この章では、Solaris フラッシュのセクション、キーワード、およびキーワード値について説明します。また、flar コマンドのオプションについても説明します。
Solaris フラッシュアーカイブの作成時またはインストール時の制限については、表 2–1 を参照してください。
各 Solaris フラッシュアーカイブは、セクションにグループ化されます。一部のセクションは、Solaris フラッシュソフトウェアにより生成されるため、ユーザーが入力する必要はありません。一部のセクションは入力が必須であったり、情報追加が可能であったりします。次の表で、各セクションについて説明します。
表 6–1 フラッシュアーカイブのセクション
セクション名 |
説明 |
アーカイブに必要 |
ユーザー入力が必要 |
---|---|---|---|
アーカイブ Cookie
|
最初のセクションには、ファイルを Solaris フラッシュアーカイブとして識別する cookie が含まれます。配置処理では、識別および検証に cookie を使用します。アーカイブを有効にするために、cookie が必要です。 |
はい |
いいえ |
アーカイブ識別 |
2 番目のセクションには、アーカイブを識別する情報を値とするキーワードが含まれます。ソフトウェアは、次に示すような情報を生成します。
Solaris フラッシュアーカイブの名前はユーザーが指定する必要があります。このほかに、アーカイブについて次の情報も指定できます。
アーカイブに関するキーワードのリストについては、「アーカイブ識別セクションのキーワード」を参照してください。 |
はい |
内容は、ユーザーとソフトウェアの両方で生成されます |
マニフェスト |
クローンシステムの検証に使用される Solaris フラッシュアーカイブのセクション。マニフェストセクションには、クローンシステムに保持、追加または削除されるシステム上のファイルが一覧表示されます。インストールされるファイルが、このリストセットと一致しない場合、インストールは失敗します。このセクションは、情報提供専用です。このセクションは、ファイルを内部形式でリストするため、スクリプトの記述には使用できません。 flarcreate -M オプションを使用して差分アーカイブを作成すれば、このセクションを除外することも可能です。ただしアーカイブの検証が行われなくなるため、このセクションを除外することは推奨しません。 |
いいえ |
いいえ
|
配置前、配置後、再起動 |
このセクションには、OS イメージのインストール前および後にフラッシュソフトウェアが使用する内部情報が含まれます。指定したすべてのカスタマイズスクリプトが、このセクションに保存されます。 |
はい |
いいえ |
サマリー |
このセクションには、アーカイブ作成に関するメッセージが含まれます。また、配置前スクリプトのアクティビティーが記録されます。 |
はい |
内容は、ユーザーとソフトウェアの両方で生成されます |
ユーザー定義 |
このセクションは、アーカイブ識別セクションの次に存在します。アーカイブには、ゼロ以上のユーザー定義セクションを含めることができます。これらのセクションは、アーカイブの抽出処理では処理されません。これらのセクションは別個に取り出され、内容の説明に使用されます。 |
いいえ |
はい |
アーカイブファイル |
アーカイブファイルセクションには、マスターシステムから収集されたファイルがバイナリデータで含まれます。このセクションは、section_begin=archive で始まりますが、セクションの終了境界を示すものはありません。 |
はい |
いいえ |
Solaris フラッシュのキーワードは、カスタム JumpStart のキーワードと類似しています。どちらのキーワードも、インストール要素を定義します。各キーワードは、Solaris フラッシュソフトウェアによるクローンシステムへのソフトウェアのインストール方法の一部分を制御するコマンドです。
次のガイドラインに従って、キーワードおよび値の書式を指定します。
キーワードと値は 1 つの等号で区切られ、1 行に 1 つのキーワードと 1 つの値を指定します
キーワードは、大文字と小文字を区別しません
個々の行の長さに制限はありません
Solaris フラッシュアーカイブの各セクションは、section_begin と section_end キーワードで定義されます。たとえば、アーカイブファイルセクションには、値の異なる section_begin キーワードが含まれます。ユーザー定義アーカイブセクションは、section_begin と section_end キーワードで区切られ、各キーワードには、そのセクションに適した値が指定されます。section_begin と section_end キーワードの値を次の表に示します。
表 6–2 section_begin と section_end キーワードの値
アーカイブのセクション |
section_begin と section_end キーワードの値 |
---|---|
アーカイブ Cookie |
cookie - このセクションは、section_begin と section_end キーワードで区切られません。 |
アーカイブ識別 |
identification |
ユーザー定義セクション |
section_name。section_name キーワードの一例は、X-user_section_1 です。 |
アーカイブファイル |
アーカイブ |
次の表に、アーカイブ識別セクションで使用されるキーワードと、これらに定義可能な値を示します。
各セクションでは、表 6–3 に示したキーワードがセクションの区切りに使用されます。
表 6–3 アーカイブ識別セクションのキーワード: 一般的なキーワード
キーワード |
値の定義 |
値 |
必要 |
---|---|---|---|
section_begin section_end |
これらのキーワードは、アーカイブ内のセクションの区切りに使用されます。使用は、アーカイブ識別セクションに限定されません。これらのキーワードの詳細は、「一般的なキーワード」を参照してください。 |
テキスト |
はい |
次のキーワードは、識別セクションで使用され、アーカイブファイルセクションの内容を説明します。
表 6–4 アーカイブ識別セクションのキーワード: アーカイブファイルセクションの内容
次のキーワードは、アーカイブ全体に関する情報を提供します。通常、これらのキーワードは、アーカイブの選択および管理を支援する目的で使用されます。これらのキーワードはすべてオプションであり、各アーカイブの識別を容易にするために使用されます。これらのキーワードを含めるには、flarcreate コマンドのオプションを使用します。詳細は、例 3–9 を参照してください。
表 6–5 アーカイブ識別セクションのキーワード: ユーザーによるアーカイブの記述
次のキーワードも、アーカイブ全体の説明に使われます。デフォルトでは、値は、フラッシュアーカイブの作成時に uname で指定されます。ルートディレクトリが / ではないフラッシュアーカイブを作成すると、アーカイブソフトウェアにより、これらのキーワードに対して文字列 UNKNOWN が挿入されます。例外は、creation_node、creation_release、および creation_os_name キーワードです。
creation_node では、ソフトウェアは nodename ファイルの内容を使用します。
creation_release および creation_os_name では、ソフトウェアは root ディレクトリの /var/sadm/system/admin/INST_RELEASE の内容を使用しようとします。ソフトウェアがこのファイルの読み込みに失敗した場合、値 UNKNOWN が割り当てられます。
これらのキーワードの値は設定方法に関係なく、上書きできません。
表 6–6 アーカイブ識別セクションのキーワード: ソフトウェアによるアーカイブの記述
キーワード |
値 |
---|---|
creation_node |
uname -n から返される値 |
creation_hardware_class |
uname -m から返される値 |
creation_platform |
uname -i から返される値 |
creation_processor |
uname -p から返される値 |
creation_release |
uname -r から返される値 |
creation_os_name |
uname -s から返される値 |
creation_os_version |
uname -v から返される値 |
Solaris フラッシュアーカイブで定義されるキーワードに加えて、ほかのキーワードも定義できます。Solaris フラッシュアーカイブはユーザー定義のキーワードを無視しますが、アーカイブ識別セクションを処理してユーザー定義のキーワードを使用するスクリプトやプログラムを、ユーザーが作成することもできます。ユーザー定義キーワードを作成する際、次の書式に従います。
キーワード名を X で始めます。
改行、等号、空文字以外の任意の文字を使用してキーワードを作成します。
ユーザー定義キーワードの命名規則には、定義済みのキーワードに対して使用される、下線で区切る記述方法を推奨します。他によく使われる命名規則としては、Java パッケージの命名に類似したフェデレーテッド規則があります。
たとえば、X-department はユーザー定義のキーワードとして有効です。
オプションを使用して、アーカイブ識別セクションにユーザー定義キーワードを含める具体例は、例 3–9 を参照してください。
Solaris フラッシュ flar コマンドを使用して、Solaris フラッシュアーカイブを作成および管理できます。
flar コマンドは、次のオプションを指定して使用できます。
flarcreate はアーカイブを作成する
flar combine は 2 つのアーカイブを結合する
flar split はアーカイブをセクションに分割する
flar info はアーカイブの構造をチェックする
flarcreate コマンドは、マスターシステムから Solaris フラッシュアーカイブを作成するために使用します。このコマンドは、マスターシステムがマルチユーザーモードまたはシングルユーザーモードで稼働している時に使用できます。また、flarcreate は、マスターシステムが次のメディアからブートしている時にも使用できます。
Solaris Operating System DVD
Oracle Solaris 10 9/10 リリース以降では、DVD のみ入手できます。Solaris SOFTWARE CD は入手できなくなりました。
Solaris SOFTWARE - 1 CD
DVD または CD の Solaris ネットワークインストールイメージ
Solaris フラッシュアーカイブを作成する時は、マスターシステムはできるだけ静的な状態にしておく必要があります。
次のいずれのコマンドを使用しても、Solaris フラッシュアーカイブを作成できます。
2 語として: flar と create サブコマンド
1 語として: flarcreate
このコマンドの構文は次のとおりです。
flarcreate -n archive_name [- R root] [-A unchanged_master_image_dir ] [-H][-I][-M][[- S]-c][-t [-p posn] [-b blocksize]][- i date][-u section ...][-m master][- f [list_filename| -] [-F][- a author][-e descr |-E descr_file][-L pax] [-T type][-U key=val ...][- x exclude_dir/filename] [-y include_dir/filename] [-z list_filename ] [-X list_filename] path/filename
flar combine [-d dir] [-u section...] [-t [- p posn] path/filename
flar split [-d dir] [-u section...] [-f] [-S section] [-t [- p posn] path/filename
flar info [-l] [-k keyword ] [-t [-p posn] path/filename
上記のコマンド行の path は、アーカイブファイルを保存するディレクトリです。filename は、アーカイブファイルの名前です。パスを指定しない場合、アーカイブファイルは現在のディレクトリに保存されます。
表 6–7 flar コマンドのコマンド行オプション