Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.3 管理ガイド

WAN を経由するレプリケーション

Directory Server では、広域ネットワーク (WAN) によって接続されたマシン間のマルチマスターレプリケーションを含むあらゆる形式のレプリケーションを実行できます。このレプリケーションにより、サプライヤサーバーは、待ち時間が大きく、帯域幅が小さいネットワーク経由で、最適な帯域幅を使用することによりコンシューマを初期化し、更新することができます。


注 –

WAN 経由でレプリケートするレプリケーショントポロジの配備またはトラブルシューティングを行う場合、ネットワークの速度、待ち時間、およびパケットロスを調べる必要があります。これらのいずれかの点で、ネットワークの問題があると、レプリケーションの遅延が発生する可能性があります。

さらに、レプリケーションデータの転送率は、使用可能な物理媒体が帯域幅に関して許可している転送率を常に下回ります。レプリカ間の更新量を使用可能な帯域幅と物理的に適合させることができない場合、更新負荷が大きくなったときにレプリカ間に差異が生じることを、チューニングによって回避できなくなります。レプリケーションの遅延と更新のパフォーマンスは、さまざまな要因によります。次のような要因がありますが、これだけに限定されません。変更の頻度、エントリサイズ、サーバーハードウェア、エラー率、平均待ち時間、平均帯域幅。

環境でのレプリケーションに関する疑問がある場合は、Sun サービスプロバイダに問い合わせてください。


デフォルトでは、レプリケーションメカニズムの内部パラメータは WAN に合わせて最適化されています。ただし、前述の要因などが原因でレプリケーションが遅くなるときは、ウィンドウサイズとグループサイズのパラメータを調節してみてください。また、ネットワークのピーク時を避けてレプリケーションをスケジュールすることで、ネットワークの全体的な利用率を高めることができます。最後に、Directory Server は、帯域幅の使用を最適化するためにレプリケーションデータの圧縮に対応しています。

ネットワークパラメータの設定

ネットワーク経由でエントリをより効率的に送信するために、レプリケーションメカニズムがエントリをグループ化する方法は、ウィンドウとグループネットワークパラメータによって決定されます。これらのパラメータは、サプライヤとコンシューマがレプリケーション更新メッセージと、その確認応答を交換する方法に影響します。すべてのレプリケーションアグリーメントのパラメータは設定可能であるため、各コンシューマの特定のネットワーク状況に従ってレプリケーションパフォーマンスを調整することができます。

変更の効果を監視して、必要に応じてパラメータを調整します。手順については、「レプリケーションの状態の取得」を参照してください。ウィンドウとグループのサイズパラメータを変更するときに、レプリケーションを中断する必要はありません。

ウィンドウサイズの設定

ウィンドウサイズ (デフォルト値は 10) は、コンシューマからの即時の確認応答なしに送信できる更新メッセージの最大数を表します。

各コンシューマからの確認応答を待機するよりも、短時間に連続して多数のメッセージを送信する方が効果的です。適切なウィンドウサイズを使用することで、レプリケーション更新や確認応答の到着を待機するためにレプリカが費やす時間を排除できます。

コンシューマレプリカがサプライヤよりも遅れている場合、詳細な調整を行う前に、ウィンドウサイズをデフォルトよりも大きい数字 (100 など) に設定して、レプリケーションのパフォーマンスをもう一度確認してみます。レプリケーションの更新頻度が高く、更新間隔が短い場合、ローカルエリアネットワーク (LAN) 接続されたレプリカでもウィンドウサイズを大きくすることでパフォーマンスが向上する可能性があります。

Procedureウィンドウサイズを設定する

このタスクは DSCC を使用して実行することができます。詳細については、「Directory Service Control Center のインタフェース」および DSCC オンラインヘルプを参照してください。

  1. ウィンドウサイズを変更します。


    $ dsconf set-repl-agmt-prop -h host -p port suffix-DN consumer-host:consumer-port transport-window-size:value
    

    次に例を示します。


    $ dsconf set-repl-agmt-prop -h host2 -p 1389 dc=example,dc=com host1:1389 \
     transport-window-size:20

グループサイズの設定

グループサイズ (デフォルト値は 1) は 1 つの更新メッセージに入れることのできるデータ修正の最大数を表します。ネットワーク接続がレプリケーションを妨害しているように思われる場合、グループサイズをデフォルトよりも大きい数字 (10 など) に設定して、レプリケーションのパフォーマンスを再確認してみます。

グループサイズを大きくする場合、次のことがあてはまることを確認します。

Procedureグループサイズを設定する

このタスクは DSCC を使用して実行することができます。詳細については、「Directory Service Control Center のインタフェース」および DSCC オンラインヘルプを参照してください。

  1. グループサイズを変更します。


    $ dsconf set-repl-agmt-prop -h host -p port suffix-DN \
     consumer-host:consumer-port transport-group-size:value
    

    次に例を示します。


    $ dsconf set-repl-agmt-prop -h host2 -p 1389 dc=example,dc=com host1:1389 \
     transport-group-size:10

レプリケーションアクティビティーのスケジュール

レプリカ間の即時同期が重要でない場合は、ネットワークの利用率が低い時間にレプリケーションをスケジュールできます。ネットワークを多く利用できるほど、データのレプリケーションが大幅に速く完了するはずです。

日または週単位で、1 日の特定の時間にレプリケーションを開始および終了するようにスケジュールできます。これは、レプリケーションアグリーメントによって、コンシューマごとに個別に実行できます。新しいスケジュールはただちに有効になり、対応するコンシューマに対する次回のデータのレプリケーションは、スケジュールと合致する日時になった時点で行われます。

Procedureレプリケーションアクティビティーをスケジュールする

このタスクは DSCC を使用して実行することができます。詳細については、「Directory Service Control Center のインタフェース」および DSCC オンラインヘルプを参照してください。

  1. レプリケーションスケジュールを変更します。


    $ dsconf set-repl-agmt-prop -h host -p port suffix-DN \
     host:port repl-schedule:value
    

    たとえば、レプリケーションを毎晩 2:00 から 4:00 までの間に行うように設定する場合、次のように入力します。


    $ dsconf set-repl-agmt-prop -h host2 -p 1389 dc=example,dc=com host1:1389 \
     repl-schedule:"0200-0400 0123456"

    0123456 は曜日を示し、 0 は日曜日、1 は月曜日というように表します。

レプリケーションの圧縮の設定

レプリケーションで使われる帯域幅を節約するために、コンシューマの更新時に送信されるデータを圧縮するようにレプリケーションを設定できます。レプリケーションメカニズムは、Zlib 圧縮ライブラリを使用します。圧縮を利用するには、Solaris または Linux プラットフォームでサプライヤとコンシューマの両方が稼動している必要があります。

WAN 環境で予想されるレプリケーションの利用状況に対して、最高の結果が得られる圧縮レベルを実験的にテストし、選択する必要があります。ネットワーク帯域幅が広い LAN ではこのパラメータを設定しないでください。圧縮と圧縮解除の計算により、レプリケーションが遅くなります。

Procedureレプリケーションの圧縮を設定する

DSCC を使用してこのタスクを実行することはできません。次の手順に示すように、コマンド行を使用します。

  1. マスターサーバーのレプリケーションアグリーメントエントリにレプリケーションの圧縮を設定します。


    $ dsconf set-repl-agmt-prop -h host -p port suffix-DN \
     consumer-host:consumer-port transport-compression:level
    

    level には high mediumlow、または none を指定できます。

    たとえば、レプリケーションの更新を host1:1389 のコンシューマに送信する場合、最速の圧縮を使用するには、次のように入力します。


    $ dsconf set-repl-agmt-prop -h host2 -p 1389 dc=example,dc=com host1:1389 \
     transport-compression:high

    圧縮レベルの設定の詳細については、『Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.3 Reference 』を参照してください。