Oracle Solaris 10 9/10 インストールガイド (インストールとアップグレードの計画)

パート II ZFS、ブート、Solaris ゾーン、および RAID-1 ボリュームに関連するインストールについて

このパートでは、Solaris OS のインストールとアップグレードに関連するいくつかの技術の概要を説明します。ガイドラインおよび要件についても解説します。

第 6 章 ZFS ルートファイルシステムのインストール (計画)

この章では、ZFS ルートプールをインストールする場合のシステム要件と制限事項について説明します。ZFS ルートプールをインストールするインストールプログラムの概要についても説明します。

システム上に複数のブート環境がある場合のブートについては、第 7 章SPARC および x86 ベースのブート (概要と計画)を参照してください。

Solaris 10 10/09 リリースの新機能

Solaris 10 10/09 リリース以降では、JumpStart プロファイルを設定して、ZFS ルートプールのフラッシュアーカイブを特定できます。

フラッシュアーカイブは、UFS ルートファイルシステムまたは ZFS ルートファイルシステムを実行しているシステムで作成できます。ZFS ルートプールのフラッシュアーカイブには、スワップボリュームとダンプボリュームおよび任意の除外されたデータセットを除く、プール階層全体が含まれます。スワップボリュームとダンプボリュームは、フラッシュアーカイブのインストール時に作成されます。

フラッシュアーカイブによるインストール方法は次のとおりです。

詳細と制限事項については、『Oracle Solaris ZFS 管理ガイド』「ZFS ルートファイルシステムのインストール (Oracle Solaris フラッシュアーカイブインストール)」を参照してください。

ZFS ルートプールのインストールの要件

表 6–1 システム要件と制限事項

要件または制限事項 

説明 

情報 

メモリー

最小メモリーは 768M バイトです。全体のパフォーマンスを考慮して 1G バイトを推奨します。 

ZFS Administration Guide

ディスク容量 

ブート可能な ZFS ルートファイルシステムに使用されるプール領域の最小ディスク容量は、物理メモリー容量、使用可能ディスク領域、作成するブート環境の数によって異なります。 

詳細は、「ZFS インストールのディスク容量要件」を参照してください。

ZFS ストレージプールをアップグレード可能かつブート可能にするには、ディスク全体ではなくスライスとして作成します。 

  • スライスを使って作成したプールはミラー化できますが、RAID-Z にも複数ディスクの非冗長構成にもできません。SVM デバイス情報を /dev/md/[r]dsk ディレクトリで利用可能にしておいてください。

  • プールには、SMI ラベルを付けます。EFI ラベルの付いたディスクはブートできません。

  • x86 のみ: ZFS プールは、fdisk パーティションのあるスライスに作成します。

Solaris Live Upgrade を使用して UFS ルート (/) ファイルシステムから ZFS ルートプールに移行する場合は、次の要件に注意してください。

  • Solaris Live Upgrade を使用した UFS ファイルシステムから ZFS ルートプールへの移行、またはルートプールでの新規ブート環境の作成は、Solaris 10 10/08 以降のリリースの新機能です。このリリースには、Solaris Live Upgrade を ZFS で使用するのに必要なソフトウェアが含まれています。ZFS で Solaris Live Upgrade を利用するには、これ以降のリリースをインストールしてください。

  • UFS ファイルシステムから ZFS ファイルシステムへの移行のみが可能です。

    • UFS ファイルシステム以外のファイルシステムを ZFS ルートプールに移行することはできません。

    • UFS ファイルシステムを ZFS ルートプールから作成することはできません。

  • 移行する前に、ZFS ストレージプールが存在することを確認してください。

ZFS インストールのディスク容量要件

通常、UFS ルートファイルシステムのシステムでは、スワップとダンプが同じスライス上にあります。そのため、UFS はダンプデバイスとスワップ空間を共有します。ZFS ルートプールでは、スワップとダンプは別々の zvols となるので、同じ物理空間が共有されることはありません。システムが ZFS ルートファイルシステムを使ってインストールまたはアップグレードされている場合、スワップ領域とダンプデバイスのサイズは、物理メモリーの容量に依存します。ブート可能な ZFS ルートファイルシステムに使用されるプール領域の最小ディスク容量は、物理メモリー容量、使用可能ディスク領域、作成するブート環境の数によって異なります。メモリーは約 1G バイト、ディスク容量は 2G バイト以上を推奨します。容量は次のように消費されます。

ZFS ルートプールをインストールする Solaris インストールプログラム

ZFS ルートプールの初期インストールを実行するインストールプログラムは、次のとおりです。

Solaris Live Upgrade で UFS ファイルシステムを ZFS ルートプールに移行することができます。Solaris Live Upgrade で、アップグレード可能な ZFS ブート環境を作成することもできます。

表 6–2 ZFS インストールプログラムと制限事項

ZFS インストールプログラム 

説明 

制限 

情報 

Solaris インストールプログラムテキストインストーラ 

Solaris テキストインストーラは、ZFS ルートプールの初期インストールを実行します。インストール中に、UFS ファイルシステム、ZFS ルートプールのどちらをインストールするか選択できます。インストール中に 2 つ以上のスライスを選択して、ミラー化された ZFS ルートプールを設定できます。ミラー化された ZFS ルートプールは、インストールのあとで追加のディスクを接続または追加して作成することもできます。ZFS ボリューム上のスワップおよびダンプデバイスは、ZFS ルートプール内に自動的に作成されます。 

  • インストール GUI は、ZFS ルートプールのインストールでは使えません。

  • アップグレードに、標準のアップグレードプログラムは使えません。ZFS ルートプールのアップグレードには、Solaris Live Upgrade を使用します。

『Oracle Solaris 10 9/10 インストールガイド (基本編)』の第 3 章「Solaris 対話式テキストインストーラによる ZFS ルートプールのインストール (計画と作業)」

Solaris Live Upgrade 

Solaris Live Upgrade 機能を使用して、次の作業を実行できます。

  • UFS ルート (/) ファイルシステムの ZFS ルートプールへの移行

  • 新しいブート環境を次のようにして作成する

    • 既存の ZFS ルートプール内に

    • 別の ZFS ルートプール内に

    • 現在稼働中のシステム以外のソースから

    • 非大域ゾーンがインストールされているシステム上への作成

lucreate コマンドを使用して ZFS ブート環境を作成したあと、そのブート環境で別の Solaris Live Upgrade コマンドを使用することができます。

lucreate コマンドを使用する前に、ストレージプールを作成してください。

『Oracle Solaris 10 9/10 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)』の第 11 章「Solaris Live Upgrade と ZFS (概要)」

JumpStart 

Solaris 10 10/09 リリース以降では、JumpStart プロファイルを設定して、ZFS ルートプールのフラッシュアーカイブを特定できます。「Solaris 10 10/09 リリースの新機能」を参照してください。

プロファイルを作成して、ZFS ストレージプールの作成、およびブート可能な ZFS ファイルシステムの指定を行えます。新しい ZFS キーワードによって初期インストールが実現します。 

  • install_type upgrade キーワードは、ZFS ルートプールのアップグレードには使えません。Solaris フラッシュのキーワードも使用できません。

  • UFS 固有のプロファイルで使用可能なキーワードで、ZFS 固有のプロファイルでは使用できないものがあります。

第 7 章 SPARC および x86 ベースのブート (概要と計画)

Solaris 10 10/08 以降のリリースでは、Solaris ブートアーキテクチャーが変更され、ZFS ファイルシステムなどさまざまな種類のファイルシステムからのブートを含む、多数の新機能が提供されています。この章では、これらの変更について説明し、ブートに関する詳細な情報のリファレンスを提供します。また、x86 システムの GRUB ベースのブートの概要を説明します。

この章の内容は次のとおりです。

Solaris のブート (概要)

Solaris 10 10/08 以降のリリースでは、Solaris SPARC ブートストラップ処理の設計が見直され、Solaris x86 ブートアーキテクチャーとの共通部分が増えて SPARCシステム上での ITU (install time update) が可能になりました。改善された Solaris ブートアーキテクチャーにより、直接ブート、RAM ディスクベースのブート、および RAM ディスクミニルートが SPARC プラットフォーム上で可能になります。これらを可能にする技術によって、次の機能がサポートされます。

その他の改善点としては、ブート時間の大幅な短縮、柔軟性の向上、保守の必要性の低下などが挙げられます。

このアーキテクチャーの再設計の一環として、これまで Solaris x86 プラットフォームでしか使用できなかった Solaris ブートアーカイブと bootadm コマンドが、Solaris SPARC ブートアーキテクチャーの一部として完全に組み込まれました。

Solaris SPARC ブートの実装は変更されましたが、SPARC システムをブートするための管理手順に変更はありません。Solaris のインストールに ZFS ファイルシステムからのインストールが追加されましたが、それ以外に新しいブートアーキテクチャーによる変更はありません。

ZFS ブート環境のブート (概要)

複数の OS がインストールされている、または ZFS ルートプールに複数のルートブート環境を持つシステムの場合、これらのブート環境から SPARC プラットフォーム用と x86 プラットフォーム用の両方のブートが可能です。ブート可能なブート環境には、Solaris Live Upgrade で作成されたブート環境も含まれます。

SPARC および x86 ベースのシステムの両方で、ZFS ルートプールごとに 1 つのデータセットがデフォルトのルートファイルシステムとして指定されます。SPARC の場合は boot コマンドを入力、x86 の場合は GRUB メニューのデフォルトを選択すると、このデフォルトのルートファイルシステムがブートされます。

表 7–1 ブートに関する情報の参照先

説明 

情報 

ブート機能の概要 

『Solaris のシステム管理 (基本編)』の第 8 章「システムのシャットダウンとブートの概要」

ブート機能のもう少し詳しい概要 

『Solaris のシステム管理 (基本編)』の第 9 章「システムのシャットダウンとブート (概要)」

x86: menu.lst ファイルの編集、menu.lst ファイルの検索など、ブートの処理手順の変更についての情報

『Solaris のシステム管理 (基本編)』「x86 システムでの ブート動作の変更 (作業マップ)」

ZFS ファイルシステムのブート手順 

『Solaris のシステム管理 (基本編)』の第 12 章「Oracle Solaris システムのブート (手順)」

GRUB menu.lst ファイルの検索、bootadm コマンドの実行など、ブートアーカイブの管理手順

『Solaris のシステム管理 (基本編)』の第 13 章「Oracle Solaris ブートアーカイブの管理 (手順)」

x86: GRUB ベースのブート (概要)

オープンソースのブートローダー GRUB が、Solaris OS のデフォルトのブートローダーです。

ブートローダーは、システムの電源を入れたあと最初に実行されるソフトウェアプログラムです。x86 ベースのシステムの電源を入れると、BIOS (Basic Input/Output System) により、CPU、メモリー、およびプラットフォームハードウェアが初期化されます。初期化フェーズが完了すると、BIOS が構成済みブートデバイスからブートローダーをロードし、システムの制御をブートローダーに移します。

GRUB は、簡単なメニューインタフェースを備えたオープンソースのブートローダーで、メニューには構成ファイルに定義されたブートオプションが表示されます。また、GRUB はコマンド行インタフェースも備えており、メニューインタフェースからアクセスしてさまざまなブートコマンドを実行できます。Solaris OS では、GRUB 実装はマルチブート仕様に準拠しています。詳細な仕様については、http://www.gnu.org/software/grub/grub.html を参照してください。

Solaris カーネルはマルチブート仕様に完全に準拠しているため、GRUB を使用して Solaris x86 ベースのシステムをブートできます。GRUB を使用すると、さまざまなオペレーティングシステムのブートおよびインストールがより簡単にできます。

GRUB の主な利点は、ファイルシステムおよびカーネル実行可能ファイルの形式に対して直観的であるため、ディスク上のカーネルの物理的位置を記録せずにオペレーティングシステムをロードできることです。GRUB ベースのブートでは、カーネルのファイル名、ドライブ、およびカーネルがあるパーティションを指定することでカーネルがロードされます。GRUB ベースのブートは Solaris Device Configuration Assistant (デバイス構成用補助) を置き換え、GRUB メニューによってブート処理を簡略化します。

x86: GRUB ベースのブート (計画)

この節では、GRUB ベースのブートの基本と、GRUB メニューについて説明します。

Solaris OS のインストール時に、デフォルトで 2 つの GRUB メニューエントリがシステムにインストールされます。最初のエントリは Solaris OS エントリです。2 番目のエントリはフェイルセーフブートアーカイブで、システムの回復に使用されます。Solaris GRUB メニューエントリは、Solaris ソフトウェアのインストールおよびアップグレード処理の一環として自動的にインストールおよびアップグレードされます。これらのエントリは OS によって直接管理されるため、手動で編集しないでください。

Solaris OS の標準インストール中に、システム BIOS の設定を変更せずに GRUB が Solaris fdisk パーティションにインストールされます。この OS が BIOS ブートディスクにない場合は、次のいずれかの操作を行う必要があります。

ブートディスクに Solaris OS をインストールする方法をお勧めします。マシンに複数のオペレーティングシステムがインストールされている場合は、エントリを menu.lst ファイルに追加できます。これらのエントリは、システムを次にブートしたときに GRUB メニューに表示されます。

複数のオペレーティングシステムの詳細については、『Solaris のシステム管理 (基本編)』「GRUB で複数のオペレーティングシステムをサポートする方法」を参照してください。

x86: ネットワークからの GRUB ベースのインストールの実行

GRUB ベースのネットワークブートを実行するには、PXE クライアント用に構成された DHCP サーバーと、tftp サービスを提供するインストールサーバーが必要です。DHCP サーバーには、DHCP クラスである PXEClient GRUBClient に応答する機能が必要です。DHCP 応答には、次の情報が含まれている必要があります。


注 –

rpc.bootparamd は、通常、ネットワークブートを実行する場合にサーバー側で必要とされるファイルですが、GRUB ベースのネットワークブートでは不要です。


PXE も DHCP サーバーも使用できない場合は、CD-ROM またはローカルディスクから GRUB をロードできます。次に GRUB でネットワークを手動で構成し、ファイルサーバーからマルチブートプログラムとブートアーカイブをダウンロードできます。

詳細は、『Oracle Solaris 10 9/10 インストールガイド (ネットワークインストール)』「PXE を使用したネットワーク経由のブートとインストールの概要」を参照してください。

第 8 章 システムに Solaris ゾーンがインストールされている場合のアップグレード (計画)

この章では、非大域ゾーンが構成されている場合の、Solaris ゾーン区分技術と Solaris OS のアップグレードとの関係の概要を説明します。

この章の内容は次のとおりです。

Solaris ゾーン (概要)

Solaris ゾーン区分技術は、オペレーティングシステムサービスを仮想化し、安全で隔離されたアプリケーション実行環境を提供します。非大域ゾーンは、Solaris OS の 1 つのインスタンス内で作成される、仮想化されたオペレーティングシステム環境です。非大域ゾーンを作成すると、アプリケーション実行環境が生成されます。このアプリケーション実行環境内のプロセスは、システムのほかの部分から隔離されます。このように隔離されているので、ある非大域ゾーンで実行中のプロセスが、ほか の非大域ゾーンで実行中のプロセスから監視または操作されることがありません。スーパーユーザー資格で実行されているプロセスであっても、ほかのゾーンの活動を監視したり操作したりすることはできません。また、非大域ゾーンにより、アプリケーションを配備するマシンの物理的属性からアプリケーションを分離する抽象層も提供されます。このような属性の例として、物理デバイスパスがあります。

各 Solaris システムには大域ゾーンが 1 つ含まれています。大域ゾーンは 2 つの機能を持っています。大域ゾーンは、システムのデフォルトのゾーンであり、システム全体の管理に使用されるゾーンでもあります。大域管理者が非大域ゾーンを作成した場合を除き、すべてのプロセスが大域ゾーンで実行されます。非大域ゾーンの構成、インストール、管理、およびアンインストールは、大域ゾーンからのみ行うことができます。システムハードウェアから起動できるのは、大域ゾーンだけです。物理デバイス、ルーティング、動的再構成 (DR) といったシステムインフラストラクチャーの管理は、大域ゾーンでのみ行うことができます。大域ゾーンで実行されるプロセスは、適切な権限が付与されていれば、非大域ゾーンに関連付けられているオブジェクトにもアクセスできます。

説明 

詳細 

以降の節で、非大域ゾーンが含まれているシステムをどのようにアップグレードできるかについて説明します。 

「非大域ゾーンを含むアップグレード」

非大域ゾーンの作成および構成方法の完全な情報 

『Oracle Solaris のシステム管理 (Oracle Solaris コンテナ : 資源管理と Oracle Solaris ゾーン)』の第 16 章「Solaris ゾーンの紹介」

非大域ゾーンを含むアップグレード

Solaris OS をインストールしたあと、非大域ゾーンをインストールして構成することができます。非大域ゾーンがインストールされている場合に、Solaris OS をアップグレードできます。ブランドを設定した非大域ゾーンがインストールされている場合、それらはアップグレードプロセスでは無視されます。非大域ゾーンがインストールされているシステムに対応できるインストールプログラムの要約を次に示します。


注 –

Solaris 10 10/09 リリース以降では、ゾーンパラレルパッチングによって、標準のSolaris 10 パッチユーティリティーが拡張されています。この機能は、非大域ゾーンにも並行してパッチを適用することで、ゾーンパッチングのパフォーマンスを向上します。

これまでと同様に、大域ゾーンには非大域ゾーンよりも先にパッチが適用されます。

Solaris 10 10/09 リリースより前のリリースでは、この機能は次のパッチユーティリティーへのパッチとして提供されています。

詳細については、次のドキュメントを参照してください。


表 8–1 非大域ゾーンを含むアップグレードを行うためのインストールプログラムの選択

アップグレードプログラム 

説明 

詳細 

Solaris Live Upgrade 

非大域ゾーンを含んだシステムをアップグレードしたり、パッチを適用することができます。システムに非大域ゾーンが含まれている場合は、アップグレードプログラムまたはパッチを追加するプログラムとして、Solaris Live Upgrade を推奨します。ほかのアップグレードプログラムでは、膨大なアップグレード時間が必要となる場合があります。これは、アップグレードの実行に要する時間が、インストールされている非大域ゾーンの数に比例して増加するからです。Solaris Live Upgrade を使ってシステムにパッチを適用する場合は、システムをシングルユーザーモードにする必要がないため、システムの稼働時間を最大限に活用できます。Solaris 10 8/07 リリース以降、非大域ゾーンがインストールされているシステムに対応するために、次の変更が行われています。

  • 新しいパッケージ SUNWlucfg をほかの Solaris Live Upgrade パッケージ SUNWlur および SUNWluu とともにインストールする必要があります。

  • 現在稼働しているブート環境から新しいブート環境を作成する方法は同じままですが、例外が 1 つあります。非大域ゾーン内の共有ファイルシステムの宛先スライスを指定できます。この例外は、次の状況のもとで発生します。

    • 現在のブート環境で zonecfg add fs コマンドが使用され、非大域ゾーンに対して個別のファイルシステムが作成された場合

    • この個別のファイルシステムが、/zone/root/export などの共有ファイルシステム上にある場合

    この個別のファイルシステムが新しいブート環境で共有されないようにするため、非大域ゾーンの個別ファイルシステムの宛先スライスを指定できるように lucreate コマンドが変更されました。-m オプションの引数には、新しい省略可能フィールド zonename が追加されました。この新しいフィールドは、非大域ゾーンの個別のファイルシステムを新しいブート環境の個々のスライス上に配置します。個別のファイルシステムを含む非大域ゾーンの設定方法の詳細は、zonecfg(1M) のマニュアルページを参照してください。

Solaris Live Upgrade (続き) 


注 –

デフォルトでは、クリティカルファイルシステム (ルート(/)、/usr/opt ファイルシステム) 以外のすべてのファイルシステムが、現在のブート環境と新しいブート環境との間で共有されます。このため、アクティブブート環境内の共有ファイルを更新すると、非アクティブブート環境のデータも更新されます。/export ファイルシステムは、共有ファイルシステムの一例です。-m オプションと zonename オプションを使用すると、非大域ゾーンの共有ファイルシステムが個々のスライスにコピーされ、データは共有されません。このオプションを使用すると、zonecfg add fs コマンドを使って作成した非大域ゾーンのファイルシステムがブート環境間で共有されなくなります。


Solaris 10/8/07 リリース以降に、非大域ゾーンがインストールされているシステムに対応するために行われた変更には、ほかに次の点が含まれます。

  • ブート環境の比較機能が向上しました。lucompare コマンドは、非大域ゾーンの内容が含まれているブート環境の比較を行うようになりました。

  • lumount コマンドは、非大域ゾーンが、非アクティブブート環境に存在する、それらに対応する個別のファイルシステムにアクセスできるようにします。大域ゾーン管理者が lumount コマンドを使って非アクティブブート環境をマウントすると、同様にブート環境が非大域ゾーン用にマウントされます。

  • lufslist コマンドによるファイルシステムの表示機能が向上し、大域ゾーンと非大域ゾーンの両方のファイルシステムの一覧が表示されるようになりました。

 

Solaris 対話式インストールプログラム GUI 

非大域ゾーンがインストールされている場合に、システムをアップグレードしたり、パッチを適用したりできます。インストールされている非大域ゾーンの数に応じて、アップグレードやパッチに要する時間が大幅に長くなることがあります。 

このプログラムを使用したインストールの詳細は、『Oracle Solaris 10 9/10 インストールガイド (基本編)』の第 2 章「Solaris インストールプログラムによる UFS ファイルシステムのインストール (作業)」を参照してください。

自動 JumpStart インストール 

アップグレードまたはパッチに適用される任意のキーワードを使用して、アップグレードまたはパッチを実行できます。インストールされている非大域ゾーンの数に応じて、アップグレードやパッチに要する時間が大幅に長くなることがあります。 

このプログラムを使用したインストールの詳細は、『Oracle Solaris 10 9/10 インストールガイド (カスタム JumpStart/上級編)』を参照してください。

非大域ゾーンを含んだシステムをアップグレードする場合の制限事項のリストを次の表に示します。

表 8–2 非大域ゾーンを含むアップグレードでの制約

プログラムまたは条件 

説明 

詳細 

ゾーンがインストールされているシステムで Solaris Live Upgrade を使用する場合は、次の問題を考慮してください。lucreate および lumount 操作の実行中にゾーン状態が遷移しないようにすることが非常に重要です。

  • ある特定の非大域ゾーンが実行されていないときに、lucreate コマンドを使用して非アクティブブート環境を作成した場合、そのゾーンは lucreate 操作が完了するまでブートできません。

  • ある特定の非大域ゾーンが実行されているときに、lucreate コマンドを使用して非アクティブブート環境を作成した場合は、lucreate 操作が完了するまで、そのゾーンを停止またはリブートしないでください。

  • lumount コマンドを使用して非アクティブブート環境をマウントした場合、その lumount 操作より前に実行されていたゾーンは実行を継続できますが、非大域ゾーンをブートしたり、リブートすることはできません。

  • 非大域ゾーンは、非大域ゾーン管理者だけでなく大域ゾーン管理者にも制御できるため、相互に干渉することを避けるため、lucreate または lumount 操作の実行中には、すべてのゾーンを停止してください。

大域ゾーン管理者が、Solaris Live Upgrade を使用したアップグレードについて非大域ゾーン管理者に通知しないと、問題が発生する可能性があります。 

Solaris Live Upgrade 操作の進行中に非大域ゾーン管理者が介入することは非常に危険です。アップグレードは、アップグレードによって発生する変更に対処する予定の管理者の作業に影響を及ぼします。ゾーン管理者は、すべてのローカルパッケージが一連の操作を通じて確実に安定しているようにし、構成ファイルの調整といったアップグレード後の作業をすべて行い、通常はシステムの機能停止を避けたスケジュールを立てる必要があります。  

たとえば、大域ゾーン管理者が lucreate コマンドを使用してファイルシステムをコピーしているときに、非大域ゾーン管理者がパッケージを追加すると、その新しいパッケージはファイルシステムとともにコピーされず、非大域ゾーン管理者は問題の発生に気づきません。

 

Solaris Flash アーカイブは、非大域ゾーンを含んで使用することはできません。 

非大域ゾーンがインストールされていると、Solaris フラッシュアーカイブは正常に作成されません。Solaris フラッシュ機能には Solaris ゾーン区分技術との互換性はありません。Solaris フラッシュアーカイブを作成する場合、そのアーカイブの配備条件が次のいずれかの場合は、作成されたアーカイブは正しくインストールされません。

  • アーカイブが非大域ゾーンに作成された場合。

  • アーカイブが、非大域ゾーンがインストールされている大域ゾーンに作成された場合。

Solaris フラッシュ アーカイブの使用方法の詳細は、『Oracle Solaris 10 9/10 インストールガイド (Solaris フラッシュアーカイブの作成とインストール)』を参照してください。

場合によっては、-R オプションまたは同等のオプションを使用するコマンドを使用してはいけません。

次の条件がいずれも成立する場合は、コマンドに -R オプションまたは同等のオプションを使用して代替ルート (/) ファイルシステムを指定してはいけません。

  • コマンドが大域ゾーン内で実行される。

  • 代替ルート (/) ファイルシステムが非大域ゾーンにあるすべてのパスを参照する。

たとえば、pkgadd ユーティリティーに -R root_path オプションで非大域ゾーンのルート (/) ファイルシステムへのパスを指定して、大域ゾーンから実行する場合です。

代替ルート (/) ファイルシステムが指定可能なユーティリティーの一覧およびゾーンの詳細については、『Oracle Solaris のシステム管理 (Oracle Solaris コンテナ : 資源管理と Oracle Solaris ゾーン)』「大域ゾーンから非大域ゾーンにアクセスする際の制限」を参照してください。

ゾーンを含むアップグレードを実行する前のシステムのバックアップ

アップグレードを実行する前に、Solaris システムの大域ゾーンと非大域ゾーンをバックアップしてください。ゾーンがインストールされているシステムのバックアップを作成する方法については、『Oracle Solaris のシステム管理 (Oracle Solaris コンテナ : 資源管理と Oracle Solaris ゾーン)』の第 27 章「Solaris のゾーン管理 (概要)」を参照してください。

非大域ゾーンのディスク容量要件

大域ゾーンをインストールするときには、作成するすべてのゾーンに十分なディスク容量を必ず確保してください。非大域ゾーンごとに、ディスク容量要件は異なる場合があります。

1 つのゾーンで消費できるディスク容量に制限はありません。容量制限は大域ゾーンの管理者が行います。小規模な単一プロセッサシステムでも、同時に稼働する多数のゾーンをサポートできます。非大域ゾーンを作成するときの容量要件は、大域ゾーンにインストールされたパッケージの種類によって異なります。パッケージの数およびディスク容量要件が要因となります。

計画の要件と推奨事項の詳細は、『Oracle Solaris のシステム管理 (Oracle Solaris コンテナ : 資源管理と Oracle Solaris ゾーン)』の第 18 章「非大域ゾーンの計画と構成 (手順)」を参照してください。

第 9 章 インストール時の RAID-1 ボリューム (ミラー) の作成 (概要)

この章では、ルート (/) ファイルシステムの RAID-1 ボリューム (ミラー) を作成する利点について説明します。ファイルシステムのミラー作成に必要な Solaris ボリュームマネージャーコンポーネントについても説明します。この章の内容は次のとおりです。

Solaris Live Upgrade や JumpStart に固有の追加情報については、次の資料を参照してください。

RAID-1 ボリュームを使用する理由

インストール時、またはアップグレード時に、RAID-1 ボリュームを作成して、複数の物理ディスクにシステムデータを複製できます。複数のディスクにデータを複製することにより、ディスクの破壊やディスク障害の際にデータを保護することができます。

Solaris カスタム JumpStart および Solaris Live Upgrade では、ファイルシステムをミラー化する RAID-1 ボリュームの作成に、Solaris ボリュームマネージャーを使用します。Solaris ボリュームマネージャーでは、ボリュームを使って確実にディスクやデータを管理できます。Solaris ボリュームマネージャーでは、連結、ストライプ、その他の複雑な構成が可能です。カスタム JumpStart および Solaris Live Upgrade インストールでは、これらの作業の一部が実行できます。たとえば、ルート (/) ファイルシステムの RAID-1 ボリュームを作成できます。RAID-1 ボリュームは、インストール時、またはアップグレード時に作成できるので、インストール後に作成する必要はありません。

RAID-1 ボリュームの機能

Solaris ボリュームマネージャーは、物理ディスクおよびその関連データの管理に仮想ディスクを使用します。Solaris ボリュームマネージャーでは、仮想ディスクを「ボリューム」と呼びます。「ボリューム」とは、システム上で単一の論理デバイスとみなされる物理スライスの集まりの名前です。ボリュームは、一般的な UNIX 用語である「擬似 (仮想) デバイス」と、実質的に同義です。

アプリケーションやファイルシステム (UFS など) から見ると、ボリュームは物理ディスクと同じように機能します。Solaris ボリュームマネージャーは、ボリュームに対する入出力要求を、そのボリュームを構成するメンバーディスクに対する入出力要求に変換します。Solaris ボリュームマネージャーのボリュームは、スライス (ディスクパーティション) またはほかの Solaris ボリュームマネージャーボリュームから作成されます。

ボリュームを使用して、パフォーマンスとデータ可用性を向上させることができます。場合によっては、ボリュームの使用により入出力パフォーマンスも向上します。ボリュームの機能は、スライスと同じです。ボリュームはスライスとよく似ていますが、エンドユーザー、アプリケーション、およびファイルシステムに対して透過的です。物理デバイスと同様に、Solaris ボリュームマネージャーを使用して、ブロックデバイス名または raw デバイス名からボリュームにアクセスできます。ボリューム名は、使用しているのがブロックデバイスなのか raw デバイスなのかによって異なります。カスタム JumpStart インストールおよび Solaris Live Upgrade では、ミラー化されたファイルシステムの作成用としてブロックデバイスがサポートされます。ボリューム名の詳細については 「カスタム JumpStart と Solaris Live Upgrade を行うときの RAID ボリューム名の要件とガイドライン」を参照してください。

RAID-0 ボリューム (単一スライスの連結) を保持する RAID-1 ボリュームを作成する場合、Solaris ボリュームマネージャーは RAID-0 サブミラー上のデータを複製し、サブミラーを 1 つのボリュームとして処理します。

図 9–1 に、ルート (/) ファイルシステムを 2 つの物理ディスクに複製するミラーを示します。

図 9–1 2 つのディスクにルート (/) ファイルシステムの RAID-1 ボリュームを作成

 この図については本文中で説明しています。

図 9–1 のシステムの構成は、次のとおりです。

Solaris ボリュームマネージャーコンポーネントの概要

カスタム JumpStart インストールおよび Solaris Live Upgrade では、データの複製に必要な次のコンポーネントを作成できます。

この節では、これらのコンポーネント 1 つ 1 つについて簡単に説明します。これらのコンポーネントの詳細は、『Solaris ボリュームマネージャの管理』を参照してください。

状態データベースと状態データベースの複製

「状態データベース」は、物理ディスクに情報を格納するデータベースです。状態データベースは、構成に対して加えられた変更を記録および管理します。Solaris ボリュームマネージャーは、構成や状態に変化があると、状態データベースを自動的に更新します。新しいボリュームの作成は、構成の変更の一例です。サブミラーの障害は、状態の変化の一例です。

状態データベースは、実際には、複製された複数のデータベースコピーの集まりです。各コピーは、「状態データベースの複製」と呼ばれ、データベース内のデータが常に有効であることを保証します。状態データベースのコピーを複数持つことにより、単一点障害からデータを保護することができます。状態データベースは、既知の状態データベースの複製の格納場所と状態をすべて記録しています。

状態データベースとその状態データベースの複製が作成されるまで、Solaris ボリュームマネージャーは動作できません。Solaris ボリュームマネージャー構成には、正常に動作する状態データベースが必要です。

状態データベースの複製は、状態データベースのデータが常に有効であることを保証します。状態データベースが更新されると、個々の状態データベースの複製も更新されます。ただし、システムクラッシュによってすべての更新が失われるのを防ぐために、更新は一度に 1 つずつ行われます。

システムから 1 つの状態データベースの複製が失われると、Solaris ボリュームマネージャーは、どの状態データベースの複製に有効なデータが格納されているかを判断する必要があります。この情報を得るために、Solaris ボリュームマネージャーは「多数決アルゴリズム」を使用します。このアルゴリズムでは、過半数 (半数 + 1) の複製が使用可能であり、一致していれば、それらの複製を有効であるとみなします。この多数決アルゴリズムがあるため、ディスク構成を設定するときに、3 つ以上の状態データベースの複製を作成する必要があります。3 つの状態データベースの複製のうち少なくとも 2 つが使用可能であれば、合意に達することができます。

個々の状態データベースの複製には、デフォルトで 4M バイト (8192 ディスクセクタ) のディスク領域が使用されます。複製は、次のデバイスに格納できます。

複製は、ルート (/)、 swap/usr スライス、およびファイルシステムやデータがすでに格納されているスライスには格納できません。ただし、複製を格納したあとで、同じスライスにボリュームやファイルシステムを置くことができます。

複数の状態データベースのコピーを 1 つのスライス上に置くこともできます。しかし、複数の状態データベースの複製を 1 つのスライスに置くと、システムが単一点障害に対してより脆弱になる可能性があります。

説明 

詳細 

カスタム JumpStart または Solaris Live Upgrade を使って RAID-1 ボリュームを作成するときに確認するガイドラインと要件 

「状態データベースの複製のガイドラインと要件」

状態データベースと状態データベースの複製に関する詳細情報の入手 

『Solaris ボリュームマネージャの管理』

RAID-1 ボリューム (ミラー)

RAID-1 ボリューム (ミラー) は、同じデータのコピーを複数の RAID-0 ボリューム (単一スライスの連結) に保持しているボリュームです。RAID-1 ボリュームの構成後、このボリュームを物理スライスと同様に使用できます。既存のファイルシステムを含め、どのようなファイルシステムでも複製できます。RAID-1 ボリュームは、データベースなど、任意のアプリケーションでも使用できます。

RAID-1 ボリュームを使用したファイルシステムのミラー化には、次の利点と欠点があります。

説明 

詳細 

RAID-1 ボリュームの計画 

「RAID-1 ボリュームと RAID-0 ボリュームの要件とガイドライン」

RAID-1 ボリュームの詳細情報 

『Solaris ボリュームマネージャの管理』

RAID-0 ボリューム (連結)

RAID-0 ボリュームは、単一スライスの連結です。連結とは、複数のコンポーネント間でデータが順番に隣接して配置され、1 つの論理記憶ユニットを構成するボリュームのことです。カスタム JumpStart インストールおよび Solaris Live Upgrade では、ストライプの作成や、その他の複雑な Solaris ボリュームマネージャーボリュームは作成できません。

インストール時、またはアップグレード時に、RAID-1 ボリューム (ミラー) を作成し、これらのミラーに RAID-0 ボリュームを追加できます。「ミラー化された」RAID-0 ボリュームを「サブミラー」と呼びます。ミラーは 1 個以上の RAID-0 ボリュームで構成されます。インストール後、Solaris ボリュームマネージャーを使用して RAID-1 ミラーボリュームを管理することにより、個々の RAID-0 サブミラーボリューム上のデータを管理できます。

カスタム JumpStart インストールでは、最大 2 つのサブミラーで構成されるミラーを作成できます。Solaris Live Upgrade では、最大 3 つのサブミラーで構成されるミラーを作成できます。実際には 2 面ミラーで十分です。3 つ目のサブミラーを構成すると、オンラインでバックアップをとることができます。この場合、バックアップのために 1 つのサブミラーがオフラインになっていても、データの冗長性は失われません。

説明 

詳細 

RAID–0 ボリュームの計画 

「RAID-1 ボリュームと RAID-0 ボリュームの要件とガイドライン」

RAID-0 ボリュームの詳細情報 

『Solaris ボリュームマネージャの管理』

RAID-1 ボリュームのディスク配置の例

次の図は、ルートファイルシステム (/) を 2 つの物理ディスク上に複製する RAID-1 ボリュームです。状態データベースの複製 (metadb) は、両方のディスクに配置されています。

図 9–2 RAID-1 ボリュームのディスク配置

この図については本文中で説明しています。

図 9–2 のシステムの構成は、次のとおりです。

説明 

詳細 

JumpStart プロファイルの例 

『Oracle Solaris 10 9/10 インストールガイド (カスタム JumpStart/上級編)』「プロファイルの例」

Solaris Live Upgrade での作成手順 

『Oracle Solaris 10 9/10 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)』「RAID-1 ボリューム (ミラー) を持つブート環境を作成する」

第 10 章 インストール時の RAID-1 ボリューム (ミラー) の作成 (計画)

この章では、カスタム JumpStart または Solaris Live Upgrade インストールを使って RAID-1 ボリュームを作成するために必要な条件とガイドラインについて説明します。

この章の内容は次のとおりです。

Solaris Live Upgrade や JumpStart に固有の追加情報については、次の資料を参照してください。

システム要件

RAID-1 ボリュームを作成して、特定のスライスにデータを複製するには、インストール時に、使用するディスクがシステムに直接接続されていて使用可能である必要があります。

状態データベースの複製のガイドラインと要件

シングルポイント障害を避けるため、状態データベースの複製は、複数のスライス、ドライブ、およびコントローラに分散させる必要があります。これは、単一のコンポーネントに障害が発生した場合でも、大半の複製を利用可能な状態に保つ必要があるからです。たとえばデバイス障害時などに、複製が失われた場合、Solaris ボリュームマネージャーの実行やシステムの再起動が正常に行われなくなることがあります。Solaris ボリュームマネージャーが動作するためには、少なくとも半数の複製が使用可能でなければならず、システムをマルチユーザーモードで再起動するためには過半数 (半数+1) の複製が使用可能でなければなりません。

状態データベースの複製の作成および管理方法の詳細は、『Solaris ボリュームマネージャの管理』を参照してください。

状態データベースの複製用のスライスの選択

状態データベースの複製用のスライスを選択する前に、次のガイドラインと推奨事項を参考にしてください。

作業 

説明 

専用スライスの選択 

状態データベースの複製は、複製ごとに 4M バイト以上の容量を持つ専用スライス上に作成するようにしてください。必要な場合は、あとで RAID-0 または RAID-1 ボリュームの一部とするスライス上にも、状態データベースの複製を作成できます。ただし、その場合は、スライスをボリュームに追加する前に複製を作成する必要があります。 

スライスサイズの変更 

状態データベースの複製のデフォルトサイズは 4M バイト (8192 ディスクブロック) です。ディスクスライスのサイズがこれより大きい場合は、状態データベースの複製を格納できるように、スライスのサイズを変更できます。スライスサイズの変更については、『Solaris のシステム管理 (デバイスとファイルシステム)』の第 11 章「ディスクの管理 (手順)」を参照してください。

使用されていないスライスの選択 

状態データベースの複製は、未使用のスライス上に作成できます。状態データベースの複製用に予約されているスライスの部分を、ほかの目的に使用することはできません。

 

状態データベースの複製を、既存のファイルシステムや、ルート (/)、/usrswap ファイルシステムに作成することはできません。必要であれば、swap 領域を使用して新しいスライスを作成してから (スライス名が使用可能な場合)、そのスライスに状態データベースの複製を作成できます。

ボリュームになるスライスの選択 

ボリュームの一部となるスライス上に状態データベースの複製が置かれている場合、ボリュームの容量は、複製によって占有される領域分だけ少なくなります。複製が占める領域はシリンダ単位で切り上げられるため、この領域はボリュームによってスキップされます。  

状態データベースの複製の数の選択

状態データベースの複製の数を選択する前に、次のガイドラインを参考にしてください。

コントローラ間で状態データベースの複製を分散

複数のコントローラがある場合、できるだけすべてのコントローラに均等になるように複製を分散させます。これによって、コントローラ障害に対する冗長性が確保できるだけでなく、負荷の分散も可能になります。同じコントローラ上に複数のディスクが存在する場合は、各コントローラで 2 個以上のディスクに複製を配置します。

RAID-1 ボリュームと RAID-0 ボリュームの要件とガイドライン

RAID-1 ボリューム (ミラー) と RAID-0 ボリューム (単一スライスの連結) を使用する際は、次のガイドラインに従ってください。

カスタム JumpStart と Solaris Live Upgrade のガイドライン

カスタム JumpStart インストールと Solaris Live Upgrade は、Solaris ボリュームマネージャーで使用可能な機能の一部をサポートします。これらのインストールプログラムでミラー化されたファイルシステムを作成するときは、次のガイドラインに従ってください。

インストールプログラム 

サポートされている機能  

サポートされていない機能 

カスタム JumpStart と Solaris Live Upgrade 

  • RAID-0 および RAID-1 ボリュームはサポートされますが、RAID-5 ボリュームなどほかの Solaris ボリュームマネージャーコンポーネントはサポートされません。

  • RAID-0 ボリュームは、単一スライスの連結としてのみサポートされています。

Solaris ボリュームマネージャーでは、RAID-0 ボリュームは、ディスクストライプまたはディスク連結を表します。インストール時またはアップグレード時に RAID-0 ストライプボリュームを作成することはできません。 

カスタム JumpStart 

  • 初期インストール時にのみ RAID-1 ボリュームの作成がサポートされます。

  • 1 つの RAID-1 ボリュームに対して、最大 2 つの RAID-0 ボリューム (サブミラー) を作成できます。通常、ほとんどのアプリケーションでは、2 つのサブミラーで十分なデータの冗長性が得られます。ディスクドライブのコストも比較的小さくてすみます。

  • RAID-1 ボリュームが構成されている場合のアップグレードはサポートされません。

  • 3 つ以上の RAID-0 ボリュームはサポートされません。

Solaris Live Upgrade 

  • 1 つの RAID-1 ボリュームに対して、最大 3 つの RAID-0 ボリューム (サブミラー) を作成できます。3 つのサブミラーでは、1 つのサブミラーをオフラインにしてバックアップを実行するときも、残りの 2 つのサブミラーでデータの冗長性を確保することができます。

  • アップグレード時の RAID-1 ボリュームの作成がサポートされます。

例については、『Oracle Solaris 10 9/10 インストールガイド (Solaris Live Upgrade とアップグレードの計画)』「RAID-1 ボリューム (ミラー) を持つブート環境を作成する」を参照してください。

4 つ以上の RAID-0 ボリュームはサポートされません。 

RAID-1 ボリュームを使用した Solaris フラッシュの作成とインストール 

Solaris ボリュームマネージャー RAID-1 ボリュームが構成されているマスターシステムから Solaris フラッシュアーカイブを作成できます。クローンシステムの整合性を保つため、RAID-1 ボリュームの情報はすべて、Solaris フラッシュ作成ソフトウェアによってアーカイブから削除されます。カスタム JumpStart では、JumpStart プロファイルを使用して RAID-1 ボリュームを再構築できます。Solaris Live Upgrade では、RAID-1 ボリュームが構成されたブート環境を作成し、アーカイブをインストールできます。Solaris インストールプログラムでは、Solaris フラッシュアーカイブを使用して RAID-1 ボリュームのインストールを行うことはできません。 

JumpStart プロファイルでの RAID-1 ボリュームの例については、『Oracle Solaris 10 9/10 インストールガイド (カスタム JumpStart/上級編)』「プロファイルの例」を参照してください。

Veritas VxVM では、Solaris フラッシュで使用できない領域に構成情報が格納されます。Veritas VxVm ファイルシステムが構成されている場合は、Solaris フラッシュ アーカイブを作成しないでください。また、JumpStart と Solaris Live Upgrade も含め、Solaris インストールではインストール時の VxVM ボリュームの再構築はサポートされていません。したがって、Solaris フラッシュアーカイブを使った Veritas VxVM ソフトウェアの配備を計画している場合は、VxVM ファイルシステムを構成する前にアーカイブを作成する必要があります。その後、クローンシステムにアーカイブを適用しシステムをリブートしてから、クローンシステムの構成を個別に行う必要があります。 

カスタム JumpStart と Solaris Live Upgrade を行うときの RAID ボリューム名の要件とガイドライン

ボリュームに名前を割り当てるときには、次の規則に従ってください。

Solaris Live Upgrade を行うときの RAID ボリュームの命名規則

RAID-1 ボリューム (ミラー) または RAID-0 ボリューム (サブミラー) を作成するのに Solaris Live Upgrade を使用する場合は、ソフトウェアでボリューム名を検出して割り当てるか、またはユーザーがボリューム名を割り当てることができます。ソフトウェアで名前を検出すると、ソフトウェアは使用可能な最初のミラー名またはサブミラー名を割り当てます。ユーザーがミラー名を割り当てる場合は、インストール時にサブミラーに 1 および 2 で終わる名前を使用できるように、0 で終わる名前を割り当てます。ユーザーがサブミラー名を割り当てる場合は、1 または 2 で終わる名前を割り当てます。誤った番号を割り当てると、ミラーが作成されない可能性があります。たとえば、ミラー名に 1 または 2 で終わる番号 (d1 または d2) を持つ名前を指定すると、ミラー名がサブミラーの名前と重複した場合、Solaris Live Upgrade はミラーの作成に失敗します。


注 –

以前のリリースでは、省略されたボリューム名を入力できました。Solaris 10 10/08 以降のリリースでは、完全ボリューム名だけを入力できます。たとえば、/dev/md/dsk/d10 などの完全ボリューム名だけをミラーの指定に使用できます。



例 10–1 Solaris Live Upgrade: ソフトウェアによるミラーとサブミラーの検出および命名の有効化

次の例では、Solaris Live Upgrade がボリューム名を割り当てています。RAID-1 ボリュームの d0d1 だけが使用中のボリュームです。ミラー d10 に対し、デバイス c0t0d0s0 用のサブミラー名として d2 を、デバイス c1t0d0s0 用のサブミラー名として d3 を、Solaris Live Upgrade が割り当てます。


lucreate -n newbe -m /:/dev/md/dsk/d10:mirror,ufs  \
-m /:/dev/dsk/c0t0d0s0:attach -m /:/dev/dsk/c1t0d0s0:attach


例 10–2 Solaris Live Upgrade: ミラーおよびサブミラー名の割り当て

次の例では、コマンドでボリューム名を割り当てています。ミラー d10 に対し、デバイス c0t0d0s0 用のサブミラー名が d11、デバイス c1t0d0s0 用のサブミラー名が d12 です。


lucreate -n newbe -m /:/dev/md/dsk/d10:mirror,ufs \
-m /:/dev/dsk/c0t0d0s0,/dev/md/dsk/d11:attach \
-m /:/dev/dsk/c1t0d0s0,/dev/md/dsk/d12:attach

Solaris ボリュームマネージャーの命名規則については、『Solaris ボリュームマネージャの管理』を参照してください。


カスタム JumpStart を行うときの RAID ボリュームの命名規則

RAID-1 ボリューム (ミラー) または RAID-0 ボリューム (サブミラー) を作成するのにカスタム JumpStart インストール方式を使用する場合は、ソフトウェアでミラーリングするボリューム名を検出して割り当てるか、またはプロファイルでボリューム名を割り当てることができます。


注 –

物理ディスクスライスや Solaris ボリュームマネージャーのボリュームの名前は、省略形にすることができます。省略名は、デバイスを一意に識別できる最短の名前です。次に例を示します。



例 10–3 ソフトウェアによるミラー名とサブミラー名の検出の有効化

次のプロファイル例では、ミラーには使用可能な最初のボリューム番号が割り当てられています。次に使用可能な 0 で終わるミラーが d10 の場合、名前 d11 および d12 はサブミラーに割り当てられます。

filesys                 mirror c0t0d0s1  / 


例 10–4 ミラー名とサブミラー名の割り当て

次のプロファイル例では、プロファイル内でミラー番号 d30 が割り当てられています。サブミラー名は、ミラー番号および最初に使用可能なサブミラーに基づき、ソフトウェアによって割り当てられます。サブミラー名は d31 と d32 です。

filesys                 mirror:d30 c0t1d0s0 c0t0d0s0  /

Solaris ボリュームマネージャーの命名規則については、『Solaris ボリュームマネージャの管理』を参照してください。

ディスクとコントローラの選択のガイドライン

ファイルシステムのミラー化に使用するディスクやコントローラを選択するときは、次のガイドラインに従ってください。

スライスの選択のガイドライン

ファイルシステムのミラー化に使用するスライスを選択するときは、次のガイドラインに従ってください。

シングルユーザーモードでのブート時に表示されるミラー保守管理に関する通知

ルート (/)、/usr、およびswap のミラーを持つシステムをシングルユーザーモードでブートした場合、これらのミラーの保守管理が必要であることが、システムから通知されます。metastat コマンドでこれらのミラーを確認すると、「Needing Maintenance」という状態情報が表示されます。システム上のすべてのミラーでこの現象が起きる場合もあります。

これは危険な状況に見えますが、心配はいりません。metasync -r コマンドは通常、ブート時にミラーの再同期のために実行されますが、 システムがシングルユーザーモードでブートされた場合には実行を中断されます。システムをリブートすると、metasync -r コマンドが実行され、すべてのミラーの再同期が取られます。

この中断が問題になる場合は、手動で metasync -r コマンドを実行してください。

metasync の詳細については、metasync(1M) のマニュアルページと、『Solaris ボリュームマネージャの管理』を参照してください。