStart の環境変数」を参照してください。
終了スクリプトは、JumpStart ディレクトリに保存してください。
 終了スクリプトでファイルを追加する方法
終了スクリプトでファイルを追加する方法終了スクリプトにより、JumpStart ディレクトリにあるファイルをインストールされたシステムへ追加できます。ファイルを追加できるのは、SI_CONFIG_DIR 変数で指定されるディレクトリに JumpStart ディレクトリがマウントされるためです。このディレクトリは、デフォルトで /tmp/install_config に設定されます。
インストールされたシステムにすでに存在するファイルに、JumpStart ディレクトリからファイルをコピーして、ファイルを置換することもできます。
たとえば、自分のサイトのすべてのユーザーを対象に開発された特別なアプリケーション site_prog があると仮定します。site_prog のコピーを JumpStart ディレクトリに置いた場合、終了スクリプト内の次の行は JumpStart ディレクトリからシステムの /usr/bin ディレクトリに site_prog をコピーします。
| cp ${SI_CONFIG_DIR}/site_prog  /a/usr/bin | 
終了スクリプトを作成すると、Solaris ソフトウェアをシステムにインストールした後に、パッケージやパッチを自動的に追加できます。終了スクリプトを使用してパッケージを追加すると時間を節約できるだけでなく、サイトのさまざまなシステムにパッケージおよびパッチをインストールする上での整合性を維持できます。
終了スクリプト内で pkgadd(1M) コマンドや patchadd(1M) コマンドを使用するときは、-R オプションを使って、/a をルートパスとして指定します。
|   #!/bin/sh
 
  BASE=/a
  MNT=/a/mnt
  ADMIN_FILE=/a/tmp/admin
 
  mkdir ${MNT}
  mount -f nfs sherlock:/export/package ${MNT}
  cat >${ADMIN_FILE} <<DONT_ASK
  mail=root
  instance=overwrite
  partial=nocheck
  runlevel=nocheck
  idepend=nocheck
  rdepend=nocheck
  space=ask
  setuid=nocheck
  conflict=nocheck
  action=nocheck
  basedir=default
  DONT_ASK
 
  /usr/sbin/pkgadd -a ${ADMIN_FILE} -d ${MNT} -R ${BASE} SUNWxyz 
  umount ${MNT}
  rmdir ${MNT} | 
次に、この例のいくつかのコマンドの説明を示します。
次のコマンドは、インストールするパッケージを含むサーバー上にディレクトリをマウントします。
| mount -f nfs sherlock:/export/package ${MNT} | 
次のコマンドは、一時的なパッケージ管理ファイル admin を作成し、パッケージのインストール時に pkgadd(1M) コマンドがチェックも質問の表示も行わないようにします。この一時的なパッケージ管理ファイルは、パッケージの追加時に自動インストールを実施するために使用してください。
| cat >${ADMIN_FILE} <<DONT_ASK | 
次の pkgadd コマンドは、-a オプション (パッケージ管理ファイルを指定) と -R オプション (ルートパスを指定)を使用してパッケージを追加します。
| /usr/sbin/pkgadd -a ${ADMIN_FILE} -d ${MNT} -R ${BASE} SUNWxyz | 
| #!/bin/sh ######## # # USER-CONFIGURABLE OPTIONS # ######## # The location of the patches to add to the system after it's installed. # The OS rev (5.x) and the architecture (`mach`) will be added to the # root. For example, /foo on a 8 SPARC would turn into /foo/5.8/sparc LUPATCHHOST=ins3525-svr LUPATCHPATHROOT=/export/solaris/patchdb ######### # # NO USER-SERVICEABLE PARTS PAST THIS POINT # ######### BASEDIR=/a # Figure out the source and target OS versions echo Determining OS revisions... SRCREV=`uname -r` echo Source $SRCREV LUPATCHPATH=$LUPATCHPATHROOT/$SRCREV/`mach` # # Add the patches needed # echo Adding OS patches mount $LUPATCHHOST:$LUPATCHPATH /mnt >/dev/null 2>&1 if [ $? = 0 ] ; then for patch in `cat /mnt/*Recommended/patch_order` ; do (cd /mnt/*Recommended/$patch ; echo yes | patchadd -u -d -R $BASEDIR .) done cd /tmp umount /mnt else echo "No patches found" if | 
以前は終了スクリプト環境では、pkgadd コマンドや patchadd コマンドとともに chroot(1M) コマンドが使用されていました。まれに、一部のパッケージやパッチで -R オプションが正しく動作しないことがあります。chroot コマンドを実行する前には、/a ルートパスにダミーの /etc/mnttab ファイルを作成する必要があります。
ダミーの /etc/mnttab ファイルを作成するには、終了スクリプトに次の行を追加します。
cp /etc/mnttab /a/etc/mnttab
終了スクリプトでは、すでにシステムにインストールされたファイルをカスタマイズすることもできます。たとえば、例 4–5 の終了スクリプトは、ルート (/) ディレクトリの .cshrc ファイルに情報を追加することによってルート環境をカスタマイズします。
| #!/bin/sh
#
# Customize root's environment
#
echo "***adding customizations in /.cshrc"
test -f a/.cshrc || {
cat >> a/.cshrc <<EOF
set history=100 savehist=200 filec ignoreeof prompt="\$user@`uname -n`> "
alias cp cp -i
alias mv mv -i
alias rm rm -i
alias ls ls -FC
alias h history
alias c clear
unset autologout
EOF
} | 
Solaris ソフトウェアのシステムへのインストールが完了すると、システムは再起動します。ブートプロセス終了前に、システムは root パスワードを入力するように求めてきます。パスワードを入力するまで、システムはブート処理を終了できません。
set_root_pw という終了スクリプトが、auto_install_sample ディレクトリに保存されています。この終了スクリプトは、プロンプトを表示することなく root パスワードを自動的に設定する方法を示します。set_root_pw については、例 4–6 を参照してください。
システムの root パスワードを終了スクリプトで設定した場合、ユーザーが、終了スクリプト内にある暗号化されたパスワードからルートのパスワードを発見しようと試みる可能性があります。ユーザーに root パスワードを解読されないよう、対策を講じてください。
| 	 #!/bin/sh
	 #
	 #       @(#)set_root_pw 1.4 93/12/23 SMI
	 #
	 # This is an example Bourne shell script to be run after installation.
	 # It sets the system's root password to the entry defined in PASSWD.
	 # The encrypted password is obtained from an existing root password entry
	 # in /etc/shadow from an installed machine.
 
	 echo "setting password for root"
 
	 # set the root password
 PASSWD=dKO5IBkSF42lw
	 #create a temporary input file
 cp /a/etc/shadow /a/etc/shadow.orig
 
	 mv /a/etc/shadow /a/etc/shadow.orig
 	nawk -F: '{
         if ( $1 == "root" )
           printf"%s:%s:%s:%s:%s:%s:%s:%s:%s\n",$1,passwd,$3,$4,$5,$6,$7,$8,$9
      else
		        printf"%s:%s:%s:%s:%s:%s:%s:%s:%s\n",$1,$2,$3,$4,$5,$6,$7,$8,$9
      }' passwd="$PASSWD" /a/etc/shadow.orig > /a/etc/shadow
 #remove the temporary file
 rm -f /a/etc/shadow.orig
 # set the flag so sysidroot won't prompt for the root password
 sed -e 's/0 # root/1 # root/' ${SI_SYS_STATE} > /tmp/state.$$
  mv /tmp/state.$$ ${SI_SYS_STATE} | 
次に、この例のいくつかのコマンドの説明を示します。
次のコマンドは、PASSWD 変数に、システムの /etc/shadow ファイルの既存のエントリから取得した暗号化された root パスワードを設定します。
| #create a temporary input file | 
次のコマンドは、/a/etc/shadow の一時入力ファイルを作成します。
| cp /a/etc/shadow /a/etc/shadow.orig | 
次のコマンドは、$PASSWD をパスワードフィールドとして使用して、新しくインストールしたシステム用の /etc/shadow ファイルにある root エントリを変更します。
| if ( $1 == "root" ) | 
次のコマンドは、一時的な /a/etc/shadow ファイルを削除します。
| rm -f /a/etc/shadow.orig | 
次のコマンドは、状態ファイルのエントリを 0 から 1 へ変更します。これによりユーザーは root パスワードの入力を求められません。この状態ファイルには、SI_SYS_STATE 変数 (現在の値は /a/etc/.sysIDtool.state) を使用してアクセスします。この値の変更によってスクリプトで問題が発生することを防ぐには、必ず $SI_SYS_STATE を使用してこのファイルを参照してください。ここに示されている sed コマンドでは、0 の後ろと 1 の後ろにタブ文字が入っています。
| sed -e 's/0 # root/1 # root/' ${SI_SYS_STATE} > /tmp/state.$$ | 
終了スクリプトを使用すると、Solaris OS のインストールに続いてさらにソフトウェアをインストールできます。Solaris インストールプログラム は、インストール中に情報を入力するプロンプトを表示します。自動インストールを行うには、-nodisplay オプションまたは -noconsole オプションを指定して Solaris インストールプログラム を実行します。
表 4–1 Solaris インストールオプション| オプション | 説明 | 
|---|---|
| -nodisplay | GUI を使用せずにインストーラを実行します。-locales オプションを用いてインストール条件を変更した場合を除き、デフォルトの設定に従って製品がインストールされます。 | 
| -noconsole | 対話形式のテキストコンソールデバイスを介さずにインストールを実行します。UNIX スクリプトで -nodisplay と共に使用すると便利です。 | 
詳細については、installer(1M) のマニュアルページを参照してください。