マスターシステムから初期インストール用アーカイブを作成できます。また、クローンシステムに別のアーカイブがすでにインストールされている場合は、2 つのシステムイメージから差分アーカイブを作成できます。差分アーカイブでは、2 つのイメージの相違部分のみがインストールされます。
マスターシステムのインストール後、Solaris フラッシュインストールプロセスの次の作業として、Solaris フラッシュアーカイブを作成します。マスターシステム上のファイルは、さまざまな識別情報と共に Solaris フラッシュアーカイブにコピーされます。Solaris フラッシュアーカイブは、マルチユーザーモードまたはシングルユーザーモードでマスターシステムが稼働している間に作成できます。Solaris フラッシュアーカイブは、次のメディアのうちの 1 つからブートした後でも作成できます。
Solaris Operating System DVD
Solaris SOFTWARE - 1 CD
Solaris SOFTWARE CD と Solaris LANGUAGES CD のイメージ
非大域ゾーンがインストールされていると、Solaris フラッシュアーカイブは正常に作成されません。Solaris フラッシュ機能には Solaris ゾーン区分技術との互換性はありません。Solaris フラッシュアーカイブを作成する場合、そのアーカイブの配備条件が次のいずれかの場合は、作成されたアーカイブは正しくインストールされません。
アーカイブが非大域ゾーンに作成された場合
アーカイブが、非大域ゾーンがインストールされている大域ゾーンに作成された場合
Solaris ボリュームマネージャー RAID-1 ボリュームが構成されていても、Solaris フラッシュアーカイブを作成できます。クローンシステムの整合性を保つため、RAID-1 ボリュームの情報はすべて、Solaris フラッシュ作成ソフトウェアによってアーカイブから削除されます。カスタム JumpStart では、JumpStart プロファイルを使用して RAID-1 ボリュームを再構築できます。Solaris Live Upgrade では、RAID-1 ボリュームが構成されたブート環境を作成し、アーカイブをインストールできます。Solaris インストールプログラムでは、Solaris フラッシュアーカイブを使用して RAID-1 ボリュームのインストールを行うことはできません。
JumpStart プロファイルでの RAID-1 ボリュームの例については、『Solaris 10 10/08 インストールガイド (カスタム JumpStart/ 上級編)』の「プロファイルの例」を参照してください。
RAID-1 ボリュームで構成された Solaris Live Upgrade ブート環境の例については、『Solaris 10 10/08 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)』の「新しいブート環境の作成」を参照してください。
Veritas VxVM では、Solaris フラッシュで使用できない領域に構成情報が格納されます。Veritas VxVm ファイルシステムが構成されている場合は、Solaris フラッシュアーカイブを作成しないでください。また、JumpStart と Solaris Live Upgrade も含め、Solaris インストールではインストール時の VxVM ボリュームの再構築はサポートされていません。したがって、Solaris フラッシュアーカイブを使った Veritas VxVM ソフトウェアの配備を計画している場合は、VxVM ファイルシステムを構成する前にアーカイブを作成する必要があります。その後、クローンシステムにアーカイブを適用しシステムをリブートしてから、クローンシステムの構成を個別に行う必要があります。
Solaris フラッシュアーカイブの作成に使われるデフォルトのコピー方法は、cpio ユーティリティーです。個別のファイルのサイズを 4G バイトより大きくすることはできません。大規模な個別ファイルがある場合は、pax によるコピー方法でアーカイブを作成できます。flarcreate コマンドと -L pax オプションを指定して pax ユーティリティーを使用すると、個別ファイルのサイズ制限なしでアーカイブが作成されます。個別のファイルサイズを 4G バイトより大きくできます。
クローンシステムにアーカイブがインストール済みであるときに、クローンシステムを更新する場合は、更新前のマスターイメージと更新後のマスターイメージの 2 つのイメージの差異のみを含む差分アーカイブを作成できます。2 つのイメージの相違部分が、差分アーカイブになります。
1 つは、マスターシステムで稼動中のイメージで、クローンシステムにインストールされた元のソフトウェアです。このイメージを将来使用できるようにディレクトリに保存した場合は、このイメージをマスターシステムにインストールする必要があるかもしれません。
アクセスするもう 1 つのイメージは、比較に使用します。このイメージには、新しく追加または削除された内容が含まれており、これらがクローンシステムにインストールされます。
差分アーカイブを使用してクローンシステムを更新すると、差分アーカイブ内に存在するファイルだけがクローンシステム上で変更されます。インストールの前または後に、スクリプトを使用してアーカイブをカスタマイズできます。再構成を行う場合、これは特に有効です。
カスタム JumpStart インストール方法を使用して、Solaris フラッシュ差分アーカイブをインストールします。あるいは、Solaris Live Upgrade を使用して、非アクティブブート環境に差分アーカイブをインストールします。
次のいずれかの方法でアクセスできるよう、初期インストールの実行後に更新前のマスターイメージを保存してください。
lumount コマンドを使用してディレクトリにマウントされる、Solaris Live Upgrade ブート環境。Solaris Live Upgrade ブート環境については、『Solaris 10 10/08 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)』の第 2 章「Solaris Live Upgrade (概要)」を参照してください。
ルートアクセス権を使用してネットワークファイルシステム (NFS) 経由でマウントされるクローンシステム。
ufsdump コマンドを使用して復元可能なシステムのバックアップ。
手順については、「更新されたマスターイメージを使用して Solaris フラッシュ差分アーカイブを作成する方法」を参照してください。
Solaris フラッシュアーカイブの作成時に、マスターシステムからコピーされるファイルやディレクトリの一部分をアーカイブから除外することができます。アーカイブからディレクトリを除外する際に、そのディレクトリ内にある特定のファイルやサブディレクトリを除外せずにアーカイブに含めることも可能です。たとえば、/a/aa/bb/c にあるすべてのファイルやディレクトリを除外したアーカイブを作成できます。このアーカイブを作るときに、bb サブディレクトリの内容だけを除外せずにアーカイブに含めることができます。これにより、アーカイブに含められるのは bb サブディレクトリの内容だけになります。
flarcreate のファイル除外オプションは、注意して使用してください。一部のディレクトリを除外する際、気づかずにシステム構成ファイルなどの他のファイルがアーカイブに残ってしまう場合があります。この場合、システムの整合性が損なわれるため、インストールが失敗してしまいます。ディレクトリやファイルの除外は、大規模なデータファイルなど、システムを破綻させることなく容易に削除可能なデータに対して行うのが最善です。
次の表に、ファイルやディレクトリの除外および追加用の flarcreate コマンドのオプションを示します。
指定方法 |
除外用のオプション |
追加用のオプション |
---|---|---|
ディレクトリまたはファイルの名前を指定します |
-x exclude_dir/filename |
-y include_dir/filename |
対象のファイルやディレクトリのリストを含むファイルを使用します |
-X list_filename -z list_filename |
-f list_filename -z list_filename |
これらのオプションの詳細は、表 5–7 を参照してください。
アーカイブのカスタマイズ例については、「Solaris フラッシュアーカイブの作成とファイルのカスタマイズ (例)」を参照してください。
マスターシステムへのソフトウェアのインストール後、作成、インストール、ポストインストール、および初回再起動時に特別なスクリプトを実行できます。これらのスクリプトを使用して、次のことを実行できます。
クローンシステム上のアプリケーションを構成します。構成内容が単純な場合は、カスタム JumpStart スクリプトを使用します。より複雑な構成の場合、マスターシステム上で、またはインストールの前か後にクローンシステム上で、特別な構成ファイル処理が必要な場合があります。
クローンシステム上でのローカルなカスタマイズを保護します。ローカルのプリインストールおよびポストインストールスクリプトは、クローン上に存在します。これらのスクリプトは、ローカルのカスタマイズが Solaris フラッシュにより上書きされないように保護する働きをします。
クローン不可のホスト依存データを識別して、アーカイブをホスト非依存にできます。ホスト非依存にするには、この種のデータを変更するか、アーカイブから除外します。ホストに依存するデータの例として、ログファイルがあります。
アーカイブの作成時に、アーカイブ内でソフトウェアの整合性を確認します。
クローンシステム上のインストールを検査します。
再起動スクリプト以外のスクリプトを作成する場合、スクリプトが OS を破壊したりシステムを中断させたりすることがないように、次のガイドラインに従ってください。これらのガイドラインに従えば、OS インストール用の新規ブート環境を作成する、Solaris Live Upgrade を使用できます。新規ブート環境は、現行システムの稼働中にアーカイブを使用してインストールできます。
これらのガイドラインは、デーモンの実行やルート (/) ファイルシステムへの他のタイプの変更を実行可能にする再起動スクリプトに適用されるものではありません。
スクリプトは、稼働中のシステムに影響を与えてはいけません。現在稼働中の OS が、Solaris フラッシュアーカイブのインストール時に稼働している OS ではない場合もあります。
スクリプトで、いかなるデーモンプロセスも開始または停止させないでください。
スクリプトで、OS に依存するコマンド (ps、truss、uname など) の出力に依存しないでください。これらのコマンドは、稼働中のシステムに関する情報をレポートします。
スクリプトで、いかなるシグナルも送信しないでください。送信した場合、現在稼働中のプロセスが影響を受けます。
スクリプトでは、シェルスクリプトの実行を円滑にする標準の UNIX コマンド (expr、cp、ls など) を使用できます。
Solaris Live Upgrade の概要については、『Solaris 10 10/08 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)』の第 2 章「Solaris Live Upgrade (概要)」を参照してください。
Solaris フラッシュアーカイブには、次のセクションが含まれます。一部のセクションを使用して、アーカイブの識別やカスタマイズ、およびインストールの状態情報の表示を実行できます。各セクションの詳細は、第 5 章Solaris フラッシュ (リファレンス)を参照してください。
表 2–2 フラッシュアーカイブのセクション
セクション名 |
情報提供のみ |
説明 |
---|---|---|
アーカイブ Cookie |
X |
最初のセクションには、ファイルを Solaris フラッシュアーカイブとして識別する cookie が含まれます。 |
アーカイブ識別 |
|
2 番目のセクションには、アーカイブについての識別情報を値に持つキーワードが含まれます。一部の識別情報は、アーカイブソフトウェアにより提供されます。flarcreate コマンドのオプションを使用すると、それ以外の具体的な識別情報を追加できます。 |
ユーザー定義 |
|
このセクションは、アーカイブ識別セクションの次に存在します。これらのセクションを定義および挿入して、アーカイブをカスタマイズできます。Solaris フラッシュアーカイブは、ユーザーが定義したセクションは処理しません。たとえば、このセクションには、アーカイブの説明や、アプリケーションの整合性をチェックするスクリプトなどを含めることができます。 |
マニフェスト |
X |
このセクションは、Solaris フラッシュ差分アーカイブに対して生成され、クローンシステムの検証に使用されます。マニフェストセクションには、クローンシステムに保持、追加または削除されるシステム上のファイルが一覧表示されます。このセクションは情報提供専用であり、内部形式でファイルをリスト表示します。スクリプトの記述には使用できません。 |
配置前、配置後、再起動 |
X |
このセクションには、OS イメージのインストール前および後にフラッシュソフトウェアが使用する内部情報が含まれます。指定したスクリプトはすべて、このセクションに含まれます。 |
サマリー |
|
このセクションには、アーカイブ作成に関するメッセージが含まれます。セクションには、配置前および配置後スクリプトのアクティビティーも記録できます。このセクションに出力を送信するスクリプトを記述することにより、このセクション内でインストールの成功を確認できます。 |
アーカイブファイル |
X |
アーカイブファイルセクションには、マスターシステムから収集されたファイルが含まれます。 |
アーカイブは、システムができるだけ静的な状態である時に作成してください。マスターシステムにソフトウェアをインストールした後でソフトウェアを構成する前にアーカイブを作成します。
Solaris フラッシュアーカイブを作成した後、そのアーカイブをマスターシステムのハードディスクまたはテープに保存できます。保存後は、任意のファイルシステムまたはメディアへこのアーカイブをコピーできます。
ネットワークファイルシステム (NFS) サーバー
HTTP または HTTPS サーバー
FTP サーバー
テープ
CD、DVD
フロッピーディスク
インストールするクローンシステムのローカルドライブ
Solaris フラッシュアーカイブを作成する際は、compress(1) ユーティリティーを使用して、そのアーカイブが圧縮ファイルとして保存されるように指定することができます。圧縮されたアーカイブはディスク容量が少なくてすみ、ネットワークを介してアーカイブをインストールする場合の負荷も減ります。