WAN ブートは、カスタム JumpStart インストールを実行して、Solaris フラッシュアーカイブをクライアントにインストールします。カスタム JumpStart は、あらかじめ作成したプロファイルを使って、複数のシステムのインストールを自動的にかつ同時に行うことができる、コマンド行インタフェースです。プロファイルには、どのようにソフトウェアをインストールするかを定義します。さらに、インストール前とインストール後に実行する作業を、シェルスクリプトを使用して指定することができます。システムのインストールまたはアップグレードにどのプロファイルとスクリプトを使用するかを選択できます。カスタム JumpStart では、選択したプロファイルとスクリプトに基づいて、システムのインストールまたはアップグレードが行われます。また、sysidcfg ファイルを使用して構成情報を指定することにより、カスタム JumpStart インストールを完全に自動化することも可能です。
WAN ブートインストール用のカスタム JumpStart ファイルを準備するには、次の作業を実行します。
JumpStart のカスタムインストールの詳細は、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (カスタムJumpStart/ 上級編)』の第 2 章「カスタム JumpStart (概要)」を参照してください。
Solaris フラッシュインストール機能を利用すると、マスターシステムと呼ばれるシステム上の Solaris OS を、単一の参照用インストールイメージとして使用できます。また、マスターシステムのイメージを複製して、Solaris フラッシュアーカイブを作成できます。ネットワーク内のほかのシステムにこの Solaris フラッシュアーカイブをインストールすることで、クローンシステムを作成できます。
ここでは、Solaris フラッシュアーカイブの作成方法について説明します。
Solaris フラッシュアーカイブを作成する前に、マスターシステムのインストールを行う必要があります。
マスターシステムのインストール方法については、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (Solaris フラッシュアーカイブの作成とインストール)』の「マスターシステムへのインストール」を参照してください。
Solaris フラッシュアーカイブの詳細は、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (Solaris フラッシュアーカイブの作成とインストール)』の第 1 章「Solaris フラッシュ (概要)」を参照してください。
ファイルサイズに関連する問題:
Web サーバーソフトウェアのマニュアルを参照して、Solaris フラッシュアーカイブの大きさのファイルを転送できることを確認してください。
Web サーバーソフトウェアのマニュアルを参照して、Solaris フラッシュアーカイブの大きさのファイルを転送できることを確認してください。
flarcreate コマンドのファイルごとのサイズ制限がなくなっています。各ファイルのサイズが 4G バイトを超えていても Solaris フラッシュ アーカイブを作成できます。
詳細については、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (Solaris フラッシュアーカイブの作成とインストール)』の「大規模なファイルを含むアーカイブの作成」を参照してください。
マスターシステムをブートします。
できるだけ静的な状態でマスターシステムを稼働させます。可能であれば、システムをシングルユーザーモードで実行してください。これが不可能な場合、アーカイブするアプリケーションおよび大量のオペレーティングシステムリソースを必要とするアプリケーションを停止します。
flarcreate コマンドを使用して、アーカイブを作成します。
# flarcreate -n name [optional-parameters] document-root/flash/filename |
アーカイブに指定する名前です。指定する name は、content_name キーワードの値になります。
flarcreate コマンドには、Solaris フラッシュアーカイブをカスタマイズするためのオプションをいくつか指定できます。これらのオプションの詳細な説明は、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (Solaris フラッシュアーカイブの作成とインストール)』の第 5 章「Solaris フラッシュ (リファレンス)」を参照してください。
インストールサーバーのドキュメントルートディレクトリにある Solaris フラッシュサブディレクトリへのパスです。
アーカイブファイルの名前です。
ディスク容量を節約するために、flarcreate コマンドに -c オプションを指定してアーカイブを圧縮することもできます。ただし、アーカイブを圧縮すると、WAN ブートインストールのパフォーマンスに影響する場合があります。圧縮されたアーカイブの作成に関する詳細は、flarcreate(1M) のマニュアルページを参照してください。
アーカイブの作成が正常に完了すると、flarcreate コマンドは終了コード 0 を返します。
アーカイブの作成が失敗すると、flarcreate コマンドは 0 以外の終了コードを返します。
この例では、wanserver というホスト名を持つ WAN ブートサーバーシステムのクローンを作成して、Solaris フラッシュアーカイブを作成します。このアーカイブは sol_10_sparc という名前で、マスターシステムから正確にコピーされます。アーカイブはマスターシステムの完全な複製です。アーカイブは sol_10_sparc.flar に格納されます。WAN ブートサーバーのドキュメントルートディレクトリの flash/archives サブディレクトリにこのアーカイブを保存します。
wanserver# flarcreate -n sol_10_sparc \ /opt/apache/htdocs/flash/archives/sol_10_sparc.flar |
Solaris フラッシュアーカイブを作成したあと、sysidcfg ファイルでクライアント情報を事前設定します。手順については、「sysidcfg ファイルを作成する方法」を参照してください。
Solaris フラッシュアーカイブの作成方法の詳細は、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (Solaris フラッシュアーカイブの作成とインストール)』の第 3 章「Solaris フラッシュアーカイブの作成 (作業)」を参照してください。
flarcreate コマンドの詳細は、flarcreate(1M) のマニュアルページを参照してください。
sysidcfg ファイルに一連のキーワードを指定すると、システムを事前設定できます。
sysidcfg ファイルを作成するには、次の手順に従ってください。
Solaris フラッシュアーカイブを作成します。詳細は、「Solaris フラッシュアーカイブを作成する方法」を参照してください。
インストールサーバーで、テキストエディタを使って sysidcfg というファイルを作成します。
必要な sysidcfg のキーワードを入力します。
sysidcfg のキーワードの詳細については、「sysidcfg ファイルキーワード」を参照してください。
WAN ブートサーバーがアクセスできる場所に、この sysidcfg ファイルを保存します。
このファイルを次のどちらかの場所に保存します。
SPARC ベースのシステムで使用される sysidcfg ファイルの例を次に示します。このシステムのホスト名、IP アドレス、およびネットマスクは、ネームサービスを編集することにより、すでに事前設定されています。
network_interface=primary {hostname=wanclient default_route=192.168.198.1 ip_address=192.168.198.210 netmask=255.255.255.0 protocol_ipv6=no} timezone=US/Central system_locale=C terminal=xterm timeserver=localhost name_service=NIS {name_server=matter(192.168.255.255) domain_name=mind.over.example.com } security_policy=none
sysidcfg ファイルを作成したあと、クライアントのカスタム JumpStart プロファイルを作成します。手順については、「プロファイルを作成する方法」を参照してください。
sysidcfg のキーワードと値の詳細については、「sysidcfg ファイルによる事前設定」を参照してください。
プロファイルは、システムへの Solaris ソフトウェアのインストール方法をカスタム JumpStart プログラムに指示するテキストファイルです。プロファイルには、インストール要素 (インストールするソフトウェアグループなど) を指定します。
プロファイルの作成方法の詳細は、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (カスタムJumpStart/ 上級編)』の「プロファイルの作成」を参照してください。
プロファイルを作成するには、次の手順に従ってください。
クライアント用の sysidcfg ファイルを作成します。詳細は、「sysidcfg ファイルを作成する方法」を参照してください。
インストールサーバーで、テキストファイルを作成します。ファイルにわかりやすい名前を付けます。
プロファイルには、システムに Solaris ソフトウェアをインストールする際の使用目的を表すような名前を付けてください。たとえば、basic_install、eng_profile、user_profile などのプロファイル名を付けます。
プロファイルにプロファイルキーワードと値を追加します。
プロファイルキーワードと値の一覧については、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (カスタムJumpStart/ 上級編)』の「プロファイルキーワードと値」を参照してください。
プロファイルキーワードとプロファイル値には、大文字と小文字の区別があります。
WAN ブートサーバーがアクセスできる場所に、このプロファイルを保存します。
このプロファイルを次のどちらかの場所に保存します。
WAN ブートサーバーとインストールサーバーが同じマシンに置かれている場合は、WAN ブートサーバーのドキュメントルートディレクトリの flash サブディレクトリにこのファイルを保存します。
WAN ブートサーバーとインストールサーバーがそれぞれ別のマシンに置かれている場合は、インストールサーバーのドキュメントルートディレクトリの flash サブディレクトリにこのファイルを保存します。
プロファイルの所有者が root で、そのアクセス権が 644 に設定されていることを確認します。
(省略可能) プロファイルをテストします。
プロファイルのテストに関する情報については、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (カスタムJumpStart/ 上級編)』の「プロファイルのテスト」を参照してください。
次の例のプロファイルは、カスタム JumpStart プログラムがセキュリティ保護された HTTP サーバーから Solaris フラッシュアーカイブを取得するように指定しています。
# profile keywords profile values # ---------------- ------------------- install_type flash_install archive_location https://192.168.198.2/sol_10_sparc.flar partitioning explicit filesys c0t1d0s0 4000 / filesys c0t1d0s1 512 swap filesys c0t1d0s7 free /export/home
この例で使用されているキーワードと値の一部について、次のリストで説明します。
このプロファイルにより、Solaris フラッシュアーカイブがクローンシステムにインストールされます。すべてのファイルは、初期インストールにより上書きされます。
圧縮された Solaris フラッシュアーカイブが HTTPS サーバーから取得されます。
値が explicit であるため、ファイルシステムスライスは filesys キーワードによって指定します。ルート (/) のサイズは Solaris フラッシュアーカイブのサイズに基づいて割り当てています。swap は、必要なサイズを割り当てた上で、c0t1d0s1 上にインストールされるように設定しています。/export/home のサイズは残りのディスク容量に基づいて決定されます。/export/home は c0t1d0s7 上にインストールされます。
プロファイルを作成したあと、rules ファイルの作成と妥当性検査を行う必要があります。手順については、「rules ファイルを作成する方法」を参照してください。
プロファイルの作成方法の詳細は、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (カスタムJumpStart/ 上級編)』の「プロファイルの作成」を参照してください。
プロファイルキーワードと値の詳細は、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (カスタムJumpStart/ 上級編)』の「プロファイルキーワードと値」を参照してください。
rules ファイルは、Solaris OS のインストール先となる各システムグループのルールを記述したテキストファイルです。各ルールは 1 つ以上のシステム属性にもとづいてシステムグループを識別し、各グループをプロファイルにリンクします。プロファイルは、グループ内の各システムに Solaris ソフトウェアがどのようにインストールされるかを定義するテキストファイルです。たとえば、次のルールは JumpStart プログラムが basic_prof プロファイル内の情報を使用し、sun4u プラットフォームグループを持つすべてのシステムに対してインストールを実行することを示します。
karch sun4u - basic_prof - |
rules ファイルを使用して、カスタム JumpStart インストールに必要な rules.ok ファイルを作成します。
rules ファイルの作成方法の詳細は、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (カスタムJumpStart/ 上級編)』の「rules ファイルの作成」を参照してください。
rules ファイルを作成するには、次の手順に従ってください。
クライアント用のプロファイルを作成します。詳細は、「プロファイルを作成する方法」を参照してください。
インストールサーバーで、rules という名前のテキストファイルを作成します。
インストール対象であるシステムのグループごとに、適用するルールを rules ファイルに追加します。
rules ファイルの作成方法の詳細は、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (カスタムJumpStart/ 上級編)』の「rules ファイルの作成」を参照してください。
インストールサーバーに rules ファイルを保存します。
$ ./check -p path -r file-name |
使用しているシステムの check スクリプトではなく Solaris 最新リリースソフトウェアイメージの check スクリプトを使用して、rules の妥当性検査を行います。path は、ローカルディスク、マウントされた Solaris DVD、または Solaris SOFTWARE - 1 CD 上のイメージです。
システムが以前のバージョンの Solaris OS を実行している場合、このオプションを使用して、最新バージョンの check スクリプトを実行します。
名前が rules 以外の rules ファイル名を指定します。このオプションを使用すると、rules ファイルに組み込む前にルールの妥当性を検査できます。
check スクリプトを実行すると、rules ファイルの有効性と各プロファイルの有効性の検査結果が表示されます。エラーが検出されないと、 The custom JumpStart configuration is ok と表示されます。check スクリプトによって rules.ok ファイルが作成されます。
WAN ブートサーバーがアクセスできる場所に、この rules.ok ファイルを保存します。
このファイルを次のどちらかの場所に保存します。
WAN ブートサーバーとインストールサーバーが同じマシンに置かれている場合は、WAN ブートサーバーのドキュメントルートディレクトリの flash サブディレクトリにこのファイルを保存します。
WAN ブートサーバーとインストールサーバーがそれぞれ別のマシンに置かれている場合は、インストールサーバーのドキュメントルートディレクトリの flash サブディレクトリにこのファイルを保存します。
root が rules.ok ファイルを所有していて、そのアクセス権が 644 に設定されていることを確認します。
カスタム JumpStart プログラムでは、wanclient-1 システム用の正しいインストールプロファイルを選択するために、rules ファイルが使用されます。rules という名前のテキストファイルを作成します。次に、このファイルにキーワードと値を追加します。
クライアントシステムの IP アドレスは 192.168.198.210 で、ネットマスクは 255.255.255.0 です。network ルールキーワードを使って、カスタム JumpStart プログラムでクライアントのインストールに使用するプロファイルを指定します。
network 192.168.198.0 - wanclient_prof - |
この rules ファイルは、wanclient_prof を使ってクライアントに Solaris 最新リリースソフトウェアをインストールするよう、カスタム JumpStart プログラムに指示します。
このルールファイルに wanclient_rule という名前を付けます。
プロファイルと rules ファイルを作成したあと、check スクリプトを実行して、ファイルの妥当性を検査します。
wanserver# ./check -r wanclient_rule |
check スクリプトによってエラーが検出されない場合は、rules.ok ファイルが作成されます。
rules.ok ファイルを /opt/apache/htdocs/flash/ ディレクトリに保存します。
rules.ok ファイルを作成したあと、必要に応じて開始スクリプトと終了スクリプトを設定できます。手順については、「(省略可能) 開始スクリプトと終了スクリプトの作成」を参照してください。
開始スクリプトと終了スクリプトを設定しない場合は、「構成ファイルの作成」を参照して WAN ブートインストールを続行します。
rules ファイルの作成方法の詳細は、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (カスタムJumpStart/ 上級編)』の「rules ファイルの作成」を参照してください。
rules ファイルのキーワードと値の詳細は、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (カスタムJumpStart/ 上級編)』の「ルールキーワードと値の説明」を参照してください。
「開始スクリプト」と「終了スクリプト」は、ユーザーが定義する Bourne シェルスクリプトで、rules ファイル内で指定します。開始スクリプトは、Solaris ソフトウェアがシステムにインストールされる前に作業を実行します。終了スクリプトは、Solaris ソフトウェアがシステムにインストールされたあと、システムがリブートする前に作業を実行します。これらのスクリプトは、カスタム JumpStart インストールで Solaris をインストールするときのみ使用できます。
開始スクリプトを使用すると、派生プロファイルを作成できます。終了スクリプトを使用すると、ファイル、パッケージ、パッチ、ほかのソフトウェアの追加など、各種のポストインストール作業を実行できます。
開始スクリプトと終了スクリプトは、インストールサーバー上で sysidcfg、rules.ok、およびプロファイルの各ファイルと同じディレクトリに保存する必要があります。
開始スクリプトの作成方法の詳細は、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (カスタムJumpStart/ 上級編)』の「開始スクリプトの作成」を参照してください。
終了スクリプトの作成方法の詳細は、『Solaris 10 10/09 インストールガイド (カスタムJumpStart/ 上級編)』の「終了スクリプトの作成」を参照してください。
WAN ブートインストールの準備を続行するには、「構成ファイルの作成」を参照してください。