Solaris 10 5/09 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)

Solaris ボリュームマネージャーボリュームで構成された UFS ファイルシステムの ZFS ルートファイルシステムへの移行

Solaris ボリュームマネージャー (SVM) ボリュームがあるシステムでも、UFS ファイルシステムの移行が可能です。既存の SVM 構成から UFS ブート環境を作成するため、現在稼動中のシステムから新規ブート環境を作成します。その後、その新しい UFS ブート環境から ZFS ブート環境を作成します。

Solaris ボリュームマネージャー (SVM) の概要。ZFS では、物理ストレージを管理するために、「ストレージプール」という概念を使用します。従来のファイルシステムは、1 つの物理デバイス上に構築されていました。複数のデバイスを扱ってデータの冗長性を実現するため、単一デバイスのイメージを提供するボリュームマネージャーの概念が導入されました。このようにすれば、複数デバイスの利点を享受するためにファイルシステムを変更する必要はありません。一方、この設計によって、複雑さは増大します。ファイルシステムには、仮想化したボリューム上の物理的なデータの配置を制御する機能がないため、この複雑さは結局、ある面でファイルシステムの進化を阻みました。

ZFS ストレージプールによる SVM の置き換え。ZFS は、ボリューム管理を完全になくしています。ZFS では、仮想化されたボリュームを作成する代わりに、デバイスをストレージプールに集約します。ストレージプールは、デバイスのレイアウト、データの冗長性などのストレージの物理特性を記述したもので、ファイルシステムを作成できる任意のデータストアとして機能します。ファイルシステムが個々のデバイスに制約されなくなり、デバイスの領域をプール内のすべてのファイルシステムで共有することができます。ファイルシステムのサイズを事前に決定する必要はなくなりました。ファイルシステムのサイズは、ストレージプールに割り当てられた領域内で自動的に拡張します。新しいストレージを追加すると、何も操作しなくても、プール内のすべてのファイルシステムで追加した領域をすぐに使用できます。多くの点で、ストレージプールは仮想的なメモリーシステムと言えます。システムに DIMM メモリーを追加したときに、メモリーの構成と各プロセスへの割り当てを実行するコマンドの呼び出しをオペレーティングシステムから要求されることはありません。追加したメモリーは、システムのすべてのプロセスによって自動的に使用されます。


例 11–2 SVM ボリュームのある UFS ルート (/) ファイルシステムから ZFS ルートプールへの移行

SVM ボリュームのあるシステムを移行する場合、SVM ボリュームは無視されます。次の例に示すように、ルートプール内にミラーを設定できます。

この例では、-m オプションを指定した lucreate コマンドで、現在稼動中のシステムから新規ブート環境を作成します。ディスクスライス c1t0d0s0 には、SVM ボリュームで構成された UFS ルート (/) ファイルシステムが含まれています。zpool コマンドで、ルートプール c1t0d0s0、および RAID-1 ボリューム (ミラー) c2t0d0s0 を作成します。2 番目の lucreate コマンドの -n オプションで、作成するブート環境に c0t0d0s0 という名前を割り当てます。-s オプションでは、UFS ルート (/) ファイルシステムを指定します。-p オプションでは、新しいブート環境を rpool に配置することを指定します。


# lucreate -n ufsBE -m /:/dev/md/dsk/d104:ufs
# zpool create rpool mirror c1t0d0s0 c20t0d0s0
# lucreate -n c0t0d0s0 -s ufsBE -p rpool

ブート環境 c0t0d0s0 は、すぐにアップグレードおよびアクティブにできます。